もしもかぐやに滅茶苦茶強力な恋敵がいたら・・・   作:ゾキラファス

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 某死にゲー発売記念のネタ回です。


生徒会と死にゲー

 

 

 

「ぐあああああ!?」

 

「会長ーーー!?」

 

「ぎゃああーー!!会長がやられちゃったから私に向かってきてますーー!?」

 

「伊井野!そっちにも行ってるぞ!避けるんだ!」

 

「きゃあああ!!来ないでーーー!こっち来ないでーーー!?」

 

「うっわ。わかってましたけど阿鼻叫喚ですね」

 

 11月に入った秀知院学園。その生徒会室では、大勢の叫び声が響いていた。叫んでいる皆の手にはスマホ、もしくはタブレットがある。そして全員、それを見ながら叫んでいる。

 今、生徒会のメンバーはスマホでゲームをして遊んでいる。しかしその光景は、和気あいあいとは程遠い。どちらかといえば、現在進行形でトラウマを刻まれている感じだ。

 

「いやこれ倒せねーよ!なんだこれ!1撃でこっちの体力8割持っていかれるぞ!?最近のゲームはこんなに難しいのか!?」

 

「石上くん!これ本当に最初のボスですか!?さっきから一向に倒せる気がしないんですけど!?」

 

「まぁこのゲームは特別難しい部類に入るので」

 

「ゲームなんて殆どしませんが、こんなに難しいんですね…」

 

「私は兄がいたからテレビゲームをした事はあるが、こんなに難しいのは初めてだよ…」

 

「もう私トラウマになりそうです…」

 

 現在皆がやっているのは、スマホで出来るオンラインで協力プレイが可能なアクションゲームである。これが普通のアクションゲームならば、楽しいひと時となっていただろう。だがそうはなってない。原因はそのアクションゲームだ。

 

 難易度が高すぎるのだ。それも異常に。

 

 普通のアクションゲームの最初のボスといえば、大抵は難なく倒せるもの。だが今皆がやっているゲームのボスは違う。1回でも攻撃を受ければ瀕死、悪ければ即死。おまけにこちらの攻撃はダメージが中々与えられず、ボスの体力が中々削れない。

 先程から最初のボスに何度も倒されてゲームオーバーになっている白銀達。その数、既に15回を超えている。

 

 そもそもどうして皆がゲームをやっているかと言うと、石上が原因である。

 

 ここで時間を1時間程さかのぼろう。

 

 

 

 1時間前

 

「会長。ちょっといいですか?」

 

「何だ石上?」

 

「僕と一緒に、ゲームしませんか?」

 

「は?」

 

 その日の放課後、石上は白銀に突然話しかけてきた。どうもゲームのお誘いらしい。

 

「別にいいが、どうして突然?」

 

「実は今、このゲームがキャンペーン期間中なんですよ」

 

 そう言うと石上は、自分のスマホを白銀に見せる。そこには、何やら中世の騎士が『仲間と協力して限定アイテムを手に入れよう』というメッセージと共に写し出されていた。

 

「これは?」

 

「スマホでも遊べるアクションゲームです。それで今、丁度このゲームがキャンペーン期間中なんですよ。仲間と一緒にチーム組んで、協力してボスを倒せば限定アイテムが手に入るっていう」

 

「成程。その限定アイテムが欲しいから、俺と一緒にゲームをしてほしいという事だな」

 

「おっしゃる通りです」

 

 石上の発言の意味を察する白銀。要は限定のアイテムが欲しいのだ。そのために、白銀をこのゲームに誘っている。

 

「だが俺はこういったゲームなんてした事ないぞ?こういうのはネットとかで同じ様な趣味の人を集めて遊んだ方がいいんじゃないのか?」

 

 「ネット上でそういう人集めるの、僕には難しくて…なんか問題とか起こされそうですし…怖いし…」

 

「なんかごめん…」

 

 こういったゲームを殆どした事が無い白銀がそういった提案をしたが秒で否決された。ネットでも、石上には何かトラウマがある様だ。

 

