東京ではコロナの第二波が本格的にやって来ましたね。私は関西済みですが、油断は出来ません。関東圏に住んでいる皆様は特にお気をつけください。
それでは今話をどうぞ( ⁎ᵕᴗᵕ⁎ )
「ここが、高度育成高等学校……」
「なんか、すごい、ですね……」
バスから降りた俺たちは目の前に聳え立つ大きくて綺麗な校舎に言葉を失った。まさに圧巻の一言だろう。入試の時はこことは別の会場で皆受けさせられたので、新入生は全員、ここに足を踏み入れるのが初めてだ。
にしても、綺麗だ。というか豪華だ。さすが最新設備も完備された国お抱えの超名門校。他の高校も何校か見学したが、ここまでのものは当然なかった。
……っと、いつまでもこうしちゃいられないな。
「行くか。とりあえずクラス分け見ないとな。」
「そうですね。お、同じクラスだといいんですけど…//」
「そうだな。そう言えば井の頭さんってずっと敬語だよな?それが素なのか?」
「えっ?あ、いえ…。その、緊張しちゃって……」
「そっか…。まぁ初対面だしな。でも同い年なんだし、素じゃないなら普通に喋ってくれると助かる。」
「そ、そう?じゃあ……そうするね//」
そんな会話をしながら、俺たちは二人でクラス分けが張り出されているという正面玄関前の掲示板に向かった。正面玄関は正門から入ってほぼ直進に進めば着くので、迷うことなくすぐにたどり着けた。そしてちょっと混雑している人混みの中から、俺は自分の名前を探し始める。
「えーっと…………………あった!Dクラスだな。井の頭さんは……」
俺がそう言って隣の彼女を見ると、井の頭さんは必死につま先立ちになりながら奥を見渡していた。しかしどうも身長が足りないようだ。しょうがないので、俺が代わりに井の頭さんの名前も探すことにした。すると、自分の名前の少し上に、井の頭 心の文字が……
「井の頭さんは俺と同じクラスだな。」
「えっ?そうなの?」
「ああ。Dクラスだった。」
「そっかぁ…。よかった…。」
井の頭さんは心底ほっとしたようにため息をつく。恐らくこの学校に来て初めてできた顔見知りとあって、できれば分かれたくなかったのだろう。初めての場所、初めましての人たちに囲まれた中で、一人でも話せる顔見知りがいるというのは心強いものだ。特に、井の頭さんのような人見知りの人にとっては……
クラスに着くと、俺たちは教卓の上に置かれてある座席表を見に行った。ざっと教室の中を見回したが、まだ半分弱しか登校していないようだ。
「えーっと、…あった。あっ、井の頭さんとは少し離れてるな。」
「えっ?……あ、ほんとだ…。」
井の頭さんは残念そうに肩を竦める。井の頭さんはちょうどこの教卓の前、最前列中央というなんとも微妙な、いや、ほぼハズレの席だ。それに対して俺は大当たりとはいかないが、少なくともあたりであろう窓際の真ん中の席。いちよう簡素な図に表すと、こんな感じだ。
○○○○○○
○○○○○○
○○○○○○
○○○○○宏
○○○○○○
○○井○○○
○○教卓○○
近くはないが、遠いわけでもない。何となく微妙な距離である。しかし決まってしまっているものは仕方ないので、俺は未だ落ち込んでいる井の頭さんの肩を叩いて、「じゃあな。また後で話そうぜ。」と言って自分の席に向かった。井の頭さんも俺の言葉に少し笑顔を取り戻し、「うん//」と頷いて目の前の席に着く。井の頭さんの周りはまだ来ていないようだが、俺の周りには既に二人ほど登校していた。そのうち一人、爽やかイケメンという言葉が似合う目の前に座る男が、俺が席に着くと同時に話しかけてきた。
「やぁ、おはよう。大園くん、だよね?」
「ああ。確か前の席は……平田だったか?」
「うん。平田洋介。気軽に洋介って呼んでほしい。」
「なら俺も宏樹でいい。」
「よろしく、宏樹くん。」
「こちらこそ、洋介。」
俺たちは握手をかわすと、この学校のことやお互いのこと、これからのことを色々語り合った。洋介はコミュ力お化けというか、ほんとに話しやすくて話題が尽きなかった。そしてそうしている間にも周りの席は埋まっていき、やがて始業のチャイムと共に一人のスーツ姿の女性が、コツコツとヒール音を立てながら教室に入ってきた。
「席につけ、お前たち。朝のHRを始めるぞ。」
先生がそう言うと、立ち歩いていた生徒たちが自分の席へと一斉に戻る。そして全員が着席するのを待って、先生は再び口を開いた。
「さて、まず私はこのクラスを担当することになった茶柱佐枝だ。この学校ではクラス替えというものが存在しないので、これから三年間、私がこのクラスの担任として、お前たち全員と学ぶことになると思う。」
先生はそこで一拍置くと、教室に入る時に持っていた紙袋から束になった冊子を取り出し、全員に配り始めた。前から回ってきたその冊子はどうやら入学が決まって自宅に送られてきた資料と同じものらしい。
