もしもかぐやに滅茶苦茶強力な恋敵がいたら・・・   作:ゾキラファス

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 空から大金とか落ちてこなかなー。そんなくだらない事を思いながら生きてる。


立花京佳と美術

 

 

 

「皆さん、おはようございます」

 

『おはようございます』

 

「今日から選択授業の美術を始めていきますね。どうぞよろしくお願いします」

 

 生徒会が解散して数日後、遂に選択授業が始まった。今美術室内にいるのは、選択授業で美術を選んだ生徒たち。そしてその中には、白銀、かぐや、藤原、京佳もいる。

 かぐやと京佳は白銀とクラスが違うため、一緒に授業を受ける事が出来ない。故にこの選択授業は、かぐやと京佳にとっては砂漠に現れたオアシスともいえる。

 

「何だか変な感じですね。私達4人がこうして授業を一緒に受けるのは」

 

「そうだな。何か新鮮だよ」

 

「えへへ~。皆一緒で嬉しいです~」

 

「ほんと楽しそうだな藤原」

 

「はい!すっごく楽しみでしたし!」

 

 元生徒会メンバーがこうして集まり授業を受ける機会などそうそう無い。妙な感じがするのも納得だ。

 

「今日は初めての授業ですので、遊び感覚で美術に親しんで貰おうと思います。では、出席番号が近い順でペアを組んで似顔絵を描いて貰おうかな」

 

 初日の今日は、ペアで似顔絵を描く事になった。そして美術教師が出席簿片手に名前を呼び、ペアが決まっていく。

 

「あ!かぐやさんは御行くんとペアですか!?」

 

「ええ。そうみたいですね」

 

 かぐやと白銀は同じ『し』から始まる名字なため、必然的にペアとなった。

 

「私は早坂さんとペアです!」

 

「ははは、嫌な予感しかしなーい」

 

 藤原は早坂とペアになった。しかし、早坂は少し不安そうである。なんせ藤原だ。音楽こそ天才的なところはあるが美術はわからない。もしかするとSAN値が減る似顔絵を描くかもしれない。

 

(せめて普通くらいの絵を描いてほしいですね)

 

 早坂は心の中で祈った。そして京佳のペアはというと、

 

「今日はよろしくね~立花さん」

 

「ああ、よろしく」

 

 柏木渚の彼氏である田沼翼とペアになっていた。新鮮な組み合わせである。そしてペアが決まったところで、それぞれ似顔絵を描く事になった。

 

 

 

「それにしても、こうして喋るのは初めてかな?」

 

「そうだな。一応夏休みに会ってはいるけど、あれは主に白銀と喋っていたし」

 

 会話をしながらお互いの似顔絵を描く2人。確かに2人の言う通り、こうして会話をする事は初めてだ。そもそも夏休みに会うまで京佳は翼の顔すら知らなかった。

 翼の方は、京佳が色々と噂されていたり生徒会役員と言う事もあり顔くらいは知っていたが、面と向かって喋ったのはこれが初めてである。

 

(そういえば、田沼は恋人がいるんだったな)

 

 京佳はプールでの出来事を思い出す。あの時翼は、恋人である渚と一緒に遊びに来ていた。

 

(もしかしたら、何か有益な話を聞けるかもしれない)

 

 自分よりずっと先のステージにいる翼。異性ではあるが、何か自分に役立つ話が聞けるかもしれない。京佳は何とか会話の糸口を見つけようとしていた。

 

「そういえばさ、前に白銀会長とデートしてたけど、もしかして2人って付き合ってるの?」

 

「ん”」

 

 しかし翼の突然の質問に、思わず吹き出しそうになる。1度呼吸を整えて、京佳は翼に質問をした。

 

「……そう見えたか?」

 

「うん。俺にはそう見えたよ?」

 

「そうか…ふふ、そうなのか」

 

 京佳は思わず顔がほころびそうになる。これはつまり、あの時の自分と白銀は、第三者からは恋人に見えたと言う事だ。勿論、全員がそうではないだろうが同学年の子にそう言われるのは嬉しい。

 

「それで、実際はどうなの?」

 

「いや、付き合ってはいないよ。そもそもあれは、クイズ大会優勝という同じ目的で一緒に参加したしね。白銀の方はデートとすら思っていないかもしれないし」

 

 実際、京佳は白銀を誘う際デートという事にしていたが、白銀はクイズ大会という認識が強くデートという認識が薄い。

 

