もしもかぐやに滅茶苦茶強力な恋敵がいたら・・・   作:ゾキラファス

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 酷いタイトルである。


藤原千花によるシコシコゲーム

 

 

 ある日生徒会室で、

 

「何回でもシコシコしてよくて、でも最低1回はシコってしなきゃいけなくて、限界に達した人が負けってゲームしませんか!?」

 

 突然藤原がそんな事を言いだした。

 

「何ですかそれ?」

 

「うう…」

 

「まさか…そういう…?」

 

 それを聞いたかぐやはきょとんとし、伊井野は恥ずかしそうに顔を俯き、京佳は少しだけ顔を赤くしながら考える。

 

「お前は急に何を言い出すんだ藤原」

 

「そうですよ。せめてもう少しちゃんと説明をしてくださいって」

 

「だがとりあえずやってみるか!!なぁ石上!!」

 

「ですね会長!!是非やりましょう!!」

 

 そして男子2人はヤル気をだした。だって今の藤原の台詞はそういう意味で捉えられてもおかしくない。そういう意味で捉えた男子ならば、ヤル気を出さない方が可笑しい。

 

「じゃあ準備しますね~」

 

 そういうと藤原は、どこからか出した道具を設置してゲームの準備を始める。

 

 用意したのは空気入れと風船。それを藤原はつなげると、風船に空気を送り出す。

 

((あああーーーコレかーーー!!))

 

 膨らんでいく風船を見た男子2人は、藤原がやろうとしているゲームが何かを把握。よくバラエティー番組で見る、正式名称不明のアレ、通称『風船割り』である。

 

「ルールはこうです!この空気入れを順番にシコシコしてもらいます。1人何回でもシコっていいんですけど、最低1回はシコらないといけません。そしてこの風船を最後に割った人が負けです!」

 

「ルールはわかった。だが藤原、その言い方はマズイ。少し止まれ」

 

「私ったら、ついエッチなゲームなのかと」

 

「気にするな伊井野。私も同じ事を思った」

 

「え?今のどこがエッチなんですか?」

 

 藤原の説明を聞いた伊井野は納得し、自分の勘違いを恥じた。京佳は藤原の説明がかなり問題があると思いそれを指摘。そしてかぐやは今の説明のどこがやらしいのかわからず、ひとり頭にハテナマークを浮かべた。

 

「ところで何で男子2人はヤル気下がってるんですか?」

 

「「別に…」」

 

「あれ?不貞腐れてません?」

 

 一方白銀と石上は、そういうゲームか思ったら割と健全なゲームだったのを知りヤル気を下げていた。

 

「今からやらないって言ったら意味出るよな?」

 

「めっちゃ出ますね。もうやるしかありませんよこれ」

 

 今更後に引けない。もし引いたら女子達にドン引きされる可能性もあるので、男子2人はしぶしぶゲームをやる事にする。

 

「ところで藤原さん。こんな風船どこから持ってきたんですか?」

 

「体育祭で使った風船の余りです。捨てるの勿体無いから大きいのを貰ってきたんです」

 

「成程!エコの精神ですね!」

 

「まぁ、とりあえず順番決めるか。じゃんけんでいいか?」

 

 そして生徒会メンバーでゲームの順番を決めようとしていた時、生徒会室に来客が現れた。

 

「すみません。ボランティア部の活動報告書をもってきました」

 

「会長こんちわーっす」

 

 柏木渚と田沼翼の2人である。

 

「え?皆さん何してるんですか?」

 

 渚は質問をした。生徒会室にきたら、生徒会メンバーが風船の前でじゃんけんをしようとしているのだ。突然こんな光景を見たら誰だって質問の1つや2つするだろう。

 

「丁度いいです!柏木さんと田沼くんもやりませんか!?」

 

「「え?」」

 

 そして2人を見た藤原は2人もゲームの参加を促す。

 

 その後、藤原に押し切られる形で渚と翼の2人も強制的にゲームに参加する事となった。因みに順番は、藤原、白銀、かぐや、京佳、石上、翼、渚、伊井野となっている。

 

 

 

「なんかすまないな田沼」

 

「いいですって。なんか面白そうでしたし」

 

「そう言って貰えると助かる」

 

 ゲームを開始して数分。白銀は翼に話しかけていた。藤原がかなり強引に2人に迫り、急遽ゲームに参加する事となった為、生徒会長の白銀は申し訳ない気持ちだった。だが翼は特に気にしている様子はない。それを知った白銀は胸を撫で降ろす。

 

(しかし特に罰ゲームの無いゲームだし、それなら確かに大勢で参加した方が楽しいだろう。偶にはこういうゲームも悪くないかもな)

 

 自分の順番がきた白銀は、風船に空気を送りながらそう思う。このゲームは特に罰ゲームが無い。しいていえば風船を割った時に、至近距離に破裂するのが罰ゲームだろう。これなら普段のように変な駆け引きも必要ない。皆で楽しみながらゲームを遊ぶことができる。

 

 だが、

 

「いや思ってたより大きいな!?」

 

 順番を何周かし、何回も皆が風船を膨らませ、どんどん大きくなっていく風船をみた白銀は焦りだす。

 

(いやいやいやいや!これはマズイ!これはマズイって!!!)

