もしもかぐやに滅茶苦茶強力な恋敵がいたら・・・   作:ゾキラファス

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 会長の睡眠不足が解消された話をすっ飛ばして生徒会選挙編です。つまり伊井野登場。

 いつも誤字報告、お気に入り登録、感想等々、本当にありがとうございます。


伊井野ミコと公約

 

 

「おー。会長ぶっちぎりじゃないですか」

 

「ほんとですね!これはもう当選確実ですよ!」

 

 生徒会選挙期間、マスメディア部が出した号外には、現在白銀が圧倒的に有利という事が書かれていいた。それを廊下で見たのは、石上、藤原、白銀、京佳の4人である。

 

「いや、まだ油断はできん。そもそもこれはあくまで予測だ。あまりあてにならん。前期の活動で俺たちの名前を記憶している層が多いだけだ。他の候補者の今後の活動次第で数字の変動も十分にあり得る」

 

「白銀の言う通りだ。油断大敵、勝って兜の緒を締めよという諺もある。他より期待が高いからと言ってもう勝った気でいると足元をすくわれる」

 

 しかし白銀は号外を見ても動じない。京佳の言う通り、勝っていると思い油断している時こそ危険なのだ。かつての旧海軍が、とある海戦で大敗したのも慢心が原因だと言われている。そして白銀も、下馬評を見ても油断せずいこうとしていた。

 

(いやこれも勝っただろう!圧倒的すぎて自分でもびびるわ!正直もう何もしなくても再選確実だろ!選挙活動とかしなくていいわこれ!)

 

 いや、そう見えるだけだった。白銀の中では、もう当選したのも同じであるという思いだ。現在、白銀は圧倒的大差で優勢である。これを覆すのはまず無理だろう。故に白銀は既に勝った気分でいた。

 

「えーっと次にきているのは、『伊井野ミコ』って1年生みたいですね?」

 

「伊井野ミコ!?」

 

 藤原が白銀の次にきている人物の名前を口にした時、石上が驚いた。

 

「どうした石上?知ってるのか?」

 

「はい立花先輩。基本同級生の名前を覚えていない僕でも知ってます。学年成績1位の風紀委員です」

 

「ほう。それだけ聞くとかなりの優等生だな」

 

「ただ、色々強烈なんですよ」

 

「色々?」

 

 石上の話を聞く限り、まるで絵に描いたようなかなりの優等生に聞こえる。だが、どうも癖がある人物のようでもあるようだ。

 

「あ、丁度いいです。あそこでビラ配ってます。百聞は一見に如かずとも言いますし、直接会いに行きましょう」

 

 窓から中庭を見てみると、女生徒2人がビラを配っていた。どっちもおさげである。あのどちらかが伊井野ミコという生徒なのだろう。そして4人は、伊井野ミコに会うべく階段を下りて行った。

 

「そういや会長、目が元に戻ってますね」

 

「ああ。最近はまた睡眠時間が減ってるしな」

 

「やっぱりこっちのほうが御行くんって感じがしますねー」

 

「だな。見慣れているし」

 

 中庭にいく道中、白銀の目について会話をする4人。数日前の白銀は、睡眠不足が解消され、いつも見るキツイ目つきでは無く、とても澄んだ綺麗な目をしていた。それを見た藤原と石上は驚愕した。違和感が凄かったからである。

 

「京佳さんだけは驚いていませんでしたよね」

 

「まぁ、あの目をした白銀は前に見たからな。でも初めてみた時は流石に驚いたぞ」

 

 唯一、京佳だけは驚いていなかった。この中では白銀と1番付き合いが長い京佳は、あの澄んだ目をした白銀を既に見ているからである。

 

 なお、かぐやは元生徒会メンバーの中で群を抜いて驚いていたがその話は割愛する。

 

 

 

 中庭

 

「お願いします。伊井野ミコをよろしくお願いします」

 

「お願いします」

 

 中庭ではおさげの女生徒2人がビラを配っていた。そんな2人のうち、茶髪の女生徒の方に石上が話しかける。

 

「ちょっといいか?」

 

「何?見ての通り今私は忙しいの。不良に構ってる時間なんて無いんだけど?」

 

「不良って…」

 

 石上に話しかけられた茶髪の女生徒はかなり棘のある言い方をする。石上は少しだけ傷ついた。

 

「用事があるのは僕じゃない。この人だよ」

 

「君が伊井野ミコか?」

 

