もしもかぐやに滅茶苦茶強力な恋敵がいたら・・・   作:ゾキラファス

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沢山のお気に入り、感想、評価、本当にありがとうございます!
今回も楽しんでいただければ幸いです。
あと、藤原書記のオリ主の呼び方をさん付けに変えました。


生徒会メンバーと旅行先

 

 

 

「いやー、今日も暑いですねー。いっそのこともう夏になって欲しいですよー。そうしたらプールとかで涼めるのにー」

 

「ずいぶん気が早いですね藤原さん。確かに今日も少し暑いですが、まだまだ春ですよ?」

 

「そうだぞ藤原書記、夏はまだ遠いぞ」

 

「いえ!時間なんてあっという間に過ぎちゃうんです!うかうかしているとな~んにも無いまま卒業式を迎えちゃいますよ?」

 

「全くだ。何も無いまま卒業なんて私はごめんだな」

 

 藤原と京佳の言葉によりかぐやに200のダメージが入った。なんせこの数か月間、白銀と何一つ進展していないのだ。

 このままでは本当に、何も無いまま秀知院を卒業してしまいかねない。せめて夏の間にでも何かイベントを起こし、白銀との仲を進展させたい。かぐやがそう思っていると藤原が唐突に口を開いた。

 

「あ!そうだ!夏になったら生徒会のメンバー全員でどこかに遊びに行きましょうよ!旅行とか!」

 

「いいですね。親睦もかねてどこかにいきましょうか」

 

「わーい!」

 

 藤原の提案にかぐやは即座に乗った。

 夏になれば夏休みに入り、生徒会室で白銀と会う事が無くなってしまう。ならば学園の外で白銀と会い、自分に告白させるように動けばいい。そういう意味で藤原の発言は渡りに船であった。

 

「でも行くならどこに行きましょうか?山?海?」

 

「山ですね。山以外ありえません」

 

 藤原の言葉にかぐやが反応し、山と答えた。

 

「おお!四宮は山に行きたいのか!?」

 

 そして白銀はかぐやと同じ山派だったので、つい嬉しくなっていた。

 

「はい。夏と言えば海とよく言いますが、海はどこに行っても人で込みますし、海水でベタ付きますし、日に焼けますし、サメやヒョウモンダコのような危険な生物もいます」

 

「確かにな!その点、山はいいぞ!空気は美味いし、景色は綺麗だし、空が澄んでるから夜には星空もバッチリ見えるしな!」

 

「ふふ、もし山に行く事になったら、夜はみんなで天体観測ですね」

 

「うむ!いいなそれは!」

 

 白銀はテンションを上げた。

 幼いころは天文学者になりたいと思っており、今でも時折星空を見る白銀。そんな彼にとって、天体観測というのは自身のテンションが上がる最高のイベントだった。今、白銀の頭の中では、生徒会メンバーで夏の大三角を見ている光景が思い浮かんでいた。

 

「では今日の夜にでも家の者にいろいろ手配をさせ…」

 

「いや、行くのであれば海だろう」

 

 かぐやが山へ行く予定を立てようとした時、京佳が『海』と答えた。

 

「海は夏の間しか遊べないじゃないか。人込みがあったりもするというが、どこにも穴場というものは存在する。そういった場所であれば空いているだろうし、日焼け止めを使用すれば日に焼けることも防げる。そしてサメはまだしも、ヒョウモンダコは関東では確認されてない。そうそう襲われることなどないだろう」

 

 そして京佳は反撃を開始した。

 元より海の方が好きというのもあるが、何より山ではある作戦が決行できなくなるからだ。

 

 その作戦とは、水着で白銀を悩殺することである。

 

 京佳は自分の豊満な胸が、対男性用の必殺の武器になる事を理解している。故に海に行き、開放的な雰囲気の中、自身の水着姿で白銀を悩殺。そうすれば一気に距離を縮める事が出来る。

