もしもかぐやに滅茶苦茶強力な恋敵がいたら・・・   作:ゾキラファス

90 / 158
 朝日が昇るまでは日曜日理論。

 それにしても、最近結構温かくなってきましたね。そろそろ衣替えかな。でもそうやって油断していると突然寒い日とかあったりするからもう少し様子を見よう。

 いつも通りノリと勢いで完成している作品ですが、何卒よろしくお願いします。


白銀御行は助けたい

 

 

(ようやく全てのバイトが終わった…マジで疲れた…)

 

 土曜日の14時過ぎ、白銀は自転車を押しながらくたびれた顔をしていた。今日の白銀は、朝から新聞配達のバイト。それが終わったらティッシュ配りのバイト。そしてその後にスーパーの品出しのバイトをしていた。いくら体力には自信がある白銀でも、流石に疲れる。

 

(まぁ廃棄予定の食材貰えたから、バイト代以外でも色々得はしたけどな)

 

 最後のスーパーの品出しのバイトで、白銀はスーパーの店長から『持って帰っていいよ』と言われ、廃棄予定の野菜をいくつか貰っている。

 見た目が少し悪いだけで問題なく食べる事ができる品だ。おかげで今日の白銀家の夕飯代が少し浮いた。

 

(さて、さっさと帰って夕飯の支度を…ん?)

 

 全てのバイトを終えて、家に帰り夕飯の支度をしようと思っていた白銀だったが、その道中に知り合いを発見した。

 

(立花?)

 

 それは同じ生徒会で、最近になって自分が好意を向けていると自覚してしまった京佳である。

 そして京佳は白銀も初めて見る服を着ていた。秋物の白いセーター。その上から黒く丈の長いカーディガン。下に履いているのは黒い無地のデニム。そして足には黒い編み上げブーツ。その全てが、京佳に非常に似合っていた。

 

(うっわ、めっちゃ似合ってる。やっぱ立花ってスタイルいいなぁ…)

 

 身長180cm、バスト89の京佳のスタイルはまさにモデル体型。それに今着ている服装が合わさると、本当にプロのモデルに見えてしまう。事実、先ほどから周りの男達もチラチラと京佳の事を見ている。

 

(そうだな。せめてあいさつくらいはしとくか)

 

 家に帰る途中の白銀だったが、せめて京佳にあいさつだけして帰ろうとし、京佳の方へと近づいていった。

 

「おーい。たちば…な…」

 

 だがそれは出来なかった。

 

 何故なら京佳がかなり身長の高いスーツ姿の男性と話していたからだ。

 

(誰だあれ!?てか身長高!?一体いくつあるんだよ!?)

 

 身長180cmの京佳より大きいスーツ姿の男性。しかも言ってはなんだが、顔がいかつい。そのせいなのか、少し近寄りがたい人に見える。

 

(本当に誰だあの人?立花のお兄さんとも違うし)

 

 以前に会った京佳の兄とは別人。白銀が相手の正体を考えていると、京佳とスーツ姿の男性が一緒に歩きだした、白銀はそれを、離れた場所から見送ろうとしていたのだが、その時に見てしまった。

 

(涙…だと…?)

 

 京佳の右目から、一筋の涙が流れているのを。そして京佳は直ぐに涙をぬぐって、スーツ姿の男と共に歩き出した。

 

(どういう事だ?何で立花は涙を?)

 

 考える白銀。あのスーツ姿の男が京佳の知り合いだったら、泣く事など普通は無いだろう。久しぶりに会って喜びのあまりに泣くならわかるが、先ほどの京佳は特別喜んでいる様には見えなかった。

 

(もしかして…)

 

 そして白銀はある結論に至る。

 

 それは京佳が悲しんでいるから涙を流したという事だ。

 

 涙というものは、痛かったり悲しんだりしても出てくるもの。先程の京佳は痛がっている様には見えなかった。だとすれば、残るは悲しんでいるという可能性。だから涙が出ていた。

 

(だとすると何故だ?何故立花は悲しんでいる?)

 

 しかしここで疑問が生まれる。どうして京佳は悲しんでいるのかという疑問が。そこで白銀は再び情報を整理する。普段とは違う服装。見た事も無いスーツ姿のいかつい男。涙を流す京佳。これらを繋ぎ合わせて、白銀は考える。

 

(まさか…)

 

 そしてある答えが浮かんだ。先程のスーツ姿の男。正直、堅気に見えなかった。そんな雰囲気が出ていた。そんな男に、涙を流しながらついて行った京佳。

 

(脅されいる…のか?)