「まぁ、だったら協力しよう。今は特に忙しく無いし」

 

「ありがとうございます」

 

 白銀は石上の提案を受ける事にした。だがこれに意を唱える者が現れる。

 

「白銀会長!生徒会長ともあろう人が学校で堂々とゲームをしようとするなんてどういう事ですか!?」

 

 生徒会会計監査兼風紀委員の伊井野である。彼女は基本真面目な生徒だ。そんな彼女からすれば、学校に不要な物を持ってきたあげく、それで遊ぼうとしているのは見逃せない。なのでこうして注意している。

 だがそれも直ぐに意味をなさなくなった。ある人物が参加を表明したのだ。

 

「石上くん!私も参加していいですか!?」

 

「いいですよ。じゃあスマホ貸して下さい。ダウンロードするんで」

 

「わーい!」

 

「藤原先輩!?」

 

 生徒会の暴走特急女、藤原だ。彼女の家は色々と厳しく、石上がやるようなゲームなんてした事がない。普段藤原が遊んでいるのは、殆どがテーブルゲームだ。

 そんな彼女からすれば、ネットで協力して遊べるゲームには興味が沸く。そして興味があり、親の目が無ければ当然遊びたくなるもの。

 

「で、でも藤原先輩!それは学校では」

 

「ミコちゃん。人間に必要なものってわかりますか?」

 

「へ?えーっと、睡眠と食事?」

 

「いいえ、息抜きです。例えば普段何時間も勉強していても、どこか息抜きをしなければ絶対に途中で勉強に集中できなくなります。そしてその結果、成績が振るわなくなったりします。だからこそ適度な息抜きをするんです。そうすればこの後の仕事も円滑に進める事ができます」

 

「成程。確かに私も試験勉強中は少しだけ息抜きします。流石藤原先輩!」

 

「いや~」

 

 藤原の適当めいた説得により、伊井野は納得。とりあえずこれでゲームの邪魔をされる事はないだろう。

 

 余談だが、伊井野が言う息抜きというのはアイドルの生声CDを聞く事だ。

 

「そうだ!どうせなら皆でやりましょう!できますか石上くん!?」

 

「できますよ。このゲームは最大12人まで協力可能なんで」

 

「おおー!2人までとかじゃ無いんですね!最近のゲームは凄いですね!」

 

 実際、最近のオンラインゲームの最大協力人数は100人越えなんてよくある。最大4人までしか遊べない時代では無いのだ。

 

「藤原さん?私達もですか?私、そういったゲームなんてやった事ないんですけど…」

 

「いいじゃないか四宮。何事も経験だというし。私もやるから皆で遊ぼう」

 

「それはそうですが、私はまだスマホを持っていないんです。これでは遊べませんよ?」

 

「だったら四宮先輩には僕のタブレット貸しますよ。これでもちゃんと遊べるんで」

 

「そうですか。ならお言葉に甘えて。ありがとう石上くん」

 

 未だガラケーを使っているかぐやだったが、石上の私物のタブレットを借りる事で遊べる事になった。

 

「ほらほらミコちゃんも!」

 

「わ、私もですか!?」

 

「さっき京佳さんが言いましたけど、何事も経験ですよ!」

 

「ふ、藤原先輩がそう言うなら」

 

(こいつ藤原先輩に言われたらマジで何でもしそうだな…)

 

 藤原に言われ、伊井野も参加する事になった。そんな伊井野を見ていた石上は、伊井野の事が少し不安になる。

 

「ところでこれはなんていうゲーム何ですか石上くん?」

 

「『ダークブラッドリング』っていうゲームです。結構有名な作品ですよ」

 

「あ!なんかテレビのCMで見た事ありますね!」

 

 藤原の質問に答える石上。どうやら藤原も名前だけは知っている様である。こうして生徒会メンバー6人でオンラインゲームをする事となったのだ。

 

 それが、ただのアクションゲームでは無いと知らずに。

 

 

 