 だからこそ海である。

 山では水着を着る事などまず無い。それではダメだ。何としてでも海にしなければならないという思いが京佳を奮い立たせた。

 

「そもそも山は天気が変わりやすいだろう?せっかくの旅行が雨でずっと室内という可能性も…」

 

「問題ありません。四宮家が所有しているコテージを借りましょう。コテージ内にはシアタールームに遊戯室、さらにバーベキューも屋根付きの設備があるので雨が降っても室内で十分楽しめますよ」

 

「虫が沢山生息している。蚊やムカデや毛虫などが…」

 

「害虫駆除業者にコテージ周辺を徹底的に駆除して貰うよう依頼を出しておきます。最高級の虫よけスプレーも用意させますよ」

 

「……クマやイノシシのような狂暴な野生生物に出くわすかもしれんぞ?」

 

「一流のハンターを呼んで退治して貰いましょう。その日の夕飯はクマ肉とシシ肉のジビエ料理ですね」

 

 京佳が山のデメリットを言う度に、かぐやがそれらの解決策を口にした。殆どが金持ちだからこその解決方法だったりするが。

 

(くっ!これが資本の力か!?このままでは水着を着る作戦が実行できない!)

 

 しかし京佳は少し焦りながらも疑問に思っていた。勘ではあるが、かぐやはてっきり海派だと思っていたからだ。

 そしてそれは間違っていない。本来のかぐやであれば海と言っていたところだろう。そして京佳と同じ様に水着で白銀を悩殺するという作戦を実行しただろう。しかし、数日前の膝枕事件のせいでかぐやは海に行くという選択肢を自ら無くした。

 それは何故か?簡単だ。

 

 水着になった京佳に勝てるビジョンが全く思い浮かばないからである。

 

 京佳の胸部攻撃力はまさに大和型戦艦。大艦巨砲主義という言葉を体現したような大きさだ。さらに京佳は胸だけではなく、全体のボディラインも非常に美しい。モデル並みの高身長、スラリとした長い足、シミひとつ無い白い肌。そして綺麗に括れている腰。大抵の男子なら水着になった京佳に釘付けになるだろう。

 対するかぐやの胸部攻撃力はいいとこ特型駆逐艦である。フォルムは美しいが、戦艦と比べるとその攻撃力はかなり低い。かぐやはボディラインには自信があるが、京佳のボディラインと比べるとそれも霞んでしまう。仮に2人が並ぶと、その差はよりはっきりとするだろう。それがわかっているからこそ、水着になる事が無い山なのだ。

 万が一にでも、京佳と共に海に行く事など絶対にあってはならない。

 

(もしも、水着になった立花さんと海に行ったら…!)

 

―――――

 

 

『うおぉぉ!?立花!?何だそれは!?』

 

『自慢の胸だ。どうだ白銀?』

 

『正直想像以上だ…!凄まじいな…!』

 

『ふふ、ありがとう』

 

『それに比べて四宮はなんとうか、随分とかわいらしい胸部だな?』

 

 

―――――

 

(そんなの絶っっっっっ対にダメ!何としても海は阻止しないと!!)

 

 態々海に行ってまで恥を晒したくなどない。かぐやはどんな手段を講じても海に行く事だけは阻止するつもりでいた。

 

(幸い会長は山派ですし、このまま山に行くことを押し通せるはず…!)

 

 現在、2-1で山派優勢だ。この調子ならば海に行く事は阻止できそうである。

 京佳もそれは感じていた。このままでは水着になる事がない山になると。何か逆転の目は無いものか模索し、そしてひとつの可能性を見つけた。

 

「藤原?君はどっちがいい?」

 

「ふえ?私ですか?」

 

 藤原を味方につけるようとしたのだ。ここで藤原が海と答えれば状況はイーブンになる。その後に、今この場にはいない会計を味方につけ、海行きを勝ち取ろうという作戦をとったのだ。

 

(山よ藤原さん!絶対に山って言いなさいよ!ここで海なんて言ったら許さないんだから!)

