ときわたりをしてから一週間が経った。その間オレさまは今からどうすればダンデに勝つことが出来るのか、ずっと考えていた。
アイツと出会ってから九年。それだけ時間を掛けてもついぞ打ち破ることは叶わなかった。たかが残りの一年でオレさまはもっと強くなれるのだろうか。いやそれまで負けてたからってこの一年でダンデより強くなれない理由にはならない。プラスとマイナスが幾度も交差する。
そして今日、オレさまはナックルジムのジムトレーナー達全員をジムの執務室へ呼び出していた。
「どうしたんですか、キバナさん。みんなを集めて」
話を進めたのはリョウタ。ジムトレーナーの中でも一番古株で、ジムトレーナーのリーダーを務めている。
「ん。今日は急な呼び出しに応じてくれてありがとうな」
「いえ。こんなこと滅多にありませんから」
今日突然コイツらをここに呼んだ理由。それはオレさまがこの一年で一番強くなるための方法を思いついたからで、それを伝えるためだ。
「なあリョウタ。今年もそろそろジムチャレンジが始まるよな」
「ええ。と言っても我々ナックルジムにチャレンジャーが到達するのはまだまだ先でしょうけど」
「八つ目のジムだもんな。大体九ヶ月くらいはかかる」
「それがどうかしましたか?」
リョウタは話の見えないオレさまの発言に首を傾げる。まあ待て、ちゃんと言ってやるから。
「オレさまは今日から半年、ダンデを倒すために武者修行をしてくる」
「はい? それは他のジムリーダー達とバトルをして回るということでしょうか?」
「いや、ガラルの外だ」
「……何を言ってるんですか?」
「オレさまは最もチャンピオンに近いジムリーダー、巷では他の地方だとチャンピオンにだってなれる実力を持つと言われてる」
リョウタの疑問を無視して、話を続ける。
「だがそれは本当にそうか? 戦ったこともない相手と同格と言われてオレさまは納得出来るか?」
「キバナさんのことは僕が一番知っています。……だとしても、ちょっと理解が追いつきませんね」
「嘘だな。お前はわかってくれる」
「……そうですね。もしかすると長期間ジムを留守にする可能性は、考えなかったといえば嘘になります。寂しくはなりますけどね」
リョウタは寂しげに呟く。オレさまだってコイツらとの生活は楽しい。たった半年とはいえ、感傷に浸る部分は確かにある。
だがこのチャンスを逃せば、オレさまは一生無敵のダンデに勝てないままだ。何のためにセレビィがチャンスをくれたと思っている。
「ジムの仕事は申し訳ないがお前らに任せる。オレさま個人に来る仕事は断ってくれ。緊急の場合は帰ってくる予定だが。……まあ、リョウタ達にはこれまで以上に迷惑を掛けるとは思う。だが、それでも」
改めて全員を見渡す。各々の細かい表情は違えど、力強い視線で言葉を待っていた。
「半年だけ、オレさまにこき使われてくれないか」
「ええ。了解しました」
リョウタの了承を皮切りに、他のヤツらも次々に賛同してくれる。コイツらがオレさまの仲間で良かった。頭が上がらないな。
そして、その三日後。オレさまはひっそりとガラルを発ったのだった。