魔法使いと勇者と竜の国   作:enz

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魔法科学の都

 とある村で魔族の襲撃を退けた後、私達は、帝国4将の一人、アンプ=リファイアさんに帝国の東側へ連れて行って貰えることになりました。

 帝国の技術の粋が集められている東側は、帝国民以外の立ち入りに関して、かなり厳重な警戒を行っています。

 いざとなれば、忍びこむなり、強行突破するなり、考えていたので、私達は運がよかったです。

「そういえば、二人は、どういう関係なのさ?」

 突然でした。

 この馬車には、私とフォルテ、そして、アンプ=リファイアさんが乗っています。

 一応、見張りという名目らしいですが、ほぼ談笑をしていました。

「和平の使者と、その護衛です」

「本当? そっちは、曲がりなりにもグレイス家の人間なんだから、護衛なんていらないでしょ」

「でも、本当なんだよなー。カノンは、戦闘面でも頼りになるけど、旅の勝手をよく知ってるから、すごく頼りになるぞ」

 褒められてしまいました。

 何故か少しむず痒いです。

「まぁ、旅に関して、フィーネの右に出るものは、少ないだろうね」

 値踏みするような視線を感じました。帝国には、ある程度のフィーネ=グリードという存在に関しての知識があるのかもしれません。

「そ・れ・で、二人は、どいいう関係なのさ?」

 何故か繰り返されました。

 私は、首をかしげながら答えます。

「ですから、和平の――」

「違う違う。そういう公の関係じゃなくて、個人的な関係のハ・ナ・シ」

 私の唇寸前のことろで、人差し指を立てられ、質問の言い直しをされました。

 アンプ=リファイアさんは、何かを勘ぐっているのでしょう。

「何か期待しているようですが、この旅で初めて会ったので、個人的な関係は、一切ありません」

「本当かい?」

 そう言いながら、フォルテの方へ視線を移動しています。随分と蠱惑的な仕草です。

「ああ、本当だ。ちょっとは仲良く慣れたと思ってるけどな」

「そうかい。なら、これからに期待だねぇ」

 何に期待するのかはわかりませんが、この依頼の間は、一緒にいることになるでしょう。

 私達を見比べた後に、謎の一言を言われました。

「ふふ、苦労しそうだね」

 フォルテは苦笑いしていますが、意味がわかりません。

 苦労しているのは私です。

 

 

 

 

 私達は、帝国の東側へと入るための関所に到着しました。

 アンプ=リファイアさんは、手続きを済ませると、さっさと帰ってしまいましたが、その御蔭で、少し待つだけで関所を抜けられました。

 手持ちのお金の内、まだ帝国の通貨に変えていなかった分も変えることにしました。ここから先は、旅人の数が減るので、王国の金貨では足元を見られる可能性があるからです。

「それで、これからどうやって向かうんだ?」

「どうやっても何も、普通に街道を通ってクレモナまで行くだけです」

 クレモナまで来いというのですから、行くしかありません。

 関所には、簡易地図があったので、それを頼りにしましょう。

「フォルテ、あの地図を大体でいいので、覚えておいてください。流石にここでは写せません」

「ああ、配置くらいでいいか?」

「ええ、配置だけでいいです」

 配置さえ覚えておけば、相対的な位置や、おおよその距離を把握することが出来ます。

 ここからは、私にとっても未知の領域です。ですが、魔法設備の本場なので、期待しています。ええ、何にとは言いません。

「それじゃあ、大体覚えたし、どうやって向かう?」

「どうも何も、街道沿いに行って、近くの街や村で宿をとるしかありません」

「まぁそうだな。それじゃ、歩くか」

 フォルテと並んで歩き始めます。この付近では、関所の影響もあって、魔獣の出現率が低くなっています。ですから、安心して歩けますが、その反面、護衛の必要性が薄いので、商人の荷車に乗せてもらえる可能性が低いのが難点です。