 それぞれのスマホにゲームをダウンロードしてゲームを起動。白銀、藤原、京佳、伊井野は自分のスマホで。かぐやは石上から借りたタブレットで。そして石上は学校に持ってきていたゲーム機で。

 

「あんた後でそれ没収だからね」

 

「はいはい」

 

「この…!」

 

「まぁまぁミコちゃん。落ち着いて」

 

 伊井野は絶対に後で石上が持っているゲーム機を没収しようと決意した。

 

「それじゃ、先ずはキャラカスタマイズからですね」

 

 石上に言われ、全員がキャラカスタマイズ画面に移動。そこには様々な事が入力可能な画面が写る。名前や素性。身長や体型。髪型に顔の輪郭。そして装備可能な武器など。兎に角様々だ。

 

「なぁ石上。素性ってのは何だ?」

 

「それはゲームでの役職です。騎士なら防御力と近接攻撃が高い。盗賊なら隠密攻撃が強い。魔術師ならその名の通り魔術攻撃が強いです」

 

「そうか。なら俺は騎士で行こう。かっこいいし」

 

「じゃあ私は魔術師にしますね~」

 

「私も藤原先輩と同じ魔術師で」

 

「私はこの戦士にしよう。強そうだし」

 

「戦士はオススメですよ。攻撃の振りが少し大きいですけど1撃がかなり大きいので。その上体力も多いし」

 

 白銀は騎士を、藤原と伊井野は魔術師を選び、京佳は戦士を選んだ。

 

「石上くん?この聖職者というのはどういった感じなんですか?」

 

「聖職者は後方支援特化型ですね。皆が前線で戦っているのを、後ろか回復魔法で回復しながら支援するって感じです。まぁ前に出て戦えなくもないですが」

 

「そうですか。だったら私は聖職者にしときましょう。こういったゲームをしたことが無いので、足手まといになると思いますし。後ろから皆さんを支援します」

 

 かぐやは聖職者を選んだ。

 

(四宮先輩が聖職者…うわぁ…)

 

 聖職者を選んだかぐやを見た石上は、思わず声を出そうになった。だって似合わない。石上のイメージでは、かぐやは呪術師とか暗殺者のイメージである。でもそれを声に出したらどうなるかくらいわかっているので黙っている。

 

「石上くん?何か言いましたか?」

 

「いいえ!何にも言ってません!」

 

「……そうですか」

 

(あっぶね…)

 

 だが何かを察したのか、かぐやは石上を見ながらそう質問をする。何とかごまかせたが、次は無いと思った石上は余計な事を考えない様にした。かぐやもそれ以上は何も聞いてこなかった。

 

(それにしても、最近のゲームはここまで細かく設定できるんですね)

 

 一方、ゲームなんて殆どやった事がないかぐやはその細かい設定に驚く。なんせ顔の設定だけでも、目や口元、鼻の形に眉毛まで設定可能なのだ。こういったものに凝る人は、これだけで1日が終わりそうである。

 

(まぁここは適当に選んで…)

 

 素性を聖職者に、性別を女性にして、あとは適当に設定を弄ろうとした時、かぐやはある部分を見て動きを止める。

 

『設定 胸の大きさ』

 

 それはキャラクターを女性に設定した場合にのみ弄る事が可能な場所。かぐやは自分の胸がコンプレックスだ。せめてあと少しだけでも大きさが欲しいと未だに願っている。どうせゲームではあるが、折角弄れるのなら弄りたい。

 

(そうね…折角弄れるんだし、ちょっとくらい夢見ても、良いわよね?)