 

 以上の事から白銀は、京佳はあの男に脅され、怖かったり悲しんでいたから涙を流したとう結論を出した。

 

(最近は学生を狙った詐欺もあると聞く!あの男はとてもじゃないが堅気に見えなかった!前に龍珠んとこの本職さんを見た事があったがそれに近い見た目をしていた!だとすると、立花が危ないかもしれない!)

 

 もし本当に京佳が何かしらの脅しをされていたとすれば、何をされるかわからない。多額の金銭を要求されるかもしれないし、危ない仕事を無理矢理手伝わされるかもしれない。

 そんなの見過ごせない。見過ごせる訳がない。好きな子が危険にさらされそうなら猶更だ。

 

(待ってろよ立花!)

 

 そう思った白銀は、自転車を押しながら京佳たちが歩いて行った方へと走り出す。

 

 

 

 途中、人込みの中自転車を早く押すのは危ないと思った白銀は、1度自転車を目についた駐輪所に置き、身軽になった状態で京佳を探す。表に面している喫茶店やコンビニ。更には反対側の道。

 しかし、自転車を置いていた間に2人がどこに向かったか見失ってしまった為、中々見つける事が出来ない。

 

(くそ!一体どこに行ったんだ!?)

 

 焦る白銀。この間にも、京佳の身に何かしらの危険が迫っているかもしれない。その考えが、余計に白銀を焦らせる。

 

(あとは角曲がった先にある裏道を探すしかないか!)

 

 表には全く見当たらない。ならば、裏の道にならいるかもしれない。そう思った白銀は角を曲がって裏道へと入る。

 

(いた!)

 

 すると京佳とスーツ姿の男は直ぐに見つかった。2人は並んで歩いており、未だどこかへ向かって歩いている。

 

(兎に角話しかけないと)

 

 白銀は2人、もっと言えば京佳に話しかける為に後ろから近づく。だが、いきなり後ろから話しかける事はしない。

 もしスーツ姿の男が自分に気づけば、何をしてくるかわからない。仮に自分がそっち側の人間だったら、せっかくのカモを逃すかもしれないと思う。そうなったら、力づくで黙らせるだろう。

 それに相手は自分よりずっと身長の高い大男。仮に喧嘩になったら勝てる訳がない。よって白銀は、後ろからこっそり近づき、隙を見て京佳を逃がそうと考えた。

 

(ん?足を止めた?)

 

 そんな事を考えながら暫く後を着けていると、京佳とスーツ姿の男が雑居ビルの前で足を止めた。

 

(あそこが目的地か?)

 

 白銀は可能な限り2人に近づき、様子を伺う。

 

「それでは、撮影はここの3階で行いますので」

 

「は、はい…」

 

「では、行きましょう」

 

 そう言うと2人は雑居ビルに入って行った。

 

「撮影…だと…?」

 

 気づかれない様に可能な限り2人近づいていた白銀には、2人の会話がはっきりと聞こえていた。

 

『撮影はここの3階で行いますので』

 

 スーツ姿の男は確かにそう言った。

 

「まさか…!」

 

 涙を流していた京佳。堅気に見えないスーツ姿の男。そしてあの台詞。それらの組み合わせた瞬間、ムッツリな白銀に電流が走り結論を出した。

 

 京佳はあのビル内で、如何わしいビデオの撮影をされそうになっていると。

 

 理由は不明だが、こうなればほぼ間違いなくあの男に脅されているのだろう。でなければこれまで見ていた事のつじつまが合わない。

 

(どうする!?こういう時は警察か!?でも警察が来るまで立花が無事だという保証が無い!いっそ飛び込む?だめだ!中に何人いるかわからないんだぞ!?そんな状態で中に入っても返り討ちになるだけだ!どうする!?)

 

 雑居ビルを見ながら考える白銀。このままでは手遅れになる。何とかしなければいけない。だがどれだけ考えても納得のいく答えが出てこない。

 

(やはりここは警察に…)

 

 結局自分の手では解決できないと思い、警察に通報するためポケットからスマホを取り出す白銀。

 そしてスマホを操作しようとした瞬間、自分の左手にしている腕時計が目に入る。それは誕生日に、京佳が自分にプレゼントしてくれた腕時計だ。

 

「……」

 

 腕時計を見て白銀は動きを止め、京佳の事を思い出す。

 

『おはよう白銀』

 

『今日の白銀はいつもよりかっこいいな』

 

『頼みがある…手を握ってくれないか…?』

 

