もしもかぐやに滅茶苦茶強力な恋敵がいたら・・・ 作:ゾキラファス
生徒会室には白銀とかぐやの2人だけがいた。白銀は資料を整理しており、かぐやは紅茶の準備をしている。
(どうしましょう…さっき石上くんが言っていた事が気になって気が散るわ…)
しかしかぐやは集中できていなかった。それはつい先ほど石上が言っていた事に原因がある。
『ボクサーパンツを履いているやつはヤ〇チン』
最初、ヤリ〇ンの意味を知らなかったかぐやは藤原に聞き、その後意味を知った。簡単に言うと、不特定多数の女性と性行為を行う男性のスラングである。
(会長は結構モテる人ですし、私が知らないだけでそんな身体だけの関係の人がいても不思議は無い…)
これは大きな間違いだ。実際の白銀は童貞であり、そのような経験は微塵も無い。だが、かぐやはそんな事は知らない。かぐやは白銀がそのようなふしだらな人間では無いと信じてはいる。
しかしそれはそれとして気になる。1度でも気にしてしまえばもうダメ。こうなっては、直に調べるしかない。
(こうなったら仕方ありません。とりあえず、どうにかして会長に下着を見なくては!)
こうしてかぐやは、他の人間が聞いたら明らかに痴女としか思えない事を実行に移す。
生徒会室に続く廊下を京佳は歩く。ふと窓の外を見ると、木々が大きく揺れており、空は少し曇っていた。
(そういえば台風が接近しているんだったか。どうりで風が強い訳だ)
京佳は昼休みにスマホで見た天気予報を思い出す。天気予報によると、どうやら台風が関東地方に接近しているらしい。直撃は無いとの事だが、その影響で本日は風がかなり強い。
(これならまだ電車やバスが止まる事はないと思うが、今日はなるべく早く帰った方がいいかもな)
バス通学である京佳はそんな事を気にしながら生徒会室に向かっていた。そんな時である。
「信じていたのにーーー!!」
かぐやが目に涙を浮かべながら、全力で廊下を走り去って行ったのは。
(今のは、四宮だよな?どうしたんだ?)
京佳に気づきもせず、素通りしていくかぐやを見た京佳には疑問が残る。一体何があったのかと。
(生徒会室から来ていたみたいだし、生徒会室に向かえばわかるかな?)
とりあえず生徒会室に行く事にする京佳。そして生徒会室に着いた瞬間、
「た、た、た、立花先ーー輩!!」
「どうした伊井野?」
「たすけ、助けて下さい!!わ、私このままだと、白銀会長に襲われます!!」
「は?」
新しく生徒会に入った1年生、会計監査の伊井野ミコがとんでもない事を口にしてきた。
(襲われる?どういう意味だ?いや本当にどういう意味?)
少し混乱する京佳。しかし1度深呼吸をして直ぐに自分を落ち着かせる。そして先ずは伊井野から話を聞く事にした。
「落ち着け伊井野。まず何があったか言ってくれ」
「さ、さっき!白銀会長が黒い下着が好きだって豪語して!それでゆっくりと私に近づいてきて!こ、このままだと私!白銀会長に無理やり下着がどんなのかを確認され…!」
「……え?」
自分が好いている男がそのような性犯罪のような行いをしようとしている。それを聞いた京佳は思考が停止した。
(ま、まさか白銀は、伊井野の様な子がタイプなのか?それとも伊井野ならそういう事をしてもバレないと思ってる?)
突然の後輩の発言で混乱し始める京佳。そしてゆっくりと生徒会室の方に目を向ける。するとそこには少し顔色が悪く、震えている白銀が居た。
そして今の京佳には、白銀がまるで性犯罪がバレた犯罪者にしか見えなかった。
「し、白銀?」
「まって立花!マジで違う!マジで違うから!お願いだからちゃんと説明させてーーー!?」
伊井野を胸に抱きよせて顔がこわばる京佳に白銀が必死で懇願する。その後、京佳は理性がまだ残っているうちに、きちんと話を聞こうと思い生徒会室に入っていった。
数十分後
「つまり四宮にいきなり好きなぱ…下着は何かを聞かれて答えただけだと」
「あ、ああ。そうだ。言っておくが嘘なんかじゃないからな?これ全部真実だからな?」
ソファーに座り、同じく正面のソファーに座っている白銀から説明を聞く京佳と伊井野。因みに伊井野は、ソファーに座っている京佳の後ろに隠れて顔だけを出している状態だ。というか明らかに京佳を盾替わりにしている。
白銀の言い分では、最初にかぐやから好きな紅茶は何かと聞かれた。そしてその後に、好きなパンツは何かと聞かれたのだと言う。そこで白銀は素直にその質問に答え、結果としてかぐやは急に生徒会室を飛び出していったと言う。そして京佳は、その飛び出してきたかぐやと先ほどすれ違ったのだ。
(何故、四宮はそんな事を聞いたんだ?まさか、白銀の好みを聞いてそれを履いて見せるつもりか?)
