Re:Dragon Storm Tale   作:しゃけ式

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6話 VSククイ①

 翌日、オレさまは朝からクチナシさんの紹介でフェリーに乗りメレメレ島に来ていた。隣にはクチナシさんも居て、曰く『警察の仕事は後輩に丸投げしてきた。しまキングの仕事はそもそも真面目にやってねぇ』とのことらしい。まあ案内してくれるってことならオレさまには何の文句も無いけどよ……。

 

 

 船着場に到着し、海沿いを歩いていく。街を抜けると見たことのないポケモンが草むらを闊歩していた。

 

 

「クチナシさん、あれがツツケラであれがアゴジムシたよな? やべ、テンション上がってきた! ヘイロトム! アイツら全部写真に収めてくれ!」

 

 

「了解ロトー!」

 

 

「まるでガキみてぇだな」

 

 

 やれやれと首を振るクチナシさん。でも今までジムやCM、雑誌の仕事と忙しかったから他地方には行けなかったんだ。何か海外っぽくてアガるのも無理ねえよ!

 

 

 大体歩くこと三十分。何故か浜辺にひっそりと建つ一軒家が見えてきた。その前には……あれは、サーファーか? 上裸に白衣ってどんだけアンバランスなんだ。アローラファッションってやつかね。

 

 

 サーファー(仮)はオレさま達を見つけ、手をぶんぶん振った。

 

 

「おーいクチナシさーん! お久しぶりですー!」

 

 

「おお」

 

 

 クチナシさんはいつも通り控えめに返事をし、駆け寄ってきたそいつを当たり前のように受け入れる。こんな変なヤツにも慕われてる辺り、やっぱ人望があるんだな。

 

 

「ガラルのあんちゃん、コイツがククイだ」

 

 

「どうも初めまして! ここで研究をしてるククイだ!」

 

 

「おう。……お? この変な格好なのがククイ博士?」

 

 

「ははっ、手厳しいな!」

 

 

 明るく大袈裟に笑うクイ博士。偏見だがとても博士の肩書きを持ってるようには見えねぇな……。身体を鍛えてる博士なんて存在したのか。

 

 

「失礼、オレさまはキバナだ。ガラル地方から武者修行に来た」

 

 

「……ん? ガラルのキバナ?」

 

 

「知ってんのかい」

 

 

 ピタリと動きを止めるククイ博士にクチナシさんは訊ねる。まいったな、オレさまの名前は海外にまで轟いてるのか。

 

 

「そりゃ勿論! キミの論文は読んだことがあるぜ! ドラゴンタイプのポケモンの進化が遅い理由と生息地を絡めていたのは目からウロコだったよ!」

 

 

「あ、そっちか。そういやそんなのも書いたっけな」

 

 

「ガラルのあんちゃんって実は賢かったのか。見た目はアホっぽいのになぁ」

 

 

「失礼だぜクチナシさん! キバナくんは十歳であのナックルユニバーシティを卒業、当時書いた論文はドラゴンポケモン研究に今も役立てられているんだぜ!」

 

 

 考えてみりゃ博士だもんな、オレさまの名前を知っててもおかしくないか。こんなことなら昨日にでもククイ博士の書いた論文を読んできたら良かった。

 

 

「ぼくがキバナくんの論文で特に好きなのは何故りゅうせいぐんを撃った後は特殊技の威力が下がるか、これを反動と考えて破壊光線の反動を別の物に置き換えて連発出来るかを書いた物でさ! 確かに反動と言えばダメージか硬直の二つとしか考えていなかったけど、それはぼくたち人間が勝手に置いた前提なんだよな! そして反動の操作が出来ない理由は無い! あの基礎研究から今はいろんな応用研究が成されてるんだぜ! あ、というのもぼくはポケモンの技について研究していてね……」

 

 

「待て待てククイ博士。一気に言われてもわからねえって。あとオレさまのことはキバナで良いぜ」

 

 

「おっとこりゃ失敬。顔から火炎放射が出そうだ!」

 

 

「まあそれはさておきな? 実際オレさまもそれをバトルに応用出来るか考えたんだよ。今はドラゴンタイプのジムリーダーやってんだけど、りゅうせいぐんをそのままの威力で連発出来たら最強だろ? だけどりゅうせいぐんは体内にあるエネルギーを一時的に枯渇させるくらいの技を繰り出してるから必然的に威力は落ちるんだよ。だからまずは一番基本的な反動である硬直を起こす破壊光線で考えて……」

 

 

「待て待てお二人さん。研究者の悪い癖が出てるぜ」

 

 

 熱が入ってきたところをクチナシさんに制止される。何かこのモードに入ったのは久しぶりだな。前にマグノリア博士とダイマックス技について話し合った時以来か?

 

 

「いやー申し訳ない! アローラには博士と呼ばれる人間が殆ど居なくてな、ちょっと楽しくなってしまった! ごめんなキバナ!」

 

 

「こっちこそ悪いな。この続きはまた後にでもしようぜ!」

 

 

「キミが良ければ勿論! ただ今日はぼくとバトルをしに来たんだったよな?」

 

 

 そう、それが本題だ。技の研究をしてる博士のバトルなんて絶対に楽しいじゃねえか! 考え出したらめちゃくちゃ楽しそうで止まらないなコレ!

