東京都300人…。大阪含め他の地方でも感染者が増加傾向とあって、ますますコロナの第二波が本格化してきたでしょうか…。私も学生をしておりますゆえ、また学校に行けなくなったり、バイト出来なくなったりしたらと思うと……(泣)
みなさん、手洗いうがいを忘れず、共にこの苦難を切り抜けましょう。ONE FOR ALL,ALL FOR ONE (あれ?使い方あってますよね?)
それでは今話もどうぞ(。ᵕᴗᵕ。)
放課後
今日は授業が五限目までで終わる代わりに、六限目と七限目の時間を使った部活動説明会が行われる。もちろんこれは任意参加で授業自体は既に終わっているため、部活なんか興味がない、見たくもないなんて言う生徒は別に帰ってもいいらしい。だが、それでもほとんどの生徒はこの説明会に参加するようだ。当然俺たちも例外ではない。
まぁ担任の先生にも「参加した方がいいぞ」と言われてはいるし、その部活動説明会の時しか部活に入るチャンスはないと聞けば、参加しない生徒を探す方が大変かもしれないが……
「大園くんは何か入りたい部活とかあるの?」
体育館で俺の隣に立っている松下さんがそう聞いてきた。いちよう松下さん以外にも洋介や他の女子たちも一緒にここに来たのだが、やはり昼休み同様みんな洋介の方に群がっているようだ。しかしその中でも俺の方に来て話しかけてくれる優しい松下さんには、いずれ何かの形でお返しをするとしよう。
「いや、特にねーな。何か特別好きなもんもねーし。」
「そっか…。天文部とかあるかもしれないわよ?」
「あー、いや、実は中学ん時少しだけ天文部いたんだけどさ、ちょっと俺のやりたいことと方向性違ったんだよな…。まぁ向こうは部活でただの趣味程度でやってるだけだから仕方ねーけど。」
「大園くんは違うの?」
「俺は……夢、かな。将来は宇宙に携わる仕事をすることに決めてるし。」
「へぇ…。大園くんもう自分の夢持ってるのね。すごい。」
俺の言葉にそう返したのは、松下さんではなく別の女子だった。俺たちが振り返ると、そこには金髪のような色合いの髪を耳にかけた、可愛いより綺麗という言葉が似合いそうな美少女がいた。名前は確か……森さん、だったな。
「ああ、寧々ちゃん。」
「え?松下さん仲良いのか?」
「ええ。昨日一緒にショッピングしたの。」
松下さんはそう言って森さんと少し会話をする。その内容を聞くところによると(※盗み聞きではなく、すぐ真横でしゃべられているので勝手に耳に入るだけです)、どうやら森さんは最初洋介のところにいたが、軽井沢恵という女子が常に洋介の片腕を抑えてマウントを取り続けていたため、徐々に面白くなくなってこちらに来たそうだ。
てかおい、それ俺が洋介の後釜みたいなもんじゃねーか。いや、まぁあの超爽やかイケメンの洋介の次ってだけで光栄に思うべきかもしんねーけどさ。
その後しばらく森さん含めた三人で雑談をしながら説明会が始まるのを待っていると、突如館内のスピーカーから一人の女子生徒の声が聞こえてきた。
『新入生の皆さん。お待たせ致しました。只今より当校の部活動説明会を開催致します。』
その直後、閉じられていた体育館のステージの幕がゆっくりと引き上げられ、そこに様々な服装をした先輩たちが並んでいた。恐らく各部活動のユニフォームなのだろう。文化系の部活はみな制服を着用している。
『ただいまから各部活動の代表、一人ずつ前に出てきていただき、順番にプレゼンを行ってもらいます。その後、プレゼンを終えた部の人は体育館の外に部ごとに設置されたテントに移動し待機しておりますので、その部に入りたいという方はそちらの方で入部、仮入部の手続きをお願いします。もちろん説明を全て聞く必要はありませんので、入る部活を決めた方は随時そのテントの方に移っていただいて構いません。それではまず最初の方、お願いします。』
女子生徒のその声で、まず一人目の部活動代表者がステージの中央に置かれているマイクのところに向かった。あの格好はサッカーか?レガースみたいなもんつけてるし。
