もしもかぐやに滅茶苦茶強力な恋敵がいたら・・・ 作:ゾキラファス
いやマジ無理。やっぱいくつか絞らないとダメだね。単純に睡眠時間が減るからキツイ。
皆さんもゲームのやりすぎには注意しましょう。
「えええぇぇぇぇ!?会長昨日誕生日だったんですかーーー!?」
「あら?藤原さんは知らなかったんですか?」
「知りませんよ!!今初めて聞きました!!あの、かぐやさん。もしかしてプレゼントとかって…」
「勿論渡しましたよ。会長にはお世話になっていますし。でもおかしいですね…私には誕生日を教えているのに、他の人には教えていないなんて。一体どうしてなんでしょう?私だけに誕生日を教える理由なんて思いつきませんし…」
「ええ!?そ、それってまさか…」
生徒会室に向かう途中、藤原とかぐやはそんな会話をしながら歩いていた。内容は、昨日の白銀の誕生日についてである。傍から見れば友人と世間話をしている様に見えるが、かぐやが普通に世間話を行う訳が無い。
昨日までのかぐやは、いわば健気で優しくするサービス期間。しかし既に白銀の誕生日が過ぎた今、そんなものは存在しない。
生徒会室に到着するまでに、かぐやは藤原に仕込みを行っていた。それは既成事実である。
(会長が私にだけ誕生日を教えている。この話を恋愛脳の藤原さんが聞けば『会長は私にだけ誕生日を祝って欲しかった』と会長に印象を持つことでしょう。そうすれば会長が私に好意を向けているという事実が出来上がる。これなら会長も、自分から私に告白をしてくるでしょうね)
白銀がかぐやの事を好きだという話が既成事実化すれば、藤原を筆頭に周囲が囃し立ててかぐやは待ちに徹する事ができる。つまり、白銀は自分から告白をするという道以外無くなるのだ。
(ふふ、我ながら完璧な作戦ですね。あとは藤原さんが会長にこの話をして、早坂に立花さんを足止めさせておけば万事解決。早かれば、明日にでも会長は私に告白をしてくるでしょうね)
自画自賛するかぐや。そして相変わらず謎の自信がある。
「だから会長って、今朝から様子が変だったんですかね?」
「え?」
「いえですね、会長って今朝から何だか変だったんですよ。あいさつをしても空返事しかしませんし、授業中も何だかぼーっとしてて、お昼休みにはお弁当を半分も残してたんですよ?」
「そうなんですか?」
「はい。明らかに様子が変だったんで話を聞いてみたんですが、『ああ』とか『そうか』くらいしか言わなくて」
(会長の様子が変?何でしょうかそれ)
白銀は基本的に真面目で努力家な生徒だ。その白銀が他人からのあいさつを疎かにしたり、授業中にぼーっとしたり、手弁当を半分も残すなどどう考えても変である。
そしてかぐやは、ある原因を考えた。
(ま、まさか!昨日私がプレゼントしたケーキが傷んでいて、そのせいで会長は体調不良に!?)
かぐやは前日、白銀に誕生部プレゼントと一緒に誕生日ケーキもプレゼントした。そして、もしやそのケーキが原因ではないかと考える。
(で、でも!あのケーキは材料から徹底的に管理しましたし!それに調理手順だって何度も確認をしたからそんな事は…!いや、でももしかしたら!?)
不安になるかぐや。あの誕生日ケーキはかぐやが細心の注意を払って作ったものだが、それでも万が一というものはある。もしもその万が一が原因で白銀が体調不良になっているとすれば、それはもう最悪としか言えない。
「あれって、かぐやさんに祝われて嬉しいからですよね」
「…え?」
しかし、その考えは藤原の言葉で書き消えた。
「だってかぐやさんにだけ誕生日祝われたって、そんなの凄く嬉しい事じゃないですか。私は嬉しいですし。それに会長って、かぐやさんにだけ誕生日教えていたみたいですし。つまり今日会長の様子がおかしいのって、かぐやさんに祝われたのがそれだけ嬉しくて余韻に浸っているってことじゃ…」
藤原はそれ以上言葉を続けなかった。まだ確定では無いし、何となく口にするのが恥ずかしかったからである。そしてそれを聞いたかぐやはというと、
(そういう事なのね!!もう藤原さんたら!極稀にだけど本当に役に立つ事を言うわね!でも、会長ったらそこまで嬉しかったなんて!)
めっちゃ嬉しがっていた。もしかぐやが犬ならしっぽをブンブンと降っているだろう。
(ふふふ!これはもう今日中にでも会長から告白をする可能性すらあるかもしれないわね!それにしても、会長ったらかっこいいだけじゃなくて結構可愛い所あるのね!!)
