もしもかぐやに滅茶苦茶強力な恋敵がいたら・・・   作:ゾキラファス

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 今回は少し短め。そろそろまた生徒会メンバーでわちゃわちゃする日常のお話を書きたい。


立花京佳も決意する

 

 

 

 夕方 立花家 京佳の部屋

 

「今日は、楽しかったなぁ…」

 

 かぐやが自室のベットの上でうつ伏せで倒れている頃、京佳は自室のベットの上に寝っ転がり、本日白銀と一緒に行った水族館デートを思い返していた。

 水族館へ行き白銀と手を握った事。一緒にアシカのショー楽しんだ事。迷子になっていた女の子の親を探した事。写真を沢山撮った事。様々な出来事があったが、その全てが楽しい時間だった。

 

「また、行きたいなぁ…ふふ、えへへ…」

 

 普段、学校の女子達からクールなイメージを持たれている京佳だが、本日は想い人との2人きりのデートだった。こうして思い返すだけで、顔が蕩ける。もし今の彼女を、学校の隠れファンの子たちが見たらどう思うだろうか。

 因みに京佳の母親は、現在買い物に出ている為家にはいない。もしいたら今の京佳の顔をスマホに収めていただろう。おかげで京佳はこうして思いにふける事ができる。

 

「電話?」

 

 京佳が自室のベットの上で1人蕩けていると、スマホから着信音が鳴る。京佳は直ぐにスマホを取って電話に出る。

 

「もしもし?」

 

『やっほー京佳。今いいー?』

 

 電話の相手は、他校に通っている京佳の幼馴染で親友の恵美だった。

 

「構わないが、どうしたんだ?」

 

『前置き無しに単刀直入に聞くけどさ、今日のデートどうだった?』

 

 開口1番、恵美は京佳にストレートな質問をしてきた。実は恵美、今日のデートが心配だったのだ。親友が好きになった異性とのデート。もしかすると変な横やりが入って、デートの邪魔をされるかもしれない。何か不測の事態があって、デートそのものがお釈迦になるかもしれない。

 なので恵美は最初、ひそかに京佳のデートについていこうと考えていた。しかし、『それは親友のデートの邪魔になるのでは?』と思いとどまり、大人しく自宅で待っていた。そして、デートが終わったであろう時間である今、こうして電話をかけてきたのだ。

 

「そうだな。結論から言えば、最高だったよ」

 

『ふぅ!やるじゃーーん!』

 

 恵美の質問に『最高だった』と答える京佳。その答えを聞いた恵美はほっと胸を撫で降ろす。どうやら、自分の親友のデートは成功を収めたようだ。

 

『で、キスとかしたの?』

 

「え?」

 

『だーかーらー。例の白銀くんとキスとかしたの?』

 

 だからこそ気になった。デートを成功を収めた親友が、一体どこまで進んだのかを。故により踏み込んだ質問をした。

 

「いや流石にしていないよ。そういう雰囲気じゃなかったし」

 

『ええー?普通はデートの終わりにキスくらいしない?』

 

「それは漫画の見過ぎだ」

 

 恵美の質問を否定する京佳。勿論京佳だって、叶う事ならキスのひとつくらいしたい。そしてそのまま一気に、白銀との距離を詰めて恋人になりたい。だが現実に考えて、まだ恋人でもない異性がいきなりキスなんてしない。

 

(いやまぁ…白銀の誕生日の時には、しちゃったけどさ…)

 

 でも京佳、既に白銀にキスをしている。口にではなく頬にではあるが。あの時は、かぐやに負けたくないという強い気持ちの元あんな事をしてしまったが、今では後悔などしていない。少なくとも、白銀は嫌がっているそぶりを見せていないし、翌日の白銀は間違いなく自分の事を意識していたし。

 

『じゃあさ、どういうデートだったのか教えて』

 

「いいよ。先ずは…」

 

 京佳は恵美に本日のデートの事を教える。着ていった服が可愛いと言われた事。一緒にアシカに輪投げをした事。最後に海月の水槽の前で記念写真を撮った事。京佳はその全てを、楽しそうに恵美に話した。

 

「という感じだよ」

 

 本日あったデートの内容を全て話した京佳。そして胸が温かくなり、幸せな気分になる。

 

『そっか。もの凄く楽しかったんだね』

 

「わかるのか?」

 

