もしもかぐやに滅茶苦茶強力な恋敵がいたら・・・   作:ゾキラファス

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 朝日が昇るまでは日曜日。てかもう8月だよ。時間が経つのは早いですねぇ。ところで最近よく頭痛がするんだけどどうにかならんかねこれ。多分目の使い過ぎとは思うんだけど。


早坂愛と相談

 

 生徒会が解散し、生徒会選挙期間へと突入。生徒会という接点が無くなった白銀とかぐやは一言も喋る事など無く、

 

 3日が経過した。

 

 そしてその間、特に何も無かった。すれ違ってあいさつする事も、一緒にお昼を食べる事も、何一つ無かった。そんな現状を振り返ってみたかぐやは、1人教室で落ち込んでいた。

 

「そんなに会いたかったら自分から会いに行くなり喋りかけるなりすればいいじゃないですか」

 

 従者である早坂がそう促す。学校ではクラスメイトという事にしている為、普段ならこんな事は言わない。しかし、今は偶々周りに人がいない。故にいつもの様にかぐやの尻を叩く。

 

「馬鹿言わないで頂戴。そんな事できる訳ないでしょ」

 

「何度も言いますけど一応聞きますよ?何でですか?」

 

「だって私はついこの間、あんな告白まがいな事を口にしたのよ?もしここで私から会長に会いに行ったら、まるで私が会長に会えずに寂しいみたいじゃない!!」

 

「もう好きに生きたらいいんじゃないですか?」

 

 早坂はそろそろ匙を投げたい気分だった。何時になっても素直にならず、意地を張り続けるかぐやを見れば誰だってそう思うだろうが。

 

「そうよ。むしろ会長の方が私に会えずに寂しがっているかも。今日の放課後辺りに告白してくる可能性だって…」

 

「本当に何時までそんな事言っているんですか?そんな事だと本当に白銀元会長を取られますよ?」

 

「早坂、取り消しなさい。元じゃないわ。直ぐにまた会長になるもの」

 

「そこですか」

 

 早朝の誰もいない教室で会話を続ける2人。そんな時だった。

 

「あ」

 

「どうしたの早坂?」

 

「あれ見てください」

 

「あれ?」

 

 かぐやは視線を窓の外に移す。するとそこには、

 

「今日は早いな白銀」

 

「ああ、日直だしな。そういう立花こそ早いじゃないか」

 

「実は目覚ましの時間設定を間違えてな。いつもより早く起きてしまったんだ。そのままぐーたらするのも勿体なかったから、いつもより少し早いバスに乗ってきたんだよ」

 

「成程。しかし早起きは3文の得とも言うし、何か良い事があるかもしれんぞ?」

 

「ふふ、そうだな。でも良い事ならもうあったよ」

 

「そうなのか。それは良かったな」

 

「ああ。本当にね」

 

 楽しそうに会話しながら登校している白銀と京佳がいた。心なしか、距離が近い様に見える。

 

「こうして見ると本当に仲が良いですよねあの2人。何も知らずに見たら恋人って思うかもしれません」

 

「……」

 

「かぐや様?」

 

 早坂が少し煽る様に窓の外に顔を向けているかぐやに話しかける。しかしかぐやは何も言わない。気になった早坂がかぐやの顔を横からのぞき込んでみると、

 

「……」

 

「うっわ。怖い目」

 

 そこには視線だけで人を殺せそうなかぐやがいた。

 

「早坂、確か家にはクロスボウがあったわよね?あれであの女を始末してきて頂戴」

 

「出来る訳無いでしょ。私はゴ〇ゴじゃないんですよ。ていうか普通に犯罪ですし」

 

「ゴ、何?」

 

「あー、知らないんだったらいいです。聞き流してください」

 

「そう。なら今すぐあの女を」

 

「だからしませんって」

 

 最近の早坂の悩みは、主人が過激な思考をするようになった事である。このままでは本当に人を1人どうにかしてしまうかもしれない。

 

(今度高橋さんに相談しよ)

 

 とりあえず別邸にいる年長者執事に相談する事にした。

 

 

 

 放課後

 

(ん?)

