もしもかぐやに滅茶苦茶強力な恋敵がいたら・・・ 作:ゾキラファス
ドミトレ●ク婦人 290cm
メ●トリリス 190cm
諸星き●り 186cm
ヒシ●ケボノ 180cm
京佳さん 180cm
白銀 177cm
かぐや 160cm
こうしてみると、京佳さんも大して高くないかもしれない。そして調べて初めて知ったけど、会長って177cmもあるのね。普通に高身長。
「か、会長…」
「し、白銀…」
古びた体育倉庫。その中央に置かれている大きなトレーニングマット。そこに今、2人の少女が仰向けに倒れて、その上に1人の男がまるで2人を押し倒したかのように覆いかぶさっていた。
(落ち着け落ち着け落ち着け落ち着け)
2人に覆いかぶさって男は、生徒会長白銀御行。そんな白銀に覆いかぶさられている少女2人は四宮かぐやと立花京佳。
そしてかぐやと京佳はジャージを着ているのだが、かぐやはお腹周りが、京佳は足周りが破れている。そんなジャージが破れている2人に覆いかぶさる白銀。傍から見れば2人を襲っている様にしか見えない。
どうしてこのような事態になったのかは、時間を3時間程巻き戻す必要がある。
3時間前
「体育祭で使う備品の確認ですか?」
「そういえばもうすぐ体育祭ですね~」
残暑が残る9月の終わり。秀知院はもうすぐ体育祭だ。そして生徒会は体育祭を円滑に進める義務がある。もし体育祭で使う備品が壊れていて、そのせいで生徒が怪我でもしてしまえば大変だ。故に備品のチェックは大切な仕事なのだ。
「とりあえず、体育館の地下に行く班と校庭の端にある古い体育倉庫に行く班とに分かれるぞ。2班でやった方が早いし」
体育祭で使う備品はかなりの数がある為、2か所に分けて保存している。ひとつは校庭の端にある古い体育倉庫。もうひとつが体育館の地下だ。最も地下と言っても半分だけ地面に埋まっている半地下のようなところだが。
「あ!私体育館の地下がいいです!なんか面白そうですし探検したいです!」
「あの藤原さん?遊びじゃないんですよ?」
好奇心が強い藤原は段行かないところに行けると思い、体育館の地下を選択。
「男手が欲しいので石上くんは私と一緒に来てください」
「まぁいいっすけど」
ついでに石上を誘った。石上はこれを承諾。
「白銀は体育倉庫か?」
「そのつもりだ。体育館の方には藤原と石上で十分だろうし」
「なら私も体育倉庫に行くよ」
ここで京佳が動く。体育倉庫は古く、窓が無い密室だ。そんな空間で2人きり。特に何かを期待している訳ではないが、折角なら2人きりで仕事をしたいと思うのも当たり前だろう。
「だったら私もそっちに行きます。あそこ思っているより広いですし」
「わかった。なら3人でさっさと調べてしまおう」
だがかぐやがそれを黙って見ている訳など無い。当然かぐやも白銀と一緒にいる方を選ぶ。というか、京佳と白銀を2人きりになどさせる訳がない。
(く、やはりついてくるか…)
(抜け駆けは許しませんよ…)
2人の視線の間に少しだけ火花が散った。
「そういや伊井野は?」
「風紀委員の仕事があるっていってたぞ。あとで行くとも」
「え?何で立花先輩がそんな事知ってるんですか?」
「さっきスマホに連絡がきてた」
「いつの間に連絡先交換してたんすか」
因みに現在、生徒会役員で伊井野の連絡先を知らないのは石上だけである。
体育倉庫
「この縄もかなり傷んでますね」
「こっちのハードルはネジが飛び出しているな。しかも少しグラつく」
「20年は使っているらしいしな」
白銀、かぐや、京佳は3人で手分けして倉庫内の備品をチェックしていた。備品はどれも年期が入っており、かなり傷んでいる。
「なぁ白銀、物を大切に使うのは良い事だが、流石にこれは買い替え時じゃないか?」
「だよな。まぁ今年くらいまでは何とかなるだろう。来年は買い替える様に学園長に言っとくよ」
秀知院は決してお金に困っている学校では無い。むしろ他の学校に比べればかなり潤沢な資金がある。だがそれはそれ。削れるところは削らなければ学園の運営が傾くのは必須。まだ使えると判断すれば使う。そうして何度も何度も使った結果、こうして年期の入った備品たちが誕生した。
「私は備品よりこの建物をどうにかした方が良いと思いますよ。窓も無いし建付けも悪いですし」
「あっちには蜘蛛の巣もあるな。多分掃除すらまともにしてないぞここ」
「く、蜘蛛…そ、そうだな。その辺も学園長に言うとしよう」
かぐやは倉庫内を見渡す。コンクリートで出来た古い倉庫。小さな窓すら無く、天井の隅には蜘蛛の巣が張っている。壁には少しヒビが入っており、おまけに電球は裸電球。地震が来たら崩れそうだ。
「万が一閉じこめられたら大変ですね」
「確かにな。助けを呼ぶことも出来ないだろうし」
「よし、こんなものだろ。戻るか」
倉庫内の備品チェックを終え、倉庫から出ようとする3人。
「あれ?」
「どうしました会長?」
「開かない」
「え?」
「扉が開かない」
だが、扉が開かない。うんともすんとも言わない。
「1度3人で押してみないか?」
「そうですね」
「よしいくぞ。せーの」
京佳の提案を受け3人で協力して扉を動かそうとする。が、ダメ。扉はビクともしない。
誰かがうっかり鍵を閉めたのか、建物の老朽化が原因なのかはわからないが、男女が密室に閉じ込められる事をこう呼ぶ。
体育倉庫イベントと!