 

 

「聞いたよ、本気のクチナシさんに勝ったんだってな! 流石はドラゴンストーム!」

 

 

「そっちも知ってんのなら話が早ぇ。オレさまが今十連敗してる相手は知ってるか?」

 

 

「ああ。無敵のダンデだろ? 彼の名前は全世界で有名だぜ」

 

 

「オレさまはどうしても今年中にダンデに勝ちたいんだ。じゃねえとヤツは……」

 

 

 今期のトーナメントで敗北する。だがいきなりこんなことを言われても信じる人間は居ないだろう。思わず口を噤んでしまった。

 

 

「……よし! じゃあバトルだ! 昨日は二対二のシングルバトルをしたって聞いてるし、ぼくともそのルールでしようか!」

 

 

「わかった。……ククイ博士はアローラ地方で一番強いって聞いた。初めから全力で行かせてもらうぜ!」

 

 

「おう! 心がかえんぐるまだ!」

 

 

 良いね、こういう熱いヤツは大好きだ! こっちもつられてテンションが上がってくる!

 

 

「んじゃおれは審判だな。バトルフィールドはここで良いか?」

 

 

「家から離れていればぼくはどこでも! 最悪家が壊れても補修するし大丈夫だ!」

 

 

「よし、じゃあルールをもう一度確認する」

 

 

 クチナシさんがそう言うなり、オレさまとククイ博士はポケモン達が戦えるように距離を空ける。

 

 

「使用ポケモンは二体。おれがダメだと判断した時点で戦闘不能だ。良いな?」

 

 

「「おう!」」

 

 

「ん。ならバトル始め」

 

 

「行ってこい、ウォーグル!」

 

 

「行くぜコータス!」

 

 

 オレさまが繰り出したのはコータス。出てきた瞬間日差しが強くなった。

 

 

 そしてククイ博士は機動力の高いウォーグルか。コータスはそういう相手には相性が良いとはあまり言えないが、そういう場合の対策もしてある。気合いを入れ直すために一度拳を握り直した。

 

 

「ウォーグル! 高速移動!」

 

 

「まずは牽制だ! ソーラービーム!」

 

 

 強い日差しのためチャージが一瞬で完了し、ウォーグルのもとへと太い光線が一気に迫る。

 

 

 しかし素早さを上げたウォーグルはいとも容易く躱し、その勢いでコータスへ猛烈なスピードで接近していた。

 

 

「ブレイククローだ!」

 

 

「ソーラービーム!」

 

 

 今度は皮一枚で躱しながらコータスの頭の辺りを攻撃する。確かブレイククローは相手の防御力を下げるんだったか。

 

 

「良い技使ってくるじゃねえか、技博士!」

 

 

「まだまだ行くぜ! ブレイブバード!!!」

 

 

「三秒後だ! 炎の渦!」

 

 

 さっきのブレイククローとは比にならない勢いでコータスに突撃してくる。タイミングを測りながら、丁度直撃する直前で炎の渦で包囲した。

 

 

 が、一つ計算違いが起きる。

 

 

「突っ込め!!!」

 

 

 炎の渦なんて知らないと言わんばかりに包囲を突き抜けてコータスへブレイブバードを直撃させた。無論ウォーグルもダメージは食らったはずだが、それ以上に痛手を負ったのは明らか。

 

 

「キバナ! 良いことを教えてやるぜ! ライターの火ってのはゆっくり近付けるから熱いんだ! 自分でやってみるとわかるんだが、一瞬で指を通過させると熱くも何ともないんだぜ!」

 

 

「ハハッ! 理屈はわかるがそれで炎の渦を突破するとはな! 流石に初めての経験だ!」

 

 

「そうかい! じゃあ次、インファイトだ!!!」

 

 

 ウォーグルは次は正面からではなく全方位からコータスを滅多打ちにする。このままじゃジリ貧。一方的に体力を削られる一方だ!

 

 

 だが、今のはブレイブバードで良かったと思うぜ! 高速移動ブレイククローブレイブバードと来てみすみす最後の技を教えるのは、技研究を生業にしてる博士にするとデカいミスだろ!

 

 

 インファイトは色んな場所から殴りつけているだけでポケモン自身にそれ程速度は無い。

 

 

 だからこそ、さっきククイ博士が自分で言った炎の渦が生きる!

 

 

「コータス! 自分とウォーグルの周りに炎の渦だ!」

 

 

「ウォーグル!」

 

 

 さあどうする。炎の渦が完成する前に物理耐久が高いコータスを仕留めることは出来ない。その場から逃げようにも速さが足りない。それでも逃げるため高速移動をすればその後自身の速さに苦しむのはウォーグル自身。

 

 

 ここまで耐えたかいがあった! この状況じゃ完璧に詰み──

 

 

 

 

 

「──ウォーグル! 怖い顔だ!!!」

 

 

 

 

 

 オレさまはククイ博士の指示に、思わずポカンと口を開けた。

 

 

 待て、何でそんな指示が出来る。

 

 

 

 

 

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