もしもかぐやに滅茶苦茶強力な恋敵がいたら・・・ 作:ゾキラファス
それと本作のお気に入りが1000人を突破しました。本当にありがとうございます!
今年も本作の完結目指して執筆しますので、どうかよろしくお願いいたします。
ところでお正月は何をしていました?私はグータラしてました。
日曜日 朝 9時20分
(待ち合わせの時間まであと10分か)
待ち合わせ場所に指定した水族館前の公園で、白銀は珍しく私服姿で腕時計で時間を確認しながら人を待っていた。
本日、白銀は京佳と水族館でデートを行う。
事の発端は、夏休みに白銀が京佳の水着をひん剝いた事にある。その後、白銀は何かお詫びがしたいと京佳に提案。結果、京佳はデートの約束を取り付けた、そして金曜日の夜に白銀をデートに誘い、今日水族館でデートをする事となったのだ。
(まぁ、俺は普通にデートする訳じゃなくて、確かめたい事があるからだけど…)
しかし白銀にとって、このデートはただのデートではない。このデートで確かめたい事があるのだ。
それは、自分が京佳の事をどう思っているのかと言う事。
ここ最近、白銀は京佳によくわからない感情を抱いている。白銀はこのデートで、その感情の正体を確かめたいのだ。
(立花には悪いと思っているが、よくわからないままの方がずっと嫌だしなぁ…)
このデートを楽しみにしているであろう京佳には申し訳ない気持ちがあるが、このままこのよくわからない気持ちのままの方がずっと嫌だと白銀は思う。だからこそ、今回のデートでその辺りをはっきりさせるのだ。
(兎に角、俺が立花をどう思っているかはっきりしないと)
そう決意し、白銀は京佳を待つ。
因みに本日の白銀の服装は、長袖の薄水色のシャツに、その上から黒いジャケット。黒いジーンズと白いスニーカー。そしてウエストポーチを肩から掛るという服装だ。
そしてこれら全て、妹の圭によるプロデュースである。全て白銀家の近所の服屋で購入。総額5千円。大変リーズナブルだ。なお、ウエストポーチは圭からの借り物だ。
そして左手首に装備している腕時計は、誕生日に京佳からプレゼントされたものである。
「へぇ。シンプルな着こなしですが清潔感があっていいですね」
そんな白銀を隠れて見ている者が2人いた。1人は男装している早坂愛。そしてもう1人は、
「会長の私服…素敵…」
「口に出てますよ?」
勿論四宮かぐやである。何故この場に2人がいるのかというと、邪魔をする為である。金曜日の放課後に、早坂は京佳が白銀をデートに誘うのを目撃。そしてその事をかぐやに報告。結果『2人きりになんてさせてたまるか』という嫉妬心をかぐやは身に纏い、こうしてデートの邪魔にきたのである。
一応言っておくと、かぐやは決して白銀と京佳のデートそのものを壊そうとはしていない。流石のかぐやもそこまでするつもりは毛頭無い。あくまで、白銀と京佳が2人きりでデートをするのを阻止するつもりだ。
「よし。それじゃ早速行くわよ早坂」
一刻も早くこのデートを2人きりにしたくないかぐやが物陰から動こうとする。
「落ち着いてくださいかぐや様。今はまだ待って下さい」
だが早坂に肩を掴まれて、その場から動けなくなる。
「何でよ早坂。貴方、一昨日は私に協力するって言ったじゃない」
「だとしてもまだ立花さんが来ていません。せめて2人が合流し、そしてその後タイミングを見計らって動くべきです」
「先手必勝という言葉があるでしょ。今すぐ動くべきじゃない」
「急がば回れという諺があります。今ここで白銀会長の元に行っても大して意味はありません。私がちゃんとタイミングを教えますのでどうか堪えて下さい」
「むぅ…わかったわよ…」
早坂に言われ、かぐやは渋々納得。再び物陰から白銀の様子を伺うのだった。
そんな時である。
「お待たせ、白銀」
白銀に声をかける女性、つまり京佳が現れたのは。
「おお、来たか立花」
後ろから声をかけられた白銀は、ゆっくりと振り返える。
そして、いつかの夏休みの水着の時のように石化した。
京佳は私服は、上に秋物の白いセーター。下はグレーの下地に黒と灰色のチャック柄のスカート。しかもスカート丈は膝より上でかなり短い。足元は茶色い靴下と茶色のローファー。そして方から栗色の小さいシュルダーバックをかけている。
しかもただ肩からかけているだけでなく、バックの紐が京佳の胸の間に挟まっている、所謂パイスラという状態だった。
率直に言って、今の京佳はとても可愛いと言える服装をしていた。
そしてこの京佳の服をプロデュースしたのは、京佳の親友の由布恵美だ。コンセプトは『男が絶対に好きな服装』である。
「待たせてすまない。もう少し早く来るべきだったね」
「い、いや。俺もさっき来たばかりだから、気にするな」
「ふふ、そうか。それはよかったよ。ところで、どうかな?この服は?変じゃないかな?」
京佳は白銀に自分の服装について質問をしてきた。
(なんか既視感があるな…)
まるで夏休みの時の再現だ。あの時は水着だった為、白銀の石化時間はかなり長めだったが、今回は私服だ。肌面積も制服より多い程度。なので白銀の石化時間は短めで澄んだ。
「まぁ。いいんじゃないか?可愛いと、思うぞ?」
「ふふ。ありがとう白銀。そういう白銀もかっこいいぞ?」
「そうか?俺のは全部安物なんだが…」
「値段じゃないさ。私は素直にその恰好の白銀がかっこいいと思ったんだ」
「そ、そうか。ありがとう、立花」
「ふふ、どういたしまして」
手を口に当てて小さく笑う京佳。そんな些細な直ぐさでさえ、今の白銀は何故かドキっとしてしまう。
(な、なんだ?今日の立花なんか妙に可愛いぞ?何だこれ?)
