もしもかぐやに滅茶苦茶強力な恋敵がいたら・・・ 作:ゾキラファス
「凄い…本当に海の中を歩いているみたいだな…」
「だな。何というか、とても綺麗だ」
かぐやが人知れず帰った後も、白銀と京佳は水族館を楽しんでいた。2人は今、アシカのショーが終わった時に言っていた通り『水中街道』という水中トンネルに来ている。右を見ても左を見ても、そして上を見ても魚だらけ。まるで本当に海の中を歩いているようだ。
「見てくれ白銀。サメだ。サメがいるぞ」
「おおぅ。こうして近くで見ると、やっぱ少し怖いな」
京佳が指さした方にはサメがゆったりと泳いでいた。水槽越しとはいえ、近くでみると少し怖い。特に目が。
「あっちにはウミガメ。その奥にはエイもいる。やっぱりこうして見ると楽しいな」
「だな。普段は水中から魚を見る機会なんて無いし」
普段は見る事が出来ない光景。その光景を見て楽しくなる白銀と京佳。その顔は、自然と笑顔になっている。
(やっぱ立花って美人だなぁ…)
笑顔になった京佳を見た白銀は、そんな事を思うのだった。
「いやー、楽しかった。とっても綺麗だったし」
水中街道を通り終えた2人は、水族館内に設置されている休憩所で、白銀は缶コーヒーを、京佳はお茶を飲みながら一息ついていた。
「立花。結構歩いているが疲れていないか?」
「大丈夫だよ。そんなにヤワじゃないし」
「そうか。それならいいんだ」
水族館に来てから2人はずっと歩きっぱなしだった。アシカのショーの時は席に座っていたが、それ以外は碌に休憩も取っいない。なので女性である京佳を心配したのだが、杞憂だったようだ。
「しかし、やはり家族連れが多いな」
「日曜だしな」
休憩所には、自分たち以外にも大勢の人がいる。その大半は家族連れだ。後は、恋人と思しき人達が何組かいるくらい。
「私たちは、傍からみたらどんな風に見られているんだろうな?」
突然京佳がそんな質問を白銀にしてきた。
(これは…)
白銀は少しだけ身構える。ここで『友人』と答えるのは簡単だ。しかし白銀は、それが自らデートに誘ってきた京佳が望む答えでは無いだろうと思っている。無論『姉弟』と答えるのも『兄妹』と答えるのも、ましてや『親子』と答えるのも違う。白銀だってそれくらいは解る。
一応白銀に中にはこの質問の答えそものもはある。しかし、それを口にするのが恥ずかしい。例え質問してきたのがかぐやであってもそれは同じだ。
(いや!ここは仕掛けてみるべきだろう!そして立花の反応を見てみるべきだ!)
だが白銀は恥を隠して自らの答えを口にする事を決める。元々このデートで、自分が京佳をどう思っているかを確認するつもりなのだ。ならばこそ、ここは自分でそういった事を仕掛けて京佳の反応を見てみるべきだと思い、
「そうだな。恋人に見えていたりするんじゃないか?」
そして白銀は言った。恋人に見えていると。
それを聞いた京佳は、
「ふふ。そうか。それは嬉しいな。白銀みたいな人と恋人に見えるなら役得だよ。白銀はかっこいいからな」
笑顔でそう答えた。
(え、可愛い…)
京佳の笑顔を見た白銀は、思わず見惚れた。それだけ、今の京佳の笑顔は可愛かったからだ。
(って俺は今何を!?)
白銀はぶんぶんと頭を振る。白銀が好きな人はかぐやだ。確かに京佳が美人でスタイルが良くて自分の家族とも仲が良いとしても、京佳は友達なのだ。
そんな京佳に、見惚れていた。
(まさか、俺は…)
白銀の中にある気持ちが出てくる。
(いやいや!落ち着け俺!まだそうだと決まった訳じゃないだろう!)