「今から一時間後、体育館で入学式が行われる。それまでの時間を使って、今からお前たちにこの学校のルールを改めて説明しておこう。ただ詳細はこの冊子を読めば書いてあるし、何よりこの冊子は入学が決まって家に送られてきたものと同じなので、目を通しているものも少なくないだろう。なので今回は重要なところだけ説明させてもらう。」
先生はそう言うと、まず外部との接触禁止、敷地内設備、そしてプライベートポイントなるものの説明を行ってくれた。そしてそれと同時に、今度は一人一人にスマートフォンのようなものを机の上に置く形で配り始める。
『プライベートポイント』
現金を持ち込んでいない生徒たちがどうやって三年間生活していくかは、このプライベートポイントが鍵になる。このポイントは一ポイント一円の価値を持ち、先生の話とこの冊子の情報によれば、この学校の敷地内にあるものは全て、ポイントによってやりくりできるのだ。ようは万能プリペイドカードのようなものである。
と、そんな説明をしている間に、先生がみんなにスマホみたいな機械を配り終えたようだ。
「これは学生証端末と言って、この端末を使って買い物をしたり、ポイントの詳細を見たり、はたまた普通に携帯電話としても使うことが出来る。この学校で過ごすにあたって一番大切なものなので、決してなくさないように。なくせば退学とまではいかないが、重い罰が下される可能性もあるからな。」
先生のその言葉に教室の空気が少しだけ固まる。まぁ財布とスマホの合体版みたいなものなのでなくすやつがいるとは思えないが、それでも今の忠告でより一層みんなの意識が強まったのは言うまでもないだろう。
その後、先生はポイントが毎月一日に振り込まれること、今月分は既に10万ポイントが振り込まれることなどを説明し、一度教室をあとにした。
先生が教室を出ると、周りの人たちが近くの席の人たちと嬉しそうに会話を弾ませる。それはそうだろう。何せ入学そうそう10万円もの現金が手渡されたようなものなのだ。浮き足立つなと言う方が無理である。かくいう俺も、今まさに洋介に話しかけようとしていた。
「洋介、10万ってどう思う?」
「すごいね。正直まだ現実感がなくて……」
洋介は戸惑った様子でそう答え、俺も「だよな…」とそれに続く。すると、洋介はふと何か思い出したかのように俺に話しかけてきた。
「そうだ。宏樹くん。僕は今からみんなと自己紹介をして仲良くなろうと思うんだけど、どうだろう?僕の後に指名するから、自己紹介してもらってもいいかい?」
「ああ、もちろんだ。」
俺はそう答えつつ、内心でものすごく洋介に感心していた。いったいどれだけコミュニケーションが高いのやら……
そんなことを考えている俺の前で、洋介は少し大きめの音を立てて立ち上がり、声を大にして教室のみんなに声を届けた。
「みんな。ちょっと聞いてほしい。僕らはこれから三年間、一緒のクラスで過ごしていくことになる。そのために、まずはお互いを知って、友達になれたらと思うんだ。」
「いいんじゃない。うちら名前も知らないし。」
「あたしも賛成ー!」
「俺も!」
「俺もー!」
洋介の言葉にみんなが次々と賛同していく。それを見てお礼を言った洋介は、まずは自分からと胸に手を当てて爽やかな笑顔で自己紹介し始めた。
「僕は平田洋介。気軽に洋介と呼んでほしい。趣味はスポーツ全般で、この学校ではサッカー部に入るつもりだよ。みんな、よろしく。」
パチパチパチと教室全体から拍手が起こる。それもそうだ。今の洋介の自己紹介はまさにパーフェクト、100点満点以外の何物でもなかった。その上顔は爽やかイケメン。これはもう今から女子たちによる争奪戦が開始されてもおかしくないだろう。現に平田を見つめる女子たちの視線は、先程より一層鋭い。
と、そんなことを言っている場合じゃなかった。次は俺の番だ。俺は洋介に指名されゆっくり立ち上がると、身体をみんなの方に向けて自己紹介を始めた。
「大園宏樹だ。俺も気軽に宏樹で構わない。趣味は色々あるが、まぁ中でも天体観測が一番好きだな。スポーツも得意だが、特段何かが特別得意というわけでもないし、部活には入るつもりはない。」
「そうなんだ。サッカーはどうなの?」
「もちろんできる。だが部活まで入るほどのめり込んではなくてな。悪い。」
「ううん。全然構わないよ。よろしく、宏樹くん。」
洋介がそう言って拍手を始めると、他のみんなも次々と拍手を開始する。俺には洋介の時と違って女子から熱い視線はないようだ(鈍感)。残念。ただ人一倍熱心に拍手してくれていた井の頭さんには、後でジュースでも奢ってあげよう。
今話もお読みいただきありがとうございました。
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