もしもかぐやに滅茶苦茶強力な恋敵がいたら・・・   作:ゾキラファス

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 京佳さん最大のアドバンテージは素直なところと圭ちゃんが味方の事じゃないかなーって思う。

 あとはその豊満な…


四宮かぐやと病

 

 

 

「立花先輩。これ、さっき言っていた資料です」

 

「ありがとう、伊井野」

 

「それと石上。今すぐゲームやめなさい」

 

「いやこのボス倒すまで待って。あとちょっとなんだ」

 

「あんたねぇ」

 

「あと5分だけ見逃してやったらどうだ?それでもダメなら没収すればいい」

 

「ぬ。わかりました。石上、あんた立花先輩に感謝しなさいよ」

 

 伊井野が持ってきた資料を受け取り、京佳は資料整理を始める。そして伊井野は石上に注意を促したが、石上は無視。思わずその手に持っているゲーム機を奪い取ろうと思った伊井野だが、京佳に言われあと少しだけ我慢する事にした。

 

「ところで、本当に大丈夫なんですか?」

 

「何がだ?」

 

「その、昨日、白銀会長に、その…」

 

 伊井野は京佳に耳打ちするように昨日の事を聞く。昨日、白銀は意図的でないとはいえ、京佳とかぐやを押し倒していた。そして伊井野はその現場を目撃。

 その後、泣いているかぐやと落ち込んでいる白銀に代わり京佳が説明と弁明をしたので一応は事なきを得たのだが、伊井野の中では未だに白銀に対する不信感がある。

 

「昨日も言っただろう。あれは事故だよ。断じて白銀が何かをした訳じゃない」

 

「それは、そうなんでしょうけど…」

 

 2人が話しているその時、

 

 バタ

 

「「え?」」

 

 突然、かぐやが倒れた。

 

「かぐやさん!?」

 

「四宮!?」

 

 とっさに藤原と白銀が駆け寄る。

 

「はぁ…はぁ…」

 

 かぐやは両手で胸を押さえて苦しそうにしていた。額には汗もにじんでいる。

 

「石上!救急車を呼べ!伊井野は保険医を!」

 

「うす!」

 

「わかりました!」

 

 白銀は直ぐに2人に指示。そして今度は京佳がかぐやに駆け寄る。

 

「四宮、どこか痛いか?」

 

「む、胸が…」

 

 かぐやから容体を聞き、脈を測る。するとかなり脈が速い。次に顔に手を当ててみるととても熱かった。そして呼吸も荒い。

 

(風邪?いや胸を抑えて苦しそうだから不整脈?)

 

 思い当たる事を浮かべてみるが、素人レベルの医学知識しか無い京佳では判断が付かない。

 

「保険医さん連れてきましたーー!!」

 

 ここで伊井野が保険医を連れて生徒会室に戻ってきた。

 

 その後、救急車がくるまで保険医がかぐやを診ていたが、保険医曰く異常はないとの事。しかしこれだけ苦しそうにしているから、もっと設備の整った大きい病院で直ぐに検査をするべきだと判断。

 そしてその後、かぐやは救急車で都内の病院へと搬送されていった。

 

「かぐやさんって、元々そんなに身体が丈夫じゃなかったんですよ。季節の変わり目には体調をよく崩してましたし。それにかぐやさんのお母様も、確か心臓病で…」

 

「そうだったんですか…」

 

「大丈夫ですかね…四宮先輩…」

 

 学校から去っていく救急車を見ながら藤原は言う。

 

「四宮…」

 

 白銀は心配そうに救急車を見る。

 

(四宮…)

 

 そして京佳も心配そうに救急車を見つめる。京佳にとって、かぐやは恋敵だ。恋敵であるかぐやがいなくなれば、京佳は白銀と共になる事が可能だろう。

 だが京佳にとって、かぐやは友人でもあるのだ。例え恋敵であっても、自分の大切な友人が苦しんでいるのを見て喜ぶ者などいない。

 

(どうか無事でいてくれ、四宮…)

 

 京佳は救急車が走り去って行った方角を見ながら、かぐやの身を案じた。

 

 

 

 

 田沼正造。

 『世界の名医十選』にも選ばれ、小児心臓バイパス手術の第1人者でもある名医である。かつて総理大臣の心臓移植も任されたこの医者は、四宮家お抱えの医者でもあるのだ。そんな彼がかぐやを診察。そしてその結果わかったのは、