 

 願望に負けて、かぐやは少しだけ胸部を弄った。結果、実際のかぐやよりやや大きいくらいの胸を持った聖職者が誕生した。

 

(はぁ。ゲームじゃなくて現実でこれくらい欲しいわ…)

 

 そして少しだけ落ち込んだ。

 

「皆さん終わりましたか?じゃあチュートリアルしましょう」

 

「え?石上くん、もうさっさと敵を倒しに行かないんですか?」

 

「いや藤原先輩、操作方法知らないでしょ。せめて操作方法くらいは知らないとまともに動けませんよ?」

 

「あ、それもそうですね。わかりました!」

 

 早速敵と戦おうとした藤原だが、石上以外このゲームは初めてである。そんな中で、碌に操作方法も知らずに戦えば、結果は明らかだ。その後、石上に言われ全員が簡単なチュートリアルをやった。

 

「なぁ立花。大丈夫か?」

 

「何がだ?」

 

「いやこの敵だよ」

 

 チュートリアル中、出てくる出来が剣や槍を装備した骸骨であり、それを京佳が怖がらないか白銀が心配した。

 

「問題ない。殴れば倒せるんだろ?だったら何も怖く無い」

 

「そ、そうか…」

 

 しかし京佳は『実態があるなら怖くない』理論。故に倒せる骸骨は怖くもなんともない。尚、このゲームには一応特殊な武器じゃないと倒せない幽霊が出てくるのだが、それはゲーム後半にのみ登場する。少なくとも今日出あう事はありえない。

 

「ところで白銀。心配してくれたのか?」

 

「まぁ、夏休みの事もあるしな」

 

「そうか、ありがとう。でももし今日またあんな事があったら、その時は色々お願いするよ」

 

「ああ。もしそうなったら任せておけ」

 

 京佳は今年の夏休みの肝試しで、腰を抜かしてガチ泣きした事がある。その時は白銀におぶって貰い事なきを得た。そういった出来事もあり、白銀は京佳を心配した。そしてもし、本日またあの時の様な事があれば、その時はまた必ず助けると言った。

 

(白銀に心配された…ふふ、嬉しいな…)

 

 好きな人から心配される。これで嬉しいと思わない人はそうはいないだろう。

 

(この女…こんな時にまで会長をたぶらかすつもりですか?この後のゲームでは貴方だけは絶対に回復しませんからね?)

 

 同時に、自分の想い人が別の女を心配しているのを見て嫉妬する人もいたが。

 

「じゃ、早速部屋作るんでそこで集まりましょう」

 

「はい?部屋って何ですか?」

 

「オンラインでゲームする時はゲーム上に部屋って言う場所を作るんですよ。そうすれば知らない人が来る事も無く、そこで皆で遊ぶ事ができます」

 

 「へー。そうなんですねー」

 

 そう言うと石上は部屋を作り、生徒会メンバー全員がそこに入っていった。

 

「あ、ほんとです。皆さんが私のスマホからでも見れますね」

 

「だな。俺のスマホからもちゃんと見れる」

 

 どうやらマッチングに成功したようだ。そしてそれぞれのステータスも簡易的に見れる。

 

「会長かっこいいですね~。まるでおとぎ話の騎士みたいですよ~」

 

「そうだな。これに馬がいれば完璧だ」

 

「そういう藤原と立花もかっこいいぞ」

 

 藤原と京佳は騎士の白銀を見てそう言った。

 

(く。先を越された…私が1番最初に会長をおだてるつもりだったのに…これもこのタブレットが遅いのが悪いんですよ…)

 

 かぐやは伊の1番に白銀をおだてようとしていたが、藤原と京佳に先を越され少しイラつく。

 

「あ、四宮先輩、綺麗。まるでお姫様みたいですね」

 

「そ、そうですか?」

 

 そんな時、伊井野がかぐやの聖職者のキャラを褒める。

 

「ええ。騎士である白銀会長の隣にいたら本当にお似合いだなって思います」

 

「ふふ。そう?ありがとう伊井野さん」

 

 伊井野にそう言われたかぐやはとたんに上機嫌になるのだった。

 

「ところで石上くんは?」

 

「僕はこれです」

 

 藤原に質問され、石上が目の前に現れる。そこにいたのは腰ミノのみ装備しているほぼ裸の男。

 

「いや何で裸!?」

 

「これが1番早く動けるんですよ」

 

「なぁ石上。それ防御力ってあるのか?」

 

「見てわかる通り、ありません。なので1回でも攻撃食らったら瀕死です」

 