 

 既に風船は人が1人すっぽりと入るくらいに大きくなっている。もしも、こんな大きな風船が自分の目の前で破裂したらと思うと、普通に怖い。間違いなく腰を抜かす。

 

(もしそんな事になったら皆に失望される!それだけは何としてでも避けなければ!)

 

 生徒会長の威厳を保つ為にもそんな失態は許されない。

 

 白銀が悩んでいる時、藤原が空気を入れ次はかぐやの番になった。かぐやの人生の中で、膨らんだ風船を態と割るという経験など当然存在しない。つまりかぐやにとって、このゲームは完全に未知の存在。知らないというのは、当然怖い。

 もしも、至近距離でこんな大きな風船が割れたらどれだけ大きな音が鳴るかわからない。いくら四宮家の令嬢とはいえ、かぐやも年ごろの女子である。人並に恐怖くらいする。

 

「全く、皆さんこんなのの何が怖いって言うんですか?ただの風船ですよ?」

 

 だが今のかぐやにはルーティンがある。右手で自身の左頬を触る事で精神を落ち着かせる事が可能なのだ。故に先ほどから、かぐやはこのルーティンを実施。傍から見れば非常に冷静でいるように見えている。そしてそのまま空気入れを使おうとした。

 

「かぐやさん。その空気入れ両手じゃ無いとちゃんと空気入れれませんよ?」

 

「え゛…?」

 

 しかしここで藤原がかぐやにそう指摘してきた。そう言われ、かぐやは1度片手で空気入れを押しているが、ビクともしない。

 

(やだやだやだ!怖い怖い!これ本当に怖い!やるなんて言わなきゃよかった!というかこんなのの何が楽しいの!?助けて早坂ーー!!)

 

 かぐやはルーティンを封じられ恐怖する。ルーティンがなければ精神を落ち着かせる事などできない。そして早坂に助けを求めるが、当然助けにはこない。もう自分でどうにかするしかないのだ。

 

「はい次立花さん!!」

 

 何とか1回だけできたかぐやは、即座に京佳にバトンタッチをする。

 

「大見得切ったのに1回しかしてないじゃないか」

 

「そういう立花さんは出来るんでしょうね?」

 

 京佳に言われ、思わず反論するかぐや。

 

「大丈夫だ。私は幽霊と悪酔いした母さん以外に怖いものなんてない!!

 

「え?悪酔いした立花さんのお母様ってそんなに怖いんですか?」

 

「ああ、怖いよ。何をしでかすかわからないから…」

 

 だが京佳は大丈夫だと言い、ゆっくりと風船へを向かって歩き出した。

 

 余談だが、京佳の母親は普段滅多に悪酔いしない。だが時たま仕事のストレスで強い酒を飲んでしまい、悪酔いした時は本当に怖い。何故か殺気をまき散らしながら部屋の中を下着姿で徘徊したり、包丁でジャグリングをしだす始末。特に包丁でジャグリングをしだした母を見た時の京佳は本気で泣きそうになった。

 京佳は大きく膨らんだ風船の元へたどり着き、空気入れを手にして空気を入れようとした。

 

(あ、これ怖い…普通に怖い…助けて白銀…)

 

 だが出来ない。

 遠くからなら特に怖くなんて無かったのだが、こうして近づいてみるとその大きさに圧倒される。そして考えてしまう。『もしもこれが目の前で破裂したら』と。

 先程、幽霊と悪酔いした母親以外に怖いものなど無いと言った京佳だが、それは今すぐ撤回したい気持ちになる。そして心に中で白銀に助けを求めた。

 

「よし次は石上だ!!」

 

「立花先輩も2シコしかしてないじゃないっすか」

 

 何とか根性で2回空気を入れれた京佳。しかし石上は冷めた目で京佳を見る。

 

「そう言う石上は私より多く出来るんだな?」

 

「まぁ、見てて下さいよ」

 

 京佳に言われ、風船に近づく石上。彼は体育祭で各段に成長をした。彼は学んだのだ。大事なのは目を逸らさない事と。

 