 直ぐに立ち直った石上は白銀を紹介する。それを見た茶髪の女生徒は、まっすぐに白銀を見てあいさつをする。

 

「そうです。初めまして、白銀前会長」

 

「前…」

 

 今度は白銀が少し傷ついた。そして先ほどから結構攻撃的なこの女生徒こそ、伊井野ミコである。

 

 伊井野ミコ。

 白銀と同じ、学年1位の成績を誇る才女。裁判官の父親を持ち、自分自身も風紀を大切にするべく風紀委員に所属。精励恪勤、品行方正を地でいく優等生。

 

 ちなみに身長は147cm。京佳より33cmも小さい。

 

「聞いたぞ。成績が学年1位なんだって?」

 

「ええ。入学以来ずっと」

 

「そ、そうか……だが勉強が全てでは無いぞ?バイトとかの社会経験だって大事だからな?」

 

「え?御行くんもしかして1年生相手にライバル心燃やしてます?」

 

 白銀は入学時点ではそこまで成績が良くなかった。そこから必死の努力をしたおかげで、今では学年1位という成績を取っている。

 しかし伊井野は入学時点で1位、そして今まで1度も順位を落としたことが無いと言う。そんな伊井野に、白銀が少しだけムっとして対抗心を燃やすのは仕方が無いのかもしれない。

 

「しかしビラ配りか。そういう地道な努力も大事だな」

 

「当然です。努力は必ず報われる訳ではありませんが何もしないよりずっとマシです。そういう前会長は、選挙も間近だというのに碌に選挙活動をしていない様ですね?王者の余裕という奴ですか?私に言わせてもらえば、それはただの傲慢です」

 

「う…」

 

 今の所、白銀は伊井野のような選挙活動を行っていない。そこを指摘されて、白銀は少したじろぐ。

 

「選挙活動なんて単純接触効果を期待した票集めだろ。普段の実績があればそんな事やる必要なんてないんだよ」

 

「そうかな?生徒たちに政策を考える機会を与えてこそ健全な学園運営につながる事になると思うけど?」

 

「こばちゃんの言う通りです。私たちはこの学園がより良い健全で尊いものになるように活動しているだけです。その想いを選挙活動を通して皆に伝えたい。ただの票集めのつもりはありません」

 

「う…」

 

「2人共?今言い負かされましたよね?」

 

「ひいき目に見ても負かされたな」

 

 石上が反撃するが、眼鏡を掛けたおさげの女生徒に言い負かされた。

 

「ふふふ、中々弁の立つ小娘のようだな」

 

「小娘って…」

 

「だが!どんな立派な理想を掲げてもそれが実現できなければ所詮は理想!」

 

「投票日が楽しみですねぇ。現実の残酷さを思い知る事になるでしょうし」

 

「御行くん?石上くん?今のお2人は傍からみればただの悪役ですよ?」

 

「映画とかで登場する悪役だな。石上はそれの腰巾着って感じだ」

 

「理想なき思想に意味なんて無いというのに」

 

「ほらー。こっちの方がなんか良いこと言ってます」

 

 白銀が3流の悪役の様な事を言い、石上をそれに同調。しかし伊井野はそれにも反撃。傍から見れば白銀石上ペアの敗北に見える。

 

「あの、藤原先輩。私、藤原先輩にお話しがあるんです」

 

「お話?」

 

 そんな時、伊井野が藤原に話しかけてきた。

 

「はい。私が生徒会長になったら、藤原先輩には是非生徒会副会長になって貰いたいんです!」

 

「ふぇぇ?」

 

「「はぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

「えぇ……」

 

 そしてとんでもない事を提案する。それを聞いた藤原はあっけに取られ、白銀と石上は絶叫し、京佳は呆れた。流石にそれは無いだろうと。

 

「正気かお前!?藤原だぞ!?この藤原だぞ!?」

 

「そうだ伊井野!この人の事を知っていたら絶対に出てこない言葉じゃねーか!」

 

「ちょっと男子2人!?失礼って言葉知ってますか!?ぶっとばしますよ!?」

 

 白銀と石上は揃って反対する。何たって藤原だ。突然予測不能な行動を起こす藤原である。もしそんな彼女が権力を握ったら、どうなるか想像もつかない。下手すると秀知院の歴史が終わる可能性すらある。

 

「そこの眼鏡掛けた人!流石にこれは止めるべきじゃないのか!?」

 

「いいえ。藤原先輩を任命するのは論理的に正しいと思いますが?」

 