『私からの誕生日プレゼントだ』

 

『本当にありがとう、白銀』

 

 京佳と出会ってから、色々あった。そして白銀はいつの間にか、そんな京佳に惹かれてしまっていた。そんな京佳が今、酷い事をされそうになっている。

 

「……待ってろ。立花」

 

 白銀は意を決して雑居ビルへと向かった。作戦など無い。完全に行き当たりばったりである。だがどうあっても京佳だけは救いだすと決め、雑居ビルの扉に手を掛ける。

 

「確か3階だったよな」

 

 白銀は雑居ビルの扉を開けて階段を登る。特に妨害も無く、あっという間に3階に辿りつく。するとそこには『撮影所』という部屋があった。

 

「ここか」

 

 白銀はいきなり扉を開ける事はせず、中の様子を伺う事にした。

 

『いいね~。次はポーズを変えてみようか』

 

『こ、こうですか?』

 

『あーそうそう!いいよそれー!』

 

『うぅ…』

 

『あーダメダメ恥ずかしがっちゃ!もっと自信を持って!』

 

 部屋の中では絶賛撮影中のようだ。そして既に、京佳はそういった姿をさらされているようでもある。

 

「っ!!……ふぅーー…」

 

 白銀は一瞬、頭に血がのぼるのを感じる。だがこういう時こそ落ち着かないといけないと思い、深く深呼吸をした。そしてドアノブに手を掛け、中の様子を見ようとした時、

 

「あの…どちら様ですか?」

 

「あ」

 

 自分の後ろから声をかけられた。白銀が振り向くと、そこにいたのは京佳が着いていっていたスーツの男。相変わらず顔がいかつい。

 

「あの?」

 

(ええい!ままよ!!)

 

 しかし向こうは動揺しているようだ。白銀はこれをチャンスだと思い、意を決して『撮影所』と書かれた扉を開けた。

 

「無事か立花ーーー!?」

 

「え!?何!?何!?」

 

「し、白銀!?」

 

 部屋に入ると、そこには男が2人。女が1人。そして京佳がいた。

 

「…ん?」

 

 白銀はこの期に一気に京佳をここから連れ出そうとしたのだが、直ぐに異変に気付く。まず京佳だが、別に服が乱れてなどいない。というかここに来た時とは違う服を着ている。

 そしててっきりベットとかが置かれていると思っていたのだが、部屋の中にそんなものは無く、照明器具や白い背景シートなどの機材があった。

 更に周りにいる人達も普通だった。1人は男性のカメラマン。1人は腰に美容道具を下げている女性。そして最後の1人はアシスタントと思しき男性。とても如何わしいビデオを撮影中とは思えない。

 

「えっと、立花?何をしているんだ?」

 

 想像と違う光景に戸惑った白銀は、とりあえず京佳に質問をする事にした。そしてそんな白銀の質問に京佳は、

 

 

 

「モデルのバイトだが…」

 

「え?」

 

 

 

 と答えたのだ。

 

 

 

 

 

「本当にすみませんでした!!」

 

「いえ、お気になさらず…」

 

 数分後、そこには2階の事務所に移動した白銀と、スーツ姿の男性と女性がソファに座り向かいあった状態でいた。そして白銀は頭を深くさげて謝罪していた。

 

「あっはははははは!!面白いわねあなた!!私たちがやらしいビデオの撮影していそうだったなんて!!」

 

「本当に本当にすません!」

 

「あの社長…それ以上は」

 

「あーごめんね。でもほんとおかしくって」

 

 白銀の前にいるスーツ姿の男性は、この雑居ビル内にあるファッションサイトを運営している会社のスカウトの男性。そしてその隣で大笑いしている女性が社長だ。

 

 とりあえず結論から言えば、全部白銀の勘違いである。

 

 京佳は別に、如何わしいビデオや写真の撮影をされそうになってなどいない。ファッションサイトのモデルのバイトとして、ここの撮影所にきていたのだ。

 涙を流していたのは目にゴミが入ったから。緊張した様子でビルに入っていたのは、モデルなんてやった事無かったので本当に緊張していたから。それらを全部白銀がそういう意味で捉えていただけ。京佳の身に危険など、一切なかった。

 

「にしても君やるねぇ。普通そう思ってもビルに突入なんてしないわよ?そこまでしてあの子を守ろうとするなんて、かっこいい」

 

「い、いや~…」

 

 そう言われると恥ずかしい。確かによく考えてみれば無謀だ。それでもこんな事をしたのは、京佳が心配だったからに他ならない。

 