 

 トイレに行っていた早坂が教室に戻ると、白銀がA組の中をチアチラと伺っている。正直、怪しい。

 

(多分かぐや様に用事があるって所ですかね。告白は先ず無いでしょうけど)

 

 早坂は白銀がかぐやに用事があると考え、とりあえず声をかける事にした。

 

「会長さんじゃーん!どしたし~?ウチのクラスに何か用~?」

 

「え?」

 

 突然話しかけられた白銀は固まる。目に前の女生徒に見覚えがあったからだ。

 

「えっと…確か早坂さんだっけ?」

 

「そうだよ~。夏休み以来だね~。お久~」

 

 白銀は夏休みに遊園地に行った時に早坂に会っている。しかしそれ以来は話したことも無い為、名前が出るのが少し遅れた。

 

「それより、ウチのクラスに何か用事?」

 

「あ、ああ。四宮を呼んできて欲しいんだ」

 

「おっけー」

 

 白銀の頼みを聞き、早坂は教室に入りかぐやを呼ぼうとする。

 

「四宮さーーん!会長が大事な話があるってーー!!」

 

「!?」

 

 だが、まさか大声で呼ぶとは思わず、白銀は固まる。

 

「会長がウチのクラスに来るの初めてじゃない?」

 

「生徒会の話じゃないの?」

 

「いや、生徒会ってこの前解散してるし」

 

 初めて白銀がA組にやってきた事に少し動揺するA組の生徒達。

 

「えっと、会長。大事な話とは?」

 

「ああ、俺たちのこれから(の生徒会選挙の方針)について話がしたいんだ」

 

『!?』

 

 そして白銀が少し説明を省いてしまった台詞を聞いたA組の生徒たちがざわつく。

 

「ここじゃ話せないから、この後校舎裏に来てくれ」

 

 そう言うと白銀は立ち去って行った。

 

「ねぇ!これって!」

 

「そうよね!そういうやつよね!?」

 

「そういえば私、2人が相合傘して帰ってるの見た事ある!」

 

「私も!」

 

 白銀が去ったA組内では様々な声が上がる。元々『付き合っているのでは?』という噂があった2人だ。実際、お似合いであるという声も多数ある。そしてつい先程の白銀のあの台詞。これはもう、噂が現実になるのではないかという考えになるのも仕方が無い。

 

(会長から、会長から呼び出し…)

 

 そんな周りの声など今のかぐやは聞こえていない。無理もない。今朝、自分で言った事が現実になるかもしれないのだ。

 

(多分違うと思うんですけどね…)

 

 しかし早坂だけは違う考えをしている。あの白銀がこんな大勢のいる場で告白をするため呼び出しをするとは思えない。恐らく別の用事で呼び出しているだろうと考えている。

 

(まぁほっときましょ。少しは2人の中が進展するかもしれませんし)

 

 だが早坂は、それを指摘するのをやめた。その方が白銀とかぐやにプラスに働くと思ったからだ。

 

「あれ?」

 

「どうしたし?」

 

 周りが白銀がかぐやの事で盛り上がっている中、早坂の隣にいた女生徒が首をかしげる。

 

「いやね、私夏休み中に別の学校の友達と一緒に都内のプール施設に遊びに行ったんだけどさ、その時に白銀会長を見たの」

 

「へぇ。会長ってプールとか行くんだ。でもそれがどうしたの?」

 

「その時さ、白銀会長と一緒にC組の立花さんも一緒にいたのよ」

 

「え?」

 

 そしてかぐやや早坂にとって聞き捨てならない事を言う。なおかぐやの耳にこの話は聞こえていない。

 

「それマジ?見間違いとかじゃなくて?」

 

「うん。だって眼帯してる背があんなに高い子って他にいないし。ていうかさ、これってもしかして2股?それとも三角関係?」

 

 これはまずい。

 何がまずいと言うと、かぐやは夏休み中に生徒会の皆で遊んでいるが、京佳は白銀と2人っきりでデートをしている。つまり白銀との関係を進めているのだ。

 おまけに先日、早坂が白銀に偽告白をした際に、白銀は『気になる子達』と言った。これが『気になる子』だったら特に問題は無いが、『達』なら問題だ。つまり白銀は、京佳を意識し始めているのではないかと早坂は思う。

 

「んー?たままた一緒に遊んでたってだけじゃない?別にそれだけで2股とか三角関係とかはないっしょ」

 

「そ、そうだよね。ちょっと考えすぎだよね」

 

 とりあえず早坂は今の話を自分以外に聞かれるのはまずいと判断し、その光景を見たクラスメイトに釘を刺した。

 

(本当にまずいかもしれません)

 

 早坂は危機感を持つ。このままでは、本当に白銀が京佳とくっつく可能性がある。かぐやの従者としてそれは阻止したい。

 

(それにもしこの状況を立花さんが知ったら、何か行動を起こすかもしれませんね)

 