白銀は自分の心臓が激しくなるのを確かに感じる。どういう訳か、本日の京佳がかわいく、そして色っぽく見える。その結果、白銀の心臓は激しさを増す。顔も少し熱い。
(ええい!落ち着け俺!こんな事でドギマギしてどうする!まだ始まってすら無いんだぞ!)
しかし今ここでこんな状態なら、途中でどんなボロを出すかわからない。生徒会長としても、そして男としてもそれは避けたい。そう思い、白銀は1度ゆっくりと深呼吸をした。
そしてそんな2人を離れたところで見ている2人。勿論、かぐやと男装した早坂である。
「あれはこの前発売されたばかりの新作のスカートですね。しかもスカート丈が短いから男である会長の自然と目線が足に向かうかもしれません。そしてあのパイスラ。あれはうまい。あれは胸が大きい人だから可能な技ですよ。ドキっとするのは間違いないでしょう。あれなら今日1日白銀会長の視線を独り占めできますね」
冷静に京佳のコーディネートを解説する早坂。
「よし。行くわよ早坂。なんならあの女を始末するわよ」
そしてかぐやはもう走り出しそうな感じで物陰から出ようとする。
「はいかぐや様。もう少し辛抱しましょうね」
「何でよ!?」
だが早坂に腕を掴まれて白銀達への所へは行けなかった。
「ここで行ってもダメですって。あの2人に合流するなら水族館の中に入ってから。それこそ館内のメインイベントが終わって人が少しまばらになる時に行けば偶然を装えます。それまでは我慢してください」
「……その時なら本当に偶然装え…私が偶然偶々会長と一緒になれるのね?」
「……はい。だから我慢してください」
「今の間は何よ!?」
どうにかかぐやの説得に成功した早坂。しかし同時にある事を思っていた。
『素直に白銀会長をデートに誘えばこんな事しなくて済むのに』と。
実際、かぐやが素直に白銀をデートに誘えば、白銀は間違いなく了承するだろう。だがかぐやはそれをしない。恥ずかしいとか自分から誘うのは負けた気がするからだとか色々と言っているが、全部言い訳だ。
(ほんと面倒臭い…)
しかしそれでも自分の主人である。ならば従者として、何とかしなければ。そして物陰に隠れながら、目線を白銀と京佳に移すのだった。
「ふぅ。よし、じゃあいくか」
「ああ」
落ち着きを取り戻した白銀は、京佳と共に目的地である水族館へと歩き出す。
「私達も行くわよ早坂」
「了解です」
その後を、かぐやと早坂の2人も追うのだった。
「結構人がいるんだな」
「日曜だしね。それに、この水族館は出来て間もないし」
「成程。確かにそれなら人も多いな」
水族館の入り口にたどり着いた白銀と京佳。まだ開園して間もないせいか、入口は人込みでいっぱいだ。それだけでは無い。この水族館『ソラール水族館』はまだ完成して3ヵ月しかたっていない。場所も都内の品川区という立地の為、休日になると家族連れやカップルなどが大勢やってくる。故にこれ程の人込みなのだ。
「順番に割り込む訳にもいかない。普通に並ぼう。並んでいれば直ぐに入れるだろうし」
「そうだな。まぁ元から割り込むつもりなんてさらさら無いが」
そう言うと2人は入園チケット売り場に並ぶ。その少し後ろに、かぐやと早坂も並んでいる。
「そういえば白銀。私がプレゼントしたその腕時計、使ってくれているんだな」
「ああ。折角貰ったんだ。ならちゃんと使わないといけないだろう」
列に並んでいる時、白銀と京佳は会話が弾んでいた。傍からみれば完全に恋人に見える。
「早坂。あの2人が別々になる方法を今すぐ考えて実行しなさい」
「できませんよ。てか落ち着いてください」
かぐやは少し後ろからその光景を見ていた為、イラついて仕方が無い。
「いらっしゃいませ。本日は何名様ですか?」
並んでおよそ10分。あっという間に白銀と京佳の番となった。
「高校生の男女2名で」
受付の女性店員に白銀がそう答える。
「カップルですか?」
「は?」
だが突然、受付の女性店員からそんな質問をされ、白銀は一瞬呆ける。
「えっと、違いま「はいカップルです」立花!?」