「ま、撮影が終わるまでゆっくりしていなさい。多分1時間もかからないと思うから」

 

「は、はい…」

 

 社長はそう言うと、席を立って自分のデスクに戻っていった。残されたのは白銀と、スカウトの男性のみ。

 

「えっと、本当にすみませんでした。堅気じゃないとか思ってしまって」

 

「気にしないでください。よく言われるので」

 

「え?そうなんですか?」

 

「はい。月に2回は職務質問されますので」

 

「は、はははは…」

 

 愛想笑いくらいしかできない。こういう時、藤原とかだったらもっと場を和ませる事とかできるんだろうなーとか白銀は思った。

 

「もしよければ、上で撮影を見学なさいますか?恋人さんが居てくれた方が、気持ちも楽になると思いますし」

 

「いえ、結構です。興味はありますがここで大人しくしておきます。あと、自分は恋人ではありませんので」

 

「そうだったんですか。あれほど必死だったので、てっきりそうかと。では、おくつろぎください」

 

 スカウトの男性はそう言うと、女性社長と同じようにデスクへと戻っていった。そして1人残された白銀は、とりあえず窓から外の風景を見ながら時間をつぶした。

 

 

 

 

 

「あーもう。俺はなんて恥ずかしい勘違いを…」

 

 1時間後。白銀は撮影を終えた京佳と共に帰路に着いていた。辺りはすっかり日が傾き、街には夕日がさしている。

 

「意外とおっちょこちょいなんだな白銀は」

 

「かもしれん。圭ちゃんにも似たような事言われるし」

 

 白銀は自分の本日の行いを振り返り、恥じていた。どうしてあんな勘違いをしたのか、もう自分でもわからない。あの時は兎に角必死だった。今ではそれだけしかわからない。

 

「ところで立花。お前いつの間にスカウトなんて受けたんだ?」

 

「2週間くらい前だな。学校帰りに声をかけられたんだ」

 

――――

 

『モデルに、興味ありませんか?』

 

『いえ、特には…』

 

『せめて、名刺だけでも』

 

――――

 

「こんな感じに」

 

「それ怖くなかったのか?あと、怪しいとかも」

 

「少し怖かったかな。私より身長の高い人なんてめったにいなかったし。あと怪しいとも思ったけど、眞妃に話したら調べてくれてね。全く黒くない真っ白な会社だとわかったから、今回のバイトを受けたんだよ。バイト代結構よかったし」

 

「眞妃?ひょっとして四条か?」

 

「そうだよ。因みに撮影が終わったら、写真見せてと言われたよ」

 

 楽しげに会話をしながら歩く2人。しかし、楽しい時間はあっという間に過ぎていく。

 

「っと、もうバス停か」

 

 京佳は自宅へ帰る為バスに乗る必要がある。そして白銀は自転車で帰る。つまり、2人の時間はここまで。

 

「うし。じゃあな立花。また学校で」

 

 そう言うと白銀は、自転車を漕ぎ出そうとした。

 

「白銀。ちょっとだけいいかな?」

 

「え?」

 

 だが京佳に話しかけられ、足を止めた。

 

「どうした?」

 

「ひとつ聞きたいんだが、私が、その、変な事されそうと思ってたんだよな?」

 

「あ、ああ。そうだぞ。結局、ただの勘違いだったがな」

 

「その時、どんな気持ちだったか教えてくれないか?」

 

「……」

 

 京佳の質問に、直ぐには答えない白銀。10秒か、20秒か。それだけの時間が過ぎて、白銀は言った。

 

「はっきり言うとだな、本当に嫌だった。もし立花がそういう事されていると思うと、そういった事していた奴らをどうにかしてやろうとも思った。ていうか、無事で本当によかったよ…」

 

 嘘偽りない気持ちを。白銀は本当に京佳が心配だったのだ。もし本当にそんな事をされていたのだと思うと、胸が張り裂けそうな気持ちにもなった。だからこそ、あんな無謀な事をしたのだ。

 

「ふふ、そうか。心配してくれてありがとう白銀」

 

 京佳は嬉しそうにお礼を言う。その顔が少し赤いのは、夕日のせいでは無いだろう。

 

「だったらお礼してあげようか?」

 

「お礼だと?」

 

「ああ。勘違いだったとはいえ、私を助けにきてくれたんだ。だったらお礼のひとつでもしてあげようと思っているんだが」

 

「いや流石にいいよ。立花が無事ってだけで十分だし」

 

