もしもかぐやに滅茶苦茶強力な恋敵がいたら・・・ 作:ゾキラファス
あと今回石上くん出番無しです。
生徒会室
「本当に最悪です!!」
放課後の生徒会室。そこで伊井野は大声で叫んでいた。
「どうしたんですかミコちゃん。そんなに大声出して」
「聞いてくださいよ藤原先輩!!」
何事かと思った藤原が伊井野に質問すると、伊井野は鞄からある物を出した。
「何ですかこれ?DVD?」
それはプラスチック製のケースに入ったDVDだった。DVDそのものにタイトルは書かれておらず、恐らく個人で録画されたものだろう。
「これはついさっき、1年生から没収したDVDです」
「成程。つまりミコちゃんは学校に不必要な物を持ってきた人がいたから怒ってると」
藤原は何となく、伊井野が怒っている理由を察した。伊井野は風紀委員である。それもかなり堅物の。そんな彼女からしたら、学校にこういった物を持ってくるのは許せないのだ。現に石上はよくゲーム機を没収されている。
「確かにそれもありますけど、私が怒っているのはそれだけじゃありません!」
「え?他に何が?」
しかし伊井野は他にも怒っている理由があるようだ。
「このDVD、エッチはやつなんです!!」
「ええーーー!?」
伊井野が怒っている最大の理由。それは秀知院にエッチはDVDを持ってきている人がいた事だった。
「ほ、本当ですかミコちゃん!?」
「事実です!これを持っていた男子生徒は、このDVDを友達に貸す時に『激しい動きが凄くよかった』とか『夢中になって見ていた』とか言ってたんですよ!?学校にこんな汚らわしいもの持ってくるなんて信じられません!!」
何度も言うが、伊井野は真面目な風紀委員だ。そんな彼女は学校に持ってきてはいけない物に対してかなり厳しい。ほぼ毎日、誰かから何かを没収している。その度に恨みも買っているが。
「本当に最悪です!!ていうか最低ですよ!!本当にもう!!」
ギャイギャイと怒る伊井野。どうにも怒りが収まらない。
「ミコちゃん落ち着きましょう。はい、苺味の飴です」
「ん……あ、甘くて美味しい…」
見かねた藤原が伊井野の口に飴を突っ込む。すると伊井野は少しだけ大人しくなった。
「しかし、学校にそんな物を持ってくる生徒がいるとはな」
白銀はDVDを持ちながらそう言う。秀知院は国内有数の進学校である。そんな学校なのに、こういった物を持ってくる生徒がいた。それが少し以外だったのだ。
「だがまぁ、皆思春期なんだし、こういった物を持ってくる生徒がいるのも仕方ないのかもしれんな」
いくら国内有数の学校とはいえ、そこに通っているのは皆思春期の学生である。であれば、こういった物を持っている生徒がいるのも仕方ないだろう。そう思い白銀は納得したのだ。
「どこがですか!?」
しかし伊井野は全然納得できていなかった。
「どんな理由があってもこんな物を見ようとするなんておかしいでしょう!?こんな、こんなエッチな物持ってくるなんて!!」
「お、おう…」
先程まで落ち着いていたのに、再び怒り出す伊井野。どんな理由があっても、学校にこんな物を持ってくるのが許せない彼女。そんな伊井野の気迫に少し押される白銀。
(あ、あれが俗に言うア〇ルトDVD!?)
そんな中、かぐやは1人伊井野が没収したDVDが気になってしょうがなかった。実はかぐや、ほんの数か月前まで性的な事にとても疎かったのである。なんせ『愛するも者同士が結婚すれば、自然と子供が生まれている』と本気で信じていたくらいだ。
1学期に藤原から色々聞かされ、その後早坂に手伝わさせて勉強した結果『かぐやのかぐやに白銀の白銀をフュージョンしてファイアすれば子供が出来る』という事をやっと覚えた。
だがあくまで文面だけでである。実際にそういった事を映像で見た事なんて無い。これは早坂や志賀の判断のせいである。2人はもしかぐやにそういった映像を見せたら、間違いなく失神すると判断。よってかぐやにそういった映像を見せるのは、もう少し色々勉強してからと考えている。
(き、気になる!凄く気になる!)