違うと答えようとしたのに、京佳がカップルと答えた。突然の京佳の行動に白銀は少し混乱する。
「おいどうしたんだ立花!?何でそんな事を!?」
「あれを見てくれ白銀」
「あれ?」
白銀が京佳を言い寄ると、京佳は受付の看板に指を向けた。そこには『カップルなら半額!!』と書かれていた。
「半額!?」
「ああそうだよ。普通にチケットを購入したら2200円もかかってしまう。だがカップルなら1100円でチケットが買えるんだ。お得だろう?」
「うむ、確かに」
白銀家は貧乏だ。故にこういう場所に遊びに来た事など殆ど無い。今日は財布に余裕もあったので、白銀も普通料金を払うつもりだったが、半額になるのであればそちらを選びたい。お金は大事なのだ。
「えっと、カップルでいいんですよね?」
受付をしていた女性店員が再度白銀達に質問をしる。
「ええそうですよ。まだ付き合って日が浅いので彼の方も恥ずかしがっていたんですよ。結構シャイなんで」
「そうでしたか。はぁ、羨ましい…」
京佳が答えると、女性店員はため息を付く。
「それではカップル割で2名様で2200円です。ようこそ、ソラール水族館へ」
女性店員に入園料を払い、チケットを受け取った2人はそのまま水族館入口へと入っていく。
「じゃ、行こうか白銀」
白銀は京佳に手を引かれながら。
「お、おい!?立花!?」
「ん?どうしたた?」
「どうしたじゃない!何で俺の手を!?」
「ああ。人が多いから迷子になるかもと思ってね」
「いやもう子供じゃないんだ。大丈夫だよ」
「照れてるのか?白銀は可愛いな」
「違う。照れてなんていない。てか同年代の男子からかって楽しいか?」
突然京佳に手を握られた白銀。流石にこの歳で人前で手を握られているのを見られるのは恥ずかしい。よって京佳から手を放そうとした。
「私は別にからかっているつもりはないよ?」
「え?」
「まぁいいじゃないか。このまま行こう。ね?」
しかし京佳は話そうとはしない。ここで無理に手を放すのは簡単だが、何故か白銀にはそれが出来ない。今ここで無理やり手を放してしまうと、京佳を酷く傷つけると思ったからだ。
「行こ?白銀」
「え、あ。お、おう…」
結局京佳に押され、白銀は京佳と手を繋いだまま、そして今見た京佳の笑顔を見て顔が熱くなるのを感じながら水族館入口へと入っていくのだった。
「■■■■■■■■■■■ーーー!!」
「ん?何だ今の?」
「さぁ?犬か何かじゃないか?」
入る途中、咆哮に似た何かを耳にしながら。
「■■■■■■■■■■■ーーー!!」
「はーいはいはい。どうどうどうどう」
つい先ほど白銀達が聞いたのは、かぐやの咆哮である。かぐやがまるでバーサーカーのような感じになっている原因は、先ほどの京佳と白銀のやり取りを見ていたからだ。カップルとして水族館へ入り、その途中手を握っていた。それを行った京佳に嫉妬し、かぐやは怒りの咆哮を上げていた。最も早坂がかぐやの口に手を当てているので、その声量はかなり抑えられている。
因みに列に並んでいる周りの人達は『え、何あれ…こわ…』といった感じでかぐや達から距離を取っている。
「兎に角落ち着いてくださいかぐや様。今ここで暴れたり騒いだりしたら、入園を断られるかもしれませんよ?」
「…………わかったわ」
早坂に言われ落ち着くかぐや。そしてそのまま列に並び、自分の順番を待つのだった。
(にしてもこれはマズイですね)
一方で早坂は危機感を募らせる。その原因は京佳だ。というのも、本日の京佳は非常に積極的だ。服装も、会話も、そしてさりげないボディタッチも。今までも積極的だったが、今日は1味も2味も違う。
(何とかタイミングを見て2人の間に入らないと…)
このままでは本当に恋人になるかもしれない。早坂は、何としてでも白銀と京佳の間にかぐやを入れようと決意するのだった。
「カップルですか?」
「「違います」」
そしてチケットを買う際は、普通に男女ペアで入る事にした。
京佳さんの私服は某Vチューバーさんを参考。
次回は水族館デート本番。
今年もよろしくお願いします。