そして勝ちを確信する。あくまで藤原の証言のみなのだが、かぐやはの中では白銀は昨日の誕生日プレゼントがすっごく嬉しくて堪らないという事になってしまった。
(さて、とりあえず生徒会室に行かないといけませんね。待っていて下さいね会長)
そしてかぐやと藤原の2人は生徒会室に向かって歩くのだった。
「失礼しまーす!」
「失礼します」
「ああ…」
生徒会室の入るかぐやと藤原。そんな2人の目線の先には、白銀が扇子で顔を仰ぎながら空返事をする。
(会長扇子使ってくれてる…!)
自分が送ったプレゼントを、白銀が早速使ってくれているのを確認できたかぐやは喜んだ。
(しかもよく見れば目つきがいつもより鋭い…!これはもう確定ね!)
かぐやは白銀の目つきがいつもより悪いのを見て確信する。つまり、白銀は昨日かぐやが誕生日を祝ったのが嬉しすぎて、興奮のあまりあまり寝る事が出来なかったのだと。今白銀が扇子を使っているのも証拠だろう。
(ふふ、後は藤原さんが会長に扇子の事を聞いてくれれば問題ないわね。恐らく会長は私からの贈り物とは言わずに『知人から貰った』と言葉を濁すでしょう。ですが、それは悪手。先ほど藤原さんに私が入れ知恵をしていますから)
かぐやは白銀から目線を外して窓の外を見る。ここで余計に動けば折角の仕込みが台無しになるかもしれない。よって、あとは藤原まかせにして自分は動かないという選択をした。
(まぁ、こういう時の藤原さんは大体思い通りに動いてくれますから心配は無いでしょう。果報は寝て待てと言いますし、今はゆっくりと待ってましょう)
こうしてかぐやは、藤原に全てを託して待ちに徹する事にした。そして予想通り、藤原の視線は白銀が使っている扇子に向かっている。
「……」
チラチラと何度も白銀を見る藤原。しかもその頬は赤い。
「あの、会長…」
「ああ」
遂に藤原は白銀に声をかけた。
「その扇子は、どうしたんですか?」
「ああ、昨日四宮に貰った」
「!?」
「へ、へー。かぐやさんにですかー…」
だがいきなり出鼻を挫かれた。
(どういう事!?会長なら言葉を濁すと思っていたのに素直に言うなんて!?)
白銀ならば濁すと思っていたが、まさかこうも素直に言うとは思わなかった。
(い、いえ!まだ大丈夫です!藤原さんなら更に突っ込んだ事を聞くはず!その時こそ会長が私に告白をする瞬間となるでしょう!)
だがかぐやは焦らない。ここで焦ってしまえば全てがおじゃんとなってしまう。こういう時こそ、焦ったり余計な事を考えてははダメなのだ。
(あ、会長、扇子で顔仰いでる…)
やっぱりダメかもしれない。
「えーと会長、かぐやさんに、それ貰ったんですよね?」
「ああ」
「それって、誕生日プレゼントですか?」
「ああ」
「え、えーっとですね、その、つまり会長ってかぐやさんにだけ誕生日を教えて、かぐやさんにだけ祝ってもらったって事ですよね?」
「いや、石上と立花からも祝ってもらったぞ」
「な!?」
(はぁ!?)
ここで更に誤算が発生。昨日の白銀の誕生日を祝ったのは、かぐやだけではない事が判明したのだ。
「ちょ、ちょっと待って下さい!え!?あれ!?私だけ!?もしかして私だけ会長の誕生日知らなかったって事ですか!?そして私だけ祝っていないって事ですか!?」
「まぁ、そうなんじゃないか?」
「ごふッ!?」
藤原撃沈。生徒会室の床に手と膝をついて倒れる。
(嘘でしょ!?石上くんと立花さんも祝っていたの!?そんな話聞いてないわよ早坂!?)
かぐやは自分の従者を恨んだ。そんな情報はかぐやの元に来ていないからである。しかし昨日、早坂はかぐやに付きっきりだった。よって、そんな情報を集める暇など無かったので早坂が知らなかったのも仕方が無い。
「うわぁぁぁぁぁぁん!!ごめんなさぁぁぁぁぁい!!!」
藤原は立ち上がると、生徒会室から泣きながら勢いよく飛び出していった。
「か、会長。少しよろしいでしょうか?」
「何だ?」
生徒会室に残されたかぐやは白銀に質問をする事にした。勿論、石上と京佳の事である。
「えーっとですね、昨日石上くんからも、誕生日を祝ってもらったのですか?」
「ああ。祝われた」
「そ、そうだったんですか」
(ほんと余計な事してくれましたね石上くん)
折角昨日は、自分だけが白銀の祝っていたと思っていたのに実は後輩も祝っていたと知ったかぐやは、今この場にいない後輩を恨んだ。そして同時に、ある事に気づいた。
(でも藤原さんから聞いていましたが、本当に今日は様子が変ですね会長。覇気が無いというか何というか)
それは白銀の様子である。今日の白銀は、いつもと明らかに様子が違う。話しかけても返事は一言二言だし、目線も机に向けている。いつもなら相手の顔をしっかりと見て喋るし、このような返事などしない。
(最初はこの私から誕生日を祝われて、その嬉しさのあまり寝不足になっていると思っていましたが、どうも違うようですし、一体なにが?)