しかし白銀はその気持ちに無理やり蓋をした。ここで結論を出す必要は無い。もしここでこの感情の答えを出してしまったら、この後どうすればいいのかわからない。
「この後は、ペンギンコーナーだったかな?」
「あ、ああ、そうだ。本物のペンギンって見た事ないから是非な」
「ならこれを飲みきったら行こう」
「おう」
京佳に言われ、白銀は缶コーヒーを一気に飲み干す。そして2人はペンギンコーナーへと足を運ぶのだった。
ガラスの向こう側にはペンギンが沢山いた。看板を見ると、フンボルトペンギンというらしい。大勢の人が、その愛らしい姿を見て騒いでいる。
で、ペンギンコーナーにたどり着いた白銀はというと、
「やっべぇ…かわいい…ペンギン超かわいい…」
目をキラキラさせながらペンギンを見つめていた。その顔はまるで子供。まさに童心に帰っているといった感じである。白銀は別にペンギンが特別好きという訳では無いが、なんせペンギンだ。可愛い動物として名前が挙がるペンギンだ。嫌いな人などいないだろう。誰だってこんな事を言う。
そしてそんな白銀を後ろから微笑ましく笑う人がいた。
「ふふ」
「は!?」
後ろから小さく笑う声が聞こえ振り返ると、京佳が手を口に当てて笑っていた。
「いや立花、これはだな…」
同級生に子供みたいな反応を見られた白銀は、とたんに恥ずかしがる。そして何とか弁明をしようとした。
「別に恥ずかしがる事はないだろう。誰だって可愛い動物を見たらそうなるさ」
「えーっと。まぁ…」
白銀は顔が赤くなるのを感じた。穴があったら入りたい気分にもなる。
「それにしても、ふふ。白銀も結構可愛いところがあるんだな」
「え!?可愛いって何が!?」
「ペンギンを見たいってところがさ。私は可愛いと思うぞ?」
「そ、そうか…」
京佳に可愛いと言われ、白銀は顔が更に赤くなるのを感じる。
(恥ずかしい…何やってんだ俺は…)
いくら初めてペンギンを見たとはいえ、あれほど子供っぽくなるとは思わなかった。大人げないと思い、白銀は1度自分を落ち着かせる。
「これが前に石上が言っていた『ギャップ萌え』ってやつなんだろうな」
「石上から何て事聞いているんだ」
京佳の口から『ギャップ萌え』というワードが出てきて驚く白銀。凡そ意味は合っているが、まさか京佳がそんな事を言うとは思わなかった。そして今度石上に少し話を聞こうと決めた。
「白銀、写真を撮ってあげるからスマホを貸してくれ」
「頼む」
京佳に自分のスマホを渡す白銀。そしてゆっくりとペンギンの近くに行く。
「よし撮るぞ。はいチー…」
京佳が白銀のスマホで撮ろうとした時、
「わっ!」
子供が京佳にぶつかりバランスを崩したのだ。
「立花!」
白銀は直ぐに京佳に駆け寄り、転びそうになった京佳を受け止めた。おかげで京佳は転ばなくてすんだ。
「大丈夫か立花!?」
「だ、大丈夫だ…」
白銀のおかげで怪我もないようである。
(うわ、立花の体めっちゃ柔らけぇ…あといい匂いする…)
思わず抱き留めた白銀は、京佳の体の柔らかさを確認する。しかし直ぐに頭を切り変えるのだった。
「全く、何なんださっきの子供は。危ないなぁ」
白銀が先ほど京佳にぶつかった子供に悪態をつく。そして目線を京佳の後ろに移すとそこには、
「え?」
「ひぐ…えぐ…」
ピンク色のワンピースを着た5歳くらいの女の子が泣いていた。それは先ほど、京佳にぶつかった子供である。
「えっと、君。どうしたんだ?」
白銀から離れ、女の子に近づいた京佳が女の子の視線に合わせる為、スカートを抑えてながらしゃがんで話しかける。
「ままが…いないのぉ…」
「成程、迷子か」
少女の言葉で迷子だと判断する京佳。これだけ大勢の人がいるのだから、迷子の1人だって出てくるだろう。
「白銀。ちょっといいか?」
「みなまで言うな。その子の親を探すぞ」
「流石だな」
京佳が白銀に少女の親を探そうと提案しようとしたが、白銀は阿吽の呼吸で承諾。
「えっとお嬢ちゃん。お名前は?」
「ひぐ…えっぐ…りん…」
「りんちゃんか。ママの特徴とかわかるかな?」
「えぐ…赤い服…」
「ふむ。赤い服か。それなら目立つだろうし、直ぐに見つかるかもな」
「とりあえず迷子センターに行くか。このパンフレットによると出口付近にあるらしい」
京佳が女の子から情報を聞き出し、白銀がパンフレットで迷子センターの場所を確認。
「りんちゃん。今から私たちがママを探してあげるから、一緒にいこっか?」
「ふぐ…うん…」
「じゃあ逸れないように手を繋ごう」
京佳が手を差し出すと、りんと名乗った女の子はその手を掴む。
「かたほう…」
「え?」
「もうかたほうも…つなぎたい…」
しかし片手だけでは不安なのか、女の子はもう片方の手も繋ぎたいと言い出す。
「白銀。頼めるか?」
「勿論だ」
そして白銀は女の子の空いていた片方の手を握る。こうして3人は水族館内の迷子センターへ向かうのだった。
