もしもかぐやに滅茶苦茶強力な恋敵がいたら・・・ 作:ゾキラファス
補足で説明を入れると、今現在のお話の時系列は原作10巻あたりです。
それと今回、京佳さんの出番0です。そろそろまたちゃんとしたメイン回書かないと主人公って事忘れちゃいそう。
水族館デートをしていた白銀と京佳の2人の後をつけている途中、ふと我に返り水族館から帰宅したかぐやは、
「……」
自室のベットの上でうつ伏せで倒れていた。その姿、まるで浜に打ち上げられたアザラシ、もしくは鯨である。
「かぐや様。夕食はどうしますか?」
「……」
「体調がすぐれないのでしたら、お薬を持ってきますが」
「……」
「……早坂。一体かぐや様はどうしたんですか?」
「いや、私にもわからないんです」
年長者執事の高橋が早坂に尋ねるが、早坂は知らないと答える。昼間、白銀と京佳のデートにいざ割り込もうとした瞬間、突然かぐやが帰ると言い出し、早坂の静止の言葉も聞かずそのまま帰宅。
そして帰宅すると自室のベットにうつ伏せで倒れこみ、以後ずーっとこの状態だ。何かの体調不良なのではと考えた早坂が、熱を測ったりしたが平熱。別に腹痛がある訳でもなく、頭痛がする訳でもない。ただずーっと、ベットにうつ伏せになっているだけ。
(まぁ何となくですけど、原因と思えるものはわかりますけどね)
先程早坂は、高橋の質問に知らないと答えたが、実はかぐやがこうなっている原因に心当たりはある。それは本日あった、白銀と京佳のデートだ。かぐやと早坂の2人は、そのデートを着いてまわった。
そしてそのデートで、とても楽しそうにしている白銀達を見てしまった。その結果、かぐやは精神的ダメージを負い、こうしてベットにダウンしているのだろうと早坂は思っている。
だが、それを執事の高橋に言う訳にはいかない。というか言いたくない。呆れられそうだし。
「とりあえず私がかぐや様を見ていますので、高橋さんは自分のお仕事に戻っていただいて結構です」
早坂はこの場は自分が見ておくので、高橋には他の仕事に戻る様に頼む。というのも、高橋は相当に忙しいの身なのだ。数十年もの長い間、四宮家に仕えているベテラン執事の高橋。四宮家別邸においては、従者達の最高責任者も務めている。
そして責任者というものは、忙しいもの。その仕事量は、早坂や志賀の比では無い。そんな忙しい人を、いつまでも何にも言わないかぐやの元に置く訳にはいかない。
「わかりました。では早坂、かぐや様を頼みますよ」
「はい」
高橋は早坂も言葉を受け入れ、かぐやの部屋を後にした。
「……かぐや様。いい加減何か言って下さい」
「……」
高橋が出て行って少ししてから、早坂がかぐやに話しかける。しかしかぐやは一向に話そうとしない。というかピクリとも動かない。まるで本当に死んでるかのようだ。
「……生きてますよね?」
少しだけ不安になった早坂がかぐやの脈を測ると、ちゃんと動いている。とりあえず、いつの間にかショック死していた訳ではなさそうだ。主人の生存を確認した早坂は、兎にも角にもかぐやをどうにかしなければと思う。流石にずっとこの状態にしとく訳にはいかない。
「かぐや様。いつまでそうしているつもりですか?」
「……」
「これからずーっとそうしているつもりですか?」
「……」
一向に動かないかぐや。そこで早坂は、無理やりにでもこっちに意識を向けさせるべき動く。
具体的に言うとかぐやの胸を揉んでみた。
「ふむ…1年前に比べれば少し大きくなってますかね?」
「……何しているの早坂?手を放しなさい」
「やっとこっちを向きましたね」
流石に反応し、顔だけ動かして早坂を見るかぐや。というか睨んでいる。
「それで、どうしてそんな風になっているんですか?まぁ大体の理由はわかりますけど」
「……」
「まただんまりですか?」
少しだけ早坂を見たかぐやは、再び顔を枕にうずめる。
「仮定で話しますけど、かぐや様がそうなっているのは昼間の白銀会長と立花さんのデートが原因ですよね?」
かぐやを元の状態に戻す為にも、早坂は話し出す。
「昼間にも言いましたが、そんなに羨ましかったらかぐや様も白銀会長をデートに誘えばいいんですよ。そうすれば、白銀会長だって立花さんと同じようにかぐや様とデートをしてくれます。何なら明日の月曜にでも誘いませんか?」
早坂はかぐやに提案をする。かぐやがこうなっているのは今日の白銀のデートが原因だ。恐らく、楽しそうにデートしている白銀と京佳を見て落ち込んでいる。自分もあんな楽しそうなデートをしたいと。