だがその結果、かぐやはそういった映像にかなり興味津々となっていた。まるで思春期の中学生である。観てみたい。1度でいいからそういった映像を見てみたい。
(で、でも!もしそんな事を皆に知られてしまえば!)
終わるだろう。品行方正な自分のイメージが完全に崩れ去る。もしかすると、エロ女とか言われるかもしれない。そしてもしかしなくても、白銀にはドン引きされるだろう。
(落ち着くのよ私。こういう時は深呼吸を)
なのでかぐやは、観てみたいという欲求をグッと堪えようとする。そして深く深呼吸をするのだった。
(でも気になる!本当に気になる!!)
だがダメ。1度火が付いたこの観てみたいという欲求は止められない。1度だけ、1度だけでいいから観てみたい。でもそんな事を皆に知られたくない。
「落ち着け伊井野。あんまり叫ぶと疲れるだけだぞ」
「落ち着けませんよ!というか何で立花先輩はそんな感じなんですか!?こんなやらしい物持ってきている人に対してなんにも思わないんですか!?」
かぐやが1人で悶々としていると、京佳が伊井野を落ち着かせようとしていた、
「いや別に。というか普通だろこんなの」
「普通!?」
(え!?普通なの!?)
京佳の発言に驚く伊井野とかぐや。
「むしろ年ごろでこういうものに興味が無い子の方が気味悪くないか?それに男子なら猶更だろう」
京佳はこういった性的な事に興味があるのは仕方ない事だと思っていた。
「じゃ、じゃあ立花先輩も、こういうのに興味があるんですか?」
「まぁ人並には」
「あるんですか!?」
そしてそういった事を割と普通に言っちゃう子でもあった。
(そ、そうか…立花は結構そういう事に興味が…)
白銀は少しだけよからぬ事を考えた。
(普通!?普通なの!?というか何で立花さんはそんな事普通に言えるの!?そういった話って、もっとこう、大事な時じゃないと話ちゃいけないんじゃないの!?)
そしてかぐやは驚愕していた。かぐやにとってそういった話は、少なくともこういう皆がいる場でするべき話では無いという認識である。だが京佳はそういった話を普通にこの場でしている。その行いが、かぐやには信じれらなかった。
これはひとえに、京佳に兄がいたからだろう。まだ京佳の兄が家にいた頃、兄の部屋にそういったDVDがあった事を京佳は知っている。そして兄が、皆が寝静まった後にそれを観ていた事も。
そういった経験があったからこそ、京佳は年ごろの男子がこういうDVDを持っているのは仕方が無い事だと思い、理解を示していた。
(もしかして、私が可笑しいの?私もそういう話をした方がいいの?)
そんな事を知らないかぐやは、自分が可笑しいのではと思い始める。念のために言っておくと、女子でも男子がいる場でこういった話をする事が出来る女子はそれほどないない。これは京佳がちょっと特殊なだけである。故にかぐやの反応は別に間違っていない。
「ところでミコちゃん。他にも没収物あるっぽいですけど?」
「あ、はい。雑誌とかがあります」
藤原に聞かれ、鞄から雑誌を取り出す伊井野。
「げ、それは…」
その中には『恋バイブス』という雑誌もあった。それも観た白銀は少したじろぐ。なんせ1学期にこの雑誌が原因でちょっとした事件があったのだ。それ故、白銀は恋バイブスに対して少しだけ距離を取る。
「本当にどうしようもないですよ。こんな雑誌まで持ってくるなんて」
伊井野は未だに怒りが収まらない。
「『女子が好きなキス特集』?随分攻めた特集なんだな」
京佳は伊井野が出した雑誌を手に取りながらそう言う。確かに随分攻めている特集だ。
「えっと、首筋、頬、あとは胸。成程」
そして徐にその雑誌を読み始めた。
「な、なんで読んでいるんですか立花先輩!?」
また驚く伊井野。京佳が、男子がいるこの場でそんなやらしい雑誌を読み始めたからだ。
「いや、気になるから」
「だからって男の人がいるんですよ!?なんでそんな事するんですか!?」
白銀の方を見ながら伊井野は京佳に言う。
「うわー…こんなところにキスとかもするんですね…」
「藤原先輩!?」
しかしその指摘は藤原が京佳の隣から雑誌を読んでいる事で止められた。
「ほう…これは…」
「へぇー…成程成程…」
京佳と藤原の2人は雑誌を読み出し、集中している。藤原に至っては鼻血が出ている。
「お、おい?2人共?そろそろ…」
見かねた白銀が注意しようとする。
「ちょっと待てくれ白銀。せめてあと数ページ」
「そうです会長。あと少しだけ待っててください」
だが2人はそれを無視して雑誌を読み続ける。白銀もそれ以上何も言わなかった。
(すっげー気になる!!どんな事書いてるの!?ていうかどこに!?どこにキスしてんの!?)
