もしもかぐやに滅茶苦茶強力な恋敵がいたら・・・   作:ゾキラファス

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 お気に入り登録800人超え。本当にありがとうございます。他にも沢山の感想や誤字報告も本当にありがとうございます。

 相変わらずノリと勢いの作品ですが完結目指して頑張りますのでどうかよろしくお願いいたします。


白銀圭と相談事

 

 

 

「あ、京佳さん。こんばんわ」

 

「やぁ圭。そっちも今帰りかな?」

 

「はい。今日はあまり生徒会の仕事もありませんでしたし」

 

 夕方、中等部の校門から出た圭は珍しく京佳と一緒になっていた。

 

「でも珍しいですね。京佳さんがこの時間に帰っているなんて」

 

「まぁね。来週からは忙しいから今のうちに帰れる時は帰った方がいいという白銀の判断だよ」

 

「そうでしたか。あの、兄が何かご迷惑かけてませんか?」

 

「迷惑なんてとんでもない。むしろ私が白銀に迷惑をかけているんじゃないかって思っているよ」

 

 普段の京佳は、生徒会の仕事で忙しく帰宅時間が遅くなる事が多い。更に今は体育祭も迫っている。そのせいで普段より仕事が増えている。なのでこの時間にこうして圭と一緒になることは非常に珍しい。

 

「あの、途中まで一緒に帰りませんか?」

 

「いいよ。いこっか」

 

 2人は一緒に帰路に着く。かぐやがこの光景を見れば間違いなく殺意の籠った眼差しを京佳に向けていただろう。

 

「もうすぐ体育祭ですけど、京佳さんはどんな競技に出るんですか?」

 

「私は仮装障害物レースに出る予定だよ」

 

「か、仮装障害物レース?」

 

「簡単にいうとコスプレをして走るんだ。何故かクラスの女子全員に推薦されてね」

 

「因みにどんな格好をする予定なんですか?」

 

「まだわからないが、多分男装じゃないかな。執事とか…」

 

(すっごく似合いそう…)

 

 尚、京佳がクラス全員の女子に推薦されたのは『絶対にかっこいい男装が似合うから』という理由だ。京佳自身は結構複雑である。彼女とて女の子。できれば可愛い服を着たいのが本音だ。

 

「そうだ圭。ちょっといいかな?」

 

「はい。何でしょう?」

 

 もうすぐバス停というところで、京佳が圭に質問してきた。

 

「君、栗は好きか?」

 

「はい?」

 

 

 

 

 

「本当にありがとうございます京佳さん。こんなに沢山の栗を」

 

「どういたしまして」

 

 圭は京佳の住んでいるマンションに来ていた。そして圭の手には、沢山の栗が入ったビニール袋がある。昨日、京佳の家に母方の実家から栗が送られてきた。その量、ダンボール1箱分。流石に母親と2人で食べきれる量では無かったので、学校の帰り道に圭に栗が好きかを聞き、自分の家へと招きこうしておすそ分けをしているのだ。

 因みに既にお隣さんなどへおすそ分けをしているが未だにダンボールの半分は栗でいっぱいである。

 

(これで今夜は栗ご飯…ふふ…)

 

 圭はテンションを上げた。白銀家の食卓は、日ごろからもやしが並ぶことばかりで旬の食材を食す事など全くという訳では無いがあまり無い。故にこうして旬の食材を食べれる事が嬉しいのだ。

 

「本当にありがとうございます。兄も喜ぶと思います」

 

「そうか。そう言って貰えると嬉しいよ」

 

 さりげなく兄も喜ぶと発言する圭と、それを聞いて嬉しがる京佳。

 

「それじゃ失礼します。本当にありがとうございます」

 

「途中まで送ろうか?」

 

「いえ、大丈夫です。お気持ちだけ受け取っておきます」

 

「そうか。気をつけて帰るんだよ」

 

「はい。失礼します」

 

 そう言うと圭は京佳の住んでいるマンションから出て、自宅への帰路へと着いた。

 

(本当、京佳さんって素敵だなぁ…綺麗だし、気遣いも出来るし、優しいし。てか何でおにぃはあんなに素敵な人の気持ちに全く気が付かないのよ。あんなにアプローチしてるのに)

 

 帰り道、圭はある種の憤りを感じていた。それは兄の事である。兄である御行はあれだけ京佳から色々なアプローチをされているのに、未だに全くといっていい程京佳の気持ちに気づいていない。