「そうかなー?俺はそうは思わないよ?」

 

「え?どういう事だ?」

 

「だってさ、女の子と2人きりで遊びに行く事って完全にデートじゃん?いくらクイズ大会に参加したって言ってもそこは変わらない訳だし?多分会長も普通にデートをしたって思っていると思うよ?」

 

 デートとはそもそも、男女が日時を決めて会う事を言う。確かに白銀はデートという認識は薄い。しかし薄いだけで、認識自体はしているのだ。それにあの時、プールで翼から質問された際に否定もしていない。それ故翼は、白銀もデートをしているという認識はあったと思ったのだ。

 

「そうだろうか?」

 

「そうそう。少なくとも俺なら、例えクイズ大会って共通の目的があったとしても『この子とデートをしている』っていう認識はするよ?会長も多分同じだって」

 

「ふふ、そうか。ありがとう」

 

「いやいや」

 

 初めて話すが、会話が弾む2人。因みにその間、お互いしっかりと筆は動かしているので似顔絵はきちんと完成に向かっている。

 

「立花さん、俺の似顔絵の進捗どう?」

 

「ああ。もう少しと言ったところかな?そういう田沼はどうだ?」

 

「もう少しかなーって。ほら、立花さんって綺麗だからつい熱が入っちゃってさ。俺あんまり絵とか描かないのに思わず筆が乗っちゃったよ」

 

「もしかして口説いてるのか?」

 

「いや、そんなつもりはないよ?」

 

 尚、翼は思った事をそのまま伝えている。実際、最初こそ怖がられていた京佳だったが、生徒会での活躍、そして彼女の人となりを知った今の2年生3年生は京佳の事を『ちょっと見た目が怖いだけの良い子』と認識している。

 

(少し驚いたが、まぁ深い意味は無いだろう)

 

 いきなり美人だと言われた京佳だったが、その心は穏やかだ。これが眞妃だったら別だろうが。

 

(白銀から言われでもしない限り、綺麗だと言われても動揺することなんてそうそうない)

 

 最も、白銀だったらかぐや程では無いにしても結構動揺するだろうが。

 

 そんな時だった。

 

 ゾクッ

 

 京佳が急に寒気を感じたのは。

 

(な、何だ?後ろから殺気に似た何かが…)

 

 思わず手を止める京佳。そしてゆっくりと後ろを振り返る。

 

「……」 ゴゴゴゴ

 

 そこには少し離れた場所から、にっこりとした笑顔でこちらを見る柏木渚がいた。どういう訳か、背中に黒いオーラの様なものを纏っている。

 

(何あれ!?怖い!笑顔なのになんか怖い!?)

 

 渚は笑顔なのだが、何故かそれに底知れぬ恐怖を感じる京佳。暫くどうして自分があんな殺気が混ざった様な笑顔を向けられているか考える。

 

(まさか、嫉妬してるのか?私と話しているから?それとも綺麗と言ったのが聞こえていた?)

 

 渚と翼は恋仲だ。それ故、選択授業も同じのを選んでいる。本来ならお互いペアになり似顔絵を描くところだろうが、出席番号順になってしまったのでそれが叶わない。そこまでは仕方ないと割り切れる。

 しかし、自分の彼氏が別の女性と楽し気に離しているのを見たらどうなるか想像に難しくない。

 

(とりあえずあれを何とかしよう…じゃないと落ち着かない…)

 

 笑顔なのになぜか恐怖を感じる京佳は直ぐに行動に移す。スケッチブックを1枚メモ用紙サイズに破りとり、ペンを走らせる。そのあと、渚にだけ見えるようにメモを見せた。

 

『とてもお似合いな2人の間に割って入る気はない。でも嫌な気分をさせたならすまない』

 

 それをみた渚は、先ほどまでの殺気が混じった笑顔ではなく明るい普通の笑顔になり、スケッチブックに視線を戻す。

 

(何とかなったか…)

 

 ホっとする京佳。あのまま放置していれば、もしかすると自分の命が危なかったかもしれない。

 

(しかし、話しているだけであそこまで殺気染みたものを向けるものか?)