 方角としては、南へ向かうわけですが、少し東寄りに向かう必要があります。

 

 

 

 

 何事も無く一日が過ぎ、近くの街で宿を探すことになりました。

 まだ先は長いので、体力を使いすぎるわけにはいきません。

「安くても魔法設備のお風呂が付いているとは、流石は帝国です。やはり、旅の拠点は帝国にするべきでしょうか」

 私が真剣に悩んでいると、フォルテが何やら慌てています。

「待て待て、同盟を結べれば、こういう一般的な技術は、王国も発達するはずだから、風呂の発展を楽しめるかもしれないぞ」

「ふむふむ、それもありですね」

 たまにはいいことを言います。では、ここにいられる間に、楽しんでおいて、考えることにしましょう。

 そして、夜が更け、朝日が昇りました。

 魔学都市クレモナへ向かいます。

 それにしても、この街ですら、他の都市とは一線を画しています。明らかに魔法設備の質が変わりました。それはもう劇的です。

 王国で見たお風呂がおもちゃに見えるほどです。

 数々の興味を惹く魔法設備や魔法科学の産物に名残惜しさを感じながら先へ進みます。

 そして、同じようなことを繰り返し、数日が経過したある日、街道で、大きな別れ道に行き着きました。

「この辺りって、古代遺跡が多いんだよな」

「はい、そのはずです。帝国が管理しているので、入れないとは思いますが」

 関所の地図にもはっきりと載っていました。

 古代文明の遺跡には、現在を遥かに超える技術が存在していた、と言われています。

 ミスリルやオリハルコンも、古代遺跡から発掘されていますが、その製造方法は、今でも不明です。私が立ち入る機会は殆ど無いので、調べようがないですが、一度は行ってみたいものです。