「論理的!?」

 

 白銀が見た目が非常に真面目そうな眼鏡を掛けた女生徒に止める様言うが、その女生徒も藤原が副会長になるのは賛成らしい。しかも論理的に。白銀は今すぐ辞書で論理的という言葉の意味を調べたくなった。

 

「貴方たちこそ藤原先輩の事をちゃんと知っているんですか!?藤原先輩以上に相応しい人なんていませんよ!」

 

「いや、絶対に他に…」

 

「静かに!人の話は最後まで聞きましょう!」

 

 伊井野が藤原こそ相応しいと言うが、白銀は否定しようとした。しかしその前に藤原によって口を塞がれる。話を最後まで聞きたいと言ってはいるが、単純に自分の事を褒めるであろう言葉を聞きたいだけである。

 

「まずあのピティアピアノコンペで全国優勝をしています!そして5か国語を離せるマルチリンガル!最後に秀知院で並みの成績を残せる秀才なんですよ!」

 

「あの伊井野ちゃん?最後だけバカにしてませんか?」

 

 最初は褒めまくっていたが最後に少し落とす。藤原は少しだけ傷ついた。

 

「兎に角!藤原先輩は私なんか足元にも及ばない天才なんです!判ってるんですか!?」

 

「ふへへへへへ」

 

 しかし直ぐに伊井野がまた褒め称えたので気分が良くなった。

 

「白銀、知っていたか?」

 

「一応は。何でも四宮も、ピアノに関しては藤原を超える事は出来ないらしい」

 

「そうだったのか…」

 

「マジっすか…藤原先輩は僕と同じこっち側だと思ってたのに…」

 

 衝撃の事実を聞いた白銀達。流石に驚きを隠せない。なんせ普段の藤原からは想像もつかないのだ。その衝撃はかなり大きい。

 

「確かに今は私の劣勢です。ですが、理念では絶対にあなたに引けをとりません。そして必ず時間と共に理解者が現れると確信しています。藤原先輩を引き入れる為にもこの選挙、必ず勝たせていただきます」

 

「そうです!絶対に負けませんよ!」

 

「藤原先輩。何ナチュラルにそっち側についているんですか」

 

 伊井野は、白銀にビラを渡しながら宣戦布告とも言える宣言をした。藤原もそれに同意する。明らかに寝返っている行為に石上はツッコミをいれた。

 

「…すまない伊井野さん。少しいいだろうか?」

 

 伊井野の隣にいた眼鏡を掛けた女生徒からビラを受け取った京佳だったが、ビラを見て伊井野に質問が出来た。そして伊井野に話しかけたのだが、

 

「あ…」

 

「ん?」

 

 伊井野は少しだけ後ろに下がった。その目にはほんの僅かだが恐怖が見て取れる。

 

(ああ。怖がられてるのか…)

 

 自分は未だに殆ど面識のない1年生からは怖がられているという、少し前に石上が言っていた事を思い出す京佳。

 

「な、な、何ですか?た、た、立花先輩」

 

「そう身構えないでくれ。とって食べる訳じゃない」

 

「あ、そう、ですね。すみません…」

 

 京佳に言われ、謝る伊井野。そして京佳は、伊井野に質問をする。

 

「このチラシに掛かれている公約について聞きたいんだ」

 

「公約?」

 

 京佳の言葉を聞いて、白銀も伊井野に渡されたビラを見る。藤原も白銀の隣から覗き見る。

 

「「は?」」

 

 そこにはかなり衝撃的な事が書かれていた。

 

 ビラには坊主頭の男子とおさげの女子のイラストが描かれておりその下には、

 

 ・髪型は男子は坊主、女子はおさげか三つ編みに限定。

 ・携帯電話の持ち込みを禁止

 ・週に1度持ち物検査を実施

 ・男女は50cm以内の接近を禁止

 

 等と書かれていた。

 

「いや、これは…」

 

「えぇ…?」

 

 白銀と藤原は固まる。いくらなんでもこれは無い。一体いつの時代だと言いたい。時代錯誤とも言える。そんな事を書いているビラを持った京佳が、伊井野に質問を続ける。

 

「ここに不純異性交遊禁止と書かれているが、これはつまり恋愛禁止ということだろうか?」

 

 再びビラに目を落とす白銀たち。そこには確かに『不純異性交遊禁止』と書かれていた。

 

