もしもかぐやに滅茶苦茶強力な恋敵がいたら・・・ 作:ゾキラファス
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白銀は京佳に手をひかれながら水族館内を歩いていく。すると直ぐに大きな水槽が現れた。水槽の中には色とりどりの沢山の魚が泳いでおり、まるで1枚の絵画のようだ。
「サンゴ礁に住んでいる魚だって。綺麗だな、白銀」
「ああ。色鮮やかってこういう事を言うんだろうな」
水槽の上側には『サンゴ礁の魚たち』と書かれた看板があった。そしてその看板の隣には、水槽の中にいる魚の説明文がずらーっとある。
「あ、あれは知っている。映画の主役にもなった魚だ」
「あれか。映画は見た事ないが、俺もあの魚の名前だけなら知ってるな」
中には有名な魚もいた。一通り水槽を見た2人はゆっくりと次の水槽へと歩く。今度はイワシしか入っていない縦長の水槽が現れる。
「イワシの魚群か。一体何匹いるんだろうな?」
「これだけ多くいると全くわからんな。まぁ100匹以上は確実にいるだろうが」
イワシの大群がやや縦に長い水槽の中をくるくる回りながら泳いでいる。そしてイワシの鱗が、上から照らされたライトに反射してキラキラと光っていた。
「綺麗だな…」
「そうだな。綺麗だな…」
2人はイワシを見ながらそんな事を呟く。
(ああ…私は今、本当に幸せだな…)
京佳は幸せを噛み締めていた。最近は白銀と2人きりになれる事も無く、アプローチをする機会も少なかった。だが今日は、こうして2人きりでデートをしている。他の生徒会メンバーもいないし、知り合いも見当たらない。正真正銘2人きりでのデートだ。これを体験して幸せに思わない人はいないだろう。
(できれば、この時間が続きますように…)
誰かに言う訳でもなく、京佳は心の中でそう祈った。
「綺麗ですって?あの女会長に綺麗って言われてる?何て羨ましい…」
「いやよく聞いてくださいかぐや様。綺麗って言っているのはイワシですから」
そんな2人を、少し離れたところから見ているかぐやと男装した早坂。2人は今、サンゴ礁の水槽の前にいるが、その目線は水槽になど向けていない。少し離れた白銀と京佳に向けている。
「というか何時まで手を握っているのよ。まぁ恐らくああやって手を握り続ける事によって、会長に自分を無理矢理にでも意識させる魂胆なんでしょうが、本当になんて卑しい女なのかしら…」
(かぐや様も似たような事をやってた気が…)
かぐやの呟きに早坂は反論しようと思ったが、ここで反論すれば絶対に面倒な事になると確信していたので口を閉じた。
「それで早坂?一体何時まで私は隠れてあんな光景を見ないといけないのよ?」
かぐやは早坂に質問をする。このまま白銀と京佳が2人っきりのままなところを見続けるなんて最早拷問である。一刻も早く、偶然を装って割り込みたいのだが、早坂からのゴーサインは未だ無い。
「そうですね。ここでやるアシカのショーが終わった後がベストタイミングだと思います」
「アシカのショーの後?どうして?」
「アシカのショーはこの水族館のメインイベント。当然、大勢の人が観に来ます。そしてショーが終われば、皆その場から移動します。その時に人込みが発生するのは明白。そうすれば偶然偶々白銀会長達と出会ってもなんら不思議はありません。なので辛抱してください」
早坂はお昼前に行われるアシカのショー終了後がねらい目だと言う。それまでは辛抱して欲しいとも。
「もっと早く出来ないの?」
「まぁ、あるにはあります。あの2人のどっちかがお手洗いに行っている最中に残された方と合流。そして話をすればそのまま4人で水族館を観てまわる事が可能かと」
「ならそれでいいじゃない」
「2人のどちらかがお手洗い行かないと使えない作戦です。今すぐ使える訳ではありません」
「……それなら仕方ないわね。でもその時が来たら直ぐにそっちの作戦で行くわよ」
「わかりました」
言いたい事はあるが今は我慢する時だと思い、かぐやは早坂に従う。
(さっきのイワシも綺麗だが、立花ってやっぱ綺麗だよなぁ…)
一方白銀は、ふと横眼で京佳を見ながらそう思う。京佳は水槽の中にいるハコフグを見て笑顔になっていた。そしてその笑顔は、とても可愛らしいものだ。
(そりゃ四宮も藤原も伊井野だって綺麗なんだが、今日の立花はより一層綺麗に見える。私服だから?それとも水族館という普段行かない場所のせいでそう見えているから?)
