もしもかぐやに滅茶苦茶強力な恋敵がいたら・・・   作:ゾキラファス

58 / 159
 実は会長と京佳さんのR指定のお話とか考えていたりします。まぁ、書くにしてもずっと先の事になると思うけど。需要あるのかな?

 今回はオリキャラが出てくる幕間的なお話です。


立花京佳と親友

 

 

 

 純喫茶 りぼん

 

「はい、オムライスお待たせ」

 

「ありがとうございます、朝子さん」

 

「でも珍しいわね京佳ちゃん。平日の夜に食べに来るなんて」

 

「実は、母が『今日は遅くなるから夕飯いらない』と連絡があって、それなら1人分作るのももったいないから外食ですまそうと思って」

 

「成程。確かに1人分だけってちょっと勿体無いわよね」

 

 この日京佳は、行きつけの喫茶店である純喫茶りぼんに来ていた。その理由は京佳が言ったように、外食である。普段、京佳の母親は仕事が忙しくても夕飯は家で食べる様にしている。彼女曰く『家族でご飯を食べれる事がとても幸せな事だから』らしい。

 しかし今日は仕事が忙しく、帰りもかなり遅くなるかもということで愛娘との夕飯を泣く泣くキャンセル。こうして京佳は、偶にはいいかと思い久しぶりに1人で外食をする事となったのだ。

 

「いただきます」

 

 手を合わせ、運ばれてきたオムライスを食べ始める京佳。

 

「やっぱり、美味しい」

 

「ふふ、ありがとう」

 

 このりぼんのオムライスは絶品であると京佳は太鼓判を押している。因みに、この店の常連が好きな食べ物ランキングは1位がオムライスで2位がカレー。そして3位がホットケーキだ。

 なお眞妃はここのホットケーキがかなりお気に召したようで、京佳にこの店を教えて貰ってから週1で通っている。本人曰く『うちのシェフじゃ再現できないホットケーキだから』らしい。

 

 そうして京佳がオムライスを食べていると、突然目の前が真っ暗になった。

 

「だーれだ」

 

 京佳の頭の後ろからは同年代と思われる女性の声。そして真っ暗になった原因は、恐らく後ろの女性が両手で自分の視界を遮っているからだろうと京佳は当たりを付ける。

 そんな少し昔のトレンディドラマでありそうなイベントを体験した京佳だが、直ぐに声の主が誰なのかを把握し口を開いた。

 

「私の最高の友達」

 

「大正解♪」

 

 京佳の台詞を聞いた声の主は、京佳の目を覆っていた手をどけて、京佳の横のカウンター席に座る。

 

「やぁ、恵美」

 

「やっほー京佳」

 

 京佳の隣に座った声の主は由布恵美(ゆふえみ)。他校に通う京佳の幼馴染で、親友だ。

 

「珍しいな。今日は部活休みなのか?」

 

「そうだよー。だから久しぶりにちょっと寄り道したら偶々京佳がいたってわけ。あ!朝子さん!私にもオムライスひとつお願いします!」

 

「わかったわ。少し待っていてね」

 

 恵美の注文を聞いた店主の朝子は厨房へ向かった。

 

「それで京佳。学校はどう?」

 

「何だその質問は」

 

「いや気になるから。学校で京佳が変な事言われていないか」

 

 まるで思春期の子供へ質問するお父さんの様な事を言う絵美。しかし、彼女は本当に心配なのだ。京佳が眼帯のせいで影口を言われていないか。

 

「前に大丈夫だって言っただろう?入学当初は色々と怖がられていたけど、今は普通にクラスメイトとも喋れるくらいにはなっているって」

 

 「それならいいんだけどさ、やっぱ気になるんだよね。秀知院ってお金持ちの人ばかり通っている学校じゃん?だからさ、普通の家出身の京佳が邪魔者扱いされていないか」

 

 「大丈夫だって。確かに秀知院には家が裕福な子が多いが、全員そうだという訳じゃない。そもそも生徒会長も私と同じ普通の家出身だし」

 

 「そっか。わかった。あ、でももし何か言われたりされたら絶対に相談してね。場合によったらぶっ飛ばしてあげるから」

 

「いや下手したら停学処分になるぞそれ」

 

「友達が困っているのを助けられたら停学なんて安いものだって」

 

「ふふ、そうか。そんな事は起こらないと思うが、ありがとう」

 

 因みに恵美は本気で言っている。彼女は数年前、京佳の左顔を気味悪がり馬鹿にしたクラスメイトを文字通り殴り飛ばしている。もし本当に、京佳が秀知院の生徒に何かされたらガチでカチコミを行い、その生徒をボコボコにするつもりだ。

