もしもかぐやに滅茶苦茶強力な恋敵がいたら・・・ 作:ゾキラファス
そして今更マスメディア部初登場回。もっと早く登場させればよかったけど、すまない。作者が存在そのものを忘れていただけなんです。
「立花さん、本日は我々の取材を受けて下さってありがとうございます」
「本日はよろしくお願いします」
「いえ、こちらこそ」
この日、京佳はマスメディア部による取材を受ける為、マスメディア部の部室へ来ていた。取材内容は今度の学校新聞に載るらしい。よって、下手な事は言えない。もしここで下手な事を言ってしまえば、それは生徒会の、ひいては白銀の評判を落とす事になりかねない。
なので京佳はしっかりと取材の受け答えが出来る様、取材が決まった数日前から語彙力に関する本を読んだり、眞妃から受け答えのアドバイスを貰ったりして勉強をした。
(にしても何でこの時期に、それも私なんだ?)
しかし、この話が自分に来た時から、京佳にはある疑問があった。それは、どうして自分が取材を受けているのかと言う事だ。こういった取材は普通、生徒会長である白銀が受けるべきなのではという疑問。
最初こそ、白銀が忙しいので代わりに自分が受けていると思っていたのだが、マスメディア部は最初から京佳を指名してきた。それに、既に新しい生徒会が発足してから2ヵ月近くが経過している。それなのに今更取材。わからない事だらけである。
(わからない…そもそも私庶務だぞ?)
生徒会長の白銀でもなく、副会長のかぐやでもなく庶務の自分。京佳にはそれがわからない。
(だがまぁ、受ける以上はしっかりとしないとな)
しかしいつまでもその疑問を考えている訳にもいかず、京佳は取材を受けるべき切り替えるのだった。
「先ずは、生徒会ではどのようなお仕事を?」
マスメディア部である紀かれんが、京佳に質問を開始する。手には取材用と思しきノートとペン。
「私は庶務なので基本的には雑務ですね。資料のコピーや整理。備品の管理。部活動予算のデータ入力。後は生徒会室の掃除もやっています」
取材という事もあり、敬語で受け答えをする京佳。
「成程。そういった仕事をする事で生徒会の業務が円滑に進むようにしているんですのね?」
「ええ、そうですね。大切な仕事です」
庶務という役職は地味で目立たない役職である。しかし、組織を回す上で欠かせない役職なのだ。他の生徒会役員が自分の仕事に打ち込める様にサポートしたり、更に誰でも出来るけど地味に面倒な仕事をしたりもする。
こういった人がいる事で、生徒会は円滑に仕事を進める事が出来ている。
「では次に、今の生徒会をどう思っていますか?」
「非常に良い生徒会だと思ってます。これ程多忙なのに、ミスらしいミスをする事も無く仕事をこなしていき、その上であらゆる生徒からの様々な要望にも応えていく。過去にも優秀な生徒会は存在したでしょうが、これ程優秀な生徒会はいなかっただろうと思っています」
「成程。本当に優秀な人が集まっている生徒会なのですね」
「はい」
秀知院学園の生徒会は非常に多忙だ。過去には、その多忙さに耐え切れず生徒会から逃げ出す生徒もいたという。だが今の生徒会で逃げ出す人などいない。それもこれも、白銀の人徳あっての事だろう。良きリーダーというものは、皆が付いていきたくなる人の事を言う。
そして白銀は、それに見事に当てはまっているのだ。最も、白銀本人はそんな事全く思っていないだろうが。
「次の質問ですが、白銀生徒会長の事はどう思っていますか?」
かれんの質問に少しだけドキリとした京佳だったが、それを顔に出す事なく答える。
「とても優秀で優しい人だと思います。それに人格者でもある。彼ほど生徒会長、並びにリーダーに相応しい人はいないでしょう」
「それは、前々期生徒会長よりも?」
「はい」
「まぁ」
京佳ははっきりと答えた。それを聞いたかれんは思わず声を出す。
「そういえば、立花さんは1年生の頃に白銀会長と共に生徒会に所属していましたよね?」
「はい。その時の生徒会長に白銀会長と一緒に誘われまして」
1年生の頃、白銀以外に親しい人がいなかった京佳に声をかけたのが前生徒会長だ。そして生徒会に勧誘し、京佳と白銀は共に生徒会で仕事に励んだのだ。
「……一緒に?」
「はい」
「……白銀会長と一緒に?」
「えっと、そうですが、何か?」
どうもかれんの様子がおかしい。京佳もそれを感じたのか、かれんに訪ねてしまう。
「因みにですが、白銀会長と知り合ったのはいつから?」
「入学して直ぐですね。入学式の翌日のお昼休みに、一緒に昼食を食べた事がきっかけです」
「一緒に…お昼…」
驚愕の事実。京佳はかぐやより、白銀と一緒にいる日々が多かった。それはつまり、漫画でいう幼馴染。そして漫画の幼馴染というものは、大体ヒロインのライバルなのだ。それもとても強力な。
実は紀かれんは、白銀×かぐやのカップリング中毒者なのだ。それも重度の。
2人の事を妄想して書いた漫画の数は10冊以上あり、今尚その数を増やし続けている。そんなカプ厨であるかれんにとって、今の話は許容できないものだった。
今のかれんには、目の前にいる京佳が2人の間を引き裂こうとしている悪魔に見えている。先程まで、かれんにとって京佳は白銀とかぐやの共通の友人。それ以上の関係など無いと思っていたのだが、認識を色々と改める事にした。
なお、藤原の事は魅力的な当て馬だと思っている。
(そんなの、絶対にダメですわ!!)
