魔法使いと勇者と竜の国   作:enz

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魔族それぞれ

 私とフォルテは、魔族の国へと侵入しました。

 そして、指定された場所の途中にある村に立ち寄ろうとしています。

「カノン、一ついいか?」

「なんですか?」

「あの村にいるのは、ほとんどが魔族だ。俺達は目立つだろうし、歓迎されるわけがない。だけど、絶対に敵対しないでくれ。始めで躓けば、それは後に影響する。約束出来るか?」

 そういうことですか。確かに、私の目的は、アインと魔王です。ならば、ここで騒ぎを起こすのは、得策ではありません。

「大丈夫ですよ。九近衛(ここのえ)が出てこない限り、暴れませんよ」

「信じるからな」

 フォルテが正面から見つめてきました。

 こうされると、なぜだか頑張ろうと思えます。

「ところで、今日はあの村で過ごすにしても、いかに目立たないかが重要ですね。この国では、人間というだけで目立ちますし。それに、ブラッキーはどうするんですか?」

「ああ、先にブラッキーのことだけど、俺とブラッキーは、竜痕で繋がってるんだ。だから、近くに隠れてて貰もらう。次に、目立たない方法だけど、ちょっと試したいことがあるんだ。とりあえず、俺の話に合わせてくれ」

 竜騎士と竜はそういうものなのでしょう。フォルテがそう言う以上、ブラッキーについては、任せるしかありません。

 それよりも、試したいことが気になります。

「どんな話ですか?」

「事前に話すと、演技臭くなるから、ぶっつけ本番だ」

 確かに、一利ありますが、どんな内容かわからないので、何とも言いがたいです。

 とりあえずは、どんな話を振られても、対応しきるしかありません。

 そして、最初の村に足を踏み入れました。

 何だが、数多くの視線を感じます。

 恐る恐る村を歩くと、声をかけられました。

「人間がこの村に何の用だ?」

 かなりがたいのいい魔族です。けれど、白い髭を蓄えており、相当な年齢なのでしょう。

「二人で旅をしていて、用というよりは、通りかかっただけなんだ」

「この村には何もないぞ」

「一晩泊めてくれれば、明日には出て行くよ」

 そういいながらフォルテは、私を背後に隠そうとするので、自然とフォルテの影に隠れるようにしました。

 白い髭の魔族は、そんな私を一瞥しただけで、フォルテへと視線を戻しました。

「何も無いと言ったはずだ」

「まいったな、別に宿じゃなくてもいいんだ、屋根さえあればいい。どこか泊まれないか?」

 旅の非常食は持っているので、しばらくであれば、食事には困りません。

 今、最も必要はのは、この寒さを凌ぐための場所です。

「仕方ない、ワシの家に来い。見える範囲で野宿されて死んでも目覚めが悪い。それに、誰かの家で悪さを働かれるわけにはいかない」

「ありがとな」

 一応は泊まる場所を確保出来たようです。

 私達は、白い髭の魔族の後に付いて行くことになりました。

「ワシは、この村で村長をしている」

「そうなのか。俺は」

「いや、いい。人間の名に興味はない」

 自己紹介を拒否されてしまいました。

 その結果、私達は無言で歩き続けることになりました。

 そして、村長の家に着きました。

「ここがワシの家だ。そして、お前達に貸すのは、あそこだ」

 そうして示された場所は、物置のような場所です。

「物置か?」

「もう使ってない馬小屋だ。中にあるものは好きにしていい」

「あの、ありがとうございます」

