例えばそんなヒロインがいたりいなかったり   作:chee

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お久しぶりです。どうもです。
七夕話は何も考えてなかったんですけどね、某御人を焚きつけるだけ焚き付けたので自分も頑張りましたよえぇ。でもクオリティは期待しないでくださいね。一日クオリティなのと、シンプルに劣化がひどすぎる。


例えばそんな星空を見たり見なかったり

7月7日。

 

多くの少年少女が星に願う日。

 

私は去年までそんな事なんて全く気にしてなかった。そんな事よりゲームがしたかったから。

 

 

でも、まぁ、今年くらいは。

 

実際に願いが叶うなんて思っちゃいない。でも、気休め程度にはなるかな。

 

 

 

『もう少しだけ、私に女の子らしい魅力をください』

 

 

 

少しでも彼に釣り合うような人間になりたいから。

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

夕方になって慧からメッセージが来た。こんな時間にどうしたんだろって思ったら、現実側(リアル)で会おうという事らしい。

 

それにしても、本当に何でこんな時間なんだろ。いくら夏が近づいて陽が落ちる時間が早くなりつつあると言っても既に太陽は傾き始めている。ほんと、変な奴だなぁ…

 

 

カポッ、カポッ、と下駄を鳴らしながら夕暮れの町を歩く。

 

「それにしても歩きにくいなこの格好…」

 

そう。今日私は普段の外行きの服ではない。私も最初は普段の服を着たんだけど、何故か瑠美にめっちゃ怒られて着替えさせられた。

 

 

………浴衣に。

 

 

なんで瑠美は浴衣の着付けなんてできるの…?なんて疑問は置いておいて、紺色の浴衣を身にまとい、お気にのヘアピンも外して簪を髪に刺した私は慧と並んで目的の場所に向かって歩いてるわけなんだが…

 

「……それになんかはずい」

 

別に近所でお祭があるわけでもないのに浴衣なんて来て外を出歩いてるのなんて私たちくらいな物だろう。すれ違う人の視線が刺さる。

 

 

「それは楽羽がすごい浴衣が似合ってるからだと思うけど?」

 

「…そういうこと言うな」

 

 

私の隣でそうのたまう慧も浴衣に身を包んでいる。あ、女装じゃなくて普通に男物ね。そしてこれが絶妙に似合っていない……わけでもないのがちょっと腹立つ。見てくれはいいからなコイツ。

 

 

「……慧も似合ってるんじゃない?」

 

「ぁ…ありがと…」

 

 

自分はお構いなしにこういう事言うくせに、言われた途端にいっちょ前に照れてるんじゃないよ。こっちが恥ずいわ。

 

 

 

 

 

陽が完全に沈みきったころ、たどり着いたのは小さな公園。遊具なんてない、ただ芝生が広がっているだけのような公園。到着するなり慧はテキパキとレジャーシートを広げてそのまま寝そべった。

 

「……何してるの?早くおいでよ」

 

「おいでって…これなに?」

 

「いいから、こっち」

 

招かれるままにシートの上に腰を下ろす。

 

「上、見てみ?」

 

「ん?………うぁぁ………」

 

 

 

満天の星空。

 

 

 

天の川を中心に、幾千万の星々が夜空に煌いていた。確かに理想の星空を追い求めた電脳世界の星空より輝きが劣ることもあるかもしれないけど、そんな作り物よりずっと素敵なものだと、直感的に感じる。

 

 

「…すごいね」

 

「でしょ」

 

 

一つ言葉を交わせばすぐに静寂が下りる。この公園には私たち以外誰もいない。ただ、私と、慧と、星空だけの空間。なぜか、それだけの空間がたまらなく心地よくて、ついつい没頭して星を見入っちゃう。

 

 

「寝そべんないの?」

 

「うん」

 

「気持ちいいのに」

 

「髪が崩れるから。瑠美に殺される」

 

「辛くない?」

 

「だいじょぶ」

 

「よりかかる?」

 

「ん」

 

 

いつの間にか体を起こしてた慧に体重を預けて、星を見続ける。

 

絶景なんてゲームの世界で腐るほど見てきた。それでも子の星空にここまで心を奪われるのはなんでなんだろ?