「なぁ、あそこに休憩出来るところがあるぞ」

 フォルテの示す方を見ると、小さな壁のない小屋のような物があり、その中には椅子と机があります。

「フォルテ、休みたいから言い出したのですか?」

「えっと……」

 目を逸らされました。

「構いません、ちょうどいいですから、少し休みましょう」

 私達は、休憩所と思われる場所へと足を向けました。

「なぁ、先客がいるな」

 フォルテに言われ、目を凝らしてみると、確かに、誰かが座っているようです。

 私達は、その場所へ入ると、先客の方が、声をかけてきました。

「こんにちは」

「こんにちは。ここって、休憩所か何かですか?」

 過ごしやすそうな場所でした。

 よく見ると、何か書いていたようです。

「ええ、そうですよ。ここは気持ちいいですよね」

 茶色い髪を一本の三つ編みにした少女は、私と同じか、少し上くらいの年齢のようです。

 服装は、帝国の――。

「帝国軍の方ですか?」

 私は、恐る恐る聞きました。何故なら、その服装が、赤を基調としている帝国軍の物だったからです。

 ちなみに、フォルテは気付いていないようで、のんきにしています。

「ええ、所属は秘密です。聞き出したら、後悔すると思うので、聞かないで下さいね」

「は、はい」

「そうやって納得してもらえると助かります。若いせいで聞き出そうとする人が多いんですよ。私は、デノン=スピーカと言います」

 一瞬名乗るべきか迷いましたが、ここで名乗らないのは、要らぬ誤解を招くと判断しました。

「私は、フィーネ=カノン=グリードと言います。こちらは、フォルテです」

「よろしく」

 私が名乗った瞬間、少し目が細くなった気がしました。やはり、フィーネと言うのは、帝国では何か引っかかるのでしょう。

「相手が軍人だからって気をはらなくていいですよ、歳も近そうですし。ああ、そうだ、デノンって呼んでくれて構いませんよ」

「軍人さんを相手にそんな気安くは呼べませんよ。それに、私達は、もう行きますから」

 フォルテが、何かを言いそうになりましたが、口を開く前に黙らせました。

 この人と長くいることは、良くない可能性があります。

「気にしないでください。ところで、お二人は何処へ向かっているのですか?」

「ああ、クレモナへ向かってるんだ」

 今度は口を塞げませんでした。正直に言って警戒を抱かせてしまうと、不利益になりかねません。

「クレモナですか。私は、クレモナから来たんです。少し待って貰えれば、お送りしますよ」

 そう言って、デノンさんは、近くを指さしました。そこには、太い車輪が付いた、軍用と思われる赤い荷車がありました。ですが、長距離を移動する際には、馬に引かせるのが普通です。けれど、その馬が見当たりません。馬の代わりに、同じく太い車輪のようなものが三つ付いた赤い何かがあります。

 私達は、それが何なのかわからず、首をかしげていると、デノンさんが、何か一人で納得しています。

「関所の外から来られたんですね。でしたら、アレについて詳しくはお教えできませんが、アレに乗れば、日暮れ前には着けるはずです」

 どうやら、乗り物のようです。

 順調に行けば、近くの街で一泊し、明日の昼ごろには着くと思っていたのですが、今がお昼ごろとはいえ、凄い速度です。恐らくは、魔法科学の産物でしょう。

「何かかっこいいな」

 フォルテの呑気な発言に、デノンさんは気を良くしたようで、喜んでいる気配があります。

「そうですよね、凄いんですよアレは。詳しく説明出来ないのが悔しいです」

 デノンさんは、目を輝かせています。

 少し眺めていると、アレについて説明したいようで、体が小刻みに震えています。

「このまま長居をして口をすべらせるようなことになっては大変ですので、やはり、失礼します」

「ダメです!アレについて語れないのですから、その性能を味わってもらいます」

 ものすごく息を荒らげています。どうやら、あの赤い乗り物に、相当入れ込んでいるようです。

 その証拠に、いつの間にか私の手を取られていました。

 フォルテも、私が気付けなかったと理解したようで、驚いています。

「アレって、前のが馬に代わりみたいだけど、荷車に二人乗れるのか?」

 よく見ると、大量の荷物が積んであるので、二人が乗るのは、大変そうに思えます。

「ご心配なく。それなりの工夫があるので、余裕です。それに、拒否したら指名手配しますよ」

 最後に笑って脅迫されてしまいました。ですが、とても楽しそうです。逃げ道も完全に塞がれたので、大人しくしようと思います。

 そもそも、予定よりも早くクレモナに行けるのですから、良しとしましょう。

「では、乗せてもらうことにしますが、いつ頃出発しますか?」

「そうですね。実際、ただ休んでいただけなので、今すぐにでも行けますよ」

 そう言うと、デノンさんが、アレの方へ向かって行きました。

 よく見ると、馬の代わりの何かに、いくつかの核石が付いています。恐らくは、そこに魔力を供給することによって、操作するのでしょう。

「お二人共、早く着て下さい。出発しますよ」

 呼ばれてしまったので、もう行くしかありません。

 後ろ側は、革張りの座席があり、座り心地はいいです。二人で座ってもゆったりしています。

「座りましたね。それでは出発します」

 デノンさんが、馬の代わりに跨ると、両側に出ている棒を掴み、核石に練り上げた純粋な魔力を流し込みました。それと同時に、魔法設備の馬が、震えだし、太い車輪が、独りでに動き出しました。