「ふん、村のためだ」

 そう言うと、村長は家に入って行きました。

 ですが、一応お礼を言うことは出来ました。

「さ、カノン、中に入ろう。ここに立っていても迷惑になる」

 フォルテに連れられ、元馬小屋に入りました。

 中には、ところどころに藁が残っています。ただ、他に道具らしきものが見当たりません。

「もう使ってないってことは、馬を手放したんでしょうか?」

「多分そうだろ。まぁ、詳しいことはわからないし、わかっても何も出来ないけどな」

 それもそうです。私達は、完全に部外者ですから。

「それにしても、随分寂しい村ですね。魔族の年齢なんてわかりませんが、若そうな人がいませんでした」

「ああ、王国でも、魔族の国の内情なんて伝わってこないしな」

 そんな話をしていると、足音が聞こえてきました。

「お前達、これでも食ってさっさと寝ろ」

「わざわざありがとうございます」

「ありがとうな」

 私は、すぐに受け取りました。

 貰った食べ物をよく見ると、芋のような何かです。

「明日の朝にお前達が冷たくなっていると、目覚めが悪いからな」

 そう言い残して村長が元馬小屋を出て行きました。

 この村長は、いい魔族なのかもしれません。

「村長って優しいな」

「ええ、親切を無駄にしないように早く食べましょう」

 こうして、村長の貰った食べ物を食べ、二人で寄り添いながら夜を過ごしました。

 防寒仕様のマントのお陰か、隣にいるフォルテのお陰かはわかりませんが、ほのかな暖かさを感じていました。

 そして、次の日の朝、村長にお礼を言い、村を出ていこうとすると、不自然なほど人の良さそうな顔をした魔族が村の出口に立っていました。

「あんた達、何処へ向かうんだい?」

 私達を待っていたようです。

「何処へって言われても、二人で当て所のない旅なんだ」

 そう言ってフォルテが私の肩を抱いて引き寄せてきました。

 少し体を強張らせてしまいましたが、すぐに力を抜きました。

 されるがままと言うと、気恥ずかしいですが、そんな感じです。

 恥ずかしさを我慢しながら相手の魔族をよく見ると、話し好きそうな雰囲気を纏った女性の魔族です。ですが、妙な違和感を覚えます。

「何だい何だい、わけありかい。良ければ、親戚がやってる宿を紹介するよ。数日であれば、泊めてあげられるし、働きたいのなら、口利きしてやるよ」

 フォルテの言う通りの旅人にとっては、願ってもないことです。

「それはありがたいんだが、あっちの方に行こうと思ってるんだ」

 そういいながら、フォルテは空いている手で次の目的地がある方向を指し示しました。

「そっちなら、ちょうどいい、今言った宿は、あっちにある街にあるんだよ。せっかくだ連れてってあげるよ」

 フォルテは、私の方を見ると、顔を寄せてきました。

「せっかくだし、送ってもらうか?」

「えっと、フォルテがいいのなら。ただ、道中も含めて、注意したほうがいいです」

 私の答えを聞くと、フォルテは首を立てに振り、魔族の方へ向き直りました。

「それじゃあ頼むよ」

「なら、話は決まりだ。着いておいで」

 私達は、魔族に着いて行くと、馬と荷車がありました。

 荷車に乗るよう促されたので、私達は荷車に乗り、魔族に次の街へ連れて行ってもらうことになりました。

 出発直前に、フォルテが竜痕の位置に手を当て、何かを呟いていました。

 恐らくは、ブラッキーを呼んだのでしょう。

 魔族は、それに気付く様子もなく、馬を走らせました。

 

 

 

 

