もしもかぐやに滅茶苦茶強力な恋敵がいたら・・・   作:ゾキラファス

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 本当に沢山のお気に入り、感想、評価をありがとうございます!これからも完結目指して頑張ります!

 今回で体育祭終わり。


秀知院学園の体育祭(drei)

 

 

 

 数か月前―――

 

「何?要注意人物だと?」

 

「はい会長。そういった生徒が進学してくるそうですよ」

 

「えぇ…かぐやさん、何ですか要注意人物って…何か怖いんですけど…ね?京佳さん」

 

「確かにそう言われると怖いな。どういう生徒なんだ?」

 

「何でも自分が好意を向けていた女生徒をストーカーし、その女生徒と恋仲だった男子生徒を無理矢理別れさせるため殴ったとかそんな噂のある生徒です。実際、大勢の生徒が殴ったところを目撃しています」

 

「ストーカーか。それは穏やかじゃないな」

 

 生徒会では業務の休憩中に白銀、かぐや、藤原、京佳の4人が話をしていた。話題は中等部から進学してくるとある生徒の事である。かぐや曰く、かなりの要注意人物らしい。

 

「おまけに未だに反省文を提出していないそうですよ。教師たちも困っているとか」

 

「成程。しかし四宮が人の噂を気にするとは珍しいな。何かあったのか?」

 

 かぐやは基本的にこういった噂話を気にしない。そんなかぐやが気にする噂。白銀はそこが気になり問いかける。

 

「ええ。この話を聞いた時、少し妙な違和感を感じまして」

 

「違和感?」

 

「はい。本当に些細な違和感でしたが、どうもひっかかって」

 

「ふむ……藤原」

 

「はい!仲の良い後輩に色々聞いてみますね!」

 

「立花」

 

「了解だ。中等部の教師に話を聞いてくるよ」

 

「では私も色々調べてみます」

 

 こうして生徒会はその噂の生徒を徹底的に調べてみる事にした。なんせあの四宮かぐやが気にするレベルである。調べる価値は十分にあるだろう。

 

 その後の調査で、生徒会はその生徒がとある女生徒を守るために起こした行動だったのではないかと判断。

 そして白銀はその結論が書かれたレポートを持って噂の男子生徒、石上優の家へと赴いた。

 

「誰…ですか?」

 

 部屋の中にいた石上は酷い顔をしていた。髪は伸び、目には隈があり、肌は白く、声も枯れかけている。長い間、部屋に閉じこもっていたのは明白だ。

 

「俺は秀知院学園高等部生徒会長、白銀御行だ。石上優。君に話したい事があってきた」

 

「僕に?」

 

 白銀は調べあげ、生徒会で出した結論を口にする。

 

「以上が俺達、生徒会が出した結論だ。ついでに言うと、大友と荻野の2人はその後直ぐに破局。そして2人共既に秀知院を去っている。荻野の方はわからないが、大友の方は今は楽しそうに別の学校で過ごしているよ」

 

「それ、本当ですか?」

 

「やはり見立てに間違いななさそうだな」

 

 白銀は、石上優という生徒が噂通りの生徒ではないと確信する。

 

「確かに、もっとスマートなやり方があったのは事実だ。だが結果として、荻野は悪い遊びをやめ、大友に被害が及んでいる事は無い。お前の目標は達している。頑張ったな、石上。よく耐えた。お前は決して、おかしくなんてない」

 

「は…はい…!」

 

 この日、石上は突然現れた白銀に救われた。その後、白銀の推薦もあって生徒会に所属。今では替えが効かない程優秀な会計へ、そして生徒会の大切な仲間となっている。

 

 

 

 

 

「石上!私あんたのせいで荻野くんと別れたのよ!どうしてくれるよの!」

 

 時間は体育祭へと戻る。運動場では、団体対抗リレーの真っ最中だ。そして石上は、足を怪我した応援団長の代わりにアンカーとして出走していた。今は自分にバトンがくるのを待っている。

 そんな石上のすぐ近くにあるた保護者用のテントには大友がいた。その目には石上に向けた敵意が籠っている。

 

「全部全部アンタのせいだ!」

 

 石上に罵詈雑言を浴びせる大友。

 

「全く、よくもまぁ好き勝手にあんな事が言えますね」

 

「ですね」

 