 私達が驚いていると、声が聞こえました。

「こういった設備以外の物は、魔法機って呼んでるんですよ。設備って呼ぶと、違和感がありますから」

 確かに、設備ではありませんね。

 この声は、デノンさんが直接話しているというよりも、『言の葉(ことのは)』を再現できる魔法設備……いえ、魔法機によるものでしょう。

「手すりに付いている核石に魔力を込めながら話せば、こちらにも言葉が聞こえるので、何かあったら言って下さいね」

 確かにありました。詳しい仕組みはわかりませんが、大した技術力です。

「それでは、遠慮なく使わせてもらいます」

 私がしっかりと使いこなしたのを確認すると、後ろを向きながら手を降ってきます。

 操作しているのはデノンさんですから、よそ見をされると怖いです。

 しばらくすると、感じた恐怖が現実の物となりました。

 少し街道から外れ、ちょっとした石に乗り上げたようです。

 デノンさんは、すぐに前へと向き直り、操作し直しています。

 ですが、私は不覚にもふらつき、小さく悲鳴を上げてしまいました。それは、フォルテにも聞かれていたようです。その証拠に。

「大丈夫か?」

 そう言われ、肩を抱かれ、フォルテに寄り掛かる形になってしまいました。ですが、何故か悪い気はしません。それどころか、少し安心している私がいます。

 フォルテの体に耳が当たり、微かに鼓動が聞こえます。その音に耳を傾けていると、心地良い気分になってきました。

「そうそう、鏡が付いていて、後ろも見えるので、盛り上がらないで下さいね」

 突然デノンさんの声が聞こえました。

 私は、すぐに離れ、居住まいを正します。自分でも、顔が赤くなっているのがわかります。

 横目でフォルテを見ると、笑っているだけです。私だけが恥ずかしい思いをしているのは、不公平な気がします。

 私のツリ目でフォルテを睨みつけますが、顔が赤いせいか、大して効果がないようです。

「お礼は言いませんから」

「別にいいよ」

 軽く返されてしまったのが、とても悔しいです。

「聞き忘れてましたが、お二人は、クレモナに何の用があるんですか? あそこは、観光資源に乏しいと思いますよ」

 私達は、返答に迷っています。正直に言ったところで信じてもらえないでしょうし、変な疑いを持たれても困ります。

 ならば、この関所の内側に対する無知を利用します。

「クレモナは、魔法設備において、発展が凄いらしいので、凄いお風呂があるって聞いたんですよ。ぜひ見たくて」

 私は、熱意のある眼差しを向けながら力説しました。

 勿論、これは相手を欺くためのものです。他意はありません。ですが、フォルテは、私を訝しむ目で見ています。

 まったく、そのせいで嘘を見破られたらどうするつもりでしょうか。

「お風呂ですか。それなら、クレモナよりも、付近にあるベップウとか、ノボリベーツとかの方がいい温泉がありますよ」

 少し気になる言葉を聞きました。

「温泉ですか?」

「ええ、かなり東の方の国にあるお風呂の形式なんですが、温度の高い地下水を組み上げて、それをお風呂のお湯にするんです。あれは、いいものですよ」

 それは、もう魔法設備としてのお風呂では無い気もしますが、いいお風呂なら、入ってみたいものです。

 私には、お風呂を作業としか考えない人が信じられません。

「そうですか。では、クレモナに着いてから考えることにします」

 私達は、そのまま魔法機に乗っていると、本当に、夕暮れ前に、クレモナへと到着しました。

「さて、お二人共、着きましたよ。この都市には、軍事機密などもあるので、ちょっと書類に書いてもらうことがあるので、着てくれますか?」

 一応は質問の形を取っていますが、その顔には、拒否は許さないという思いが浮かんでいます。とはいえ、必要なことなら、断る気はありません。

 

 

 

 

 私達は、デノンさんに案内され、建物の中を進んでいます。デノンさんの乗り物を止める場所からなので、何処へ向かっているかはわかりませんが、かなりの距離を歩いている気がします。フォルテも同じ考えのようで、お互いに首をかしげていますが、デノンさんに聞いても、「すぐですよ」とだけ言われてしまうので、諦めるしかありません。

