もしもかぐやに滅茶苦茶強力な恋敵がいたら・・・   作:ゾキラファス

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 前回、私の表現不足により勘違いをしていまう人が出てしまいました。誠に申し訳ございませんでした。今後は表現不足が無いようにもっと頑張ります。本当にごめんなさい。

 加筆したほうがいいのかな?


立花京佳とラブレター

 

 

 

 いつもの様に起きて、いつもの様に朝食を食べ、いつもの様に着替えて、いつもの様にバス停に向かう京佳。いつもと変わらない朝の光景。しかし今日はいつもとは違った。

 

「あ、あの!どうか受け取ってください!!」

 

「…………え?」

 

何故ならバス停で京佳は、顔を赤くした他校の生徒に手紙を渡されたのだから。

 

 

 

 

 

 

「ラブレターですか!?」

 

 生徒会室に藤原の声が響いた。

 

「ああ、今朝家の近くのバス停で他校の生徒に貰ったんだ」

 

 京佳はそう言うと、鞄から手紙を出した。その手紙にはかわいらしいハートマークのシールが貼られているという、いかにもなラブレターだった。

 

「そ、それで!なんて書かれていたんですか!?」

 

「内容は普通だぞ」

 

 京佳はラブレターの内容を説明する。その内容を要約すると、『一目ぼれです。付き合ってください。今日の夕方18時に〇✕公園で待っています』と言うものだった。

 

(このまま立花さんが手紙の人と付き合ってくれれば色々と楽になるのですが…)

 

 京佳が誰かと恋仲になるというのは、かぐやにとって最大の障害が無くなる事を意味する。そうなればかぐやは、何の憂いもなく白銀を告白させる事に専念できる。

 

「それで京佳さん!どうするんですか!?」

 

「私は断るつもりだが」

 

「ええ!?断っちゃうんですか!?」

 

「当然だろう。今朝初めて出会ったばかりの人と付き合う事なんて普通しないぞ」

 

(くっ!やはりそう簡単にはいきませんか!)

 

 当然の事だが、京佳はこのラブレターを書いた人物の思いを受け止めるつもりは無い。京佳が好きな人物は白銀なのだ。この気持ちがある限りは、他の誰かと付き合う事など決してありえない。

 

「という訳で白銀、この後私はこの手紙の主の告白を断ってくるから今日は失礼する」

 

「お、おう…なんだ…気をつけてな?」

 

「ああ」

 

 京佳は白銀にそう言うと、生徒会室から出て、待ち合わせ場所の公園に向かった。白銀も、こんな時どういう事を言えばいいのかわからず、とりあえず注意喚起を口にした。何に対しては知らないが。

 

「会長、私もたった今用事を思い出したので失礼します」

 

 突然、藤原が帰り支度を始めながらそう言った。

 

「いや藤原書記、お前それ絶対に立花の後をつけるつもりだろ」

 

「いいじゃないですか!!だって京佳さんの告白シーンですよ!?超見てみたいじゃないですか!!」

 

「藤原さん、その言い方だと立花さんが告白するように聞こえますよ?」

 

 藤原千花は他人が恋バナをしていれば、雨が降ろうが、槍が降ろうが混ざろうとするほどの恋バナ大好き女子である。そんな彼女が、生徒会メンバーであり友人でもある京佳の告白現場を見に行かないという選択をするなどありえない。何があろうと、どんな手段をとってでも見に行くつもりだった。

 

「兎に角、ラブ探偵としての血が騒ぐんです!!では行ってきます!」

 

 藤原は白銀とかぐやにそう言い残し、生徒会室から勢いよく走り去っていった。

 

「困ったやつだな…藤原書記は…」

 

「ええ、本当に…藤原さんったら困ったものです…」

 

 残った2人はそんな藤原に頭を抱えた。

 

 

 

 

 

 

「いたわ、あそこの自販機の隣にある外灯の下」

 

「何で私まで…」

 

 

 夕方、かぐやは従者の早坂と共に公園に来ていた。2人のおよそ30メートル先には公園に設置された自販機の隣にある外灯の下に立っている京佳がいる。結局、かぐやは藤原と同じように京佳の後をつけてきたのだ。因みに白銀はバイトがあるためこの場にはいない。

