Re:Dragon Storm Tale   作:しゃけ式

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5話 VSクチナシ③

 フライゴン対ドンカラス。どちらも空中戦を主体にバトルを行うポケモン同士。

 

 

 まずは一つ、いつもの勝ち筋を追う。

 

 

「フライゴン、りゅうのまい」

 

 

 オレさまの指示通り、フライゴンはりゅうのまいをした。これで攻撃の威力と素早さが上がる。

 

 

「ガラ空きだぜ」

 

 

 クチナシさんがそう呟くと、ドンカラスは指示を受けるまでもなく双翼を鋼の硬さにして襲い来る。阿吽の呼吸というやつだ。

 

 

 だが、攻撃は当たらない。

 

 

「よーしよくやったフライゴン。次からお待ちかね、攻撃をさせてやる」

 

 

「はは、砂嵐を起こしたのはそういうことかい。ますますダブルバトルみたいな戦いだな」

 

 

「利用出来るもんを利用しねぇ理由にはならねぇだろ?」

 

 

 フライゴンの目はゴーグルみたいになっている。本来砂漠に住んでいるためそういう進化を遂げるのは必然であり、そこがドンカラスより有利な点だ。いくらドンカラスが鍛えられているとはいえ、砂嵐に視界を遮られないというのは明確な強み。

 

 

 ダンデに負けて何度目だっただろうか。オレさまは素の実力だけで勝てないなら勝ちに繋がるものは何でも使えば良いという結論に辿り着いた。

 

 

 アイツに負けを認めるのは、全ての手を尽くしてからでも遅くねぇ。

 

 

「さあフライゴン! ドラゴンダイブだ!!!」

 

 

「ブレイブバードで迎え撃て」

 

 

 加速したフライゴンは飛行しながら前方へ一回転し、Gを利用した力で尻尾をドンカラスへ浴びせようとする。しかしドンカラスに引くような素振りは一切見えず、真正面からぶつかった。

 

 

 ダメージは五分。いや、反動のある分こっちの方が少し有利か。

 

 

「距離をとりながらエアスラッシュ!」

 

 

 ヒットアンドアウェー。回転の勢いで後退しながらエアスラッシュを撃ち込む。ドンカラスは身を捩りながら直撃だけは避け、かすりながらもフライゴンへ迫る。

 

 

「来るぞ!!! 鋼の翼!」

 

 

「同じく鋼の翼」

 

 

 ギィン! と金属同士が打ち付けられたような衝撃音が辺りに響く。今のは完全な五分。

 

 

「続けてドラゴンダイ……」

 

 

「そうだ。それで良い」

 

 

 ドンカラスは翼がぶつかった衝撃を利用して一回転し、そしてフライゴンの意識の外から腹を一閃。今のは不意打ちか。

 

 

「クソ、強ぇ」

 

 

「一旦距離を取れ」

 

 

 フライゴンとドンカラスの間に空間が生まれ、仕切り直しになる。

 

 

 ここで取れる選択肢は二つ。一つはもう一度りゅうのまいをして攻撃力と素早さを高める。もしくはその選択肢を逆手にとって虚を衝く攻撃を仕掛ける。

 

 

 あまり素早さを上げすぎてフライゴン自身の制御が利かなくなることを考えると、攻撃をする方が良さそうだ。

 

 

 今の思考を一瞬で済ませると、オレさまはバンダナを締め直す。

 

 

「行け!!!」

 

 

 細かい技の指示は不要。何が最適かなんて、オレさまのポケモンなら自分で判断出来る強さがある。

 

 

「は」

 

 

 ここに来てクチナシさんは初めて笑みを見せた。左側のみを吊り上げるそれは、まさしくあくタイプのエキスパート。

 

 

 だが関係ねぇ! このまま決めろ!!!

 

 

 フライゴンはオレさまの思った通りドラゴンダイブを繰り出す。最短距離をそのまま滑空して尻尾を叩き付けた。普通なら即戦闘不能になるほどの威力。

 

 

 

 

 

 そう、これが普通の相手なら。

 

 

 

 

 

「……この一瞬さえ稼げれば、チェックメイトだぜ。ガラルのあんちゃん」

 

 

 クチナシさんは気付けば両腕を交差しており、そこから正面に持ってきた腕をまるでポケモンの威嚇のように頭上へ持ち上げる。

 

 

「っクソ! 身代わりか! フライゴン!!!」

 

 

「もう遅い。あんちゃんはこれを見にこんなとこまで来たんだろ?」

 

 

 光がクチナシさんの腕輪とドンカラスへ集まっていく。今までに感じたことの無いパワー。

 

 

 言うなれば、ダイマックスに注ぐ力を全て一撃に込めているような。殺意が集約される。

 

 

 

 

 

「全力の悪に飲み込まれちまいな。ブラックホールイクリプス」

 