 そうして、しばらく歩き続けると、一枚の扉の前に到着しました。

「お二人共、着きましたよ」

 デノンさんは、他の説明を一切せず、扉の中へ入るように促します。

 中は、受付というよりは、誰かの書斎という雰囲気です。

 一箇所ある窓のそばに、つなぎを着た男の人がいます。窓の外を見ているようで、どんな人かはわかりません。

「待っていたよ。フォルテ=グレイス、カノン=フェアリ」

 私達は、突然名前を呼ばれ、身構えてしまいました。私は、帝国に入ってからは、フィーネ=カノン=グリードとしか名乗っていません。にも関わらず、この人は、カノン=フェアリと呼びました。それが何を意味するのか考え、私は、一つの結論に達しました。

「オメガ=ウーファーさんですね」

 私は、体を戻しつつ聞きました。

 フォルテの名前と私の前の名前を知っている可能性のある人は、デュオさんから連絡を貰っている人だけのはずです。

「どうやら、頭の回転はいいようだな」

 フォルテが理解をしていないようですが、今は触れないで起きましょう。

「今はフィーネ=カノン=グリードと名乗っています。出来れば、そう呼んで下さい」

「そうだったか。それで、フォルテ=グレイス、用件を聞こうか」

 和平の使者はフォルテですから、当然のことです。ですが、未だに自体が飲み込めていないようで、口を開けずにいます。

 けれど、その前に横槍が入りました。

「オメガ長官、その話し方、何とかなりませんか?」

 デノンさんが口を開いた途端に、オメガ=ウーファーさんの雰囲気が変わりました。

「いやー、折角だから決めてみたんだが、だめか。でも、出来る男風だったろ」

「オメガ長官には、そんなのは似合いません」

「そりゃ残念だ」

 オメガ=ウーファーさんは、咳払いをし、仕切りなおすと、私達の方へ向き直り、話し始めました。

「ワシがオメガ=ウーファーだ。まぁ、好きに呼んでくれ、お前さん達のことは、デュオ=グレイスから聞いてるぞ」

 オメガ長官というよりは、おやっさんという感じのする人です。けれど、初対面でおやっさんは、失礼だと思うので、オメガさんと呼ぶことにしましょう。

 オメガさんの来ているのはつなぎと言う作業着ですが、肩には、帝国の階級章が付いています。4将の一人というのは、間違いないようです。

「なるほどな。なら話は早い。王国は、帝国との同盟を望んでいる。そのために協力してくれないか?」

 オメガさんの言葉を聞き、理解したようで、用件を口にすることが出来たようです。

「あー、それな、まさか本当に関所を通ってくるとは思ってなくてな、方法を考えてないんだ」

 それはどういうことでしょうか。考えがあるから、来たら手伝うということではなかったようです。

「ですが、私達はオメガさんの言葉を信じてここまで来ました。ですが、それは嘘だったのですか……」

 オメガさんがそんなことを言わなければ、デュオさんが依頼をすることはありませんでした。それはつまり、国境で魔族と戦う必要も無かったということです。

 そう考えると、頭が真っ白になり、私は杖を握り絞めていました。

「あー、すまんすまん、女帝であるシンセに会わせる方法は、あるんだが、わしからどうやって口添えをするかが、決まってないんだ」

「それは、会えるってことだな」

 フォルテは、話の内容を理解しているようです。それに引き換え、私は、頭が真っ白になっているせいで、理解が出来ませんでした。

「ああ、会わせることは出来る。だが、確実に同盟を結ぶ以前に、お前達が無事に帰れる保証すらないぞ」

 オメガさんの言葉を聞くや否や、フォルテは、私の肩に手を回し、引き寄せてきました。

「俺を女帝に会わせるために力を尽くしてくれた人がいるんだ。そっから先は、自分で考えるさ」

 私は、ただフォルテの顔を眺めることしか出来ませんでした。

 今までこういった交渉には向いていないと思っていたので、自分で方法を考えようとするとは、予想外です。

「そうかい。なら、そのために手伝ってもらおうか」

「手伝うって、何をすればいいんだ?」

 フォルテの問いかけに対し、軽く返事をした二人は、何やら準備をしています。

 そして、机の上に、地図を広げました。