 今やクラス内は白銀がかぐやに告白をするという話題で持ち切りだ。何人かはスマホを使って別のクラスの友達に連絡しているのもいる。

 

(仕方ありません)

 

 早坂はとりあえず、この状況を京佳に知られない様に、また白銀が何をするかは知らないが放課後の事を京佳に邪魔されないように行動するのだった。

 

「四宮さん!遂に来たね!」

 

「頑張ってね!かぐやさん!」

 

「何を頑張ると…」

 

 そんな中クラスメイト達はかぐやを応援する。かぐやもまんざらでは無いようだ。

 

 

 

 

 

 図書室

 

「急にごめんねー京佳」

 

「別にいいよ。それでどうしたんだ?」

 

 現在早坂と京佳は図書室にいた。かぐやが校舎裏に行く前、早坂は京佳のいるC組に行き京佳に『相談がある』と言い、教室から連れ出した。この時、京佳がまだ白銀の件を知らなかったのは幸運だろう。

 殆どの2年生が白銀の告白を見る為校舎裏に向かっているので、今図書室には2人しかいない。そして図書室は校舎裏からはかなり離れている。ここなら、白銀とかぐやの邪魔をされる事もないだろう。

 

「実ははね、ちょっと相談があって」

 

「相談?」

 

「うん。最初は私が友達から受けた相談なんだけどさ、私1人じゃ手に余るって感じでね。それでちょっと協力してほしいなーって」

 

「構わないが、私が聞いてもいいのか?」

 

「大丈夫。名前とかは言わないし」

 

 早坂の作戦。それは時間が掛かる相談を受けさせるというものだった。相談というのは、基本的に時間が掛かる。そしてここは校舎裏から離れている図書室。ついでにいえば周りに人はいない。これなら、何かの拍子で白銀の件を聞いた京佳が校舎裏に行くという事態は避けられる。

 

「で、その相談というのは?」

 

「うん。相談の内容はねー」

 

 早坂は京佳に相談をする。内容としては『気になる人が出来た。そして多分自分はその人と両想いだと思う。でも告白するのは恥ずかしくて出来ない。一体どうすればいいのか?』という内容だ。

 因みにこの悩み、モデルがある。かぐやだ。早坂はさっさとかぐやに告白をしてもらって、あのよくわからない恋愛頭脳戦とかいう茶番をやめさせたいのだ。毎回毎回自分が巻き込まれるのも面倒だから。

 

「って感じなんだけどさ、どう思う?」

 

 相談内容を説明し終えた早坂。そして話を聞いた京佳は考えて、

 

「両想いだったら普通に告白をすればいいんじゃないのか?」

 

 普通にそう答えた。

 

(ですよねー…私も本当にそう思っているんですよ…)

 

 京佳の答えに同意する早坂。自分の主人があんな面倒くさい性格をしていなければこんな相談などしない。というか、もしかぐやが京佳くらい素直だったら白銀とかぐやはとっくに付き合っているだろう。

 

「なんていうかさ、恥ずかしいんだって。直接告白するのが」

 

「成程。だったらメールや電話で告白とかはどうだ?それなら相手の顔を見る事も無いだろう?」

 

「私もそれ言ってみたんだけどさ、それでも恥ずかしいんだって」

 

「えぇ…だったらどうしろって言うんだ?」

 

「ほんとだよねー」

 

 流石の京佳もお手上げだ。というより、誰だってお手上げになるだろう。その後もいくつか案を出してはみたが、どれも納得のいく答えとは思えなかった。

 

「ま、しょーがない。最悪私が『さっさと告白しろ』って背中蹴り飛ばしてあげるよ。そうすれば流石に告白するだろうし」

 

「……比喩だよな?」

 

「そりゃ勿論」

 

 結構な時間を使って京佳と話す早坂。今頃校舎裏では白銀が何かをしているだろう。もし今すぐ向かっても、間に合う事は無いと早坂は思う。そう思っていると、今度は京佳が話し出す。

 

「ところで、私からもいいかな早坂」

 

「ん?どしたの?」

 

「実は私も少し相談があるんだ」

 

「相談?何々?」

 

 どうやら京佳から本当の相談があるようだ。早坂もこれでまた時間を延ばせると思い、相談を受ける事にする。

 

「その、だな。白銀の事なんだが」

 

「白銀会長がどうかしたの?」

 

「ああ。今生徒会選挙期間で色々忙しいだろ?だから生徒会選挙が終わったら白銀をデートに誘おうと思っているんだ。それで行先なんだが、映画館ってどう思う?ありきたりかな?」

 

「え?」

 