「あ、あの。何か藤原先輩が勢いよく走って行ったんですけど、何かありました?」
するとかぐやの後ろから声が聞こえた。かぐやが振り返るとそこには、何故かビクビクして怯えている石上がいた。
「さぁ?何でしょうね?まぁ藤原さんですし、そんな奇行のひとつくらいするんじゃないですか?」
「そ、そっすか」
かぐやが明らかに何か知っていると石上はわかっていたが、ここに来る直前にいきなり寒気を感じたし、藪を突いて八岐大蛇が出てきても困るのでこれ以上突っ込まない事にした。
「あ、会長。昨日僕がプレゼントした万年筆、早速使ってくれているんですね」
「ああ」
石上は生徒会長机の上に置いている万年筆を見て嬉しくなった。
「その万年筆が石上くんからのプレゼントだったんですか?」
「はい。会長には本当にお世話になっているんで。あ、もしかして今会長が使っているその文字が書かれている扇子って、四宮先輩がプレゼントしたんですか?」
「ええ。会長はいつも冬服ですから、こういう時期は暑いと思って」
「あー、成程。流石四宮先輩ですね。よく会長の事を考えていますね」
「いえいえ、そんな。普通ですよ」
(もう石上くんったら!やっぱりあなたは素敵な後輩ね!)
石上の言葉を聞いたかぐやは掌を返した。
「それにしても、会長って扇子が似合いますね」
「そうね。会長はどっちかっていうと和風な人だし」
「それもありますけど、なんか生徒会長度が増した感じがします」
「え?どういう事石上くん?」
「いや、漫画とかに出てくる生徒会長キャラってよく扇子とか持ってるんですよ。しかも文字の書かれた。だからそんな風に思っただけです」
「へぇ、漫画だとそんな感じなのね」
「はい。今の会長なら白ランに眼鏡の服装とかも似合うそうですね」
「そうか」
「…ん?」
ここで石上も白銀の異変に気付いた。そしてかぐやにく軽い手招きをして、2人で一緒に白銀から距離を取る。
「あの、四宮先輩。なんか会長変じゃないですか?」
「やっぱり石上くんもそう思うわよね?あきらかに会長変よね?」
「はい。だって普段ならあんな空返事しないじゃないですか。人と話すときは絶対に相手の顔を見て話しますね」
「そうよね。それにいつもより目つきが鋭いのよ。やっぱり寝不足なのかしら?」
「あ、確かにいつもより目つき鋭いですね。それに頭に小さい寝ぐせもある。これやっぱ寝不足?」
「本当だわ。何時もならあんな寝ぐせ無いのに」
白銀大好きな2人だからこそ気づく白銀の普段と違う所。しかしそれはそれで気になるが、かぐやはもう一つ聞かねばならない事があった。そしてそれを聞くために、再び白銀に近づく。
「そういえば会長。確か立花さんにも誕生日を祝われたと言ってましたがそうなんですか?」
勿論京佳の事だ。先ほど、白銀は京佳からも誕生日を祝われたと言っていた。それを聞いたかぐやは、京佳が一体白銀に何をプレゼントしたのか非常に気になる。だからこそ白銀に聞いてみたのだ。
「……」
「あれ?会長?」
しかし、白銀から返答が無い。それどころか、動きを完全に止めた。
(え?何?一体何?)
(会長本当に今日変だな。マジで何かあったのかな?)
かぐやも石上も白銀の様子に少し戸惑う。10秒か30秒か、動きを止めていた白銀がゆっくりと動き出す。
「…………あーっとだな、立花からは」
「すまない遅れた。ところで藤原が校庭を全力疾走していたんだが、もしかして陸上部にでも入部したのか?」
ここで京佳が生徒会室に入ってきた。
「…!?」
そして白銀は、京佳が入ってきた瞬間思いっきり顔を反らした。
「どうもっす立花先輩。ところで聞きたい事があるんですが」
「ん?何だ石上?」
「いや、立花先輩も昨日会長に誕生日プレゼントとかあげたんですか?」
「ああ。腕時計をプレゼントしたよ」
「あ、会長いつもとなんか違うと思ったら腕時計ですか。確かに左手にしてますね」
石上の言葉を聞いたかぐやが白銀を見てみると、確かに白銀の左手には青いシックなデザインの腕時計がしてある。
(成程、あれが立花さんからのプレゼントですか。でも妙ですね。それなら普通に言える筈なのにどうして会長は言わなかったんでしょう?)