(そうだ。よく見れば何も―――)

 

 そして空気入れに手を掛けた石上は、

 

(あっ…よく見たら怖い…すっごい怖い…隙見て逃げよう…)

 

 普通に怖がっていた。そしてこのゲームから逃走する事を考える。

 

「はい次田沼先輩!!」

 

「わかったよ」

 

 何とか1シコだけし、次の順番である翼へ声を大にして言う。

 

「ま、パパっとやっちゃおっか」

 

 翼は余裕な顔をしていた。所詮風船。例え自分の番で割れても大きな破裂音がするだけだと。

 

「頑張ってね翼くん」

 

「はは。渚の応援があれば何でもできる気がするよ」

 

 彼女である渚の応援を受け取り空気入れに向かう翼。

 

(イチャイチャしてんじゃねーよ…)

 

(死ね死ねビーム…死ね死ねビーム…)

 

(何見せつけているんですか?この世から消しますよ?)

 

(私もいつか白銀とあんな関係になりたいなぁ…)

 

 そんな恋人同士のやり取りを見た白銀、石上、かぐやはキレそうになる。そして京佳はいつか白銀とあんなやり取りをしたいと思うのだった。

 

「さーて。んじゃ」

 

 翼は空気入れに手を掛ける。そして目の前の風船を見た瞬間、

 

(いや怖!?なにこれ怖!?超怖!?こんなに怖いの!?)

 

 恐怖でおかしくなりそうになる。まさか自分より大きな風船がこれ程の恐怖をもたらすとは思いもしなかった。これ以来、翼はどんな事も慢心せずにしっかりとしようと思うのだった。

 

「よし次渚!!」

 

「おい田沼。お前震えていないか?」

 

「いやー?気のせいじゃないっすかー?ははは」

 

 翼は笑ってごまかすがその目には恐怖が浮かんでいる。

 

「じゃあ私行きますね?」

 

 そして今度は翼の恋人の渚番となった。祖父が経団連理事で、時々どこか深い闇を出したり、既に恋人である翼と神ってると言われてたりしている渚。そんな彼女が高々風船程度に恐怖するとは思えない。恐らく大半の人がそう思っているだろう。

 

(あ、ダメだこれ…怖い…大丈夫と思ったけど全然大丈夫じゃない…)

 

 が、ダメ。

 後にサタン等と言われる渚だが、彼女もこんな大きな風船が破裂すると思うと怖いのだ。結果、他の皆と同じように1シコで終わる。

 

「はい次伊井野さんお願い!!」

 

「は、はい!!」

 

 最後は伊井野。しかし既に風船はパンパンに膨らんでいる。これにより、伊井野は未だかつてない恐怖に見舞われていた。

 

「ふ、ふん!」

 

 だが何とか根性を振りしぼり、1シコをする。そして伊井野は次の順番である藤原に代わろうとしたのだが、

 

「ミコちゃん!まだまだイケますよ!」

 

「ええ!?」

 

 突然藤原の無茶ぶりが発生。藤原を尊敬している伊井野は、それに逆らう事をせず更に1シコをする。しかし藤原の無茶ぶりが1回で終わる訳などない。

 

「え、えい!」

 

「もっといってみましょう!」

 

「え!?あ、はい…!」

 

「まだまだ!!」

 

「あっ…あっ…」

 

「からの~!」

 

 何回も伊井野に無理やり空気をいれさせる藤原。そしてそれを見た皆は『こいつクズだな』と以心伝心。だがこのまま伊井野が風船を割らなければ、また自分の番となる。

 

「次期生徒会長の器を見せろ!」

 

「恐怖の数だけ勇気に価値が生まれる!」

 

「それが強さよ伊井野さん!」

 

「辛かったり怖かったりした時こそ逃げるな戦うんだ!」

 

「最後まで希望を捨てちゃいけないよ!」

 

「頑張って伊井野さん!決して諦めないで!自分の力を信じて!」

 

 そしてよって全員が藤原に乗る事にした。誰だってもうあんな恐怖を体験したくない。それ故の行動である。

 

「あ、あの…流石にこれ以上は…」

 

 周りに言われ、何回も空気を入れた伊井野。その結果、風船は今にも破裂しそうになっている。その大きさ、実に生徒会室の4分の1を占めそうになっていた。そして再び順番が1周し、藤原の番となる。

 その時、かぐやが動く。筆記用具で作った即席の吹き矢。それを誰にも見られない様に風船に向ける。

 

(そうよ!これは頭脳戦!私の番で破裂しなければ私の勝ち!あくまでそれに勝つためのストイックな姿勢!決して私が怖いからじゃないんだから!)