ならばかぐやも白銀とデートをすればいい。だから早坂はかぐやにそう提案する。
(まぁ、どーせ何時ものように『そんな事自分から出来る訳無いじゃない』とか言って言い訳するんでしょうけどね)
だが早坂、実はかぐやがこの提案を受け入れるとは思っていない。何時ものかぐやなら、この後そういう提案を受けないからだ。理由は、恥ずかしいから。
そうやってかぐやは、何時も言い訳をする。白銀と一緒に居たいと思っても、白銀と一緒に遊びに行きたいと思っても、白銀と恋人になりたいと思っても。必ず自分の気持ちに言い訳をする。
(せめてほんの少しでも素直になってくれればいいんですけどね)
もしも、かぐやが京佳と同じくらい自分の気持ちに素直だったら、2人はとっくに恋人だ。恐らくは、1学期の時点でかぐやは白銀と恋人になっていただろう。そして、恋人として楽しい夏休みを過ごし、2学期になれば神っていたかもしれない。
だが実際は違う。何時までたってもかぐやが素直にならない為、白銀との距離が中々縮まらない。それどころか、何時の間にか京佳の方が白銀との距離を縮め、白銀と2人きりで、それも2回もデートをするまでに至った。
「前にも言いましたが、このままだと本当に立花さんと白銀会長が恋人になるかもしれませんよ?」
早坂は、白銀と京佳が恋人になるのを危惧している。このままでは、本当にそうなってしまう可能性がある。
「……」
そしてかぐやは、未だにベットにうつ伏せで寝ている。
(もう少しきつく言いましょうかね。いや、それでも言い訳するかもだけど)
早坂は何時もの様に、かぐやを少し追い詰めながらやる気を出させる事にした。
「今日のデート。あの2人は本当に楽しそうでしたね。傍から見れば完全に恋人に見える程に。実際、私も一瞬だけそう見えましたし」
「……」
「もしかすると、来月の立花さんの誕生日に白銀会長は告白をするかもしれませんね。間違いなく立花さんはそれを受ける事でしょう」
「……」
「まぁかぐや様が素直になって、白銀会長をデートにでも誘えばそれも阻止できるかもしれませんね。そうすれば白銀会長と2人っきりで楽しいデートも楽しめますし、デートが終わったら白銀会長から告白してくるかもしれませんよ?」
未だベットにうつ伏せになっているかぐやに話しかける早坂。すると、かぐやが口を開く。
「……ねぇ早坂」
「何ですか?」
「デートって、どこに行くものなの?」
「え?」
それは、早坂に驚くべきものだった。
(今のって、どういう?)
混乱する早坂。てっきりかぐやは、いつもの様に言い訳をするものだと思っていたからだ。しかしかぐやは、デートはどこに行くべきかを聞いてきた。顔は相変わらず枕にうずめたままだが。
「今日の立花さんと会長は水族館へ行っていたけど、他にデートに行くとしたらどこに行くものなの?」
「そ、そうですね。やはり定番は映画館でしょうか。他にもショッピングをしたり、どこか美味しいお店で食事をしたりなどがありますが」
「……そう」
早坂は思いつく限りのデート場所を言う。そして、同時に気になる事があったので、かぐやに聞いてみる事にした。
「しかしどうしてそんな事を聞くんですか?まさかかぐや様からデートに誘うとでも?」
早坂が気になる事はそこだ。先程、自分から『デートに誘ってはどうか』と提案しているが、かぐやが素直にそれを受けて、自分から白銀をデートに誘うとは思えない。
しかし―――
「それもいいかもしれないわね」
「……は?」
かぐやはその早坂の提案を受け入れた。
「えっと、かぐや様?」
「会長とデートするなら、そうね。映画館は前に行ったし、水族館は今日立花さんと行っているから遊園地がいいかもしれないわね。あ、でも遊園地は夏休みに生徒会の皆で行っているから別の場所の方がいいかも?ならどこかのホテルでディナー…ダメね。あまり高級な場所だと会長に迷惑がかかるわ。なら…」
「ちょっと待って下さい!ちょっと待ってくださいかぐや様!!」
早坂、たまらずかぐやに声をかける。
「ほんとどうしたんですか!?まるで白銀会長をデートに誘うみたいな言い方をしてますが!?」
「?だって早坂がそう言ったじゃない」
「いや言いましたけど!確かに言いましたけど!!」
このかぐやの反応は予想外だった。まさか自分の提案を受け入れるとは。
「ですが、いいのですか?自分から白銀会長をデートに誘うなど、そんなのまるで告白では?」
「???」