腕時計ならば、別に貰って恥ずかしいプレゼントなどでは無い。デザインだって普通だ。かぐやは、どうして白銀がそのことを中々言わなかったのか疑問に思う。
「そうだ白銀。さっき学園長に会ってこの資料を渡して欲しいと頼まれたんだ。はい」
そんな中、京佳は白銀に近づき手にしている資料を渡そうとする。
「お、お、おう!そうか!そ、そ、そこにおいてくれ!」
しかし白銀はそれを受け取ろうとはせず、顔を反らしたまま机の上に置いてくれと言う。
「どうした白銀?」
そんな白銀を見た京佳は、更に白銀に近づこうとする。
「あーーー!そうだった!俺今日は中等部へ用事があったんだった!悪いが今から行ってくる!!じゃあな!!」
「え!?会長!?」
京佳が近づいてきた瞬間、白銀は椅子から立ち上がり、扇子を閉じて速足で生徒会室から出て行った。
「あの、立花先輩?会長に何かしましたか?」
「いや、覚えがないんだが」
京佳に石上が質問をするが、京佳は身に覚えが内容だ。
(もしかして会長、立花先輩を怒らせるような事でもしたのかな?だから顔を合わせ辛いとか)
石上はそんな事を思い、生徒会室の長椅子に座って会計の作業を始めた。
「あ、あの、立花さん。少しいいですか?」
「どうした四宮?」
「えっとですね、立花さんって会長に腕時計プレゼントしただけですか?ひょっとして他にも何してたりしてます?」
石上が作業を始めている中、かぐやは京佳に質問をする。今の白銀の反応は、京佳に原因があると踏んだからだ。
しかし、そんなかぐやの質問に京佳は―――
「ふふ、秘密だ」
右手の人差し指を口に当て、まるで勝ち誇った様な笑みでそう答えた。
(こ、こ、この女!!一体会長に何をしたっていうの!?というかその顔は何!?)
かぐやは顔にこそ出していないが憤慨した。間違いなく京佳が白銀に何かをしたのはわかったからである。
(ってなんで私がこんなに怒らないといけないのよ!これじゃまるで、私が嫉妬してるみたいじゃない!!)
明らかに嫉妬しているのだが、何時もの様に自分に言い訳をしてそれを否定する。
(いえ、落ち着くのよ私。そもそも会長が私以外の女性を好きになる事なんてありえないもの。立花さんが何をしたのか知らないけど、それは徒労に終わる。焦る必要なんて微塵も無いわ)
石上や京佳に気づかれない様に、何とか自分を落ち着かせるかぐや。しかし落ち着かせ方に問題がある。早坂はいい加減、この主人を1回はひっぱたいてもいいかもしれない。
(全く。こんなに慌てるなんてはしたないわね。余計な心配をする必要なんてないわ。そもそも会長は私にぞっこんなんだから大丈夫よ。そう、何も焦る事も心配する事もないんだから)
でもやっぱり心配なので、近いうち早坂を酷使してでも京佳が何をしたのか突き止めようとかぐやは誓った。
(よかった。白銀に引かれているかもと思ったが、どうやら効果覿面だったみたいだな)
一方で京佳は内心ほっとしていた。もしかしたら、昨日のキスが原因で白銀に嫌われているかも思っていたが、あの様子ではそれは無いと思ったからである。
(これなら、白銀も今後は私を意識してくれるかな?それとも直ぐに何時もみたいになるのかな?)
しかし不安もある。白銀は未だにかぐやの方を向いている。いくら自分が不意にキスをしたとしても、本当に好きな人がいる場合はそれも意味が無いかもしれない。
(でも諦めるか。私だって、好きな人と一緒になりたいんだ)
だが京佳も諦める事など出来ない。彼女とて1人の恋する乙女。好きな人と結ばれたいと思うのは当然だ。
(それに白銀のあの反応。もう可能性がゼロだなんて言わせない)
今日の白銀は、昨日の出来事のせいであきらかに京佳を意識していた。つまりそれは、京佳にも可能性が出来た事を意味している。
(何としてでも、この2学期の間に白銀を振り向かせてみせる。それこそ、手段なんて選ばずに!)
こうして京佳はより決意を固めた。
「会長ぉぉぉぉぉぉ!!これさっきそこのコンビニで買ってきたおにぎりと道端で摘んだお花ですぅぅぅぅぅ!!ってあれ!?会長どこですか!?」
最近、週1投稿は普通にきついってわかった。
偶にはは休んでもいい?