 

 自分にそう言い聞かせて吹き矢を拭くかぐや。

 

「ん?虫かな?」

 

 だが無情にも吹き矢は外れ、伊井野の肩に当たる。

 

(こ、このままじゃ…!)

 

 万事休す。かぐやは絶望を隠し切れない。しかしかぐや以上に絶望している者がいた。

 

(頼む藤原ーー!ここで割ってくれーー!!俺本当に怖くてもう無理なんだーー!!)

 

 生徒会長白銀である。もしここで藤原が割れなければ、次は自分の番。そして風船はもう今にも破裂しそうな状態。自分の至近距離でこの大きな風船が破裂したらと思うと、恐怖でおかしくなりそうになる。

 

 そんな時だった。

 

「入るわよー。京佳いるー?ちょっと話があるんだけどー」

 

 新たな来訪者がやってきたのは。

 

 

 

「え?なにこの状況?」

 

 生徒会室に入ってきたのは四条眞妃。白銀のクラスメイトでかぐやの親戚で京佳と渚の友達だ。そんな彼女の目に入ったのは、どこかピリピリした空気を出している生徒会役員と自身の友達。そして異様に大きく膨らんでいる風船。これはどういった状況なのか、頭の回転が速い真紀ですらわからない。

 

 だが生徒会室にいた面子にとっては闇に光が差したような状況だった。

 

「丁度よかった眞妃。これに今すぐ飛び込みで参加してくれ」

 

「え?」

 

「そうだね。是非眞妃ちゃんにも参加してもらおっか」

 

「え?は?翼くん?」

 

「そうですね。大勢でやった方が楽しいですし。参加してください眞妃さん」

 

「叔母様まで何言ってるの!?」

 

(叔母様?)

 

 京佳、翼、かぐやが眞妃を空気入れの前まで誘導する。突然の事に困惑する眞妃。そしてあれよあれよという間に空気入れの前にきたしまった。

 

「大丈夫だ眞妃。君はただこの空気入れを押すだけでいい」

 

「いやせめて説明して!?」

 

「後で説明します。眞妃さんさっさとやってください」

 

「だから説明してよ叔母様!?」

 

 訳が分からない眞妃。もうお分かりだろうが、これは眞妃を生贄にしようとしている状況だ。誰だってこんなに膨らんだ風船を割りたくない。よって、たった今現れた眞妃を生贄にし、自分たちは助かろうという割とクズな所業である。

 

(なんかよくわからないけど、まぁ翼くんもやってっていうし。それならしてあげなくもないわね)

 

 しかし周りに言われながらも、人が良く優しい眞妃は空気入れに手を掛ける。

 

 そして気づいた。今手にしている空気入れが目の前の巨大な風船に繋がっている事。その風船が、今にも破裂しそうな事を。

 

(え?何これ怖い…凄い怖い…これもう破裂するじゃない…誰か助けて…)

 

 眞妃は恐怖で足が震えだす。

 

「大丈夫だ眞妃!頑張れ!」

 

「頑張って眞妃ちゃん!眞妃ちゃんなら大丈夫だから!」

 

「何が!?ねぇ何が大丈夫なの!?」

 

 京佳と渚が応援する。しかし眞妃はとても大丈夫と思えない。だがそんな時、

 

「真紀ちゃん!!頑張って!!」

 

 翼が眞妃を応援しだした。

 

(つ、翼くんが私を応援してる!?)

 

 眞妃は天にも昇る気持ちになる。

 

「が、頑張るーーーー!!!」

 

 そして思いっきり空気入れを押しこんだのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「失礼します。風紀委員の活動報告書を持って…え?何これ?」

 

 大仏が入ってきた生徒会室は、死屍累々だった。

 

 部屋の中央には何故か空気入れがあり、その周りに生徒会役員+αが床に倒れている。

 

 そして全員、口からなんか白い魂みたいなものが出ようとしている。その後、大仏のおかげで何とか全員蘇生したのであった。

 

 尚、蘇生した白銀とかぐやは藤原を説教。金輪際、こんな訳の分からないゲームを提案するなと釘を差すのだった。

 

 藤原は泣いた。

 

 

 

 




 原作より風船が大きく膨らんだため、被害が全員に渡りました。因みに空気入れを押している時、京佳さんと藤原だけある部分が凄く揺れています。それを男子2人はチラ見してたりしてました。あとごめんね眞妃ちゃん。

 今後は暫く日常編をやって、文化祭前に白銀と京佳さんの過去編をやりたいと思っています。完結までまだまだ遠いですが、どうかよろしくお願いします。

 次回も頑張りたい。

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