「新入生の皆さん、初めまして。俺はこの学校のサッカー部のキャプテンで、○○といいます。我がサッカー部は…………」
サッカー部の代表者が自分の部活のことを説明する。俺はそれを聞きながら、近くにいた洋介の方をちらりと見た。うわっ、めっちゃ真剣に聞いてる。まぁサッカー部に入りたいって言ってたからなぁ…。
サッカー部の代表は説明が終わると、最後に舞台袖から出てきたチームメイトと空中リフティングパスを、軽く小技を挟みながら10往復披露し、チームメイトと共に舞台袖に消えていった。洋介もそのまますぐテントの方に行くのかと思ってチラリと見たが、どうやら残っているようだ。
その後、野球部、テニス部、水泳部、陸上部などの運動部に続き、茶道部、華道部、吹奏楽部、天文部などの文化系の部活動が紹介されていった。もちろんその中には家庭科部や手芸部など、井の頭さんが喜びそうなものも含まれている。井の頭さんはどっちに入るんだろう?気になるな…。
「ねぇねぇ、大園くん。入りたい部活見つかった?天文部もなかなか悪くなさそうだったけど。」
俺が井の頭さんのことを考えていると、ふいに俺の横で説明会を聞いていた森さんが可愛らしく上目遣いでそう聞いてきた。いや、少なくとも女子よりは身長高いからみんな上目遣いだよ?そうじゃなくてあれね?ちょっと腰を曲げて、下から覗き込むように聞いてくるやつね。可愛い女子が男を落とす時とかに使うテク。
え?その言い方は自意識過剰?確かに……
「ん?いや、どうだろうな。確かにこの学校の天文部の活動内容は中学の時よりはだいぶマシだけど、それでもやっぱ俺には合わないと思う。」
「そっか…。」
「まぁ俺のことは置いといて、森さんは何かいいの見つかったか?」
「あ、うん。私はテニス部にしようかなって。実は昨日から決めてはいたのよね。ちなみに千秋もテニス部なの。」
「え?そうなのか?」
俺がそう聞くと、森さんと反対側に立っていた松下さんが首を縦に振って答えた。
「ええ。元々どこかには入るつもりだったし、テニスは昔、習ってたことがあったから。」
「へぇ…。森さんはテニス得意なのか?」
「ええ。私、こう見えても中学の時はテニス部の部長だったの。チーム戦じゃ都大会止まりだったけど、個人では全国大会も経験してるわ。」
「まじか、すごいな。」
俺は素直に感心した。まさか全国大会まで出てたとは…。松下さんも昔クラブチームにいたって言うし、この二人実はめちゃくちゃすごいんじゃないだろうか?少なくともテニスに限っては…。
「でもそっか。それなら俺も試合の応援に行きたいけど、この学校、対外試合とかどうするんだろうな?」
俺の言葉に最初は少し目を輝かせた二人だが、後半の言葉を聞くと難しい顔をして考え始めた。
「そうね。そこは疑問よね。この特殊な学校に他校の生徒を入れるとは思えないし…。」
「試合の時だけ外に出れるのかしら。でも監視の目とか厳しそうよね。」
「まぁこの学校の方針自体が外部との接触の完全遮断だからな。恐らく森さんの言ったことが一番可能性的に高いだろう。でもそれだとうちの高校は試合の時は圧倒的アウェーってことになるな。」
いや、もしかしたら家族は応援に来れるのかもしれない。ただ直接的な接触は禁じられるだろうな。まぁなんにせよ、いずれちゃんと部に入ったら説明されるだろうし、今はもうこの話はこの辺で。
もう一時間半以上は軽く経っただろうか。ステージ上にズラリといた各部の代表者は残すところ二人まで減り、そのうちの一人は、今まさに舞台袖に消えていくところだった。残ったのは高身長の眼鏡をかけたイケメンの先輩で、なんというか、ものすごい場を支配する存在感のようなものを持つ人だった。
その人はマイクの前に来ると、何も喋らずにぐるりと体育館に残る多くの新入生たちを見渡す。基本的に説明会中私語は禁止されていなかったので、新入生たちは今も尚、平然と喋り続けていた。