『そりゃね。だって話している時の京佳、すっごく楽しそうなんだもん。羨ましいよ』

 

 京佳の話を聞いていた恵美は羨ましがる。自分も誰かを好きになったら、こんな風になれるのだろうかとも。

 

『ま、楽しかったならよかったよ。これで白銀くんとの距離も縮まったんじゃない?』

 

「そうだな。少なくとも距離が開いたって事はないと思っているよ」

 

 京佳自身、本日のデートで『白銀に自分を意識させる事に少しは成功しているのでは?』と思っている。待ち合わせの時から自分を見て少しだけドギマギいたし、水族館の中では学校より距離が近かった。

 更に手を握っていた時も、白銀は1度も嫌がるそぶりは無かった。最後のは単に白銀の人が良いだけなのかもしれないが、兎に角本日のデートは色々と成功だったと思っている。

 

『ここまできたら、後は告白だけだね。何時するの?明日とか?』

 

 京佳の話を聞いた恵美はそう言う。京佳の話を聞く限り、本日のデートは成功だ。京佳自身も楽しんでいるし、白銀の反応も脈ありに聞こえる。ここまでくれば、後は告白をして恋人になるだけだ。

 

「いや、流石に今すぐ告白はしないぞ?」

 

『え?何で?』

 

「何でと言われてもなぁ…」

 

『今日のデートで手ごたえを感じているんでしょ?だったらこのままの勢いで告白をするべきじゃないの?』

 

「それはそうかもしれないが、流石に勢いのままっていうのは…」

 

 恵美の言う事もわかる。確かに勢いというのは大事だし必要だ。1度勢いが付けば、それを簡単に止める事などできない。だがもし勢いのまま進んで、それを止められたら、もう取り返しがつかないだろう。

 もしここで勢いに乗って白銀に告白をして、そして白銀に振られたらと思うと、怖くて仕方が無い。この辺の気持ちは、かぐやと一緒かもしれない。

 

「それにそもそも、私は告白をする時期を決めている」

 

『マジ?いつ?』

 

「うちの学校の文化祭だ」

 

『成程。定番だね』

 

 流石に勢いそのままの流れで告白するつもりは無い京佳だが、既に白銀に告白する時期そのものは決めていた。それは12月にある秀知院学園の文化祭、通称『奉心祭』である。京佳はこの奉心祭で白銀に告白するつもりなのだ。だからそれまでは、自分を意識させるために徹底して白銀を攻める気でいる。

 

「私はその文化祭までに全ての準備を終えるつもりだ。そして文化祭で、白銀に必ず告白をする」

 

『何だ。ちゃんと色々考えていたんだ』

 

「まるで私が何も考えていない言い方しないでくれ。私なりにちゃんと考えているんだ」

 

 親友にしっかりと作戦があるのなら、恵美はこれ以上何か言うつもりは無い。最も、京佳から相談があったらいくらでも乗るつもりだが。

 

(にしても、ちょっと引っかかるなぁ…)

 

 しかし恵美はある事が気になってた。それは、京佳が水族館でデート中に偶然現れたという、かぐやの事である。京佳曰く、偶然出会ったと言っているが、恵美はどうも腑に落ちない。

 確かに、偶然水族館で友人と出会う事はあるかもしれない。だが『一緒に水族館を観てまわらないか』なんてかぐやが言ったのが気になる。

 

(普通そんな事言うかな?あんまりそういう事言わないと思うんだけど…)

 

 街中で友人と出会った時、あいさつをしてその場で話す事はあるだろう。けれど、その後一緒にどこかに遊びに行こうと言う事はあまりないように思える。恵美はそこが気になっていた。

 

(まぁでも、あるのかな?)

 

 だが結局『そんな事もあるのでは?』という結論に至り、これ以上その事について考えるのをやめた。確かに気にはなるが、それだけだ。京佳に何か害が及んだ訳でもない。ならばこれ以上考えるのは意味がない。よって恵美は、この事を頭から消した。

 

「どうした恵美?」

 

『ううん。何でもないよー』

 

 そして再び京佳と電話で話すのだった。

 

『ねぇ京佳』

 

「何だ?」

 

『手伝って欲しい事があったら何でも言ってね?私、京佳の恋、全力で応援するから』

 

「ふふ、ありがとう。何かあったら遠慮なく言うよ」

 

『あいあいさ~』

 