 途中、何か起こることもなく、まだ明るいうちに次の街に着きました。

「さ、二人共着いたよ。宿に案内するから、着いておいで」

 大人しく着いて行くと、赤い外観の派手な宿が見えてきました。

 魔族の国では、古代語が未だに残っているので、文字の解読に時間がかかります。

 そのせいもあり、移動しながら看板を読むことが出来ませんでした。

 それにしても、無駄に派手な宿です。

 宿に入ると、食堂も併設しているのか、多くの魔族が席についています。

「二人共、ここで待ってておくれ。今話をつけてくるから」

 そう言うと、宿の人に何かを話しかけ、奥へと向かって行きました。

「はい、二名様ですね。それではこちらへ」

「え、あ、はい」

 私達は、席へと案内されました。

「結局、人間も魔族も、人それぞれなんだな」

「ええ、そうですね」

 私は、周囲の視線が気になりました。

 私達の方を向き、にやついている魔族が多いです。

 あの視線……、どこかで向けられた覚えがあります。

 そんなことを考えていると、料理が運ばれてきました。

「せっかくだし、冷めないうちに食べようぜ」

「はい、そうですね」

 料理に手を付けても、違和感を覚えることはありませんでした。

 料理自体には、何もないようです。ですが、やはり気になることがあります。

 確か、師匠に教えてもらったことがあったはずです。

「二人共、お待たせ」

 しばらくして、私達をここに案内した魔族が戻ってきました。

「部屋の確保は出来たよ。それで、どうする? ここで働くかい?」

「魅力的な提案なんだけど、今回は遠慮するよ。まずは、二人でいろんなものを見たいんだ」

「そうかい。まぁ、2・3日は泊まれるようにしたから、遠慮しないでおくれ。それじゃあ、荷物を部屋に持って行っておくよ」

「いえ、そこまで迷惑をかけるわけにはいかないので、私達で持ちます」

 そう、確か、旅人を食い物にするような人達の話でした。

「そうかい。まぁ、私も今日はここに泊まるから、何かあったら声をかけておくれ」

「はい、是非そうさせてもらいます」

 こうして、私達を連れてきた魔族は、奥へと引き返しました。

「ほんと、いい魔族だな」

「……ええ、そうですね」

 一つ、ほぼ確信していますが、証拠がありません。

 私は、席を立つと、店の方を呼び止めました。

「すみません、お手洗いはどちらですか?」

「ああ、あっちだよ。あの看板を頼りに行けば、すぐだよ」

 私は、店の方にお礼を言って、看板を頼りに進みました。

 途中、妙な匂いが充満していることに気付き、さらに、あちらこちらの扉の影から、艶やかな女性の魔族が見え隠れしています。

 どうやら、当たりのようです。

 私は、戻ってすぐに、周りに聞こえないような声でフォルテに問いかけました。

「フォルテ、帝国の時以外に、旅をしたことはありますか?」

「ん? 騎士学校の演習とかなら行ったよ」

「他には? 個人的にとか、友達ととか」

「いや、ないよ。どうしたんだ?」

 どうやら、フォルテは旅というものを知識としてしか知らないようです。

 そういえば、帝国では、旅に関してはあまり役に立ちませんでしたね。

「フォルテ、次は私に合わせて下さい」

 それなりにお腹も膨れたので、善意だけ受け取ることにしましょう。

 私は、店の方に手を振り、こちらに気付いたところで話しかけました。

「すみません。魔族の街は始めてなので、ちょっと街を見てきてもいいですか?」

「いいですよ。暗くなる前には戻ってきて下さいね」

「はい、勿論です。フォルテ、行きましょう」

 私は、自然な動作でフォルテの手を取ると、フォルテの腕に抱きつきながら街を歩きました。

 こうした方が、小声で話せるからです。

 決して、こうしたかったわけではありません。

「フォルテ、ブラッキーを呼べますか?」

「ああ、呼べるけど、どうするんだ?」

 フォルテの顔が少し赤くなっています。

 何か余計なことを考えているから、周囲に目が向いていないのでしょう。

 もう少し捨て目を使って欲しいです。

「順序立てて説明します。まず、今、つけられています。振り向かないで下さい」

 私がつけられていると言った瞬間、フォルテが振り向きそうになりました。気持ちはわかりますが、そんな不用心なことはやめて欲しいです。

「恐らく、宿の人でしょう。あの宿、何だと思います?」

 フォルテは少し考え込んでいますが、答えが出ないようです。

「人間側も、魔族側も、同じような建物を建てるんですね。遊郭ですよ、あれ」

 抱きついている腕が強張りました。予想外だったのでしょう。

「師匠に言われたことがあったんです。あからさまに親切過ぎる人は、絶対に信用しちゃいけないって」

「でも、あんな親切そうな魔族、見たこと無いぞ」

「見ず知らずの人に優しくする人なんて、怪しすぎます。本当の悪人というのは、そうやって何枚も猫をかぶっているものです」

「でも、本当にいい魔族だっているかもしれないだろ」

 フォルテは、いい魔族という存在を是が非でも信じたいようです。

「それは否定しません。でも、あんな宿をいくつも見たことがあります。女の二人旅って、結構狙われるんですよ。その手の知識は、最初に教えられたので、切り抜けてきましたけど。それに、あの魔族も、行動の全てが手馴れています。食堂の客も、私の方を見てにやついていました。そして、あの尾行です。これ以上、どんな証拠が必要ですか?」