 どうやら石上は身軽さを手に入れるべくほぼ裸な見た目にしているらしい。

 

「じゃあ行きますか」

 

「お、おう」

 

 こうして6人は協力プレイを始めたのだった。

 

 

 

「おお、まさに中世のお城って感じですね」

 

 ゲームを始めて直ぐ、スマホの画面には古そうな石作りの城が写し出される。

 

「グラフィックも凄いな。私のスマホでも綺麗に映る」

 

「そうですね。こっちのタブレットでも凄く綺麗に写ってます」

 

 ゲーム画面はかなり綺麗に映っており、素人目からみてもその凄さがわかる。

 

「あっちが正規ルートです。皆さん僕についてきてください」

 

「わかった。じゃあ石上頼む」

 

 5人は石上についていく形で城の中を進んで行く。そしてその途中、先ほどチュートリアルで倒した骸骨剣士を見つけた。

 

「ここは私とミコちゃんの魔術で一気に片付けちゃいますよー!」

 

「が、頑張ります!」

 

 まず藤原と伊井野の2人が魔術攻撃を始めると、あっという間に敵キャラの骸骨剣士を倒した。1撃である。

 

「おお!これは強い!やっぱり魔術はいいですね~。TRPGでも強かったりしますし」

 

「流石です藤原先輩!」

 

「いえいえ!ミコちゃんもよかったですよ~」

 

 道を進む6人。するとまた骸骨剣士たちが現れる。

 

「今度は俺が行こう」

 

「私も行くよ白銀。素性戦士だし」

 

 次は前衛職の白銀と京佳の2人。白銀の騎士がロングソードで倒し、京佳の戦士がグレートソードでなぎ倒した。

 

「ふむ。やはりこれくらいの敵なら難なく倒せるな」

 

「そうだな。まぁまだ序盤みたいだし」

 

 2人も苦労する事なく倒せた。

 

「石上くん。今度は私がやってみたいのですが」

 

「四宮先輩はまだ待っててください。回復を使える場面はここのボスでいくらでもあるので」

 

「そうですか。わかりました。その時は全力で皆さんを助けますね」

 

 かぐやも皆と同じように戦ってみたいかったが、この後にしっかりと活躍する場があるとの事なので今は我慢する事にした。そしてその後も襲ってくる敵を倒しつつ、城の中を進んでいく6人。

 

 暫く進むと、目の前に巨大な扉が現れた。

 

「なんかもう、いかにもって感じの扉だな」

 

「ですねー。もうこれ絶対にボスでしょ」

 

「会長と藤原先輩の言う通りこの先がボスです。ここのボスを倒せればクリアとなります」

 

 あきらかな扉の前で足を止める6人。そして石上の言う通り、この先がボスらしい。

 

「じゃあ作戦を確認します。会長、立花先輩、僕の3人が前衛でボスを攻撃。その後ろから藤原先輩と伊井野が魔法攻撃で援護。そして更にその後ろから四宮先輩が皆を回復です」

 

「了解だ。さっさと倒そう」

 

 作戦を確認した6人は、扉を開ける。するとその先には大きな庭のようなものがあった。しかし、敵と思しき存在は何処にもいない。

 

「あれ?何もいませんね?石上くん。ボスはどこですか?」

 

「上からくるので気を付けて下さい」

 

「は?上?」

 

 石上がそう言った瞬間、空から何かが降ってきた。

 

 それはゲームで操作しているキャラよりずっと大きく、手には殺意たっぷりな斧。そしてその見た目は、明らかに人では無かった。例えるなら、悪魔だ。

 

「きゃあああ!?」

 

「ぎゃあああ!?思ってたより大きいですーーー!?」

 

 伊井野と藤原がボスにびびる。想像よりずっとでかいボスだったからだ。

 

「落ち着け皆!さっき言ってた石上の作戦通りに行くぞ!」

 

「わかりました!」

 

「了解だ」

 

 白銀が声を出し、かぐやと京佳がそれに答える。そしてボスに攻撃を開始した。

 