「マジで開かないな」
「どうやら、私達は完全に閉じ込められたようですね」
「3人で一緒に大声を出せば誰か気付くんじゃないか?」
「いえそれは無理だと思いますよ立花さん。ここは戦時中に弾薬庫や懲罰房として使っていたものを改修した場所だと。なので密閉性はかなり高いと思います」
「成程、確かにそれだと声を出したくらいじゃ気づかないかもな」
「2人共、携帯持ってるか?」
「私は生徒会室に置いてきました」
「私もだ」
「つまり俺達は、普段誰も寄り付かない倉庫に連絡手段を失った状態で閉じこめられたと…」
「でも大丈夫だろう。藤原と石上には私達3人がここにいる事は伝えているし。私達が何時間経っても生徒会室に戻ってこなかったら探しにくるさ」
「まぁ、それもそうか」
「ですね。流石に丸1日閉じ込められるなんてありませんし、待ってましょうか」
京佳の言葉は最もだ。自分たちがここで備品のチェックをする事は伝えている。今は閉じ込められているが、それも直ぐに解決するだろう。
「とりあえず立っているのも疲れるし、マットにでも座らないか?」
「そうですね。そうしましょう」
「ああ、こういう時は体力を温存するべきだしな」
京佳に言われ、3人は倉庫中央にある緑色のトレーニングマットに座り救助が来るのを待つことにした。
2時間後。
「誰も、来ませんね」
「そうだな」
「夕飯、今日は作る時間無いな」
「あら。立花さんはご自分で夕飯を?」
「ああ、母さんが仕事で忙しいからね。せめて家事は自分でやろうと思ったんだ」
「そうだったんですね。そういえば、会長もご自分で?」
「まぁな。たまに親父が妹がやる時あるけど基本俺だな」
閉じ込められた3人はそんな他愛もない会話をする。ジタバタしたところで意味など無い。それ故、こうしてゆっくりとマットに座ったまま待っている。
しかし既に閉じ込められて2時間。外は闇に包まれつつある。いくら昼はまだ暑いとはいえ、夜は少し冷える。
「白銀、もう1度扉を開けてみてもいいか?」
「構わないが、開くか?」
「やるだけやってみるだけだよ」
京佳はこのままではいけないと思い、再び扉を開ける事を試してみる。
「せーっの!」
力いっぱい扉を横に引いてみる。だがやはり、扉はビクともしない。
「はぁ、だめか…」
扉が開く事は無く、マットに戻ろうとする京佳。その時だった。
ビリィィィィ
「え?」
何か、布が裂けるような音がしたのは。京佳は音がした自分の右脚の方を見る。するとそこには古いハードルがあった。しかもあのネジが飛び出ていたハードルだ。
京佳はふと自分の右足を見ると、ジャージがネジに引っ掛かり破れているのを確認。その結果、京佳の太もも部分が露になっていた。それこそ下着が見えそうになるくらいまで。
「見ちゃダメです会長ーーー!!」
ゴキッ
「ぎゃあああ!?首がぁぁぁ!?」
それを見たかぐやは思わず白銀の首を右方向90度に思いっきり曲げた。首を抑え痛がる白銀をそのままにし、かぐやは京佳の方へ近づく。
「大丈夫ですか?立花さん」
「あ、ああ。ジャージが破れただけだ。怪我はしていないよ」
京佳は手で破れた部分を隠しながら言う。その顔は頬が少し赤い。
(流石にわざとでは無いでしょうが、こういう事態は同じ女としてほっとけませんね…)
かぐやは基本的に損得勘定で動くが、流石にこういった場面は見逃せない。嫁入り前の女性が、水着以外で男性の前で肌を晒すなどあってはならない。
「取り敢えず、私の上着を貸します。これで隠していて下さい」
「すまない四宮…」
かぐやから上着を受け取り、それで破れた部分を隠す京佳。
「ですが流石に肌寒くなってきましたね。全く、藤原さんと石上くんはどこで油を売って…」
ビリィィィィ
「へ?」