 恵美と京佳は小さい頃から付き合いがある幼馴染だ。そして恵美は、京佳が中学の頃に、男子達から左目の事について酷い事を言われた事を知っている。それ以来、京佳が自分の左目に凄いコンプレックスを抱えている事も。

 だからこそ恵美は、京佳の左目を見て変な事を言わない白銀とくっついて欲しいと本気で願っている。同級生でそんな男は、そうそういないだろうし。

 

『ところでさ京佳』

 

 と、恵美はふいにある事を思い出した。

 

「何だ?」

 

『私が昨日の夜に提案した『色仕掛け作戦』は実行したの?』

 

 恵美が京佳に提案した作戦、それは色仕掛けである。恵美は京佳に『デート中に色仕掛けを仕掛けろ』と言っているのだ。思春期の男子というのは、兎に角そういった事に飢えている。高校生ともなれば多少落ち着くが、それでも飢えている。まるで狼の様に。彼女が欲しいと言っている男子の半分以上は、異性とそういった事がしたいからだ。

 故に恵美は、未だに直接会った事が無い男子、白銀に色仕掛けを仕掛けた方がいいと言っていた。そうすれば、白銀も嫌でも京佳を意識するだろうと思ったからだ。

 

「してないからな?というか最初からするつもりなんて無い」

 

 当然と言えば当然だが、京佳はそんな作戦は実行していない。京佳は、白銀を振り向かせる為ならあらゆる努力はするが、流石に人が大勢いる場所でそんな事をする勇気は無い。白銀以外に見られたくないし。

 最も、念のためという事で下着はこの間購入したものを履いていたが。

 

『えー、何でよ。折角丈の短いスカート選んでやったのに。階段とかで白銀くんに態とパンツ見せればよかったじゃん。男子なんて皆スケベなんだから、それでコロっといくって』

 

 恵美の言っている事は、間違いではないだろうがやや偏見がある。全ての男子高校生がそうかと言われたら、多分違う。最近は『絶食系男子』や『悟り系男子』という人種も存在しているし。

 

「嫌だよそんなの。それに…既に白銀には、見られた事あるし…」

 

『マジ?いつ?教えて?後ついでにその時のパンツの柄とかも』

 

「いや聞いてどうするんだ?って言うか教えてなかったか?」

 

 その後、恵美の気迫に結局根負けして、京佳は恵美にその事を話したのだった。

 

 尚、この時点で2人の通話時間は1時間を超えていたりする。つまりそれは、

 

(へー。そうなんだー。白銀くんに下着をねー)

 

 買い物を終えた京佳の母親の佳世が帰宅している事を意味している。無論、電話に夢中の京佳はその事に気づいていない。

 

(いっそ私から『責任とってあげて?』って白銀くんに言っちゃおうかしら?)

 

 そして娘の通話を盗み聞きしていた佳世は、勝手にそんな事を思いながら夕飯の支度をするのだった。

 

 因みにその日の立花家の夕飯は、肉にワサビを練りこんだ唐揚げだった。

 

 

 

 

 

 おまけ 白銀家

 

「で、おにぃ。どうだったの?」

 

「何が?」

 

「だから今日のデート。どうだったの?」

 

「どうって、普通に楽しかったぞ?ペンギンも見れたし」

 

「そういう事聞いているんじゃないから。京佳さんとのデートの感想聞いてるの。どうだったの?」

 

「……別にいいじゃないか。その、今立花の話しなくても」

 

「……え?待って?何その反応?」

 

「おおー。このホタテ饅頭うまいな」

 

「おい親父、勝手に開けて食うな。もうすぐ夕飯なんだぞ」

 

「そんな事どうでもいいから!!早く教えて!何かあったんでしょ!?ねぇ!?」

 

「さーて、夕飯の支度するか。今日はピーマン炒めにしよっか」

 

「ちょっとおにぃ!?何で露骨に京佳さんの話する事避けるの!?ねぇってば!?」

 

 

 




 次回は白銀会長回の予定。ここから、同時に2人の異性を意識しだした会長が苦悩すると思う。頑張れ。

読んでみたいお話とかありますか?

  • 動物園デート(かぐや)
  • 少しえっちぃやつ(京佳)
  • 中身が入れ替わるお話(かぐやと京佳)
  • 1学期の短編集
  • マキちゃん関係
  • いいから全部書け

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