 

 

 

 

 ドンカラスか咆哮する。正面に発生した禍々しい闇黒のエネルギー。それは周りの全てのもの、砂嵐でさえ全てを吸い込みながら、徐々に上昇していく。

 

 

 吸い込まれる対象。それはフライゴンでさえ、例外ではない。

 

 

「フライゴン!!!」

 

 

 オレさまが叫んだ刹那、ブラックホールは爆ぜて吸収したものを一気に吐き出す。砂の雨が降った。

 

 

「これがZ技だ、ガラルのあんちゃん」

 

 

「ああ。……痛い程滲みたぜ、クチナシさん。ダイマックスじゃなくてもこれだけ熱いバトルが出来るとはよ」

 

 

「武者修行なのに勝っちまってすまねぇな。まあ挫折として糧にしてくれや」

 

 

「何言ってんだよ、クチナシさん」

 

 

「ん?」

 

 

 察しが良いのか悪いのか。そのセリフはまだ早ぇってことだ。勝ちを確信するためには相手のポケモンがのびてるところを見なきゃいけねぇ。

 

 

 

 

 

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「決めろ!!! フライゴン!!!!!」

 

 

 オレさまの絶叫と共にフライゴンは再度ドラゴンダイブを真後ろから決める。今度は身代わりじゃねえ!

 

 

 地に伏せたドンカラスは、ピクリとも動こうとしない。

 

 

「どうだクチナシさん! オレさまの勝ちだ!!!」

 

 

「……どうやらそうみてぇだな」

 

 

 先程までの威圧感はどこへやら、クチナシさんは無防備にバトルフィールドへ入ってドンカラスのもとへ伺う。

 

 

「この傷の位置ってこたぁちゃんと打点をずらしてるんだがな。それでも倒れたのは、りゅうのまいを使われていたか」

 

 

「直接指示は出来なかったが、オレさまが思いつくことならオレさまの鍛え上げたポケモン達でも思いつけるってことだ! オレさまはむしろ完璧に不意をついたと思ったのに打点をずらされていたことに驚いてるよ」

 

 

 ともあれフライゴン、お疲れさん。やっぱりお前はオレさまの最高のパートナーの一体だぜ!

 

 

 共にポケモンをボールへ戻すと、クチナシさんはこっちへ来て手を差し伸べた。

 

 

「ガラル紳士は握手は嫌いかい?」

 

 

「いーや、こちらこそぜひともだ! 熱いバトルをありがとうな! 武者修行の最初にバトル出来たのがクチナシさんで良かったぜ!」

 

 

 ガシッと握手を交わす。大きくはないが力強い手。これだけで強さを十二分に物語っていた。

 

 

「っと、危ねぇ危ねぇ。ヘイロトム! 今の光景を写真に収めてくれ!」

 

 

「任せるロトー!」

 

 

「お、こりゃスマホロトムってやつかい。アローラにはロトム図鑑が主流だから珍しいや」

 

 

 パシャリとシャッターが切られる。良い写真が撮れたんじゃないか? まあオレさまが被写体の時点で映えるのは確定なんだけどな!

 

 

「なあクチナシさん、もし良かったらこの写真をポケスタに上げても良いか?」

 

 

「おじさんに難しいことはわかんねぇよ。そうしたいなら好きにしてくれ」

 

 

「サンキュ! そうさせてもらうわ! ヘイロトム、アップの準備だ!」

 

 

 オレさまは今のバトルの感想やクチナシさんについてのコメントを添え、ポケスタへアップする。ファンサービスってな!

 

 

「ガラルのあんちゃん、次はどうするんだい」

 

 

「そうだなぁ。今日のところはホテルに泊まって、それから次の強いヤツを探そうかと思ってるぜ。確かハラって人がクチナシさんくらい強いんだよな?」

 

 

「ハラの旦那は勿論強いんだけどな、丁度さっき一人思いついたのがいるんだ。案内はしてやるから、明日はそいつとバトルしてみたらどうだ?」

 

 

 お、クチナシさんのイチオシなら行くしかねえな! 今日みたいなバトルがまた出来るって考えると楽しみで眠れる気がしねぇ!

 

 

「そいつはメレメレ島ってとこに住んでるヤツでな。ちょっと変わり者だがバトルの強さは保証する」

 

 

「てことはメレメレ島のしまキングなのか?」

 

 

「いや、メレメレ島のしまキングはハラの旦那だ。そいつの肩書きはポケモン博士だな」

 

 

 博士でバトルが強いのか。真っ先に思い浮かんだのは五十年程も前にカントーのポケモンリーグで優勝した、今ではポケモン研究の第一人者であるオーキド博士だが、アローラだしな。一体どんなヤツなんだろう。

 

 

「名前はククイ。多分アイツがアローラで一番強い。このおれを含めてもな」

 

 

 

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