京佳は、何故かぐやが突然そのような事を聞いたのか考える。もしかして、白銀を誘惑するつもりなのかとも思う。
(いや流石にそれは無いだろう。そんなのただの痴女じゃないか)
だが直ぐにその考えを捨てる。いくらかぐやが白銀に好意を寄せているとはいえ、好きな下着を聞いてそれを履いて相手に見せつけるなど、ただの痴女だ。
(まぁ、私も似たような事を考えてはいたが、流石になぁ…)
白銀を振り向かせる為なら割と何でもする京佳だが、流石にそれはしない。というか普通に恥ずかしい。そういうのは本当に策が無くなった最後の手段だ。
(しかし本当にどうして四宮は突然そんな事を聞いたんだ?話に脈絡が無さすぎる)
白銀の話を信じるなら、かぐやは紅茶を用意している時に突然そんな話をしてきたという。あまりに突然すぎる話だ。
(いや、まさか…)
そして京佳にある考えが浮かぶ。
「白銀、多分それ聞き間違いだぞ」
「え?」
「そもそもだ。女子がいきなり『好きな下着は何ですか?』なんて聞くか?」
「立花先輩の言う通りですよ!そんな事普通は聞きません!そんなの痴女くらいですよ!」
それは、白銀がかぐやの言葉を聞き間違えたという事だ。普通、いきなり女性が下着の事を聞くなんてある訳がない。なので京佳は、白銀が聞き間違いを起こしたと思った。伊井野も京佳の意見に同意する。未だにソファーの裏に隠れながらだが。
「し、しかし、四宮ははっきりとその、ぱ、パンツと…」
だが白銀はあれが聞き間違いでは無かったと思っている。勿論、最初は聞き間違いと思っていたのだが、かぐやは2回も聞いてきたのだ。その時の台詞は、白銀の耳にはっきりと残っている。
「本当か?本当にそう言っていたか?」
「う…そこまで言われると、ちょっと自信が無いが…」
しかし、時間が経つにつれて記憶は摩耗していく。全て忘れる事は無いが、細部まで完璧に覚えているかといえばそれは難しい。かぐやに聞かれたのはもう数十分も前だ。記憶力には自信がある白銀だが、京佳に念を押されるように聞かれるとその自信も無い。
「もしかして、パンと聞き間違ったんじゃないのか?」
「パン?」
「最初に好きな紅茶は何だと聞かれたんだろう?だったら紅茶に合う『好きなパンは何ですか?』と四宮は聞いたんじゃないのか?」
京佳は白銀が『パン』と『パンツ』を聞き間違えたのではないかと指摘する。最初にかぐやは白銀にどんな紅茶が好きかを聞いてきた。
そして、紅茶のお供にはスコーンやビスケットなどが一般的であるが、それら以外にもパンやケーキがお供に選ばれる事がある。故にかぐやは、白銀に好きなパンは何かと聞いたのではないかと京佳は思った。
「そうですよ!絶対に立花先輩の言う通りですよ!前後の会話の流れからしてその方が凄く自然ですし!」
京佳の言葉に伊井野が同調する。因みに身体はまだソファーの後ろに隠している状態だ。
「お、俺はなんてとんでもない聞き間違いを…!」
白銀も自分が聞き間違いを起こしたと思い、悔やむ。だってかぐやから見れば、好きなパンは何かと聞いてのに下着の事を言われたのだ。完全にただの変態である。
尚、ここにいる3人は知らない事だが、かぐやは本当に『どんなパンツが好きですか?』という質問を白銀にしている。そんな質問をした理由は、白銀がボクサーパンツを履いているかどうかを確認するためだ。色々と策を巡らせたかぐやだったが、何も思い浮かばず、素直に聞くのが1番早いと考えた結果である。最も、白銀には別の意味合いの質問に聞こえており、このような事になっているのだが。
「まぁ、あれだ。明日にでも四宮に謝っておいたらいいと思うぞ?」
「ああ。そうするよ…」
とりあえずこの騒動は丸く収まりそうである。ようはただの聞き間違いだ。
「何か熱くなったな。少し窓を開けてもいいか?」
「いいぞ。何か俺も疲れて熱いし…」
少し熱くなってしまったのか、3人共熱っぽい感じになった。京佳は空気を入れ替える為にも、1度窓を開けて涼もうと思い窓を開ける為ソファーから立ち上がる。
「いいですか白銀会長!あなたは生徒会長としての自覚が足りません!相手の会話を聞き間違えるなんて凄く失礼な事なんですよ!これが社会人になった時の仕事だったらどうするんですか!?もしかしたら致命的なミスにつながる場合もあるんですよ!?」
「はい、仰る通りです…」
京佳が立ち上がった事により、伊井野は盾を失った。しかし今の伊井野にもうそういうものは必要無い。風紀委員として、そして生徒会選挙に負けた者として白銀に言いたい事が出来たからである。
そして白銀もそのお叱りを受け入れている。聞き間違いをしたのは自分だし(実際にはしていない)伊井野の言う事は最もだからだ。伊井野が白銀に言っている間、京佳は生徒会室の窓を開ける。
「うわ、風が…」
京佳が窓を開けた瞬間、生徒会室に風が流れてくる。
このまま涼もうと思っていたのだが、ここでハプニングが起こった。
生徒会室に入ってきた風が思っていたより強かったのだ。関東地方に接近している台風のせいである。そして風が強いと起こる現象と言えば、スカートが風でめくり上がるという現象だ。
「!?」
かなり大きく制服のスカートがめくれたので、京佳は直ぐに慌ててスカートを抑える。
(く、黒!?)