「りんちゃんは、今日は誰と来たんだ?」
「ままとぱぱ…」
「そっか。ママとパパとか」
「うん…ぱぱのおしごとが、おやすみだったから、すいぞくかんへいこうって…」
迷子センターに向かう途中、京佳は少女が不安がらない様に話すか続ける。少女から見たら、自分たちは知らない大人だ。子供はこういうとき、とても不安がる。そこで京佳は話し続けた。少しでも不安を取り除く為に。
(なんか、本当の親子みたいだな…)
少女に話しかける京佳を見た白銀は、そんな感想を抱いた。別に顔が似ているとかではなく、雰囲気でそう思ったにすぎない。
(前にも言ったが、立花は絶対に良い母親になるよな)
京佳は面倒見が良い。藤原に勉強を教えたり、伊井野が石上に注意していた時に別の解決策を出したり。更に料理も出来る。それもただ出来るだけじゃなく、色々なアレンジを加えたものが。前に白銀が口にしたワサビ入り唐揚げは本当に絶品だった。
(立花と結婚したら、絶対に幸せになれるよな…もし俺が結婚したら、妻と子供の為に必死で働くし。家に帰ってお疲れって言われるだけで毎日頑張れる)
ふと妄想する白銀。仕事が終わり家に帰ると出迎えてくれる妻。そして既に寝てしまっている子供の寝顔を見てから遅い夕食。最後は風呂で1日の汚れを洗い流し、妻と同じベットで寝る。
白銀はそんな妄想を、京佳でした。
(……いいな)
思わずにやけそうになる白銀。これが藤原だったら目も当てられない悲惨な妄想になるだろうが、京佳なら最高だ。元々自分と同じ一般家庭出身だし、そのおかげで価値観も近い。贅沢な暮らしはできないかもしれないが、幸せな暮らしはできるだろう。その様な妄想をしていると、手を繋いでいる少女から質問がきた。
「ねぇねぇ。おにいちゃんとおねちゃんはこいびとなの?」
「え!?」
「似たようなものだよ」
「立花!?」
まさかの質問に驚く白銀だったが、京佳が肯定した事で更に驚く。
「すごーい。ままとぱぱみたいだね」
「ふふ。ありがとう」
すっかり泣き止んだ女の子は少しだけはしゃいでいる。
(まぁ、元気になったみたいだし、いいか)
ここで変に否定すると、女の子がまた泣き出すかもしれない。よって白銀は特に突っ込まないことにした。
その後、迷子センターに到着すると、既に女の子の両親がいた。赤い服を着ている母親が女の子を少し怒っていたが、その後直ぐに『良かった』と言いながら抱きしめる。眼鏡を掛けた父親からは何度もお礼を言われた。
そして3人の親子はそのまま出口へ向かって歩き出す。その際、女の子は見えなくなるまでずっと白銀達に手を振っていた。
「ふぅ。見つかってよかった」
「そうだな。本当によかったよ」
水族館の出口付近に設置されたベンチに座る白銀と京佳。
「どうする白銀?もう1度ペンギンを見に行くか?」
「いや、なんかもういいわ」
少し疲れたのか、白銀はペンギンを再び見に行くことを拒否。ペンギン熱が冷めた感じである。
「なら、最後にあそこにいかないか?」
「あそこ?」
京佳が指を指した方向を見ると、そこには『海月展』と書かれた通路があった。
「そうだな。もう他は殆ど見たし、最後に行くか」
そして2人は薄暗い海月展へと足を踏み入れた。
「これは…」
「凄い…」
入る前はあまり期待していなかった2人だが、入ってすぐにその考えを改めた。海月展は、文字通り海月しかいない。しかしただ小さい水槽に色んな海月が入っているという訳ではなかった。
あったのは、とても大きな水槽に沢山の海月が入っている水槽だけだった。
それは凄く幻想的に見える。上から色んなライトが照らされているのか、海月が様々な色に変わる。
「綺麗だな…」
「そうだね…」
今日は色んな魚を見てきたが、これは別格だ。海月が観賞用として人気があるのもう頷ける。
「白銀。今日は付き合ってくれてありがとう」
2人で海月を眺めていると、京佳が突然白銀にお礼を言ってきた。
「どうした急に」
「いや、言える時に言っておかないと後悔すると思ってね」
「……成程」
実際、言える時に言えずに後悔する事はある。白銀だって似たような経験があったりする。
「白銀はどうだった?今日は楽しかったかな?」
「ああ。もの凄く楽しかったぞ。何ならまた来たい」
「そうか。それはよかった。誘ったかいがあったよ」
今日、白銀は本当に楽しかった。アシカのショーにペンギン。多種多様な魚。そして今目の前にある海月。その全てを楽しめた。
(やっぱりここまで楽しめたのは誰かと来たからだな)
1人だけでも楽しむ事自体は可能だっただろう。だが、ここまで楽しめる事は無い。
「本当に、綺麗だな…」
ふと白銀は、隣にいる京佳を見る。そして本来の目的を思い出す。
(俺が立花を、どう思っているか…)
それはこのデートに誘われた日、白銀自身が決めた事。自分にとって、立花京佳という少女はなんなのか、というものだ。
(友人?親友?同級生?同じ生徒会の役員?)