 

 ここで少し考える。確かに、自分の恋人が別の異性と楽しく喋っていたら面白くないし、嫉妬くらいするだろう。しかし、あれほどの殺気に似たものをぶつけるのかは疑問だ。

 

(いや、そういうのは人によって物差しが違う。彼女にとっては話すのもダメなんだろう)

 

 いささか束縛が強い気がしないでもないが、人によってそれは様々だ。京佳はそれ以上考えるのをやめて、再び似顔絵の続きを描く事にした。

 

 

 

「はいそこまでー。残りの時間は皆で見せ合いっこしてみましょう。他人が描いた作品を見るのも、美術を教わる上では重要ですよ」

 

 時間となり、全員えんぴつを置く。そして残りの時間で作品を見せ合う事になった。

 

「おおー。可愛く描いてくれてるねー立花さん」

 

「そういう田沼こそ凄いじゃないか」

 

 似顔絵を描き終わり、お互い見せ会うそれぞれのペア。翼が書いた京佳は綺麗に描かれており、京佳が描いた翼は少し可愛く書かれていた。具体的にいうと少しまるっこい。

 

「ほんとだ。翼くんの事可愛く描けてるね」

 

「!?」

 

 そんな2人の間にいつの間にか音も立てず割って入ってくる渚。思わずビビる京佳。

 

「だよね渚。俺こんなに可愛くないけど、いいよねこれ」

 

「そんな事ないよ。翼くんは可愛いしかっこいいよ?」

 

「マジ?ありがとう渚」

 

「ふふ、どういたしまして」

 

「そうだ!今度渚の似顔絵描いてもいいかな?俺少しだけ芸術に目覚めたかもしれないし」

 

「いいよ。でも私も描いてあげる。今度私の家で描こっか?」

 

 そして京佳そっちのけでいちゃつく。

 

(普通に邪魔者扱いされそうだから今のうちに移動しよう…)

 

 京佳は空気を読み2人から距離を取った。そして白銀とかぐやの方へ向かう。

 

「どうだった2人共?」

 

「あら、立花さんですか。私の似顔絵はとってもよく描かれていますよ。ほら」

 

 かぐやが京佳に白銀が描いた似顔絵を見せる。

 

「おお、これは…」

 

「ね?凄く可愛く描かれていますよね?」

 

「いやそんな事は無い!俺はもっと踏み込んだところまで描けた筈なんだ!本当にすまない四宮!せめてあと10分あればもっとよく描けたというのに!」

 

「だから会長!本当によく描けていますから!本当に可愛いですから!もう十分ですから!」

 

 しかしどうやら白銀は納得できていないようだ。実は白銀は芸術家気質である。そんな彼だから、自分の作り出した作品の評価に厳しくなるのは当然。故に、未だ自身の描いた絵に納得していないのだ。可能であれば今すぐ全て描き直したいくらいに。

 

(凄く綺麗に描かれている…良いなぁ四宮は…)

 

 そして京佳は、白銀に似顔絵を描いて貰ったかぐやを羨ましがる。

 

「そういや四宮はどうなんだ ?白銀の似顔絵を描いたんだろ?」

 

「俺もまだ見てないな。見せて貰ってもいいか四宮?」

 

「え、ええ。いいですよ。でも、笑わないでくださいね?」

 

 かぐやは自分が持っていたスケッチブックを開き、白銀と京佳に見せる。2人がそのスケッチブックを見ると、

 

「「え?」」

 

 そこには顎がしゃくれており、頬は膨らんでおり、眉毛が繋がっている色々と変な白銀の似顔絵が描かれていた。唯一似ているのは目元くらいだろう。

 

「実は私も、少し興が乗ってしまったようで…その、会長の事をかっこよく描きすぎたかもしれません。へ、変に思わないでくださいね!」

 

「そうか。これでかっこよくしすぎ…」

 

「ピ〇ソ?いや、どっちかというとノ〇デか?」

 

 白銀は少しだけショックを受け、京佳は昔本で見た海外の有名な絵画を思い出した。それほどかぐやが描いた白銀は色々と個性的だったのだ。

 

 

 

「はい!どうですか早坂さん!!」

 

「う――――っわ」

 

 そして藤原が描いた似顔絵を見た早坂は少しだけSAN値が下がりそうになった。

 

 

 




 柏木さんってこんな人でいいかな?

 それと原作だと選択授業は2クラス同時で行なわれていますが、この作品では美術を選んだ人全員でやってるって事にしてます。

 そうしないと京佳さんハブられちゃうのよ。

 次回も頑張ろうとは思う。

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