しかしその努力もむなしく、京佳は今回もバッチリ白銀に下着を見られていた。1学期以来、2回目である。おまけに前回見られた時とは違い、京佳のイメージにぴったりな黒い下着を。
「……」
ゆっくりと白銀の方を見る京佳。
「……見たか?」
スカートを抑えながら白銀に質問をする。
「……ミテナイヨ」
白銀はカタコトで答えてしまった。目も凄く泳いでいる。
「け、けだもの!!」
伊井野は直ぐに察した。目の前の男は、自分が物申している間に後ろにいた京佳の下着を見たのだと。それゆえ白銀を『けだもの』と罵倒する。
「まて伊井野!今のは事故!事故だから!風による不慮の事故だから!」
「だったら猶更見える直前で目をつぶるべきでしょう!?つぶらなかったと言う事は見たいっていう欲求があるって証拠です!けだものって証拠です!この変態!そして立花先輩はもっと怒っていいですよ!?下着を見られたんですから!?」
「あ、ああ。そうだな…」
「そして白銀会長は謝って下さい!今すぐ!誠心誠意真心込めて!!」
「はい!すみませんでしたぁぁぁ!!」
白銀、綺麗なお辞儀である。土下座しそうな勢いだ。
(やべぇ…マジでくっそエロかった…そしてすっごいイメージ通りで似合ってた…)
だがこの男、謝っている間に京佳の下着の事を思い出していた。先程見えてしまった下着は、京佳のイメージにピッタリだった。程よい肉の付いた臀部と太腿、そこに写る黒い下着。思春期の男子高校生にとっては、もう拝むことが出来ないレベルの奇跡である。当然、簡単に頭から消す事など出来ない。
(多分これまた記憶から消せないなぁ…また前みたいに記憶に蓋をしよう…)
前回、京佳の下着を見た白銀は頑張って記憶から消そうとしていたが、結局それは出来なかった。故に記憶に蓋をして、思い出さない様にする手段をとった。これならば自分から記憶の蓋を足らない限り、思い出す事は無い。最も、稀に何かの拍子で記憶の蓋が外れる事はあるのだが。
「聞いてますか白銀会長!?」
「はい聞いてます!ちゃんと聞いてます!!」
その後、伊井野により説教は20分続いた。白銀はそれを全て受けた。
(また、見られた…)
そして白銀が伊井野からお叱りを受けている間、京佳は恥ずかしがっていた。
(でもまぁ、前回よりは恥ずかしくない、かな?)
前回、白銀に見られた下着は苺柄という子供っぽいものだった。しかし今回は普段からお気に入りで履いているものだ。ある意味では恥ずかしくないのかもしれない。
(でももしかすると、またこんな事があるかもしれない…今度新しい下着買いに行こう。最近胸がまたキツイし)
そして京佳は、三度同じ事があるかもと思い、近いうちに新しい下着を買いに行く事にした。
翌日
「た、た、た、立花先ーー輩!!白銀会長と四宮先輩が、生徒会室でみだらでやらしい行為をーーー!?」
「……え?」
「だから誤解だってーーー!?」
「あら、何がですか?私は会長を(マッサージで)気持ちよくさせようとしているだけですが?あ、そうだ。立花さんと伊井野さんも一緒にやりますか?気持ちいいいですよ?」
「よ、4ぴ…。わ、私は経験の無い素人ですから!そんな高度な真似できません!足引っ張っちゃいますから…!」
(先、越された…?)
「あああああーーー!!もおおおおおおーーー!?」
この後、白銀が伊井野と京佳の誤解を解くのに1時間を要した。
こういう話を書いている方が凄く楽しいけど、ほどほどにしとこう。同人版になっちゃうし。
そういや、マスメディア部とはどう絡ませましょう。色々考えないと。
次回も頑張りたいです。