思いつく限りの関係性を頭に浮かべる。だがそれもしっくりこない。どれも間違っていない筈なのに、どうもしっくりこない。
(そもそもそういう関係だったら、どうして俺は前に立花がお兄さんと食事をしていた時にもやもやしたんだ?それだけじゃない。体育祭で他の男子が立花をそういう目で見た時なんてイラってした。そりゃ友達だからそういう事言われると腹が立つってのはわかるが、それだと前者がわからない…)
色々考える白銀。そして少し雨に、父親に言われた事を思い出す。
『お前その子が好きなんじゃないのか?』
(確かに立花の事は好きだが、それはあくまで友達としてであって…)
父親に言われた事を必死で否定する白銀。
「白銀。一緒に写真を撮らないか?海月を背景にして」
そうやって白銀が考えに耽っていると、京佳が写真を撮ろうと提案してきた。
「構わないぞ」
「ならこっちに行こう」
2人は水槽の前まで移動する。そして京佳がスマホを取り出し、カメラを起動。
「白銀、もっと近づいてくれ」
「お、おう…」
少し恥ずかしが、白銀は京佳に言われた通り近づいた。
「じゃあ撮るぞ。はい、チーズ」
そして京佳が片手でスマホを操作し、カメラで写真を撮る。その写真は、完全に恋人にしか見えない写真だった。
「ふふふ。ありがとう白銀。大切にするよ」
「写真くらいで大げさじゃないか?」
「そんな事は無い。私にとっては凄く嬉しい1枚だよ。
本当にありがとう、白銀」
京佳は、笑顔で白銀にお礼を言った。
どくん
(あ…)
その笑顔を見た瞬間、白銀は自分の体温が上がるのを感じる。そして、求めていた答えがやっと出た気がした。
自分は、立花京佳という女性を好きになっているのだと。
いや正確には違う。既にそうだろうと白銀自身が気が付いていたが、その気持ちに蓋をしていたにすぎない。
(だって、俺は…)
白銀御行は、四宮かぐやが好きである。だが今この瞬間、白銀は自分がもう1人、別の女子にも惹かれているとわかった。
それもかぐやと同じくらいに。
(おいおいマジかよ…だとしたら最低じゃねーか俺…そりゃ圭ちゃんも怒るわ…)
前に、妹の圭に言われた事を思い出す。先程まで楽しい気持ちでいっぱいだったのに、今は罪悪感でいっぱいだ。だって同時に2人の異性を好きになるなど、どう考えても最低な行為である。そんな事が許されるのは創作の中だけだ。
そもそも白銀は、そういった事はかなり真剣に考えている。間違っても2股なんてありえない。
「どうした白銀?」
「いや、何でもない。そろそろお土産コーナーに行かないか?」
「いいよ」
自覚した自分の気持ちを必死で抑え込み、白銀は京佳と共に水族館のお土産コーナーへと行った。
そしてそこで『ホタテ饅頭』というホタテの形をしたクリーム入り饅頭を購入して、京佳を駅に送り届けたのち、自分も帰路に着くのだった。
「俺は、どうすればいいんだ…?」
帰りに電車の中で苦悩しながら。
女の子の笑顔は最強だと思うの。
と言う訳で、強引な展開だったかもしれませんが白銀会長自覚編でした。今回もかなり書き直しているのですが、もしかすると後でところどころ編集するかもしれません。その時はご了承下さい。
次回から色々動かしたい。でも自分が思っている通りに動かせる自信は無い。所詮素人だもの。
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