「え?」

 

「あれ?」

 

 しかし、攻撃を当てた筈の白銀と京佳がそんな声を漏らす。

 

 何故ならボスの体力がほぼ減っていないのだから。

 

 そして今度はボスが攻撃を開始。白銀が避けようとしたが間に合わず攻撃が直撃。すると、

 

「は?」

 

 その瞬間、白銀のスマホ画面にはゲームオーバーの文字。

 

「は?え?」

 

 訳が分からないという感じの白銀。気づいたら死んでいたのでそれもそうだろうが。

 

「白銀!?」

 

「会長!?もしかしてやられちゃったんですか!?」

 

 慌てる京佳とかぐや。だがそんな2人にも敵ボスは容赦なく攻撃してくる。

 

「うわ!?何だこいつ!?1回で体力消えたんだが!?」

 

「私もゲームオーバーですよ!?どういう事です!?」

 

「わ、私もやられた…」

 

 白銀に続く形でかぐやと京佳もゲームオーバーになる。

 

「ぎゃあああ!?こっちに来たーーー!?」

 

「きゃあああ!?来ないでーーー!?」

 

「あー、これは無理だなー」

 

 ついでといわんばかりに藤原と伊井野と石上も攻撃。こうしてあっという間にパーティは全滅した。

 

「おい石上!何だ今のは!?あのボス強すぎないか!?」

 

「そうですよ石上くん!普通最初のボスってもっと弱いでしょ!?なんですかあれ!?」

 

 あまりのボス難易度に抗議する白銀と藤原。

 

「すみません。このゲームだとこれが普通なんです」

 

「これが!?」

 

「はい。これ所謂『死にゲー』って奴なんで」

 

 だが石上曰く、このゲームではこの難易度が普通らしい。因みに死にゲーとは、兎に角ゲームオーバーになりやすいゲームの事をいう。何度も死んで、相手の動きを見切ってボスを撃破。その時の達成感はかなり凄いものがある。

 

「まぁ僕も最初は苦戦しましたけど、そのうち慣れて倒せるようになりました。なのでもう1回行きましょう」

 

「そ、そうか。まぁ、頑張るか」

 

「というか、石上くんだったら倒せるんじゃ?」

 

「確かに僕1人だけならいけますけど、協力プレイになるとボスもその分強くなるみたいで。ちゃんと皆で協力しないとダメなんですよ」

 

「マジですか…」

 

 しかし何事も経験。1回目が駄目なら2回目を頑張ればいい。そんな事を考えながら6人は再びボスへと挑むのだった。

 

 のだが、

 

「はーーー!?何だ今の攻撃!?斧飛ばしてくるとか聞いてねーぞ!?」

 

「ぎゃあああ!?またこっちきたーーー!?かぐやさん早く回復をーーー!?」

 

「まって藤原さん!今は会長を回復させているから!」

 

「私が囮になる!こっちだーーー!こっちに来いーーー!!」

 

「何で!?何で魔術が使えないの!?これがバグ!?」

 

「ただのMP切れだぞそれ」

 

 その後も何度挑んでは返り討ちにあうという展開が繰り替えされる。こうして冒頭のような阿鼻叫喚な光景へとなったのだった。

 

 

 

「あの、先輩方…もういいです…」

 

 ボス戦を開始して1時間半。挑戦回数は既に30回を超え、皆の顔にも疲労が見え始めた。流石にこれ以上、皆に迷惑を掛ける訳にはいかない。

 

「もう僕、家に帰ってネットで協力者探してやりますんで。ほんと、すみませんでした…」

 

 自分の願望の為に全員を誘った石上だったが、今は罪悪感でつぶれそうだった。なので後は、家に帰ってインターネット上で協力者を探して、報酬のアイテムを貰おうとした。

 しかし、

 

「何言ってるんだ石上。もう1回いくぞ」

 

「え?」

 

「そうですね。次はもう少し回復のタイミングを速めてみます」

 

「え?」

 