 

電脳世界でのいつでも見れる星空とは違って今しか見れないこの景色を少しでも目に焼き付けようと必死になる。夜空を真っ二つに割る天の川を、その存在感を主張する夏の大三角形を、視界に映るすべての星々を、そして、この体を包む心地よいぬくもりを………

 

 

……ぬくもり?

 

 

「ひぇぁっ!?!?」

 

「どうしたの?」

 

「ゃ…にゃんでもない…」

 

 

あれ、今私、慧にもたれかかってる!?何でこうなったんだっけ!?星に夢中になってて何も覚えてないぞ!?!?

 

だって、あれ!?!?私ずっと星を見てて…なんで!?!?!?

 

「…楽羽?」

 

「ダ…ダイジョブ」

 

いつもより私の名前を呼ぶ声が近い。声だけじゃない。慧の体もいつもより近く感じる。今日の慧は浴衣姿でなおさらだ。慧に背中を預けて、この距離で慧の声を聴いていると本当に慧に包まれているみたいで…

 

……ナニコレスゴイ!?

 

 

「ねぇ、楽羽」

 

「…なに?」

 

慧の一言で我に返る。トリップ寸前の理性を何とか意地で捕まえる。だめ!この距離でそんなドキドキしたら慧にばれる!!

 

落ち着け…私…ふぅ…ふぅ…

 

「楽羽?」

 

「……いいよ。ダイジョブ」

 

……頼むからそのきょとん顔やめてくれ。

 

 

 

「??まいっか……あのさ、楽羽は学校でかっこいい男子とかいないの?」

 

「…は?」

 

 

……急に何言ってるんだコイツ。意味不明すぎてさっきまでのテンパりも一気に落ち着いたぞ。

 

「楽羽はさ、華やかな現役高校生なわけで、ちょっと見渡せばそれこそ男なんていくらでも選び放題なわけでさ、それでも今は俺といてくれてる。とてもうれしいんだけどさ、どうしても不安になるんだよ。楽羽は、本当に俺と付き合ってていいのかなって……」

 

深刻な顔をするから何の話かと聞いてみればなんだ、どこか覚えのある悩みだ。

 

「………別に私はイケメンとつきあうことに価値を感じないし。慧といるのは楽しいから、別にいい」

 

もちろん慧からすでに聞いた悩みではない。

 

…これは、私が今まで考えていたことだ。

 

永遠さん、恵ちゃん、シルヴィ。メディア露出してるような魅力的な人に囲まれている慧がただの一般人の私なんかを相手にしてていいのか。ずっと思ってたこと。

 

「慧こそ、私なんかでいいの?」

 

「え、当たり前じゃん」

 

「私よりかわいい人は慧の周りにいくらでもいるよ?」

 

「別にそんなのに興味はないよ。俺は楽羽がいい」

 

 

「「………ははっ」」

 

 

なんだ、二人とも同じようなことで悩んでたのかあほらし。私は慧に変なかっこよさなんて求めてなかった。それで、慧も私に妙な女の子らしさなんて求めていなかったというなら、結局私の考えてたことは杞憂だったってことか。

 

なんかすっきりした。というか、さっぱりした。慧と星を見るこの空間がちょっと心地よくなった。

 

 

「…楽羽?」

 

「ん?」

 

「星がきれいだね」

 

「………月じゃないの?」

 

「月が良かった?」

 

「別に」

 

「そか」

 

もし慧に月がきれいだと言われたら、私はなんて返すつもりだったんだろ。分かんないや。でも、今日は七夕なんだから、月じゃなくて星に、織姫様と彦星様に、願いを込めてみるのも粋な物だろう。

 

 

お星さま、お願い変えるね。

 

女の子らしい魅力もいらないわけじゃないんだけど、まぁ貰わなくてもいいや。

 

だから、もう少しだけ。

 

もう少しだけ、この時間を終わらせないでください。

 

 

このただ慧と星を見るだけの時間を、もう少しだけ。




楽羽二次減りつつあるけどこのままなくなるなんて許しません。楽羽ちゃんにもっと流れをォ!!(夢患者)

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