京佳は左目に大きな眼帯を装着しているが、非常に整った容姿をしている。勿論、他の生徒会メンバーの女子達も整った容姿なのだが、本日の京佳は普段の3割増しくらいで綺麗に見えている。
水族館に入る前から、京佳にずーっと手を握られている状態も続いており、白銀は顔にこそ出していないがドキドキしっぱなしだった。
「ほら白銀。あっちに大きな水槽があるよ。行こ」
京佳はそう言うと、白銀の手のひいて大型水槽に向かって歩き出す。手をひかれながら歩く2人の姿は完全に恋人だ。
実際、先ほど2人の隣を通り過ぎて行ったご婦人は『あら~。若いっていいわね~』と言っていたのを白銀は聞いている。
(それにしても立花の手って柔らけぇ……ってそういや何時まで俺は立花と手を握っているんだ!?完全に手を放すタイミングを逃してる!このままじゃ水族館が終わる時まで手を握ったままになるんじゃ…)
そしてこの時の白銀は、未だに京佳と手を握っているのが少し恥ずかしいのだ。さりげないタッチ程度ならば平常心を保てるが、水族館に入る前からずーっと手を握られっぱなしである。周りには大勢の目線もあり、幾人かは嫉妬の眼差しを送るのもいた。
(だがここで無理やり手を放すのはどうなんだ?それは立花を傷つける行為じゃないのか?)
白銀は基本優しい性格をしているので、誰かを傷つけるという行為が簡単には出来ないのだ。もし無理やり手を放してしまえば、それは京佳を傷つける事になるかもしれない。そうなれば、京佳は心に傷を負うかもしれない。
そして心の傷というものは簡単には治らない。故に、白銀は自分から手を離せないでいた。
(いや、そもそも今日は俺が立花をどう思っているのかを確かめる為に来ているんだ。ならばこの手を握っているという状況も確かめる判断材料になる筈。もう少しこのままでいるとしよう…)
考えた結果、白銀はこのまま京佳と手を握った状態を維持する事にした、
(にしてもやっぱ、立花の手って柔らかいなぁ…あと温かい…)
再度、京佳の手の柔らかさと温かさを確認しながら。
「b\r3k6yuq@:ftuor@b\r」
「いやマジで怖いんで嫉妬するならせめて普通の日本語話してください」
そんな2人を隠れながら見ているかぐやと早坂。かぐやは京佳に呪詛を吐きながら隠れており、早坂はそんなかぐやに恐怖した。
というか怖い。こんなの普通に怖い。事実、今しがたかぐやの近くを通りかかった男性は『え、怖…』と言い足早にその場から去っている。
「かぐや様、1度自販機で飲み物買いませんか?温かいもの飲むと落ち着きますよ?」
「結構よ。それよりあの女の悪行をこの目にしっかりと焼き付けて、何れ億倍にして仕返しする為にも今はこのままでいいわ」
「そ、そうですか…」
最早目だけで誰か殺せそうである。このままではアシカショーの前に、かぐやが京佳を手にかけるかもしれない。
だがそんな時、かぐやにチャンスが訪れた。
「すまん立花。俺ちょっとお手洗いに行ってくる」
「わかった。じゃあここで待っているよ」
「ああ、すぐ戻る」
白銀がお手洗いに向かったのだ。そして京佳が大型の水槽の手前で1人きりになる。つまりこれは、早坂が提案していた作戦が可能だという事だ。
「よし。行くわよ早坂。もう止めないでよ」
「わかりました。だから1度深呼吸をしてください」
今すぐにでも飛び出して行きそうなかぐやを早坂は1度なだめる。そしてかぐやは1度深呼吸をして、京佳のいる方へ歩き出すのだった。
「あら?立花さんですか?」
「ん?四宮か?」
前もって用意していた言葉通りに京佳に声をかけるかぐや。
しかし、瞬時に『今日初めて会いましたね』感を出せるあたり、かぐやが相当優秀である証拠だろう。
「こんな場所で会うなんて奇遇ですね」
「そうだな。ところでそちらの人は?」
京佳がかぐやの隣にいる、スーツ服で茶髪で黒ぶちメガネをかけた男性について尋ねる。
「初めまして。僕はかぐや様の従者の1人で、本日かぐや様の護衛をしている速水と言います」
「速水さんですか。初めまして。学校で四宮さんと同じ生徒会に所属している立花と言います」
「ええ、存じ上げております。いつもかぐや様が本当にお世話になっております」
「ちょっとやめなさい速水」
それぞれが自己紹介をして、軽く頭をさげる。なお今日の早坂の男装は『親元を離れて四宮家に奉公に来ている苦学生』という設定だ。対藤原使用のハーサカ君ではなく速水というキャラを演じているのは、京佳対策である。
メイドのハーサカの時は京佳に感づかれ、危うく変装がばれるところだった。なので今日の早坂は、京佳に絶対にバレない様相当念入りに男装をしている。何も知らなかったら、かぐやでさえ正体を見破られるか怪しいくらいに。