 

「1人より2人と言うじゃない?それにね早坂、これは予習よ」

 

「はい?」

 

 そして面倒くさそうにしている早坂に対して、かぐやは説明を始めた。

 

「よくよく考えてみたらね、私は告白現場というものをこの目で見た事が無かったのよ」

 

「まぁ、そう見るものではありませんからね」

 

「それでね?今後会長が私に告白してくるじゃない?」

 

「なんで既に白銀会長からって決定済みなんですか?」

 

「その時にあらかじめ告白の現場を見て予習をしていれば、凡その流れがわかって私の時も円滑に事が進むのよ」

 

「……だから予習ですか」

 

「そうなの!断じて藤原さんみたいに好奇心で見に来ている訳じゃないの!」

 

 あくまでも藤原とは違うと説明をするかぐや。しかし早坂からしてみればどっちも同じである。

 因みに現在、かぐやと早坂の2人は万が一京佳にバレない様に軽い変装をしている。かぐやは髪の毛を頭の上で1つに纏めたお団子ヘアに髪型を変え、伊達メガネをかけている。早坂はミドルのツインテールに髪型を変えており、カラコンを装備している。人というものは髪型を大きく変えるだけで印象が随分と変わるものである。これならば近づかない限りバレる事は無いと2人は確信していた。

 

「かぐや様、あの人じゃないですか?」

 

 そんな変装した2人が物陰で忍んでいると、京佳に近づくブレザーを着た男子生徒が見えた。2人の目線の先に映ったのは、いかにもな爽やか系のイケメンだった。髪は茶髪で少しワックスをかけている様に見え、顔立ちは結構整っている。身長も白銀より少し高く、全体的に細身な体格だ。並の女子なら少し言い寄られただけでコロっと落ちてしまうだろう。そんな男子生徒が京佳に近づいて行った。

 しかし京佳に話けかける事もなく、そのまま通り過ぎて行った。

 

「…違ったようですね」

 

「…そのようね」

 

 少し残念そうにするかぐや。先ほど自分で『あくまでもこれは予習』と言っていたが、やはりかぐやとて年ごろの乙女。はしたない事と思いつつも、早く生で告白現場を見てみたいという好奇心があるのも事実だった。

 

「もしかして、あの人でしょうか?立花さんに話しかけようとしてますよ?」

 

 再び京佳に近づく男子生徒が歩いてきた。今度は黒い短髪でかなり身長が高く、そして筋肉質な体つきをした学ラン姿の男子生徒がいた。しかもその男子生徒は京佳に話しかけてきたのだ。

 ようやくその瞬間がきたのかと思い、拳を握るかぐや。しかしその男子生徒は京佳といくつか言葉を交わしたと思ったら、直ぐに京佳の元を離れていった。よく見ればその手には地図が握られており、京佳に対して何度も頭を下げている。

 

「…どうやら道を聞いただけみたいね」

 

 今度もラブレターの送り主では無いと知り、少し落胆するかぐや。

 

(しかし女性を待たせるなんて。普通こういうのは男性が先に待っているものじゃないのかしら?)

 

 かぐやがラブレターを送ってきた人物に対して少し憤りを感じていたその時、

 

「あ、あの!!」

 

 京佳に話しかける人物が現れた。

 

「て、手紙!読んでくれましたか!?」

 

「ああ、読んだよ」

 

 京佳はその人物に返事をした。どうやら今度こそラブレターの主のようだ。

 

「「え?」」

 

 しかしそれを見ていたかぐやと早坂は思わず同じ言葉を口にした。

 

 何故なら京佳に話けているのは、セーラー服を着た女生徒なのだから。

 

「早坂、何あれ?どう見ても女の子なんだけど?あれ一体どういう事?私の目が可笑しいの?もしかしてあれが女装男子って人?」

 

「落ち着いてくださいかぐや様。私から見ても彼女はどう見ても女性です。あとどこでそんな言葉知ったんですか?」

 