 まさかの相談である。京佳は白銀をデートに誘いたいと言うのだ。そしてそのデートでの行先を早坂に相談してきた。

 

(これは、どうしましょう)

 

 早坂は悩む。ここでこの相談を真剣に考える事は簡単だ。しかしそれでは、また京佳が白銀に近づいてしまう。そして下手をすれば、白銀と京佳が恋人になるかもしれない。

 

(この相談に乗るのは簡単。ですが…)

 

 元々早坂は、主人であるかぐやの命令で京佳に近づいた。最近では普通に友達として接している部分もあるが、早坂にとって京佳は未だスパイ対象のままである。

 

「早坂?」

 

 何も言わない早坂を不信に思い、話しかける京佳。これ以上無言なのはまずいと思った早坂は、結果を口にする。

 

「映画館かー。まぁオーソドックスではあるけどさ、相手の趣味に合わせる必要があるからやめた方がいいかもだよ?」

 

「相手の趣味?」

 

「そ。もし京佳がとある映画を選らんでそれを見ようとしても、白銀会長がその映画が好きじゃないとか趣味合わないとかだったらさ、映画終わった後に微妙な空気になるんじゃないかなーって」

 

「それは、そうかもしれないな」

 

「それにさ、生徒会選挙が終わったら直ぐに体育祭じゃん?そんな暇無いと思うけどなー」

 

「む。確かに…」

 

「体育祭ってかなり忙しいしさ、生徒会長に再選したら本当に遊ぶ暇無いんじゃない?その辺の事は京佳の方が詳しいでしょ?」

 

「まぁな。一応生徒会主務だったし」

 

「それに女子から男子をデートに誘うと尻軽って思われるって聞いた事あるよ。そういう訳だからさ、誘うのはやめた方がいいんじゃないかな?」

 

「え?そうなのか?そんなの初めて聞いたぞ」

 

 このまま京佳と白銀をデートに行かせる訳にはいかない。結果として早坂は、否定的な答えを口にし、京佳のデート計画を考え直させる。

 

「そうだな。わかった。もし誘うにしてももう少し考えてからにするよ。ありがとう早坂」

 

「どうしたしましてー。んじゃそろそろいこっか」

 

「ああ」

 

 これだけ時間を稼げたのだから、もう全て事は終わっているだろうと判断をして、早坂は京佳を伴い図書室の扉へと向かう。

 

 

 

(ほんと、私って最低ですね)

 

 早坂は心の中で自己嫌悪に陥りそうになっていた。

 

(もし本当に友達と思っているのであれば、あの相談にちゃんと乗るべきだというのに)

 

 先程の京佳の相談。もし本当に友達と思っているならしっかりと背中を押すべきである。しかし早坂は京佳にデートをやめた方がいいと言った。

 

(ごめんさい立花さん。でも、私はかぐや様にこそ幸せになってほしんです…)

 

 全てはかぐやを思っての行動。かぐやは幼い頃より色々と複雑な家庭で育った。そしてこのままいけば、普通の幸せすら掴めずに一生を終えるかもしれない。

 

(あなたは何のしがらみの無い普通の家庭出身です。もしも白銀会長に振られてもまた次があります。でも、かぐや様にはそんなもの無いんです)

 

 もしかぐやが白銀と一緒になれなかったら、四宮本家により勝手に結婚相手を決められてしまうだろう。その結婚は間違いなく政略結婚だ。そんなもの、決して幸せとは言えない。

 

(はぁ。私の事がバレたら、私は立花さんに殴られるでしょうね。まぁその時は気が済むまで殴られるつもりですが)

 

 自分の事を友達と思っている京佳に対する裏切る行為。もし京佳による報いを受ける日があれば、早坂はそれを抵抗せず受け入れるつもりだ。

 

(ああ、ほんと、自分が嫌になる…)

 

「どうかしたか早坂?」

 

「んー?何でもないよー?」

 

「そうか。ところでなんか人気が無いがどうしたんだろうな?」

 

「さぁ?校庭に熊でも出たんじゃない?」

 

 そんな会話をしながら2人は歩いていく。

 

 

 

 

 




 実は作者、単行本を全巻揃えていません。なので早坂や四宮家関係の話はちゃんと把握していません。(本誌で読んだけど記憶がイマイチ曖昧)もし原作と全然違うと思ったらこの作品のみのオリジナルと言う事でどうかお許しを。

 でも矛盾があったらあとで修正すると思います。あと今度ちゃんと全巻揃えます。

 次回は選択授業の予定。そしてそろそろ伊井野登場。

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