 

「恋の病ですね」

 

 別に重大な病気でも何でもないという事だった。

 

「こい、コイ?初めて耳にしましたが、それは最近発見された新しい病気ですか?」

 

「いえ、普通に好きな人にドキドキする感情の事です」

 

「お医者様でもご冗談を言うんですね」

 

「いえ、冗談ではありません。マジです」

 

 真剣な顔で言う田沼医師。それを見たかぐやは激高する。

 

「じゃあ何ですか!?私は恋のドキドキで倒れて救急車で運ばれたと!?」

 

「はい。私も30年医者やってますけど、初めての事でかなり動揺してます」

 

 長く医者をやってきた田沼医師。時には今にも死にそうな重症な患者が運び込まれてきた事もあった。だがそういった様々な経験のおかげで、今では大抵の事では動揺しない様になっている。

 しかし恋の病で運ばれてきた患者など初めてだ。動揺するのも無理はない。

 

「そんな馬鹿な事を言わないでください!私は恋されることはあっても恋をする事なんてありません!」

 

「……何だっけ、今はこういうのをツンなんとかって言うんだよね?」

 

「ツンデレですね」

 

 かぐやは決して認めようとしないが、傍から見れば恥ずかしがっているようにしか見えていない。そんなかぐやを診ていた田沼医師と周りの看護師達は、どこか微笑ましい気分になった。

 

「1度お話を整理しましょう。学校で特定の人物の事を考えると鼓動が早くなると」

 

「はい」

 

「そして今日、髪についていたゴミを彼に取って貰った時に、頬に手が触れて胸がキュンキュンしたと」

 

「だからそう言っています」

 

「……やっぱり恋の病ですね」

 

「違うって言っているでしょ!!」

 

 誰がどう聞いても恋の病なのだが、頑なに認めないかぐや。

 

「絶対に心臓の病気です!今までの人生でこんなに胸が苦しいのは初めてなんですから!」

 

「じゃあ初恋だねそれ。いやー、初々しいねぇ」

 

「あーもう!わからない人ですね!!」

 

 田沼医師の診断にイラつき、かぐやは思わず地団駄を踏みそうになる。

 

「かぐや様…私外で待ってます…」

 

「ちょっと早坂!?」

 

「私もこの病院通っているんですよ?もう通えないじゃないですか…マジ最悪…」

 

 あまりの恥ずかしさにその場から立ち去ろうとする早坂。その目には涙が浮かんでいる。そりゃ誰だって自分の主人がこうも醜態を晒していれば恥ずかしい。

 

「兎に角もっとちゃんと検査してください!今すぐに!!」

 

 

 

 その後、かぐやは病院にある最新鋭の医療機器による検査を行う事となった。そしてその結果はというと、

 

「凄く綺麗な心臓ですね。健康そのものです」

 

 当然だが全く問題など無かった。

 

「そんな筈ないでしょう!?穴の1つか2つ開いている筈です!!」

 

「いやそれだと死んでるね?」

 

「じゃあ何ですか!?私は顔を触られただけでドキドキするような女だってことですか!?確かに多少はうれしかったですが、それで倒れるなんてそれじゃあ私が会長の事を死ぬほど好きって事じゃないですか!?」

 

「その通りじゃないのかな?」

 

「もうやめてぇ…」

 

 あくまでも心臓の病だと譲らないかぐや。そんなかぐやを見て再び恥ずかしそうにする早坂。ここまで来たらいい加減素直になって欲しいもんである。

 

「因みに白銀くんの写真とかあるかい?」

 

「ええ。携帯に」

 

 携帯を受け取り、白銀が映っている写真を見る田沼医師。そこには夏休みに生徒会の皆と行った遊園地での写真や、軽井沢への旅行の時の写真などが入っていた。

 その中の1枚に皆で撮った集合写真があった。そこには白銀の左隣にかぐやが笑顔で写っていた。その頬は少しだけ紅い。

 

「ふむ、少し目つきが鋭いが良い子みたいだね。写真からでも何となくわかるよ。君にとてもお似合いだと思うよ」

 

「はぁ、お似合いですか」

 

「彼と恋人になりたいとかは思わないのかな?」

 