「いやきょとんとした顔しないでください!?え?私がおかしいの?」
何かに裏切られた気分になる早坂。何時ものかぐやなら、ここで言い訳をしてこの提案を却下する筈だった。しかし今日のかぐやは、この提案を受け入れ白銀をデートに誘おうとしている。
「今日の2人。とっても楽しそうだった…」
「え?」
かぐやはポツポツと喋り出す。ついでに体を起こして、ベットに腰かけた。
「もしも私が会長をデートに誘えば、あんな風に楽しそうに過ごせた。でも、私はそれをしなかった。今までいくらでもチャンスがあった筈なのに、私は1度もしなかった…」
要するに、かぐやは京佳が羨ましいのだ。あれだけ楽しそうに過ごした京佳が。あれだけ幸せそうだった京佳が。自分も白銀と楽しくデートをしたい。だからこそ、こうして自分から白銀をデートに誘おうとしている。
「そうですか。でも、いいんですか?異性をデートに誘うというのは、相手に好意があるという証拠です。かぐや様が白銀会長をデートに誘うということは、それはかぐや様が白銀会長の事を「好き」……え?」
「私は、白銀御行が、好き…」
今度こそ早坂は目が飛び出そうになる。今確かに言った。かぐやは、白銀の事が好きだと確かにそう言った。
「だからこそ、立花さんに、会長を取られたくない…」
「かぐや様…」
続いて、京佳に白銀を取られたくないとも言った。それは間違いなく、心からの言葉だった。
「ねぇ早坂。前に言ったわよね?わたしはどんどん追い詰められているって。まだ、私にも巻き返す事はできるかしら?」
「そう…ですね。確かに白銀会長と立花さんは今日デートをしていましたが、それでもまだ白銀会長は立花さんをギリギリ友人というくくりで納めている筈ですから、チャンスは十分にあるかと…」
「そう…」
「……」
かぐやの部屋に沈黙が訪れる。かぐやも早坂も喋らない。いや、何を喋ればいいかわからない。
(いや、これこそ好機…!)
しかし早坂にはある思いがあった。ようやくだ。ようやくかぐやが白銀を好きだと言ったのだ。ならばこそ、これを起爆剤にして一気にかぐやに京佳との差をつけさせるべきだと。
「デートにいくのであれば、そうですね。動物園はどうですか?」
「動物園?」
「はい。今日の水族館でも白銀会長はとても楽しそうでした。まぁ動物がとても好きという訳では無いでしょうが、嫌いでは無いでしょう。ならば動物園に行き、そこで多くの動物に触れないながら楽しくデートをする。どうですか?」
「……成程」
早坂はデート先に動物園を提案する。実際、若者のデートでも候補に入る場所だ。
「わかったわ。じゃあ、私から会長に連絡を入れて動物園にデートに誘うわ」
「わかりました」
そしてかぐやは、自分からデートに誘うと言った。
(長かった…本当に長かった…!)
思わず早坂は泣きそうになる。ここまで長かった。無駄な遠回りは当たり前。何時も言い訳をして、珍妙な作戦ばかり。そしてそれに付き合わされる早坂。
しかし、今やっとかぐやは決意した。素直に白銀をデートに誘うと。これならば大丈夫だ。もう変な作戦もやらないだろう。
「それで、何時誘うんですか?明日?」
後はかぐやが白銀を誘い、当日のデートをサポートすればいい。なので早坂はかぐやが白銀を誘う日時を聞いた。それを聞いて、他に邪魔者が来ない様にサポートしようと。
「えっと…その…来月中とか?」
「は?」
「い、いえ!今年!あ、いや!2年生のうちには必ず誘うわ!絶対に誘うわ!」
が、かぐやはここでヘタれた。先ほどまで白銀をデートに誘う、そして白銀の事が好きだと言っていたが、それでもやっぱり恥ずかしい。こればっかりは簡単には変えられない。ようやく決意したかと思えば、まさかの展開。
そしてそんなかぐやを見た早坂の目は、とても冷たかった。
「かぐや様?」
「だって!誘った事なんて無いんだもの!せめて色々準備をさせてよ!失敗したくないし!」
(やっぱりダメかもしれない…)
もう少しだけ、早坂の苦労は続きそうである。
ようやく素直になったかぐや様。しかし、1歩踏み出したのではなく、半歩踏み出した感じです。それでも凄い成長だけどね。
次回も頑張るよ。でももしかすると来週は投稿できないかもしれない。原因はネタが出てこないから。いやだって、もう80話以上書いているし、流石にね?
やっぱりプロの作家さんって凄い。本当にそう思います。
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