「どうしたんですかー?」
「カンペ忘れました〜?ww」
「何それウケる〜ww」
相手が先輩にもかかわらず、体育館にいる新入生たちは面白半分に野次を飛ばす。少なくともそうしても咎められないような雰囲気がこれまでにはあった。
そう、これまでには……
……もう、一分以上先輩は喋っていない。次第に生徒たちは口数が減り、徐々に何かに呑み込まれるように大人しくなった。
そしてさらに一分が経過する頃、この場で、勝手な発言をしようとするものは、一人もいなかった……
「……私は、生徒会会長を務める、堀北学です。」
先輩……堀北生徒会長は、ようやくその重い口を開いて話し始めた。その言葉は、静寂に満ちたこの体育館全体に満遍なく行き渡り、その1音1音が生徒たちの耳から脳髄に突き刺さる。その言葉の鋭さ、重さ、そしてそれを後押ししている場の空気は、紛れもなくこの生徒会長の場の支配力と存在感を知らしめていた。
「生徒会もまた、昨年度卒業した先輩たちの代わりに新入生から立候補者を募ることになっています。特別立候補に資格は必要ありませんが、もし生徒会への立候補を希望する場合は部活への入部は避けていただくようお願いします。生徒会と部活の掛け持ちは、原則受け付けておりません。……それから、、」
会長はそこで一拍置く。その瞬間、勘のいい生徒たちは気づいたであろう。場の支配が、生徒会長の纏う雰囲気が、より一層凄みを増したことを。事実、生徒会長はこのすぐあと、より低い声色と鋭い口調で新入生たちに告げ始めた。
「……私たち生徒会は甘い考えによる立候補を望まない。そのような人間は当選することはおろか、この学校に汚点を残すことになるだろう。我が校の生徒会には、学校の規律を変えるだけの権利と使命が学園側から認められている。それを理解できる者のみ歓迎しよう。」
生徒会長はそう言ってゆっくりと舞台袖に下がる。その間も、会長の姿が消え見えなくなったあとも、しばらくの間、体育館で人の声が聞こえることはなかった……
「ちょっと怖かったわね。あの生徒会長さん。」
「だな。でもさすが生徒会長だとも思ったよ。あれだけ圧倒的な存在感を持ってる人ってなかなかいないからな。」
説明会が終わった後、俺たちは徐々に人数が減っていく体育館で、まだ先程の余韻から抜け出せずにいた。あの存在感……あの人、いったいどんな人生送ってきたんだよ…。いや、まぁある意味では俺が言えたことでもないんだけど……
「宏樹くん。」
「ん?ああ、洋介。どうした?軽井沢さん達は一緒じゃないのか?」
ふと横を向くと、先程までクラスの女子に囲まれていたはずの洋介が一人でそこに立っていたので、俺は少し驚きつつそう聞いた。
「うん。彼女たちはやっぱり部活には入らないらしくてね。僕はサッカー部の方に行かないといけないから、先に帰ってもらったんだ。」
「なるほどな。」
「うん。ところで宏樹くんはどうするんだい?何か興味ある部活はあったのかな?」
「あ、それ私も気になる。」
「私も。」
洋介の言葉に森さんと松下さんが続けざまに重ねてくる。いや、そんな興味津々な目を向けられても…。
「うーん…、そうだな…。特にないと言えば嘘になるかもしれないけど、ただ正直、生徒会には興味が出てきた。」
「生徒会?宏樹くんは生徒会に入るのかい?」
「入れるかわかんないけどな。」
俺が生徒会入りを希望する理由は主にふたつ。
ひとつはあの生徒会長……堀北先輩だったか?あの圧倒的とも言える人物がトップを張る生徒会。そこに純粋な興味がある。
そしてもうひとつは、この学校の実績。進学率、就職率100%。もし仮にその恩恵が一学年全員に行き渡るものではないとしたら?もしそれが成績上位数%だけに与えられるのだとしたら?もし仮に何らかの条件が必要なのだとしたら?いずれにしろ、生徒会というものは必ず何かの形で俺の将来にプラスになってくれるはずだ。
俺はそんな希望的観測を胸に抱きながら、生徒会が居座るテントへと足を運んだ。