「ありえません。そもそも私は会長の事を人として理想的な存在だと思っているだけです。別にお似合いと言われても嬉しくなんてありませんからね!」

 

 かぐやはツーンとした顔でお似合いと言われた事を嬉しくないと言う。

 

「今どうだい?」

 

「心拍数200オーバー。もの凄くドキドキしてます」

 

「ほんとにもうやめてぇ…」

 

 しかし最新鋭の機械には丸わかりだった。今かぐやは、内心凄く嬉しくてドキドキしている。そして早坂は両手で顔を隠してもうやめてと懇願。これ以上、主人の気持ちを暴いて欲しくない。

 

「何か心当たりとかありますか?」

 

 早坂の傍にいた看護師が早坂に尋ねる。今まで大丈夫だったのに、今日突然こんな風になったのは原因があるのではと考えたからだ。

 

「……この人昨日、白銀会長とキスする寸前までいったんですよ。そのせいで凄く意識しているんだと思います……」

 

「あー、成程。それが原因かぁ」

 

「ちょっと早坂!それは関係ないでしょ!あれは純粋な恐怖よ!いきなり迫られたからどうしたらいいかわからなくて頭の中が真っ白になってしまっただけ!!意識しているんじゃなくて恐怖!!」

 

「心拍数再び上昇。もの凄くドキドキしてます」

 

「まだ言いますか?もう本当にいい加減にしてください…本当に恥ずかしい…」

 

 早坂から話を聞いた田沼医師が納得する。しかしかぐやはそれを否定。だが最新医療機器はそんな嘘などお見通し。かぐやの心拍数がまた上昇したのを計測。そしてそれを見ていた看護師たちは『若いっていいなぁ』とどこか懐かしんだような顔をしていた。

 

「そういえば、白銀くんと2人きりの写真は無いんだね」

 

「ええ。別に欲しいとも思いませんでしたし」

 

 嘘である。単に自分から2人きりの写真を撮りたいと言えなかっただけである。そして写真を見ていた田沼医師は、ある事が気になり聞く事にした。

 

「ところで、この白銀くんの右隣にいる眼帯をした子は誰だい?白銀くんとかなり距離が近いけど?」

 

 それは白銀の右隣にいる眼帯をした子についてだ。写真に写っている子は、白銀と肩が触れそうなくらい距離が近い。それこそ、恋人と思えるくらいに。

 

「友人です。私にとっても会長にとっても友人です」

 

「そうか。身長の高い子だね」

 

「あ、今急速に心拍数が平均まで落ちました」

 

「え?」

 

 すると突然、先ほどまで200以上あったかぐやの心拍数が平均まで落ちたと言う報告が上がる。

 

「すみません早坂さん。この子は本当に友人なんですか?」

 

 眼帯をしている子の話をしたとたん、心拍数が平均まで落ちた。いくら何でも露骨である。明らかに何かがあると思い、少しでも多くの情報を聞く為にも田沼医師は早坂にも話を聞く事にした。

 

「友人であるのは、間違いありません。でもその子、立花さんというのですが、彼女も白銀会長に好意を向けているんです…」

 

「早坂訂正しなさい!何度も言うけど私は会長に好意なんて向けてないわよ!」

 

「おまけにその人、かなり素直で積極的なんです。夏休みの間には、白銀会長と2人きりで水着デートしていましたし…」

 

「心拍数、また下がりました」

 

「成程。それは確かに心拍数も下がるね」

 

 ギャイギャイと騒ぐかぐやを無視する早坂。だが心拍数が下がった原因は判明した。そりゃ自分が好きな男が他の女とデートしたなんて話を聞けば心拍数も下がる。かぐやは京佳の事を聞かれたとき、その事を思い出したのだろう。

 

「ねぇ、これって」

 

「ええ。三角関係ね。本物は初めて見たわ」

 

 そしてその事を聞いた看護師たちはひそひそと話し出す。女性はいくつになってもこういう話が大好きなのだ。

 

「聞こえているわよ!こんなの三角関係じゃありません!何度でも言いますが私は会長の事なんて恋愛対象として好きなんかじゃありません!」

 

「君本当に強情だね?」

 

 これ程の証拠があるのに未だに認めようとしないかぐや。ここまでくるといっそ尊敬する。

 

 

 

 

 

「絶対にヤブ医者よあれ!私が何度も違うって言っているのに決めつけるなんて!!」

 