「実は、今研究している物の資料が足りなくてな。それを取りに行って欲しいんだ。詳し話は、デノンから頼む」

「はい。目的地は、古代遺跡の一つなんですが、ベップウという街にあります」

 そういいながら、古代遺跡の場所を指し示しました。私としては、ベップウという街に興味があります。

「今までに何度も資料を持ち帰っているんですが、資料の数が膨大すぎて、終わらない内に、魔獣が住み着いてしまったので、護衛をして欲しいんです」

 何を研究しているかまでは、教えてもらえませんでしたが、帝国のためであり、間接的には王国のためになるものだと聞かされました。もっとも、私達は部外者であるため、研究の中身を知らされるわけがありません。けれど、一つだけ、確認しなければいけないことがあります。

「その研究ですが、王国の不利益になることですか?」

 私達は、王国の人間として来ています。つまり、それの研究の結果によって、王国を危険に晒すことになるのであれば、手伝うわけにはいきません。

「それは、私の口からは説明できないので、オメガ長官、お願いします」

「対魔族用の魔法設備だ。最近は、襲撃の頻度が上がってな、何とかしようと思い、魔族を近寄らせないための設備を研究しているんだ。それに、資料の確保が終われば、古代遺跡の調査に回している人員も、防衛に回せるから、資料の確保が急務となっている。それに、今も、人員が足りないのに、北側に回しているせいで、護衛にも人手をさけないんだ」

 古代遺跡に住み着いている魔獣は、強い個体ではないそうですが、帝国軍は、活発になった魔族の襲撃の対処に手一杯で、古代遺跡に回している残りの人員も、対魔族用に割きたいようです。

「近寄らせないための設備ですか。つまり、防衛用の設備だと思っていいですか?」

 私の問に対して、オメガさんは、私の目を見たまま、笑いかけてきました。答えを口には出せないということでしょう。ですが、否定とは取れない反応ですから、今はオメガさんの言葉を信じるしかありません。

「王国の害にならないならそれでいい、任せてくれ」

「そうですね。それでしたら断る内容でもありませんし」

 私達は、護衛を引き受けることにしました。

 女帝シンセ=ドラムスに会うためには、これしか方法がないのですから、他の選択肢はありません。

「ありがとうございます。出発は明日になるので、宿はこちらで手配します。バイクでの移動になるので、すぐに着きますから安心してください」

 地図を見る限り、ベップウという街は、クレモナから徒歩で一日かかる程の距離です。ですが、それを短時間で移動するバイクというのは、馬よりも早いようです。

「ああ、バイクというのは、乗ってきたやつですよ」

 訂正、既に体感していました。

「あれか。また乗れるんなら、楽しみだ」

 フォルテは無邪気に笑っています。ですが、私は反対に顔を赤くしてしまいました。

 全てはフォルテのせいです。

「そ……それでは、宿へ案内してください。遺跡の探索もあるんですから、朝は早いはずです。早く寝ましょう」

 私は、一人先に部屋を出ました。ですが、道がわからず、すぐに立ち尽くしてしまいました。

 後から来たフォルテとデノンさんに笑われた気がしますが、振り向かない限り視界に入らないので、そんな事実はありません。

 

 

 

 

 私達は、同じ宿の隣り合った二部屋を貸してもらいました。さらに、調査の手伝いをするということで、代金は、帝国持ちです。

 クレモナのお風呂は、帝国の宿にある一般的なお風呂と同じでしたが、ゆっくり堪能することが出来ました。

 それもこれも、この旅において、ある程度の目処がたったからでしょう。

 帝国の関所内は、魔獣の数が少ないらしいので、遺跡に潜んでいる魔獣も大したことなないはずです。




こんばんは

語り手が全く知らないものに関して、どうやって説明させるべきか……
結局、似たようなものがなければ、「何か」としか言いようがない気がします。

それでは、今回もお付き合いいただき、ありがとうございました。
これからも、お付き合いいただけると、幸いです。
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