「そ、そうです!そもそも神聖な学び舎で恋愛だなんて不純です!学生の本分は勉強です!恋愛に時間をあてるくらいならもっと勉強をすればより良い学生生活を送れます!だからこそ恋愛禁止です!」

 

「今現在恋人がいる人はどうするんだ?」

 

「え?」

 

 伊井野は京佳の質問に答えるが、京佳の更なる質問を聞いて固まる。

 

「私の知り合いに、既に恋人がいる人がいるんだ。もし君が生徒会長になり、ここに書かれた公約通りに恋愛を禁止する場合、今現在学園内の者同士で恋人になっている人はどうするつもりだ?もしかして無理矢理別れさせるつもりか?」

 

「あ…」

 

 思わず声を漏らす伊井野。元より恋人がいない人なら問題が無いかもしれないが、現在恋人がいる人達にはこの公約は大問題だ。もしその人達だけ特別に恋愛を許してしまえば公約違反となる。だが現在恋人がいる人達を無理矢理別れさせてしまえば、そんなのは精錬潔白な生徒会長とは言えない。

 

 因みに、京佳がそこを指摘したのは『もしこの公約が実現したら白銀と付き合えない』という思いから来ている。

 

「え、えっと…それは…」

 

(そこまで考えていなかったか)

 

 伊井野は考えるが言葉が出ない。そんな伊井野を見た京佳は、伊井野がそこまでの事を考えていなかったと察した。

 

「あの立花先輩、それ以上は…」

 

「む、そうだな。すまない伊井野さん。言い過ぎた」

 

「い、いえ…大丈夫です」

 

 石上が京佳を止めに入る。京佳も別に伊井野をイジメるつもりは無いのでこれ以上の追及はやめた。

 

「まぁ兎に角、そういう意見もあるという事だ。それじゃ」

 

 そう言うと、京佳たちはその場から立ち去ろうとする。

 

「あ、あの!」

 

「ん?」

 

 しかし直後、伊井野が呼び止めた。

 

「さ、さっきはすみませんでした!初対面なのにあんな態度とってしまって」

 

「あんな態度?」

 

「えっと、怖がっちゃって」

 

「ああ、あれか。気にしてないから大丈夫だよ」

 

「それでも、本当にすみませんでした」

 

「私も、すみませんでした」

 

 伊井野は先ほど、京佳に対してとってしまった態度の事を謝る。伊井野の隣にいた眼鏡の女生徒も同じ様に謝る。

 

(なんだ、ちゃんとした良い子じゃないか)

 

 最初こそ、ただただ真面目で自分のした事が正しいと信じている子だと思っていたが、伊井野はちゃんと謝った。京佳はそんな伊井野に好感を持った。

 

「いいよ。もう謝ったからこの話はおしまいだ」

 

「は、はい。ありがとうございます」

 

「それじゃね」

 

 そして今度こそ、京佳たちは伊井野の元から去っていった。

 

「流石に、坊主はなぁ…」

 

「やっぱり仲間は裏切れません…」

 

 因みに白銀と藤原はずっとビラを見ながらブツブツ言っていた。

 

 

 

「こばちゃん…」

 

「なに?ミコちゃん?」

 

 京佳たちが去った後の中庭。そこには伊井野と彼女の友達である大仏小鉢がビラを整理していた。

 

「立花先輩って、人相が悪いだけで全然怖くなかったね」

 

「そうだね。やっぱり噂なんて当てにならないね」

 

 京佳は1年生とはほぼ面識が無い。故に、今でも変な噂が1年生限定でたっている。

 

「もし私が生徒会長になったら、立花先輩にも生徒会に入ってもらおうかな。色々教えてくれそうだし」

 

「いいと思うよ?立花先輩って面倒見良さそうだし」

 

 この日、伊井野ミコに新しい目的が出来た。それは京佳を生徒会に入れるというものだ。

 

「その為にも、まだまだ頑張らないとね」

 

「うん!私もっと頑張る!そして、今度こそ生徒会長になってみせる!」

 

 伊井野は気合を入れなおし、再びビラを配る為に動く出した。そしてその後、校門や運動場などにも移動して、伊井野と大仏の2人は全てのビラを配るのだった。

 

 

 

 なお、伊井野と大仏の2人が聞いた噂は『京佳の眼帯の下には強力な呪いがあり、あの眼帯はそれを封印している』というものである。大仏は最初から信じていなかったが、伊井野はこの噂を7割くらい信じてた。

 

 

 




 やっと登場できた。

 次回も頑張れたらいいかもしれない。
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