「田沼先生は世界的な名医ですよ?」

 

「裏でお金でも積んだんでしょ!」

 

「何て酷い言いがかりを」

 

 病院から帰ったかぐやは、自室のベットに腰かけながら非常に怒っていた。あの後もいくつか検査をしたのだが、体は健康そのもの。何処にも悪い所はなかったのだ。

 しかしかぐやはその結果が不服で仕方がない。検査を終えた後も別の検査を要求しようとしたのだが、流石に早坂が止め、そして連絡を受け別邸より駆け付けた執事の高橋によって力づくで帰宅させられたのだ。

 

「ほんといつになったら素直になるんですか」

 

「私はいつも素直よ!あの医者と病院が悪いのよ!!」

 

 頑なに検査結果を認めないかぐや。そんなかぐやを見ていた早坂は流石にうんざりしていた。心の中ではかぐやを応援し白銀とくっついてと欲しい願っているが、こうも意地を張られてしまえば応援も嫌になる。

 

「大体早坂!あなたはどっちの味方なのよ!?」

 

「はい?」

 

「私の従者なら主人である私の言う事を肯定するべきでしょ!なのに何であんなに私のいう事を否定しているのよ!!」

 

「そりゃ間違っているからですよ。かぐや様の言っている事が間違っていなければ私も肯定しますが、間違っているなら間違っているって言いますよ」

 

「どこが間違っているのよ!!間違えているのはあなたやあの医者でしょ!!この節穴!!」

 

 カチン

 

 我慢というものは限度がある。普段怒らない人でも、我慢の境界線は絶対に存在する。そして日ごろから主人のよくわからない作戦に巻き込まれている早坂。普段は何とかなっているが、流石に今日のかぐやの行いと今の発言はダメだった。

 

 なので早坂は、少しだけ日ごろのうっ憤を晴らすことにした。

 

「かぐや様、病院では白銀会長の事を恋愛対象としては見ていないって言いましたよね?そして別に好きでも何でも無いとも」

 

「そう言っているでしょ!何度も何度も!」

 

「じゃあ別に立花さんが白銀会長と付き合ってもいいですよね?」

 

「……」

 

 かぐや、黙る。

 

「別に白銀会長の事が好きでも何でもないんでしょ?だったら立花さんが白銀会長と恋人になっても文句言いませんよね?だって好きでも何でもないんですから」

 

「……」

 

「正直、私も立花さんと白銀会長はお似合いだと思うんですよ。お2人とも一般家庭の出ですし。白銀会長の妹さんからも慕われているようですし」

 

「……」

 

「それにこのままだと、遅かれ早かれ立花さんは白銀会長に告白するでしょう。そして白銀会長も、それを受け入れる可能性が非常に高いと思いますよ?そしたら2人は学園1のカップルになるでしょうね」

 

「……」

 

「まぁかぐや様には関係無いお話ですね。だって白銀会長の事を好きでも何でもないと言っているんですから。白銀会長と立花さんが恋人になってもいいですよね?だって好きじゃないんでしょ?なら別に問題なんてありませんね。好きでもないからかぐや様が失恋する事もないですし」

 

 怒涛のマシンガントークである。そしてその全てが、かぐやに大ダメージとなっていた。

 

「…何でそんな酷い事いうの?」

 

「あーもう。はいはい。すみません、言いすぎましたよ」

 

 遂に泣き出すかぐや。流石に言いすぎたと思った早坂はかぐやを抱きしめながら謝罪する。

 

「ううぅぅぅ…あの医者絶対ヤブなんだからぁぁぁ…信じてよぉぉぉ……私は会長の事好きなんかじゃないからぁぁぁ……」

 

「はいはい」

 

 その後、泣きつかれたかぐやは熟睡した。

 

 

 そして翌日に学校に行ったかぐやだったが、白銀に昨日の事を至近距離で聞かれ再び倒れそうになるくらい心拍数が上昇。近いうちに何とかしなければと思うのだった。

 

 

 




 Q、嫌な事思い出すと心拍数下がるの?
 A、知らない

 でも1周回って冷静になるんじゃないかなって思う。作者も落ち込みやすい性格してるけど、嫌な事思いだしたらため息ばかりついて静かになるし。

 ああ、屈強な精神が欲しい…

 次回もどうかよろしくお願いします。
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