というか白銀もその雑誌を凄く読みたがっていた。しかし生徒会長という立場と、この場でそんな事を言えば女子全員から引かれると思い我慢する事にした。そして自分の机で資料整理を始めるのだった。
「全くもう」
伊井野はプンプンと怒りながら京佳と藤原が座っているソファの後ろで風紀委員の日誌を読み始める。
(伊井野さん、すっごくチラチラ見てる…)
しかし伊井野は日誌を読みながらも2人が読んでいる雑誌をチラチラと見ていた。実は伊井野、かなりのムッツリスケベなのだ。以前にも同じ様な雑誌を没収した時、同じ風紀委員の大仏が帰った後に、1人でこっそり隅々まで熟読していた。建前上、有害か否かを確認する為として。品行方正な風紀委員が人前でそんな事できないが、誰もいなければ問題ないとして。因みに大仏には普通にバレている。
そして今日も、本音としては読んでみたいが風紀委員としても立場上それが出来ずにいるので、こうしてチラ見する事にしていた。本人は誰にも気が付かれていないと思っているが、2人の後ろで日誌を立ったまま読んだり、明らかにチラ見したりしていれば誰でも気づく。少なくともかぐやは気が付いている。
(うう。私も読んでみたい!でもこの場でそんなはしたない事言えない!!)
かぐやも本音ではその雑誌を読んでみたいが、流石に恥じらいが勝り読めずにいた。そして白銀と同じように資料整理を進めるのだった。
「さて、あとは鍵を掛けて帰りましょうかね」
暫くして、白銀はバイトへ。他のメンバーはそれぞれ帰宅した生徒会室。そこには鍵当番を任せられたかぐやだけがいた。本日の業務も終わり、後は鍵を掛けて帰宅するだけである。そしていざ帰宅しようとした時、机の上であるものを発見した。
「……」
それは伊井野が没収したDVDだった。伊井野は、没収したDVDをうっかり生徒会室に忘れて帰ってしまっていた。
この時、かぐやにある選択肢が出てきた。
即ち、このDVDを持って帰るか否か。
そしてかぐやは、
「……」
一切迷わずそのDVDを鞄へ押し込んだ。
(これはそう!生徒会副会長として、これが有害かどうか確認する為よ!断じて個人的欲求を満たす為では無いわ!!)
伊井野と同じような言い訳をしながら、かぐやは帰路に着く。
夜 かぐやの部屋
「で、いきなりどうしたんですか?ポータブルDVDプレイヤーを貸してくれって」
帰宅し、食事と風呂をすませたかぐやは、早速早坂にDVDを視聴できる機械を借りる事にした。因みに、かぐやは機械音痴なため、最初『ポータブルDVDプレイヤー』という名前が出てこなかった。早坂に聞いた時に出たのが『映像が見れる折りたためるやつ』である。そして早坂が持ってきた後、使い方を一通り習った。
「実はね、藤原さんから映画のDVDを借りたのよ。まぁ正確には無理やり貸されたんだけど。借りた以上はちゃんと観て感想を言わないといけないでしょう?だからよ」
「はぁ」
かぐやはとりあえず藤原に借りたということにした。これならば例え早坂にバレても『藤原だから』ですませる事が可能だ。
「そういう訳だから、今日はもう休んでいいわよ早坂。なんかこの映画は1人で見る方がいいらしいし」
「はぁ、そうですか。そういう事ならおやすみなさいませ、かぐや様」
「ええ。おやすみ」
早坂を早々に部屋から出して、かぐやは1度深呼吸。そして鞄から例のDVDを取り出し、それを慎重にポータブルDVDプレイヤーに入れた。
「あとはヘッドホンを装着してっと」
万が一にも音でバレない様に入念にヘッドホンを装備し、動作を確認。そして1度部屋の扉を開けて、廊下に誰もいない事を確認。その後、扉にしっかりと鍵を掛けて、ヘッドホンを装着。万が一に備えて水も用意。これで準備万全だ。
(これは確認作業!これは確認作業よ四宮かぐや!!)