白銀の相手はかぐやでなければいけない。これは世界が決めた運命であり、変えようのない事実だ。しかし目の前の悪魔をどうにかするには情報が足りない。ここはもっと情報を集めなくては。そしていつの日か、この悪魔をどうにかしようと決める。そう思い、かれんは京佳に更に踏み込んだ質問をしようとするのだった。
「え、えっと!では「はいかれん!少し落ち着いて!?」むぐ!?」
が、隣にいた巨瀬エリカが突然かれんの口を手で閉じて落ち着かせる。そしてかれんを立ち上がらせて、後ろにあった椅子に座らせた。流石にこれ以上はマズイ。このままでは、マスメディア部の信用が地に落ちかねない。そう思ったエリカはかれんを落ち着かせる為深呼吸を促す。
「落ち着いて!今変なこと聞くつもりだったでしょ!?」
「で、ですが!このままではかぐや様と白銀会長の仲が…!幼馴染に白銀会長が!」
「どういう事!?意味わかんないから!?兎に角1度深呼吸!!」
何やらこそこそと話す2人。そんな2人を、京佳は黙って見つめていた。
「ここからは私が質問しますね」
「それは構わないが、大丈夫なのか?」
「大丈夫です。偶にある事なので」
「えぇー…」
かれんが座っていた椅子に、今度はエリカが座る。後ろの方では、かれんが何度も深呼吸をしている。そんなかれんの事をほっといて、エリカは京佳に取材をするのだった。
「では神聖なるかぐや様…じゃなくて生徒会副会長の四宮かぐやさんの事はどう思っていますか?」
何か変な事が聞こえた気がするが気のせいだと思う事にして、京佳は質問に答える。
「とても聡明で素晴らしい人だと思います。成績も凄くて運動神経も抜群。それに女の私から見ても美しい人かと。ああいう人を容姿端麗と言うのでしょうね」
これは一応、京佳がかぐやに対して思っている事だ。実際、京佳は容姿ではかぐやに勝てないと思っている。自分は身長180cmのデカ女。それに顔には物騒な眼帯をしている。
しかしかぐやは、まるで人形の様なかわいらしさと美しさをもっている。これは京佳には無いものだ。
「わかります!かぐや様って本当に美しい人ですよね!!」
「え?」
突然、目の前にいるエリカが声を荒げて立ち上がる。
「あの黒くて美しい長い髪!全てを見通している鋭い目!宝石のような白い肌!そして背中には天使の翼!」
「天使の翼!?」
「ああ、もしかぐや様が目の前にいたら、私はそのまま天に昇ってもいいです…えへへへへ…」
(なにこの子…怖い…)
突然のエリカの言動に恐怖を感じる京佳。幽霊以外でこんな恐怖を感じたのは、悪酔いした母親が包丁でジャグリングをした時以来である。
実は巨瀬エリカは、四宮かぐや信者なのだ。それも狂信的な。
かぐやに対する愛が強すぎてラブレターを何通も書いているし、お金と伝手さえあれば銅像や神殿を建てたいと思ってもいる。率直に言ってやばい人だ。
「んん!!失礼、持病の発作が…」
「持病…?」
エリカは冷静さを取り戻したが、既に遅い。この時点で、京佳のエリカに対する評価は『突然変な事を言い危ない人』になっている。最早挽回は不可能だろう。
「では次の質問ですが、生徒会の皆さんとプライベートではどんな風に?」
何事も無かったかのように取材を続けるエリカ。正直逃げたい京佳だったが、受けた取材を途中で放棄したとなると生徒会の評価が下がるかもしれないと思い踏みとどまった。
「そうですね。プライベートでも仲良くしていますよ。例えば今年の夏休みには生徒会の皆で遊園地に遊びに行きましたし」
「遊園地!?」
「え、ええ。あと夏休みの最後の週には花火大会にも」
「花火大会!?」
「……」
京佳、口を閉じる。エリカは口を開けて涎をたらしそうになる。
「かぐやしゃま…花火大会って事は浴衣姿…?えへへへ…。あ、あの…写真とかは?」
「……一応あるが」
「お願いします。見せて下さいませんか?いくらでも払いますので」
「いや普通に見せるから」
土下座しそうな勢いのエリカにたじろいだ京佳は、スマホを取り出し花火大会の時の写真を見せた。
「はぅ!?」
エリカの目に飛び込んできたのは、浴衣姿のかぐやがりんご飴を持っている写真。エリカにとってそれは爆弾だった。だって似合っているとかそんな問題じゃない。最早一種の宗教画だ。
「か、か、か、かかかか!かぐや、かぐやしゃまの!浴衣ーーー!?」
そして写真を見たエリカはそのままぶっ倒れた。しかも顔面から。
「え゛」
京佳、固まる。まさか写真を見せただけで倒れるとは思っていなかったからだ。しかも倒れたエリカは実に幸せそうな顔をしている。京佳は知る由もないが、今のエリカは所謂尊死に近い状態だ。
「あの、ちょっと?」
「申し訳ありません立花さん。この子偶にこうなるんです」
深呼吸をして、冷静さを取り戻したかれんが京佳に話しかける。
「大丈夫なのか?」
「ええ。数分もすれば元通りになるので」
とりあえず、顔面から倒れたエリカの事はほっといてよさそうだ。
「それと取材はこれで終了で良いですよ。十分にお話は聞けましたので」
(あれで?)