 

「はい恵美ちゃん、お待たせ」

 

「わー!流石朝子さん!はっやーい!いただきまーす!」

 

 注文を取って僅か数分でオムライスを持ってくる朝子。この速さもこの純喫茶りぼんの特徴だ。一部噂では『実は店長は魔法使いなのでは?』と言われていたりする。そしてオムライスを口に運ぶ絵美。

 

「んー!おいしー!やっぱここのオムライスは絶品だよね!」

 

「そうだな。私もそう思うよ」

 

「ふふふ、ありがとう2人共」

 

 自分の作った料理を褒められて嬉しがらない人などいない。朝子は少し気恥ずかしそうな顔をして、厨房へと戻っていった。

 

「でさ京佳、例の白銀くんには告白したの?」

 

「んぐ!?」

 

 突然恵美にそう言われ、思わずむせる京佳。そして直ぐにコップに入った水を飲み干す。

 

「けほ、いきなり何を言うんだ…」

 

「いや気になるじゃん?親友の恋路がどうなっているか?」

 

 そういう恵美の顔は楽し気である。彼女も花の10代。生徒会の書記程ではないが、恋バナが好きなのだ。

 

「……まだだよ。今告白しても、受けて貰えるって思えなくてね」

 

「それ大丈夫?告するタイミングを失ってそのままズルズルと告白せずに恋が終わったりしない?」

 

「それは、そうかもしれないけど…」

 

 京佳は恵美の質問に素直に答えるが、恵美は少しだけ危機感を覚えた。物事にはタイミングがあるが、もしそのタイミングを見逃してしまったら大変な事になりかねない。京佳の場合、告白を先延ばしにしてしまっているのが現状だ。

 もしもこのまま告白を先伸ばし先延ばしにしてしまえば、あっという間にタイミングを失い、気づけば白銀が別の誰かと恋人になる可能性もある。

 

「やっぱりさ、もうその白銀くんを押し倒しちゃいなよ」

 

「いやいやいや、それは出来ないって」

 

「何でよ?京佳ってかなりやらしい体つきしてんだから、押し倒してその胸を白銀君に揉ませてあげたらさ、白銀君も我慢できずに京佳を襲ってくれると思うよ?そうすれば既成事実って事で恋人になれるだろうし」

 

「親友に体つきがいやらしいなんて言われたく無いんだが」

 

 実際、恵美の言う通り京佳が白銀を押し倒したりすれば、ムッツリな白銀は我慢できない可能性もあるが、ぶっちゃけ何もしない可能性の方が高いかもしれない。モンスター童貞だし。

 

「というかそんなやり方で恋人になりたくはないよ。何か、卑怯だし」

 

「卑怯かな?自分の身体を使っているだけだから卑怯でも何でもないと思うけど」

 

 そう言うと恵美は、再びオムライスを食べる。それに続くような形で、京佳もオムライスを食べ進める。

 

「ま、冗談はこれくらいにして。だったらデートに誘ってみればいいんじゃない?映画とか」

 

 先にオムライスを食べ終わった恵美が、今度は真っ当な提案をする。

 

「まぁそれは考えているが、今は色々と忙しい時期だから無理だ。せめて生徒会が解散して、時間に余裕が出来たらだな」

 

「やっぱり生徒会って忙しいんだ」

 

「まぁね。各部活の予算審査とか学校内の行事の準備とか兎に角仕事が多いんだ。偶に暇な日があるが、それでも全く仕事が無い訳じゃない」

 

 秀知院は生徒の数が膨大である。更に所属している生徒の殆どは名家や役人や富豪の家の者だ。そういった事もあり、秀知院学園生徒会は普通の学校の生徒会とは比較にならない位仕事が多い。最も、稀に暇を見つけて生徒会の皆で遊んだりはするのだが。

 

「ところでさ、京佳が白銀くんを好きになったきっかけって何?」

 

「あれ?言って無かったか?」

 

「無いよ?で、どうなの?」

 

 恵美に言われ、少し考える京佳。そしてオムライスの最後の一口を食べ、話し出す。

 

「簡単に言うと、白銀は私のこの眼帯の下を見ても気持ち悪がらなかったんだ」

 

「成程。そりゃ嬉しいよね」

 

「ああ。本当に嬉しかったよ。大抵の人は、私のこの火傷跡を見たら口に出さなくても顔に出るしな」

 

 京佳が顔の左側にしている眼帯の下には、酷い火傷の跡がある。それを始めて見た人は、殆どが『気持ち悪い』と言う。仮に口にしなくても、顔に思っている事が出るのだ。

 だから、京佳は人前では眼帯を外さない。しかし秀知院に入学し、彼が現れた。

 

