もしもかぐやに滅茶苦茶強力な恋敵がいたら・・・   作:ゾキラファス

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 体育祭の途中ですがここで閉話をひとつ。体育祭の続きは来週の予定です。

 皆さん、ハッピーハロウィン。


特別編 四宮かぐやとハロウィン

 

 

 

「ハロウィンイベント?」

 

「そうデス。生徒会の皆さんニハ、明日商店街で行われるハロウィンイベントに出て欲しいんデスヨ」

 

 10月も終わろうとしているある日、突然学園長が生徒会室にやってきてそんな事を口にする。明日、商店街でハロウィンイベントを生徒会のメンバーでやって欲しいとの事だ。

 

「何故でしょうか?学校内のイベントならわかりますが、どうして態々学校外のイベントに?」

 

「理由は2つありマス。1つは秀知院のイメージアップデス」

 

「イメージアップ?」

 

 秀知院は世間一般的にはエリート校という認識ではあるが、『偏差値が良いボンボン共が通う学校』と言う人達もかなりいる。かつて伊井野が生徒会長選挙の時にそのような話をしたのだが、それは事実だ。

 実際、ここ最近は学校行事において地域団体からの協力が得られない事が続いている。このままではマズイと思い、学園長は考えた。

 そして出た結論が地域と学校との交流だ。地域の人達からの評価が高くなれば、おのずと秀知院へのイメージはアップする。更に学校行事への協力も得られる。まさに一石二鳥だろう。

 

「成程。それで2つ目は?」

 

「その商店街の会長は私の知己なんデスヨ。それで商店街を盛り上げたいと相談された時にとっさに『ハロウィンイベントなら盛り上がる』と言っちゃったんデス。で、言ったはいいんデスガ中々人が集まらなくテ。ト言う訳で助けて下サイ。このままだト私怒られちゃうんデス」

 

「2つ目が主な理由じゃないですか」

 

 殆ど身から出た錆状態だ。その尻ぬぐいを自分たちにやらせようとしている当たり色々酷い。

 

「楽しそうですし私は賛成です!」

 

「僕もいいですよ。楽しそうですし」

 

「私は大賛成です!秀知院のイメージアップに繋がるなら是非やるべきだと思います!」

 

「私もいいぞ。学校のイメージアップになるならやらないという事はないだろうし」

 

 藤原、石上、伊井野、京佳の4人は賛成した。藤原と石上は単純に楽しそうだから。伊井野と京佳は秀知院のイメージアップに繋がると思ったから。

 

「しかし学園長。急に言われても困ります。今からイベントの内容を考えて明日実行するのは流石に不可能です。生徒会だって暇じゃないですし」

 

 そんな中、白銀は難色を示す。1学期にあったフランスの姉妹校との交流会との時もそうだったが、この学園長はそういった事を急に言っている。1学期の時はまだ数日の猶予があったが、今回は明日だ。いくら白銀達が優秀とはいえ、とてもじゃないが間に合わない。

 

「そこは問題アリマセン。既に段取りはこちらで決めていマス。皆サンがやる事は仮装してイベントに来てくれた子供達にお菓子を配るだけデス。時間も1時間、長くて2時間程で終わりマス。これなら生徒会の仕事に支障も出ないデショウ?」

 

「まぁ、それなら…」

 

 だが学園長は既に段取りを手配済みとの事。自分たちは、ただ仮装をしてお菓子を配ればいいらしい。確かにそれなら生徒会に影響も出ない。そう思った白銀は学園長の提案を受け入れる事にした。

 

「因みに衣装は前もって衣装部の子達に手伝ってもらっていたので心配ありまセン。どうせなら今から試着しマスカ?」

 

「します!」

 

「藤原先輩反応早いっすね」

 

「だってこんな機会中々無いじゃないですか!!」

 

「まぁ確かに」

 

「では、1度移動しまショウ」

 

 学園長は本当に色々手配済みだったらしく、皆で仮装する時の衣装も手配済みと言う。そして生徒会メンバーは全員で移動を開始した。

 

(にしても、これは使えるかもしれませんね)

 

 移動中、かぐやの頭の中にある考えが浮かぶ。それは明日のハロウィンイベントで白銀から告白させようというものだ。

 

 かぐやの考えた作戦はこうだ。

 明日のハロウィンイベントで子供たちにお菓子を配る際、その子供たちに優しくすれば白銀はかぐやに母性を感じ、そしてイベント終了時に告白をしてくるだろうという作戦である。

 

(男性は母性を感じる女性に惹かれると聞いた事があります。この作戦なら何も問題ありません)

 

 正直穴だらけの作戦だと思うが、かぐやはこれでいけると思っている。

 

(ふふ、この男。普段はただのちゃらんぽらんですが偶には役に立ちますね)