 かぐやの中では、ラブレターというものは異性が異性に送るものだと認識されている。男性が女性へ。女性が男性へという様に。しかし今京佳に話しかけている人物は明らかに女性だ。自分の中に存在しない光景にかぐやは少し混乱した。そしてそんなかぐやを早坂は落ち着かせようとした。

 

「それで、あの、返事を、聞かせて貰っても、いいですか…?」

 

 一方京佳に話しかけてきたセーラー服の女生徒は、所々言葉を詰まらせながら京佳に話しかけていた。恐らく彼女は、勇気をふり絞ってラブレターを書き、そして京佳へと渡したのだろう。そして今、その思いが通じたのかどうかを聞こうとしている。

 その姿はまさに恋する乙女。映画や小説ならば、彼女の恋はこの瞬間実る事だろう。

 しかし、現実は創作物のように簡単にはいかない。

 

「…すまない。私は君と付き合うことはできない」

 

 セーラー服の女生徒に対して、京佳は頭を下げてはっきりと断った。相手を傷つけない告白の断り方など京佳は知らない。故に、単刀直入に告白を断る事にした。

 

「あっ…」

 

 そして京佳に断られたセーラー服の女生徒は、言葉を漏らし、俯いた。

 

「そう…ですか…」

 

 セーラー服の女生徒は俯きながら声を震わせた。いや、声だけではなく、肩も震えている。

 

「……すまない」

 

「あ、頭を上げてください…!もう大丈夫ですから!」

 

 京佳は更に頭を下げて謝った。そんな京佳にセーラー服の女生徒は慌てて頭を上げてもらうように言った。そう言われた京佳はゆっくりと頭を上げ、目の前にいる女生徒に目線を合わせた。

 

「それじゃ…私はこれで…あ、あの…ちゃんと返事をしてくれて、ありがとうございます…!」

 

 セーラー服の女生徒は一度頭を下げて、目に涙を浮かべながらそのまま走り去って行った。

 

(やはり単刀直入に断るのはダメだっただろうか…?)

 

 京佳は女生徒の背中が見えなくなるまでずっと見つめていた。心の中で少し後悔をしながら。そして女生徒が完全に見えなくなった時、振り向いて口を開いた。

 

「…そろそろ出てきたらどうだ?藤原?」

 

「あ、あははは…気づいてましたかー?」

 

「さっきの子が私に話しかけてきた時に『え?』と聞こえたからな」

 

「あちゃー…」

 

 京佳が振り向き、後ろにあった自販機に声をかけると、自販機の後ろから藤原が申し訳なさそうな顔をして出て来た。

 

「言っておくが、別に怒ってはいないぞ?」

 

「え?そうなんですか?」

 

「告白の現場を見てみたいなんて誰もが思う事だろう?」

 

 てっきり隠れて告白現場を見ていた事を怒られると思っていた藤原。しかし京佳は怒ってなどいないと言った。そもそもここは多くの人が往来する公園だ。その時点で誰にも告白現場を見られないというのは無理がある。そして何より京佳自身、友人の告白現場を見てみたという気持ちがわかるからだ。京佳も立場が逆なら、藤原のように隠れて見ることをするだろうと思っていた。

 

「でも、びっくりしました。まさか女の子からだったなんて…」

 

「まぁ、普通は驚くよな。私も今朝あの子からラブレターを受け取った時は思わず面食らったよ…」

 

 自称ラブ探偵の藤原も今回の事は驚いていた。彼女は異性間の恋バナや告白現場などは色々と見てきたが、同性間の告白現場というものは初めて見たのだ。決して同性の恋愛を否定している訳ではなく、ただ耐性と知識が無いだけである。そして京佳自身も、こういう経験は初めてだったため、驚いた事を明かした。

 その後、京佳と藤原は2人で並んで公園から出て行った。どういう断り方をすればよかったか話し合いながら。

 

 

 

 

 

 

「これはちょっと、予習にはなりませんでしたね…」

 

「女同士…女同士…」

 

「かぐや様、戻ってきて下さい」

 

 

 一方かぐやはまだ混乱していた。

 

 

 

 




担当編集が欲しい。
次回は未定。後段作戦クリアしないといけないので。

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