「でも……」

 頑張って反論しようとしていますが、何も出来ずにいます。

「私が席を立った後、中を簡単に見てみたのですが、作りが普通の宿ではありませんでした」

「……仮に、カノンの言う通りだったとして、どうするんだ?」

 どうやら信じてくれたようです。そもそも、私がここで嘘をつく必要もありません。

「ブラッキーが飛べる範囲で、なるべく遠くの村か街まで飛びます」

 下手に逃げ出しても、相手には馬がありますから、馬で行ける範囲を超える必要があります。それには、ブラッキーに頼るしかありません。

「わかった。だけど、朝から飛んでたから、そこまで遠くへは行けないぞ」

「それでも馬よりは遠くへ行けます。なるべく急ぎましょう」

 フォルテは、目を閉じて少し集中すると、目を開いてこちらを向きました。

「向こうの外れに向かおう」

 下手に急ぐと、尾行している魔族に気付かれる可能性があるので、急ぎながらもゆっくりと移動しています。

 そして、目的の場所を視界に捉えると、ブラッキーが空を飛んでいます。

 私達は、顔を見合わせると、頷き一気に走りだしました。

 それと同時にブラッキーも降りてきます。

 後ろを振り返る余裕はありませんが、追いかけてくる気配があります。

 魔族の方が早いので、今は、尾行のために生じていた差を詰め切られないことが重要です。

「カノン」

 フォルテが一言言うと、私の肩と膝の裏に手を回し、持ち上げました。

 そして、ブラッキーに向かって飛び上がっています。

 何とかして確保した視界の隅に、悔しそうな顔をしている魔族が見えました。

 それにしても、ブラッキーは大空を飛んでいるので、誰にも見えませんが、この体勢は恥ずかしいです。しかも、フォルテの後ろに座り直すには、一度降りる必要があるので、今の状況では不可能です。