かぐやが立ち上がろうとした時、先ほど聞いた音と同じ音が聞こえた。そしてかぐやが自分の胸元を見ると、ジャーシはハードルのネジに引っかかって破れていた。結果、かぐやのお腹が丸見えとなり下着が見えそうになる。
「見るな白銀ーーー!!」
ベシャ
「ぎゃあああ!?目が!?目がぁぁぁ!?」
京佳はとっさに近くにあった石灰を白銀の顔めがけて投げた。結果、白銀は悶絶。マットの上で悶え始めた。
「大丈夫か?四宮」
「は、はい、私も立花さんと同じでジャージが破れただけですよ。お腹に怪我もありません」
かぐやは自分のお腹を見ながらそう言う。京佳が確認すると、確かに怪我は無い。ただジャージが破れただけだ。
「とりあえずこのハードルは危ないな。隅っこにどかしておこう」
「ですね。そうしましょう」
諸悪の根源ともいえるハードルを移動させる2人。
「すまない白銀、少しだけ距離を取って貰えるか」
「私からもお願いします会長」
「あ、ああ。わかった」
2人に言われた白銀はマットから少し距離を取る。因みに自主的に目をつぶっている。そしてかぐやと京佳は揃ってマットに座る。
(み、見られた…?会長に私のお腹を見られた?いや、もしかすると下着まで?)
(私はまた白銀に見られたのか?もしかして私は、こんな事ばかり起こる人生だとでも?)
顔を赤らめながら同じような事を思う2人。
(今俺の目の前にはジャージが破れている四宮と立花が…やばい…流石にこの状況はヤバイ…)
白銀は何とか理性を保とうとしている。目を開ければ肌を晒している女子が2人。正直、見てみたい。でも流石にそれは出来ない。
(うぉぉぉ!耐えろ俺!ここは耐えないと人生が終わる可能性すらあるんだぞぉぉ!?)
必死で煩悩を払う白銀。しかしその時、
「うぉ!?」
足元にあった玉入れ用の籠の端に躓き、白銀はバランスを崩した。
「「え?」」
そしてそのまま、かぐやと京佳の方へ倒れたのだ。
こうして冒頭へと場面は移る。
思わず目を開けてしまった白銀の前にはかぐやと京佳。2人とも顔が赤い。
「かい、ちょう…」
「しろ、がね…」
そんな2人の反応を見た瞬間、白銀の心音が大きくなる。心臓がうるさい。顔が熱い。でも身体がこの場から動かない。いや、動こうとするのを拒んでいる。そして白銀の中である事が浮かぶ。
(もう、いっそこのまま…)
このまま2人と、そういう事をしてもいいのではという邪な思いだ。それは完全に一線を越える。もし超えてしまえば、もう2度と元の関係になど戻れない。普段の白銀ならこんな事は思わない。だがこの状況が、白銀に正常な判断をできなくしていた。
目の前には肌を晒している2人の少女。そして今この空間は完全な密室。外に音が漏れる事も絶対に無い。
「ふ、ふたりとも…」
白銀が2人に顔を近づけた。かぐやと京佳もそれに合わせて目を閉じる。そして―――
「ちょっと、一体何時まで備品の確認作業に時間をかけているんですかー?」
「「「……」」」
その瞬間、伊井野が倉庫に入ってきた。
扉を開けた伊井野の目に飛び込んできたのは、ジャージが破れているかぐやと京佳。そんな2人を押し倒している白銀だった。
「い、伊井野さぁぁぁん!」
「……」
かぐやが泣きながら伊井野の元に駆け寄る。同時に京佳も無言で伊井野の傍に行く。
「こ、このクズめ!!」
(畜生!今回は何も否定ができねぇ!!)
この日、伊井野の中で白銀の株が大暴落した。
一方藤原と石上はというと、
「見てください石上くん!なんか変な旗ですよ!」
「これもしかして昔の国旗ですか?」
「面白い旗ですね~。背中にかけてマントにしません?」
「いやダサくないですか?」
「ええー?かっこいいでしょー?」
「いやダサいでしょ」
おしゃべりしながら備品チェックをしていた。因みにまだ半分も終わっていない。
次回も頑張れたら頑張ります。