 

(頼む藤原!海だ!海と言ってくれ!言ってくれたら今度タピオカ奢ってやるから!)

 

 かぐやと京佳は藤原に念を送った。藤原の一言で状況は優勢にも拮抗にもなるからだ。そして藤原は考えたのち、結果を口にした。

 

「う~ん、どっちかっていうと、山ですかね?」

 

「……そうか」

 

(よし、勝った)

 

 かぐやは勝利を確信した。これで状況は3-1だ。仮に会計を味方につけたとしても3-2。どうあっても逆転はできない。もしこれでも尚海に行きたいと言うのは、いくら何でも見苦しい。

 これ以上は勝ち目が無いと悟り、京佳は大人しく引き下がった。

 

「あ、でもでも、山は山でも…」

 

 しかし2人は失念していた。藤原千花という少女は、時に常識外れな事を思いつく事を。

 

「恐山に行きたいですね~」

 

((恐山…))

 

「恐山!?」

 

 恐山(おそれざん)

 比叡山、高野山と並んで日本三大霊場の一つに数えられる山。あの世とこの世との境界線がある山とも呼ばれ、昔から死者の霊が沢山いる場所として有名だ。近年はそういう存在を見たくて行く人もおり、実際に見たと言う人も多く存在する。因みにれっきとした火山である。

 そんな山に藤原は行きたいと言ったのだ。それを聞いた白銀とかぐやは唖然とし、京佳は思わず声を荒げた。

 

「賽の河原に血の池地獄!イタコさんによる死者の霊の口寄せ!もしできるなら誰がいいかな~?織田信長?諸葛亮?アーサー王とかも良いですね~!」

 

 藤原の頭の中では既に恐山での旅行が描かれている。本人は楽しそうだが、傍から見ると少し怖い。そんな楽しそうにしている藤原に京佳が話しかけた。

 

「ふ、藤原?」

 

「なんですかー?京佳さん?」

 

「べ、別に恐山じゃなくてもいいんじゃないか?他にも山は色々あるだろう…?」

 

「えー?いいじゃないですかー?もしかしたら幽霊に会えるかもしれないんですよー?」

 

「幽…!?い、いや、しかしだな…?」

 

(あれ……?)

 

 かぐやは京佳の様子が可笑しい事に気づいた。まるで何かに怯えているようである。

 

「なんですかー?そんな事言っちゃってー?もしかして怖いんですかー?」

 

「…………」

 

「……え?」

 

 藤原が冗談っぽく言うと、京佳はゆっくりと顔を背けて黙り込んだ。こころなしか、少し汗をかいてるようにも見える。

 

「あの、京佳さん?ひょっとして本当に幽霊とかが…」

 

「すまないみんな、たった今用事を思い出したから失礼する」

 

 藤原が真相を確認するべく質問しようとした瞬間、京佳は速足で生徒会室から出て行った。生徒会室に残された3人は唖然としていた。

 

「なんていうか、意外でしたねー…」

 

「だな…てっきり立花には苦手なものなど無いと思っていたのに…」

 

 2人がそう思うのも無理はない。何せ今まで京佳は弱点らしいものを何一つ見せた事がなかったからだ。生徒会室に虫が出た時も丸めた紙で退治したし、天気が悪い日に突然雷が大きな音を立てて光った時も平然としていた。そんな京佳の思わぬ弱点を突然知ったのだ。驚かない方が珍しい。

 

(ふふふ…これは思わぬ収穫がありましたね。何かに使えるかもしれません)

 

 そしてかぐやは京佳の弱みを知りえた事に喜んでいた。

 

 

 

 

 

 

 立花京佳

 

 苦手なもの 幽霊

 

 

 

 

 

 




なるべく週刊投稿目指したい。

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