 

 内心で学園長を貶して褒めるかぐや。ほんと腹黒い娘だ。

 

 

 

 

 

「会長。何でその衣装選んだんすか?」

 

「わからん。ただこれを見た瞬間『着なければ』っていう謎の使命感にかられたんだ」

 

 空き教室に移動した白銀達は、1度男子と女子に分かれていた。分かれる際、それぞれ用意された衣装の中から好きなのを選んで見せ合いっこをしようとなり、白銀達男子は今女子を待っている最中である。

 そして白銀が来ている衣装は、黄色いライダースーツの様なものに赤いグローブとブーツ。背中には白いマントが付けられている。見た感じ、如何にもなヒーローといった衣装だ。具体的にいえば、どんな強敵も一撃で倒せそうな。

 

「そういう石上の衣装は何だ?」

 

「ああ、これですか?とあるゲームに出てくる医者です」

 

「え?医者なのそれ?」

 

「言いたい事はわかりますが医者です。まぁこの姿は1番最初の姿なんでこんなんですけど、レベルアップするとちゃんと医者みたいな姿になりますよ」

 

「へぇ。最近のゲームのキャラデザって凄いな」

 

 石上が着ている衣装は丈の長い黒いコートに鳥のくちばしの様なマスク。正直、あまり医者には見えない。

 

「じゃーーーん!魔法使いですよーーー!」

 

 2人で会話をしていると、ドアが勢いよく開いて藤原が入ってきた。藤原の衣装は黒いとんがり帽子に白いワンピースの様な服装。そしてその上から茶色のコートを羽織っているまさに魔法使いな衣装だった。

 

「おおー。絵に描いたような魔法使いですね」

 

「えへへ。こういうのやってみたかったんですよ~」

 

 石上に褒められ藤原はご満悦だ。

 

「ほらほら!次はミコちゃんですよ。早く早く!」

 

「で、でも…」

 

 扉の外には伊井野がいる様だ。しかしどういう訳か中々入ってこない。

 

「大丈夫ですから!可愛いですから!私が保証します!!なんなら神様も補償します!!」

 

「ふ、藤原先輩がそこまで言うなら…」

 

 藤原に説得され、扉を開けて空き教室に入ってくる伊井野。

 

「ほう、天使か。似合っているぞ伊井野」

 

 白銀は素直にそう言う。伊井野の衣装は純白のノースリーブのワンピース。下には黒いスパッツを履いており、背中にはどうやってついているかわからないが白い羽が生えている。そして頭には黄色い輪があるまさに天使な衣装だった。

 

「やっぱりミコちゃん可愛いですね~!写真撮りたいですよ~!」

 

「あ、あの…何か羽織るもの下さい…こんなに肩出した衣装、恥ずかしくて…」

 

 藤原は絶賛しているが伊井野は顔を赤くし、何か羽織るものを求める。今までこんな格好などした事なかった為恥ずかしいのだ。ましてやここには男子もいる。余計に恥ずかしいものだろう。

 

「僕のこのコート使う?」

 

「あんたのは借りない」

 

「お前人の善意を」

 

 石上が自分の着ている黒いコートを貸そうとしたが伊井野はこれを拒否。石上は少しへこんだ。

 

「そこまで恥ずかしがるならその衣装やめればよかったじゃないか。何で着てんだよ」

 

「だって、藤原先輩がこれ以外ありえないって言うから……」

 

「藤原先輩…」

 

「おい藤原、伊井野で遊ぶな」

 

「遊んでませんよ!私は純粋にこの天使の衣装がミコちゃんに似合うと思っただけです!!」

 

 2人に追及された藤原は弁明するが、その目は少し泳いでいる。恐らく半分くらいは本当に似合うという思いがあるのだろうが、もう半分は遊び心なのだろう。

 

「すみません遅れました。これ歩きにくくて」

 

 そんな時、今度はかぐやが空き教室に入ってきた。

 

「おお、四宮先輩はお姫様ですか?いいっすね」

 

「あら。ありがとう石上くん」

 

 かぐやの衣装は絵に描いたようなお姫様といった衣装だった。ピンク色のドレス。頭にはティアラ(プラスチック製)。まるで絵本から飛び出してきたような感じだ。

 

「おおおお!?かぐやさん凄いですーー!!すっごく綺麗ですーー!!」

 

「凄い…四宮先輩本物のお姫様みたい…」

 

「ふふ、2人共ありがとう」

 

 かぐやの衣装を絶賛する魔法使いと天使。そしてヒーローはというと、

 

(………いい)

 

 キマっていた。かつてかぐやが猫耳を付けた事があったが、今のかぐやはそれとは別方向で白銀の趣味に刺さっていた。

 

(いやマジでいいなおい。まるで本物のお姫様だ…是非エスコートしてみたい…)

 

「それで会長?どうでしょうかこの衣装は?」

 

 かぐやが1回転しながら白銀に感想を求める。

 

(いや滅茶苦茶似合ってるって言いたい!でも、もしここでそんな事をいえば、『あら会長。もしかして私の姿に見惚れてました?お可愛い事』って言われるに決まってる!一体なんて答えれば…!)