「私も欲を駆らず1撃離脱戦法を取るとしよう」

 

「ちょ」

 

「ミコちゃん。次は私が魔術を使った後に攻撃してください。長篠の戦いの織田軍みたいに」

 

「わかりました!」

 

「いやちょっと?」

 

 白銀達は一向にやめようとしない。

 

「あの、会長?どうしてそこまで?」

 

「まぁ大切な後輩の願い叶えてあげたいっていうのもあるが…」

 

 白銀がそう聞くと、石上以外が異口同音で答えた。

 

『単純にこれ倒さないと気が済まない!!』

 

「あー…」

 

 結局のところ、生徒会メンバーは誰もかれも負けず嫌いなのだ。そして通算34回目となるボス戦へ挑むのだった。

 

「俺がボスを釘付けにする!その間に石上と立花は後ろからボスを攻撃!そして藤原と伊井野は四宮を護衛しながら魔術を飛ばしてくれ!」

 

『はい!』

 

 先ずは白銀がボスのタゲ取り。するとボスは白銀に釘付けになり白銀に攻撃をしようとする。

 

「せーの!」

 

「おらぁ!!」

 

 しかしその背中から石上と京佳の攻撃を受ける。すると、今度は攻撃をした2人の方を向くボス。

 

「今です!」

 

 それを見計らって藤原がボスに魔術攻撃。

 

「この!」

 

 藤原の魔術攻撃が着弾したのを見て伊井野が同じように魔術攻撃。だがこれでもボスの体力はまだ9割も残っている。

 

「うお!?斧投げ攻撃が!」

 

「直ぐに回復します!」

 

 白銀がボスの攻撃を食らうが、かぐやがすかさず回復し事なきを得る。

 

「もう1回いくぞ石上!」

 

「わかりました!」

 

 再び京佳と石上が攻撃。またボスの体力が少しだけ得る。

 

「私達ももう1回いきますよミコちゃん!」

 

「はい!」

 

 流れるように藤原と伊井野の魔術攻撃。

 

「くらえ!」

 

 今度は回復した白銀の攻撃。するとまたボスが白銀にタゲ集中する。これを繰り返して、少しずつボスの体力を削っていく6人。

 

 そして遂に、

 

『グオォォォォ』

 

 6人はボスの撃破に成功したのだった。

 

「や、」

 

『やったぁぁぁぁぁ!!!』

 

 思わずガッツポーズをする白銀。大きく息を吐く石上。両手を取り合って喜ぶかぐやと京佳。思わず抱き合う藤原と伊井野。

 それはまさに、共に困難に立ち向かった者達が、いくつもの壁を乗り越えて、遂に目標を達成した姿そのもの。今の6人には、それほどの達成感があった。

 

「あーー。よかった…。でももうしないぞ」

 

「本当にありがとうございます皆さん。何か奢ります」

 

 その後、きちんと報酬の限定アイテムがもらえているのを確認した石上は、全員分の飲み物を奢った。後に白銀は語る。『あの時飲んだお茶が、1番美味しかった』と。

 

 

 

 尚、石上はその後しっかりと伊井野にゲーム機を没収された。

 

 

 




 金曜日に投稿したかったけど、ダメでした。そしてまさかの9000文字越え。今までで一番文字数多い。

 以下、それぞれが選んだもの一覧

 白銀 素性:騎士 装備:ロングソード、盾
 かぐや 素性:聖職者:装備;メイス、聖職者のお守り
 京佳 素性:戦士 装備:グレートソード、小盾
 藤原 素性:魔術師 装備:魔術師の杖、短刀
 石上 素性:放浪者 装備:棍棒、木製の盾
 伊井野 素性:魔術師 装備:魔術師の杖、短刀

 次回も頑張るよ。

読んでみたいお話とかありますか?

  • 動物園デート(かぐや)
  • 少しえっちぃやつ(京佳)
  • 中身が入れ替わるお話(かぐやと京佳)
  • 1学期の短編集
  • マキちゃん関係
  • いいから全部書け

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