 そんな大友を見ているかぐやと早坂。この2人は石上が起こした事件の真相を知っている。それ故、何も知らずに石上に罵声を浴びせている大友に苛立ちを覚えるのだ。

 

「もし彼女が真相を知ったら、果たしてどんな顔をするでしょう?」

 

「あの、かぐや様?言いませんよね?」

 

「ええ、言わないわよ。それが石上くんの願いだもの」

 

 石上から事件の真相を聞いたかぐやは当初、勿論真相を公表するものだと思っていた。しかし石上はそれを拒否。

 

「何も知らなければ彼女は笑顔のままでいられるから、ね」

 

 もし事件の真相を公表すれば、大友は間違いなく傷つく。そうなれば今まで自分が黙っていた事も無に帰す。よって石上は、いくら大友に荻野の被害が及ばないと知っても、彼女の笑顔を守る為に真相を公表する事を拒否したのだ。

 

「クソ石上!顔からこけて怪我しちゃえ!」

 

(それにしても耳障りですね…)

 

 だがそれはそれとして、大友の罵声はかぐやの苛立ちを大きくさせる。正直、直ぐにでも口をホチキスで塞いでやりたい気分だ。

 

(石上くんは大丈夫かしら?)

 

 いくら石上が過去を乗り越えたとしても、いつトラウマが再発するかわからない。もしかすると大友が現れたこの瞬間にも、石上の精神は限界に向かっているかもしれないのだ。現に今の石上の顔色は決して良くない。どこか目も虚ろでもある。

 

「会長?」

 

 そんな時、自分の走る番を待っていた石上の元へ白銀が行くのが見えた。そして石上の頭に自分がしていた鉢巻をまく。すると石上の顔色が良くなり、目も真っすぐ前を向きだす。

 

(ああ。あれなら大丈夫ですね)

 

 かぐやはもう石上を心配する必要は無いと思い、リレーを見る事にした。

 

 

 

 一方、大友から罵声を浴びせられていた石上はある事を思い出していた。

 

『お前が反省文に書く文章はこうだ!』

 

 かつて白銀が反省文に殴り書いた言葉を。

 

『初めまして石上くん。今日からよろしくお願いしますね』

 

『よろしくです~』

 

『困った事があったら何でも相談してくれ』

 

 自分の事を見てくれた生徒会の先輩達を。

 

「ちょっと!何か言いなさいよ!石上!」

 

 未だに石上に罵声を浴びせる大友。そして石上はそんな大友に対して、

 

「うるせぇばーか」

 

 と言い、バトンを受け取り走って行った。

 

「ふふ、ほんと可愛い後輩だわ」

 

 それを見たかぐやは笑いながら石上の走りを見るのだった。

 

 

 

 

 

「ほんと石上って最悪!何がうるせぇバーカよ!」

 

 大友は絶賛不機嫌だった。先程まで行われていた団体対抗リレー。その時に石上に言われた言葉が原因だ。

 

「そうだよね!本当の事でも言っていい事と悪い事があるのに!」

 

「え?」

 

「ほんとだよね!言わないのが優しさってのもあるのに!」

 

「え?」

 

 隣にいた秀知院在学の友人たちに突然そう言われる。不意にナイフで背中を刺された気分だ。

 

「まぁ…うん…私…進学試験落ちたから…別の学校に行ってるんだけどね…」

 

「京子って成績、下から3番目とかだったもんね…」

 

「いやあの、実は1回だけ…最下位も取った事あります…」

 

「えぇ…」

 

「だからもう少し勉強しとけって言ったのに」

 

 大友が高等部へ進学できなかった理由は、進学試験に落ちたからである。実は彼女、成績が非常に悪かった。それこそ、石上よりずっと。

 秀知院は進学試験が比較的緩くなっており、最低限の勉強さえしていれば進学は可能なのだが、大友はその最低限の勉強すらしておらず進学試験に落ちた。そして現在は、都内の女子高に通っている。

 

「でももう帰るの?打ち上げに顔出せばいいのに」

 

「ごめーん。私この後合コンだから」

 

「ええ…」

 

「そういやこういう子だったわ…」

 

「でも今日はよかったよ。石上に言いたい事言えたしね」

 

 ファイテングポーズを取りながらそう言う大友。そして校門まで行こうと校舎の曲がり角を曲がった時、

 

「わぶ」

 

 大友は何かにぶつかった。

 

(え?何これ?柔らかい…)

 

 自分の顔に当たるどこか既視感のあるとても柔らかい感触。できればもう少し堪能していた気分である。

 

(いやまって。ひょっとしてこれ、胸?)