 

 白銀、悩む。

 ここでかぐやに似合っていると言うのが簡単ではないからだ。もし素直にそんな事を言えば、絶対にそこに突け入れられ後々ネタにされる。何とかしてかぐやにネタにされない感想を言わなければならない。

 

(ふふ。会長悩んでいますね。まぁ流石の会長もここで言葉を濁すなんてしないでしょうし、これはもう貰ったわね。明日には会長から告白もしてくるでしょう)

 

 かぐやは勝ちを確信。この調子なら、明日のイベント終了と同時に白銀から告白もされるだろうという謎の自信も出てくる。

 

「すまない。少し着替えに手間取ってね」

 

(ちっ。何てタイミングの悪い)

 

 だがここで邪魔が入った。遅れてきた京佳がやってきたのだ。そしてかぐやが扉の方へ振り向くと、

 

『え?』

 

 そこには何か黒い人がいた。

 

 角笠のような幅広の円形兜を被り、ほぼ全身を覆い隠している黒いマント。そして手にはかなり大きくてゴツイガントレット装備されており、足にはこれまたゴツイブーツを履いている。正直、声を聞かないと誰だかわからない。

 

「いやゴツイ!?てかなんかこわい!?え!?本当に京佳さんですか!?パッと見わからないんですけど!?」

 

「あの、立花先輩?何ですかそれ?」

 

「わからん。衣装部の子から私にはこれが1番似合うと言われて着てみたんだが、元ネタなんだろうな?」

 

「あー、それとある漫画のキャラっすね。作中だと主人公の師匠みたいな感じの」

 

 どうやら石上は元ネタを知っているらしい。その後石上は説明をした。京佳が着ている衣装の元ネタのキャラは京佳より身長が大きい事。見た目は若いのに実年齢は60以上の事。ファン人気は高い事など。

 

「ふむ、少し気になるな。レンタルビデオ店で借りてみようかな」

 

「やめたほうがいいですよ。見た目は子供向けっぽいんですけど中身はかなり残酷な作品なんで」

 

 石上は衣装の元ネタに興味示した京佳を止める。自分のようなトラウマ持ちを増やしたくないからだ。

 

「なぁ立花。それ前見えているのか?」

 

「見えているぞ。でもこれ、子供泣くよな」

 

「まぁ、かわいくはないしな…」

 

「男の子は喜びそうですけどね」

 

 確かにこれを子供が見たら泣きそうではある。パっと見怖いし。だが一部の男の子にはかなり受けそうだ。何故ならかっこいいから。

 

「おおー!グッジョブです皆サン!お似合いですよ!」

 

 ここで学園長再び登場。

 

「フム、サイズもピッタリですカ。これなら明日のイベントは成功しそうデスネ」

 

「あの学園長。私だけ子供が泣きそうなんですけど…」

 

「大丈夫デスヨ。最近の子供はそれくらいじゃ泣きまセン」

 

「そういうものでしょうか」

 

「デハ皆さん。明日のお昼13時ニ商店街に集合でお願いシマス。後の事は私に任せて下サイ」

 

 そう言うと学園長は空き教室から出て行った。

 

「あの会長。これ態々着替える必要ありましたか?」

 

「いうな石上」

 

 その後、また男女それぞれに分かれて制服に着替え、生徒会室で業務を行った後帰宅するのだった。

 

(しまった!会長から感想聞いていない!?どうしよう!?)

 

 帰りの車の中で、かぐやは白銀から自分の衣装の感想を聞いていない事を思い出す。

 

(いえ、明日聞けばいいだけですね。全く私ったら、少し気が緩んでいたみたいね)

 

 しかし直ぐにかぐやは明日聞けばいいと思い冷静になる。そしてその日は少し早めに寝るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『本日、関東地方は非常に強い大雨となります。特にお昼ごろから都内は非常に激しい雨に見舞われるので十分に注意してください』

 

「……」

 

「かぐや様、先ほど学園長から連絡がありまして、本日のハロウィンイベントは中止になるそうです」

 

「私の作戦が…感想が…」

 

「はい?」

 

 

 




白銀=一撃男
かぐや=帝国の女性皇帝
京佳=不動卿
藤原=40超えのA級冒険者
石上=ギリシャの医神
伊井野=サキュ嬢通いの天使

京佳さん以外は中の人つながり。

次回も頑張りたいなーって。

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