 

 そして圭は既に、京佳が自分の兄である御行に恋心を抱いているのを察している。

 

 圭と京佳の付き合いはもう1年以上になる。それだけの時間があれば、いかに鈍感な人でもそれくらい察する事が出来るだろう。圭自身、京佳には好印象を抱いている。京佳であれば、義姉になってもいいと思える程に。

 

(でも私が直接何か言うのはちょっと違う気がするし…)

 

 圭はできれば京佳の想いが報われて欲しいと思っている。その為にはささやかだが手助けもしている。少し前に兄の御行が京佳の自宅で夕飯をご馳走になると言い、その時に念を押して夕飯をご馳走になってこいと言ったのもその一環だ。

 

(ほんとどうしよ…)

 

 悩みながら、圭は自宅へと帰るのだった。

 

 

 

 

 

 白銀家

 

「はぁぁぁぁ……」

 

「……」

 

 圭が家に帰りつくと、兄である白銀がため息を吐いていた。近くには花占いをしたのか、花びらが散っている。ここ最近の白銀は、色々と悩んでばかりだ。かぐやには明らかに避けられているし、つい先日何ていきなり背負い投げをくらわされた。

 そんな踏んだり蹴ったりな事ばかりのため、こうしてため息を付いている。

 

「あ、圭ちゃんおかえり…」

 

「ん…」

 

 そっけない挨拶を返す圭。彼女はそんな兄の様子を見て、ある事を察する。

 

 『兄は恋をしているのではないか?』という事を。

 

 圭とて思春期の女の子。。正直に言えば、兄からそれらの話を聞き出したい。出来ればそういった話で盛り上がりたい。だけどそれは出来ない。出来ない理由がある。

 

 何故なら白銀圭は絶賛反抗期なのだから。

 

 白銀兄妹も昔は普通に仲が良かったし会話もしていた。だが最近の兄御行の数々の発言が『自分の事を子ども扱いしている』と感じ始め、プライドの高い圭は苛立ちを隠せなくなりつつあった。その結果刺々しい発言をする事が多々あり、兄御行もそれに対して説教染みた事を圭に言う。負のスパイラルである。

 そんな中突然沸いて出た『兄が恋しているかもしれない』という展開。圭にとってそれはとても聞きたい事だ。だが素直に聞くのは恥ずかしい。よって圭はどうにかして兄からそれらの話題をさせようと考え始めるのだった。

 しかしこうしてみると、実によく似た兄妹である。

 

「何これ?花占い?キモイんですけど?誰かに振られた?教えてよ?」

 

 結果、罵倒風質問という手を使う事にした圭。これならば恥ずかしくはない。

 

「うっせぇほっとけ」

 

「はぁぁぁぁ!?」

 

 『私が折角聞いているのに』という顔をする圭だが、実際ほぼクズな発言な為、白銀のこの反応はしょうがない。

 

「帰ったぞー」

 

「あ、パパおかえり」

 

 ここで白銀父帰宅。そして直ぐに息子の様子が変な事に気づく。

 

「どうした御行?部屋の中で花占いなんてして。好きな子でも出来たのか?」

 

「いや、そんなんじゃ…」

 

「悩みがあるなら聞かせてみろ。息子の悩みを聞くのも父親の役目だ」

 

(ナイスパパ)

 

 そして父親が素直に白銀に質問をする。それを見ていた圭は小さくガッツポーズ。これならもう自分が聞く事をしなくていい上、兄の話を聞く事が出来る。

 

「実はさ、最近良い感じかもって思ってた女子が俺の事を避けている感じになって、だけど他の男子いや後輩には普通に接していて、これって俺嫌われたのかなって思って…ってなにその顔?」

 

「今時の恋バナが予想以上にきつくて…」

 

「何だよ今時って。つか馬鹿にしてるの?」

 

「まぁ待て。俺も妻に7年以上避けられてて今頃多分年下の男と仲良くなっているだろうし、気持ちはわかるよ」

 

「桁の違う話しないでくれない!?」

 

 父親の話は文字通りレベルが違った。

 

「つーかもういい加減離婚届に判子押せよ!」

 

「それは出来ない。俺はまだ妻に未練がある。何か新しい出会いでもあれば別だがそんなの無いしな。そういえばもうすぐ体育祭だったか?御行、足が速い男子はモテるぞ。徒競走頑張れ」

 

「それが通用するのは小学生までだ!」

 