(あんな反応をした男子は、初めてだったな…)

 

 京佳はふと思い返す。彼に初めて眼帯の下を見られた日の事を。

 

 ―――

 

『気持ち悪いだろ…私の左顔は…』

 

『いや、どこが気持ち悪いんだ?』

 

 ―――

 

 あの日のことは、今でも鮮明に覚えている。ちょっとしたきっかけで、彼に眼帯の下を見られてしまった京佳。だが、彼は一切気味悪がらなかった。

 

「へぇ~~~」

 

 そんな京佳をにやついた顔で見守る恵美。

 

「な、なんだ恵美?そのにやけ顔は?」

 

「だってさ、今の京佳、すっごい乙女な顔してたんだもん。やっぱ恋すると皆そんな顔するんだね~」

 

「……そんなに乙女な顔してたか?」

 

 そう言われ、思わず自分の顔を触る京佳。触ったところでにやついているかどうかはわからないと思うが。そんな事をしている京佳に恵美が声をかける。

 

「ほんと京佳って、その白銀君の事が好きなんだね」

 

「ああ、好きだよ」

 

 そして京佳は即答した。

 

「白銀のあの優しさが好きだ。誰より努力している所が好きだ。人を下に見ないところが好きだ。友達思いなところが好きだ。家族を大切にしているところが好きだ。困っている人を助けるところが好きだ。偶に子供みたいにはしゃぐところが好きだ。そして何より、私が眼帯をしているのをかっこいいと言ってくれたのが好きだ。あんな事を言われたのは、恵美以外だと初めてだったしね」

 

 完全に惚気である。それを聞いた恵美は、

 

「うっわー…顔あっつー…」

 

 右手をうちわのようにして、顔を扇いでいた。

 

「す、すまない…変な事言って…」

 

「いやいいって。とりあえず京佳がその白銀君の事が好きだと言う事はわかったし」

 

 自分の発言を思い返した京佳は顔を赤くし、コップに入った冷水を一気に飲み干す。

 

「ふふ、そうね。私も思わず懐かしい気持ちになったわ。恋って良いわよね」

 

 何時の間にか2人の前に戻ってきた朝子も昔を懐かしみながらそう言う。

 

「あ、そうそう京佳ちゃん。どうせならその白銀君をここに呼んできなさい?老婆心ながら色々サービスしてあげるから」

 

「あ、ありがとうございます」

 

 こうして京佳は、意図せず学校外に協力者を得る事に成功した。

 

「まぁとりあえず京佳、生徒会が解散して時間に余裕が出来たら絶対に白銀君をデートに誘いなさいよ。もし手伝って欲しい事があったら連絡して。協力するから」

 

「ああ、わかったよ」

 

 恵美の助言を聞き、頷く京佳。

 

「てかさ、やっぱり白銀君押し倒しちゃった方が早くない?」

 

「………………それはあくまで最後の手段にしておくよ」

 

「もしそうなったら自分の部屋で押し倒しなさい?相手も覚悟決まるだろうし。邪魔も入る事無いだろうしね」

 

「さっきからそんな事言っているが、恵美は経験無いよな?」

 

「無いよ?でも助言だけならタダだもん。あ!もし経験したら色々聞かせてね!」

 

「ええー……」

 

 

 

 

 

 おまけ 白銀に告白(偽)をした早坂

 

「試しにさ、私と付き合ってみない?」

 

「ごめん。俺、今気になる子達いるから…」

 

「そう…ですか……ん?気になる子”達”?」

 

「え?……あ!違う違う!気になる子だ!気になる子がいるんだよ!だからハーサカさんとは付き合えない!何で俺今、達なんて言ったんだ?」

 

「えっと、気になる子って言うのは本当に1人だけ?」

 

「ああそうだ!断じて2人の女性を同時に好きになっているなんて無い!……だよな?あれ?」

 

(かぐや様…これ相当にヤバイですよ…)

 

 

 





 オリキャラ

 由布恵美。
 京佳の小学校からの幼馴染で親友。剣道部所属。明るく誰とでも分け隔てなく接する事が出来る少しギャルっぽい薄緑色のセミロングの娘。中学生の時、京佳の火傷跡をバカにし気味悪がった男子を殴った本人。実は京佳と同じで秀知院学園を受験したのだが、落ちてしまった為、別に高校に通っている。
 親友の恋の成就を本気で願っている。その為だったらどんな協力も惜しまない。イメージは艦〇れの鈴〇。

 次回も頑張りたい。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。