自分に言い聞かせながら、かぐやはポータブルDVDプレイヤーの再生ボタンを押した。
(ああ!押しちゃった!再生ボタン押しちゃった!!)
ついそう思うかぐやだが、これでもう後戻りはできない。
(大丈夫!既に覚悟は決めているわ!さぁ!どんないやらしい作品でも来て見なさい!!)
そして遂に、映像が始まるのだった。
「………ん?]
かぐやは再生された映像に疑問符を受けべる。聞いた話によると、こういったDVDの始まりの部分は、インタビューから始まると聞いていたのに、映像には荒野が写っていたからだ。
(どういう事?聞いていた話と違いますね)
今度はトカゲが写った。だが普通のトカゲではなく頭が2つあるトカゲが。そして奥にはボサボサ頭の男が1人。
(もしかして、ドラマ仕立てなのかしら?そういうのもあると聞きましたし)
こういったDVDにはドラマの様な作品もあるという。ならばこのDVDもそうなのかもしれない。かぐやは続けて視聴をする。
『俺の名前はレックス。俺の世界は火と血で出来ている』
「……」
『俺に従えば、這い上がれる!!』
『うぉぉぉぉぉ!!』
「……」
『行先は、弾薬倉庫!そしてガソリン畑!!』
「……」
『V6!V6!V6!V6!』
「……」
『俺の女たちはどこだ!?』
(あ、これただの録画した映画だわ…)
視聴して20分。かぐやはこのDVDがやらしいDVDではなく、ただの映画だとわかった。
(なんかドっと疲れたわね…もう寝ましょう…)
期待していた内容と違い、急に疲れたかぐや。そしてもう寝ようとし、DVDプレイヤーを止めようとしたのだが、
『俺を見ろぉぉぉ!!』
「……」
『なんて最高な日だ!!』
「……」
映像から目が離せなくなっていた。
(面白いわねこれ…)
というか完全に見入っていた。先ず映像が綺麗。そして話も分かりやすい。最後にアクションシーンがド派手だ。こういった映画など観た事が無いかぐやにとって、その全てが刺激的で新しい体験だった。故にかぐやは見入っってしまったのだ。
(次はどうなるの?ええ!?人間ってそんなことまでできちゃうの!?)
かなり暴力的だったりセクシーな描写もある映画だったが、かぐやはその刺激的な映画のとっぷりとハマった。そして結局、最後までその映画を観たうえ、いくつかのシーンを巻き戻して観なおしたのだった。
翌日
「あ、あった!」
生徒会室では、伊井野が没収したDVDを見つけ安堵していた。
「よかった…没収したものを無くしたりしたら風紀委員として失格も良いところだったし…」
そして伊井野はそのDVDを手にして、風紀委員室へと足を運ぶのだった。
「あの、かぐやさん。何かありました?」
「どうしてですか?藤原さん」
「いえ、なんか雰囲気がいつもと違う感じがしたので」
生徒会室にいた藤原はかぐやに質問をする。何でか、今日のかぐやは雰囲気が違うからだ。どことなく、エネルギッシュな雰囲気が出ている。
「そうですね。強いて言えば、刺激的な体験を少し…」
「刺激的!?何ですかそれ!?詳しく!!」
「ふふ、内緒です」
「ええーーー!?」
かぐやは藤原にそう答えながら、生徒会の仕事をするのだった。
(刺激的な体験って何なの!?一体何をしたんだ四宮ぁぁぁ!?)
そして白銀は、かぐやの発言が気になって集中できずにいた。
ムッツリなかぐや様のお話。
そして京佳さんは割とそういったお話に寛容。でも勿論線引きはあります。
次回こそは少しでも展開を進めたい。
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