 

 大友は既視感のある柔らかい何かの正体に気づいた。それは自分にもついている2つの双丘だ。つまり今自分は、女性の胸に顔をぶつけたのだと理解する。

 

「あ、すみませ…」

 

 いつまでもこのままの状態でいる訳にはいかないので顔を離す大友。そして1歩下がり、ぶつかった相手を見て驚いた。

 

(いやでっか!?)

 

 大友の目の前にいたのはとても身長の高い胸の大きい女生徒だった。しかも何故か左目にはゴツイ眼帯を装着している。

 

(何この人。何で眼帯なんて…ってそうじゃなくてとりあえず謝らない…と…)

 

 大友は少し呆気の取られたが直ぐにぶつかった事を謝まろうとした。しかし、目の前の高身長の女生徒の隣にいたもう1人の女生徒を見て固まる。

 そこにいたのはニット帽のような帽子をかぶった目つきの悪い女生徒。あまり秀知院のVIPな人達を知らない大友さえ知っている有名人であり、秀知院で絶対に敵に回してはいけないと言われる人物。

 

(り、龍珠桃先輩!?)

 

 広域暴力団「龍珠組」組長の娘、龍珠桃。

 

 大友は再び目の前にいる長身の女生徒に目を向ける。左目に医療用の白いカーゼの眼帯ではなく、何の素材かわからない黒く大きな眼帯。そして非常に恵まれた身長。それを見た大友はその女生徒の正体に当たりをつける。

 

 この人は恐らく、龍珠桃の護衛なのだと。

 

 暴力団組長の娘とその護衛。そしてぶつかったのは自分が前をよく見ずに歩いていたから。つまり悪いのは自分で、この場において狩られる側も自分。

 

(こ、殺される…!?)

 

 非常に短絡的な思考だが、大友は直ぐにそう思った。

 

「ご、ごめんなさぁぁぁぁぁぁぁい!!」

 

 そして命の危険を感じた大友はその場から脱兎の如く逃走。その目には涙が浮かんでいる。

 

「あ!京子ーーー!?」

 

「ご、ごめんなさい!ごめんなさい!!」

 

 それを見ていた大友の元学友たちも後に続く。残ったのは高身長女生徒と龍珠の2人。

 

「なぁ立花。今のってさ、私とお前どっちにビビったと思う?」

 

「両方じゃないか?」

 

 勿論その場にいた高身長女生徒は龍珠の護衛などでな無く京佳である。この2人、ちょっとお花を摘んできた帰りに大友にぶつかり今のような事が偶然起こったのだが、2人とも割と慣れた出来事だったので特に落ち込まず、いつもと変わらない状態で話す。

 

「にしても、私はともかくお前未だに怖がられてるんだな」

 

「みたいだな。やっぱこの眼帯が原因か」

 

「いや身長だろ。女子で180って何だよ。私も最初見た時ビビったぞ」

 

「身長に関しては言わないでくれ。気にしてるんだよ」

 

「あ、わりぃ」

 

 仲良さげに話す京佳と龍珠。というのもこの2人、1年生の頃に白銀と共に生徒会に所属していた頃からの付き合いで、数少ない友人なのだ。

 

「ところで龍珠。そろそろ戻らないか?最後の選抜リレーもあるし」

 

「ダルい。このままさぼっていいか?」

 

「あと少しなんだから我慢しろ。テントにいるだけでもいいんだから」

 

「ったく、面倒くさい」

 

 こうして2人はテントへと戻って行った。

 

 その後、最後の種目である選抜リレーが行われ、

 

『赤組!大勝利!優勝です!!』

 

 体育祭の勝利は赤組となった。

 

 こうして、秀知院学園体育祭は大いに盛り上がり大成功を収めたのだった。なお石上は、体育祭終了後に応援団の打ち上げに参加。自分でも驚く程盛り上がった。

 

 

 

 因みにだが、大友はその後体調を崩し、合コンへは行けずじまいだった。

 

 

 





 小話
 石上くんが生徒会に入るまで生徒会は会長以外女子しかいなかった為、一部の生徒から『ハーレム生徒会』と言われていたとかなんとか。

ちょこっとだけ大友ちゃんに仕返し。これで体育祭は終わりです。次回からまた日常書いていきます。

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