「それはそれで嬉しいが…うーむ」

 

 考え出す京佳。そして何かを思いつく。

 

「今日の夜、私の写真を送ろうか?」

 

「え?写真?」

 

「実はな、帰り際にバイト先から服を貰ったんだ。この紙袋に入っているだが、この中には水着もあるんだよ」

 

「み、水着だと?」

 

「ああ。だから後で、お礼としてその水着を着た私の写真を送ろうか?」

 

 瞬時に白銀は思い出す。夏休みに見た、黒いビキニ姿の京佳を。そして妄想する。あんな感じの水着姿の京佳の写真が送られてくる事を。

 

(そんなのが送られてきたら、絶対に俺しか見ないようにする!)

 

 何があろうと誰にも見せないだろう。何なら毎日スマホの暗唱番号を変える。白銀がそんな妄想をしていると、京佳が近づいてきて凄い事を言い出した。

 

「それとも、下着の方がいいかな?」

 

「へ?」

 

「白銀だったら別に見せてもいいけど、どうする?」

 

「……」

 

 それを聞いた白銀は固まり、妄想する。黒くエロい下着だったり白い清楚な下着だったりを身に着けて、それを自撮りして自分に写真を送ってくる京佳を。一瞬考えただけでも、それがすんごくエロイ事だとわかる。

 そして更に京佳のあられもない下着姿を妄想しようとした瞬間、

 

「あーー!もうこんな時間じゃねーか!今すぐ帰って夕飯の支度しないと!じゃあな立花!!」

 

 逃げるようにその場から全力で自転車を漕いでいった。というか、実際逃げてる。このままでは何を口走ったりするかわからない。正直に言えば超見たいが、そんな事言う訳にもいかない。だから白銀は逃走を選択したのだ。

 

(煩悩退散煩悩退散煩悩退散!)

 

 脳内で煩悩退散を説きながら、白銀は自宅へと全力で帰っていった。

 

 

 

 

 

「流石にやりすぎたかな…?」

 

 バス停に1人残された京佳は反省していた。少し誘惑したつもりだったが、やりすぎたみたいだと。

 

(でも嬉しかったな。白銀が私の事を心配してくれて…)

 

 だが良い事もあった。勘違いだったとはいえ、白銀が自分の事を本気で心配してくれたのだ。少なくともただの友人と思っているなら、そんな事はしないだろう。

 

(これは意識されているって思っても、いいよな?)

 

 流石にこれを『白銀は優しいから』では済ましたくない。京佳は白銀が自分を意識していると思うと、胸が温かくなるのを感じる。

 

(この1ヵ月が勝負だ…もう時間が無い。だったら、攻めて攻めて攻めまくるしかない)

 

 京佳が白銀に告白をしようと決めている秀知院学園の文化祭まで、あとひと月程。それまでに白銀を、かぐやより自分に意識させないと勝ち目がない。

 これからは更に積極的にならないといけないだろう。そういう気概でいなければ、かぐやに白銀を獲られるかもしれないのだから。

 

(本当に送ろうかな?下着姿の写真…)

 

 そんな事を思いながら、京佳はバスに乗るのだった。

 

 

 

 

 

 数日後、京佳の写真が例の会社が運営しているファッションサイトに載っていた。それを見た妹の圭は京佳のあまりの綺麗さに歓喜した。勿論、白銀自身も。

 

 

 




 一萬田亜紀(いちまたあき)。
 ファッションサイトを運営する会社『葉月』の社長。35歳。モットーは『誰でも綺麗になれる権利がある』。かなりふくよかな人から歳を召された人、全身にやけどを負っているなど様々な人をモデルとして雇っている。その結果多くの人に勇気を与え、かなり幅広い支持を受けている。
 京佳さんは社長の熱心な説得と、眞妃ちゃんから『折角だしやってみれば?』と言われバイトを受けました。でも今後もバイトをするかどうかは未定。因みにバイト代は5万円。
 会社名の由来は、織物の神である天羽雷命から。

 多分もう出番は無い。

 Q、前回の学校パンフの撮影は受けなかったのに何でこの撮影は受けたの?
 A、説得の差って事で。

 まぁ本当は、作者はあんまり細かい所考えいないだけだったりしますが。

 次回も投稿できるよう努力する。

読んでみたいお話とかありますか?

  • 動物園デート(かぐや)
  • 少しえっちぃやつ(京佳)
  • 中身が入れ替わるお話(かぐやと京佳)
  • 1学期の短編集
  • マキちゃん関係
  • いいから全部書け

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。