だが、負けるわけにはいかない理由がある。
ウチのはこんな感じでした。低レアばっかりでも、頑張って勝ちましょう!
エミヤが余分に出てくるのは、好きなだけです。
よろしくお願いします。
ああ、全く。
君は本当にヒドイ女の子だ。
眼前に広がるのは有りとあらゆる地獄の描写を許容する光景。
立ちはだかる人類悪。
金色の荘厳な手脚、銀色の身体は如何なる生物の遺伝子にも、神を想起させるに充分だ。
アレにとって、自分は大気中の塵にも等しい。意識される事もなく葬られる存在だ。
真実、ヒトの身で此処に辿り着いてしまったこの身体は限界を迎えている。
何を間違って此処にいるのか、何に正解して此処にいるのか。
普通なら、泣きながら逃げ出す状況だ。みっともなく背を向けて、折れた脚を引き摺りながら走り出し、あの異形の神に爆散させられるモブの末路を辿る筈だ。
(頑張って、先輩)
ああ、本当に君は。
ゆっくりと、立ち上がる。朱に染まる着慣れた制服の襟を正した。
「なんだ? 寝ていれば、未来と過去が同時に消える様を見届けられるというのに」
「いやぁ。そんな訳にはいかないさ」
喉から絞り出した軽口は、自分でも驚く程生気が無い。
だが、右手が疼く。
「終焉を待ちきれぬか。ならば、先に終りを見よ。決して救われぬ、終りを」
異形の腕が首を掴む。脚を掴まれ、ぶらりと垂れ下がる羽虫にも似た哀れな有様だ。
右手が震える。
きっと、それこそ羽虫を潰すほどの力を込めれば、自分の頭は風船のように弾けるのだろう。
そうなる前に、右手を前方に掲げる。
(私はこう思うんです。先輩の右手に宿ったのは、仲間達を束縛する物じゃなく、絆だ、って)
そうだね。自分もそう思うよ。
「その、矮小な魔力で、なんとか出来るとでも? だから貴様等は浅はかだというのだ」
ああ、知ってるよ、そんな事は。
それでも尚、掲げ、叫ぶ。
「令呪を持って命ずる! 我が最高のサーヴァント達よ!」
右手に描かれた、三画の紋様が紅く輝く。
「もう一度立ち上がり・・・、」
そう。これまでに何度も死にそうな目に遭った。その度。
(頑張って、先輩!)
何度も、君は自分を鼓舞してくれたね。
無責任に、無自覚に、無慈悲に。
本当にヒドイ女の子だ。
あ、ごめん。無責任てトコだけは違う。君はいつも自分を守ってくれたのだから。
神代の槍も、最強騎士の剣も、大海原の荒波も、女神の進撃も。
全て、受け止めて責任を果たしてくれた。そしていうんだ、頑張れ、って。
君は、君が持つ唯一の物を代償に、自分を戦わせてくれた。
目減りするそれは、君の命そのものだったのに。君が最も渇望する、それが有れば、君は夢を叶えられたかも知れないのに。
本当に無責任だったのは自分だった。流されるまま、戦っていた。強力な仲間達を使役する事でいい気になっていた。
君は、なんてヒドイんだ。君の見たかった物を自分に見せようとするなんて。
こんな、何も出来ない人間を、信じるなんて。背負わせるなんて。
ああ、本当にヒドイのは、自分だ。
心を振り絞り、叫ぶ。
「・・・、もう一度立ち上がり、このバケモノを、ぶっ倒せ!」
右手の甲から、眩い光が溢れる。
その光に応えるように、八つの影が立ち上がった。
「我が主君が望む民の笑顔。その為ならば、幾らでもこの身に罰を課そう」
其は銀腕の剣兵。世界最強の騎士団に在りながら凡庸。だがその忠義は誰よりも気高い。
「立ちなさい豚ども。アンコールが終わってないわよ」
其は槍の歌姫。純粋で有るが故、悲劇を辿る。彼女の舞台は、人々の笑顔に包まれるべきだ。
「さあ、最後の勝負だ。弾は三発。世界が終わる前に撃ち抜いてあげるよ」
其は荒野の弓兵。誰よりも自由を愛しそれを侵すモノに死を穿つ。
「オマエを許容する程、今の僕は甘くない。オマエにはイリヤの世界から消えてもらう」
其は全てを喪失した殺兵。数多の魔術師を葬った、古ぼけた銃を構える。
「我身はマスターの一番槍。主君に戦う意思あらば敗けは許されず常勝無敗の先陣を切る!」
其は天下を分けた騎兵。儚い体躯を甲冑で包み、少女は報われぬ海を跳ぶ。
「私には、幸せな未来しかありませんのよ? 邪魔をするなら、容赦はしません」
其は嘗て神に教えを乞うた最悪の魔兵。だが、真なる伴侶を得た彼女は知っている。小さな幸せこそが尊いと。
「オレ、キレイなものすき。おまえから、まもる。ぜったい」
其は棄てられた狂兵。牛の仮面を被った迷い子の瞳は誰よりも澄み、神の血を引く巨躯は何者をも粉砕する。
そして。
赤い外套が翻る。
「残念ながら、「俺」は少しばかり往生際が悪い。君が諦めたとて、戦うつもりではあったのだがね」
赤い弓兵は、いつもの皮肉で薄く笑う。
「なに、こうして魔力が供給された以上、存分に戦えるさ。別に、倒してしまっても、構わないのだろう?」
それはきっと、彼が勝てぬ者と戦う時の常套句。主人に対する最大の虚勢と優しさなのだろう。
其は、名も無き弓兵。嘗て正義の味方であった者の成れの果て。その死骸。
だが、その魂は永遠に人類を護り続ける。
「フ、フハハハハハッ!」
異形の神が世界を震わせるように笑う。
「何かと思えば、有象無象を呼び戻しただけか! 今更、そんな霊格の低い連中で何が出来る! なにも出来はしない! 数瞬の内に消し飛ぶだけだ!」
豪笑と共に吐き出される、絶対者の嘲り。
だけれど。
(運が悪い? 私はそうは思いません。だって、先輩の処に来る皆さんは先輩の事が大好きですから)
そうだ。そうなんだよ、確かにそうだ。それに気付くと自然に微笑んでしまう。
「遂に気が触れたか? 笑わなければやってられぬか」
「違うよ。彼らに、勝てるとおもってるオマエが面白くてさ」
「なんだと?」
そう、此奴は勘違いをしている。
彼等は、唯の一度も、諦めてない。
七度訪れた世界の危機を、彼等は乗り越えて来た。普通なら絶対に敵わないモノを、絶望の断崖を、彼等は退けた。
「良いだろう。その不愉快な存在ごと、消し飛ばす。秒の時も必要無い。慚愧すら許さん」
自分の身体が放り出される。
「ああ、上等だ」
今更。
怖れる必要もない。自分の後ろには、八騎の仲間がいるのだ。
盾の少女がくれたこの一瞬で全てを終わらせる。
さあ、始めようか。
決戦。冠位時間神殿。