 藁にもすがる思いで相談してみた白銀だったが、大した返答は得られなかった。

 

「ったくもういいよ。誰も俺の気持ちなんてわからないし」

 

「待っておにぃ」

 

「え?」

 

 リビングから部屋へ戻ろうとした白銀に圭が話しかける。

 

「良い感じの女の子に避けられているっていうのは、好き避けの可能性もあるから」

 

「どういう意味?」

 

「だからさ、別に嫌いじゃないのに、恥ずかしくてつい避けちゃうってやつ。本音では普通に話がしたいのに、気恥ずかしくて出来ないなんてよくある話だから」

 

「……そうなの?」

 

「うん。だからさ、もう少しだけ待ってあげたら?」

 

「…成程。わかった。ありがとう圭ちゃん」

 

「別に…」

 

 先程まで落ち込んでおり顔色すら暗かった白銀だったが、圭の言葉を聞いて明るくなる。もしこの圭の言葉がなければ、もう数日は落ち込んでいただろう。白銀は圭に感謝した。

 

(でもよかった…ようやくおにぃが気づき始めて…)

 

 しかしここでとある勘違いが発生。この時の圭は、兄が恋している相手を京佳だと勘違いしていたのだ。だがこれはしょうがない。圭は京佳が白銀にアプローチをしているのは見た事あるが、かぐやがアプローチをしているのは見た事が無い。勘違いしてしまうのも無理はない。

 

(京佳さん。これなら多分大丈夫ですよ。もしかすると直ぐにでも義姉さんって呼ぶ日が来るかも)

 

 いずれ義姉になるかもしれない人に心の中でエールを送る圭。そして風呂に入って、京佳から貰った栗を使って夕飯の支度をしようと思うのだった。

 

「あー、ごめん。実はもうひとつ悩みがあるんだけど」

 

「「え?」」

 

 圭が風呂に入ろうとした時、再び白銀から悩みがあると言われ思わず足を止める。

 

「この際だ。何でも言ってみろ御行。パパに任せなさい」

 

「パパって…いやいいけど」

 

 先程は大した解決策を言えなかった父が今度こそはと思い相談を受ける事にする。そして白銀は話し始めた。

 

「実はさ、さっき良い感じになってるって言った女の子とは別の子の話になるんだけど、ちょっと妙な事があって」

 

「妙な事?」

 

「ああ。その子は俺の友達なんだけど、この前その子が男の人と食事をしていたのを偶々見た時に、なんか変な気分になったんだ。モヤモヤしたというか、イライラしたというか。これ、何だと思う?」

 

「え…?」

 

 圭にとって割と無視できない事を。

 

(え?は?それって…)

 

 少しパニックになる圭。だって今の兄の話は無視なんて出来ない。今の話によれば、白銀は気になる女性が2人いる事となるのだから。

 

「なぁ御行、それって嫉妬じゃないのか?」

 

「え?嫉妬?」

 

「だってその子が自分の知らない男の人と食事をしてのを見てモヤモヤしたんだろう?つまりお前は、その男の人に嫉妬したんだよ」

 

 そんな圭の事など気にせず、父親は息子の悩みを解決すべく『そのモヤモヤは嫉妬』だと答える。

 

(つまり俺は、立花の事が…好きって事なのか?いや、でも…)

 

 父親に言われ考える白銀。嫉妬していると言う事は、それは相手に好意を抱いているという事になる。だが白銀自身、京佳の事は未だ友達という認識だ。いくら父親に嫉妬しているのではないかと言われても、簡単に認める事など出来ない。

 

「ねぇ、おにぃ…」

 

 そうやって白銀が考え込んでいると、圭が冷たい目で白銀を見る。

 

「け、圭ちゃん?」

 

「既に気にしている子がいるのに別の子も気になりだした!?何それ最っ低!!ただの節操無しじゃん!?おにぃの馬鹿!!」

 

 圭はそう言うとお風呂へと直行。リビングには白銀と父親だけが残された。

 

「なぁ親父。これって俺が悪いのかな?」

 

「何とも言えないんじゃないかな」

 

 

 

 その日の夜、白銀家の夕飯は栗ご飯だったが、白銀のお茶碗によそわれた栗ご飯だけ明らかに栗が少なかった。

 

 因みに圭は3杯食べた。

 

 

 




 ちょっと後半が強引だったかな?

 次回も頑張るつもり。そして次回は体育祭の予定だけど石上くん関係の話はダイジェストになると思います。

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