凡そ一般的な取材とは思えなかったが、マスメディア部的にはこれでいいらしい。
「では、私はもう帰ってもいいのかな?」
「ええ、そうですわね。お疲れ様でした。本日は本当にありがとうございました」
京佳に頭を下げるかれん。それを見た京佳はそ、そのままマスメディア部の部室を出ようとした。
が、その時、
バサッ
「ん?」
何かが床に落ちる音がして。音がした方を京佳が見てみると、そこには1冊のノートが開かれていた。そしてそのノートには、
「は?」
何故か上半身裸の白銀と、Yシャツしか身に纏っていないかぐやの絵が描かれていた。しかも2人は向かい立って抱き合うように体を密着させている。そして台詞コマには『今夜は寝かせないぞ』と書かれていた。
「ち、違うんですのよ?これはですね趣味で、あ!いや!趣味でも無くて心の栄養源と言いますか、えーっとつまりですね!」
聞いてもいないのに、突然しどろもどろになりながら喋り出すかれん。額には汗も浮かんでいる。実は落ちているノートに書かれているものは、かれんが書いていた『ナマモノ』という題材の自作漫画である。内容は、白銀とかぐやの恋愛物語。
だがあくまで隠れて書いている事なので、誰かの見られたくない物でもあった。が、偶々片付け忘れていた1冊が、運悪くこうして見られてしまったのだ。何とか弁明をするが、うまく出来ない。
そしてそれを見てしまった京佳は、
「えっと…何も…見てないから…」
とだけ言って、マスメディア部の部室から出て行こうとした。かれんの様子でこの漫画を描いたのが誰かを察したからだ。この時かれんが何も言わなければ、何とかなったかもしれない。
「……本当に誰にも言わないでください」
「言わないよ…というか言えないよ…」
こんな事言える訳がない。そう言うと京佳は、部室から出て行った。
(とりあえず、さっきの事は全部忘れよう…)
そして先ほどあった出来事を忘れる事としたのだった。ついでに今後、可能な限りマスメディア部の取材は受けないと決めた。
「それでかれん。どう思う?」
京佳が出て行って30分後のマスメディア部の部室。そこでは尊死から復活したエリカが、かれんに質問をしていた。
「そうですわね。現段階では白でしょうか?」
「やっぱりそうだよね。まぁ踏み込んだ質問をしてないってのはあるけど」
何やら妙な会話をする2人。ここで、どうしてマスメディア部が京佳に取材をしたのか説明しよう。事の発端は、少し前に2人の共通の友人である渚から聞いた話である。
それは『夏休みに、白銀と京佳がプールに2人きりで遊びに行っていた』というものだ。
最初にそれを聞いたかれんは、何かの間違いだと思った。しかし渚は本当だと言う。白銀×かぐやしか認めないかれんにとって、それは到底許されない出来事。そこで取材という事にして、京佳から直接話を聞く事にしたのだ。
結果は、決定的な証言は取れなかったが、とりあえず今は白という事にした。なお、仮に証言が取れてもそれを記事にするつもりはなかったりする。秀知院のマスメディア部は、清く正しくなのだから。
「まぁあれですわ。ある程度仲の良い友人であるのなら一緒にプールに遊びに行くことくらいあるでしょう」
「いや、流石にそれは…あるのかな?」
かれんは2人は別に恋仲では無いと結論を出した。現に、2人が恋仲であるという噂は全く聞かない。聞いた事あるのは、例のプールでの出来事だけである。これだけならば、確かにそう捉える事も可能かもしれない。
「さて、では早速記事の作成に取り掛かりましょう」
「そうだね。さっさと作っちゃおうか」
そして先程の取材を元に、学校新聞の作成に取り掛かるのだった。
数日後、発行された学校新聞には『今の生徒会は皆最高!』という旨の記事が載っていた。なお、かぐやの事を京佳が凄く褒めている内容だったので、その日だけかぐやは京佳に優しくした。
マスメディア部の2人って、こんな子達でよかったっけ?
次回も頑張りたいと思う。
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