「ところで四宮。どうしてここに?」
「先日、知り合いからここの水族館の入館チケットを受け取ったんです。それで今日は遊びに」
「そうだったのか」
勿論嘘である。確かにかぐやは、四宮家という家のせいで様々な贈り物を貰った事はあるが、今日ここにきているのは完全に実費である。全ては、京佳と白銀のデートを2人きりにさせない為に。
「そういう立花さんは、おひとりですか?」
かぐやが早速仕掛ける。ここで京佳が『友人と来ている』と誤魔化せば『その友人を紹介して貰ってもいいですか?』と言えばいいし、『1人で来ている』と言えば『では一緒に水族館を観て回りませんか?』と言う事ができる。つまり、白銀の事を誤魔化せないのだ。
(さぁ、さっさとボロを出しなさい。そうすればそのスキを突いてあなたと会長の蜜月を終わらせてあげますから。まぁ私も鬼ではありません。サメの餌にしてあげるのは勘弁してあげますよ)
かなり物騒な事を思うかぐや。決して本気で無いと信じたい。そしてそんなかぐやの質問に京佳がした返答は、
「いや、今日は白銀と2人で来ているよ」
「「!?」」
素直に白銀と来ているというものだった。そう、こういう時に変に誤魔化さないのが京佳である。誰かとは大違いだ。
「そ、そうでしたか…会長と…」
出鼻を挫かれたかぐや。だが、これはむしろ好機だと思う事にする。本来なら京佳がボロを出したところに付け入り、2人きりのところを邪魔する予定だったのだ。
しかし京佳が最初から『白銀と来ている』と言ってくれれば、その必要も無い。このまま『皆で水族館を楽しもう』と提案すればいいだけだ。
「そうだ。どうせなら皆で水族館を観て回りませんか?大勢の方が色々と楽しいでしょうし。ね?速水?」
「ええ。1人より4人とも言いますし」
予定通りにかぐやは京佳に提案をする。後は京佳がこの提案を受ければ全て解決だ。
だが、
「すまないが四宮、それは出来ない」
「え?」
京佳はかぐやの提案を断った。
「えっと、何ででしょうか?私、何か立花さんに失礼な事でもしましたか?」
まさか断られるとは思わず、かぐやは少し慌てる。そしてどうして断ったのか尋ねる。
「僕からもお聞かせ下さい。どうしてですか?」
速水こと早坂も京佳に尋ねる。
「いや、四宮が何かした訳じゃないよ。不快にさせてしまったなら謝る。すまない」
京佳は別にかぐやが何かしたから断った訳ではないと言い、直ぐに謝罪の言葉を口にした。
「で、では、何故?」
かぐやがもう1度京佳に尋ねた。そんなかぐやに京佳は、
「今日私は、白銀と2人きりで水族館を観てまわりたいんだ」
真っすぐにそう答えた。
「実はな、以前から白銀と約束をしていたんだ。ちょっと理由は話せないが、いつか2人きりでデートをしてくれって。それが今日なんだ。私、この日がすっごく楽しみで。昨日なんて9時に床に就いたのに中々眠れなかったしね。四宮も今日の水族館を楽しみにしていたかもしれないし、大勢で観た方が楽しいのも勿論あると思う。でも今日だけは、どうしても白銀と2人で水族館を楽しみたいんだ。だから、一緒にはまわれない」
京佳はかぐやにそう言う。京佳の顔は頬が少し赤く、いかにも『幸せです』という雰囲気を出していた。
その顔は、まさに恋する少女。
「そ、そうでしたか。元々先約があったのなら仕方ありませんね。それでは」
「失礼します。立花様」
「ああ。それじゃ」
それを見たかぐや、と速水こと早坂はその場から立ち去る。2人はあっという間に人込みへと消えていった。
「いや、本当に強いですね、立花さんは…」
イワシの水槽まで戻ってきた2人。早坂は改めて、立花京佳が強力な存在だと認識した。普通はあんな提案を受ければ、断らず受けるものだ。
しかし京佳ははっきりと断った。それだけ、白銀と2人きりでいたいという気持ちが強い証拠だろう。
「まだよ。まだ終わっていないわ」
「え?かぐや様?」
だがかぐやは諦めてはいない。
「この後にあるアシカショーを観にいくわよ。そうすれば間接的に会長と立花さんは2人きりにはならないわ」
「いやアシカショー見る人は大勢いますから元々2人きりにはならないですが」
「何か言ったかしら早坂?」
「いいえ何も」
かぐやはこの後のアシカショーを観る為に1度体勢を立て直す事にした。そして近くにあった自販機でホットレモンを飲んで落ち着くのだった。
そのころの京佳は、白銀と再び合流して電気ウナギを見ていた。
タイトルに白銀と書いているのに、会長の出番があんまりないという… やっぱりお話を作るのは難しいです。
あと今回、実は結構書き直しています。かぐやの介入するところとか。
次回も頑張YO。