 ときどきフォルテが私の方を向いて微笑みかけてきます。竜に乗るという点において、不安定な体勢であることを、不安がらせないためだと思います。

 それは、フォルテの考え通りに私を安心させています。

 フォルテも、私が安心したのを理解したのか、フォルテの前に、横向きに座る形になりました。

 けれど、フォルテに抱きかかえられているということはかわりません。

 安心しているので、次第に恥ずかしさが増しています。

「フォルテ、あの……、ブラッキーの様子はどうですか?」

「ちょっと疲れがみえるけど、まだしばらくは飛んでいられるはずだ。念のため、次に村か何かが見えたら、そこの近くで降りようと思う」

 確かに、かなり暗くなってきています。

 星明かりがあるとはいえ、魔族の国の状況がわからないので、早めに寝床を確保したいです。

 前方を向いて、目を凝らしていると、何やら明かりが見えました。

「フォルテ、恐らく村です」

「ああ、ちょっと明かりが見えるな」

 私は、ふとした拍子に、村から視線を外しました。そこには、とてつもないものがありました。

「な……、何ですか、あれ……」

「どうした?」

 フォルテは、気付いていないようです。

 そのため、私は、村の向こう側を指さしました。

 暗いので、微かにしか見えませんが、巨大なすり鉢状の穴が、いくつもあいています。

「何だ、あの穴……」

 あれに似たものを見たことがあります。

「帝国の北にある村に出来たやつに、似てますね」

 私達が到着する前に、魔族によって巨大な岩を落とされたときの穴に似ています。けれど、大きさはこちらの方が遥かに大きいです。

 しかも、一つではありません。同じような大きさの穴が、見渡す限りに存在します。

 これは、一体。

「とにかく、あの村に降りよう」

 私も異論はなく、村の手前に降り、そこから歩いて近付きました。

 ブラッキーは、そのまま何処かへ飛んでいきましたが、きっと安全な場所を探しているのでしょう。

「それで、どうします? 流石に、こんな時間に人間が来たら、警戒されますよ」

 先ほどの街からは、かなりの距離があるので、追いつかれる心配はありません。けれど、魔族の国は寒いので、野宿をするわけにもいきません。

「まぁ、誰か起きてることを願うだけだ」

 他に選択肢がないので、私達は村へ足を踏み入れました。

 しばらく歩いていると、不思議な気配を感じ取りました。

 魔族の気配に関しては、この国の中では、気配が飽和しているので、ほとんど理解出来ません。けれど、この気配だけは、確かに感じ取ることが出来ました。

「こんな時間に、珍しい人が来ましたね」

 気配のする方から声が聞こえ、姿を確認すると、男の魔族が歩いてきました。

 相手は細身ですが、魔族である以上、その膂力は私達を上回ります。

 そんな私の考えに気付きながらも、フォルテは警戒を解き、話し始めました。

「俺達は旅をしているんだ。ここに宿屋はないか?」

「あったとして、君達はこの国のお金を持っているのかい?」

 確かに、私達はこの国のお金を持っていません。

 けれど、あったとして、ということは、この村には宿屋がないようです。

「あの、何でもするので、泊めてもらえる場所はありませんか?」

「やれやれ、君のような女の子が、簡単に何でもするなんて言っちゃいけないよ」

 そんなところを訂正されるとは思いませんでした。

 けれど、何故かこの魔族に対して、警戒心を抱けなくなっていました。

「それじゃあ、どこか泊まれる場所はないか?」

「それなら、僕の家に来るといい。君達のような旅人は、歓迎するよ」

 今朝、あからさまに人の良さそうな顔をした魔族に騙されましたが、この魔族は、それとは違う雰囲気を纏っています。

 この不思議な気配のせいもあるのか、私は、この魔族を信用しているようです。

「この人を信じてもいい気がします」

「ああ、俺もそんな感じがする」

「それでは、お願いします」

「ああ、僕の家は、村外れにある。だから、君達の飛竜が一緒でも大丈夫だよ」

 私は息を呑みました。

 村から離れた位置に降りましたし、この暗闇です。

 とても飛竜が見えたとは思えません。

「そう警戒しないでくれ。僕は、目がいいんだ。それに、気配にも敏感でね」

 何やら視線を感じましたが、それも束の間、魔族が歩き始めました。

「ああ、すまない。俺は、フォルテだ」

「私は……、カノンです」

 わけありの旅人を演じているのですから、自己紹介はこのくらいがいいはずです。

 私達の自己紹介に反応して、足を止めた魔族は、私達の方を振り返しました。

「僕は、モデラートだ」

 それだけ言うと、また前を向き、歩き始めました。

 私達は、ただ無言で歩き続けました。

 そして、村外れに一件の家が立っています。

 どうやら、ここがモデラートさんの家のようです。

「随分と離れてるんだな」

「君も、こんな扱いを受けたんじゃないのか?」

 意味がわかりません。フォルテは貴族ですし、私は旅人なので、村の外れに住むようになるということがありませんでした。

 モデラートさんは、何か特別な事情でも抱えているのでしょうか。

 私達が疑問を露わにしていると、モデラートさんが何かを察したようです

「気にしないでくれ。それより、中に入ろう。今夜は冷える。飛竜は、あちらの小屋にでも入れておけばいい」

「ああ、わかった」

「ありがとうございます」

 私達が中に入ると、モデラートさんが手早く明かりを付け、何かの準備をしています。

 そして、私達に来るよう促すと、一つの扉の前で立ち止まりました。

「部屋が少なくてね。君達はここを使ってくれ」

「ありがとう」

「あの、その、ありがとうございます」

 フォルテに肩を抱かれ、引き寄せられました。

 少し驚きましたが、ここはフォルテに合わせるべきだと思い、顔を赤くしながらも声を出しました。

「荷物を置いたら来てくれ。簡単ですまないが、食事にしよう」

「でしたら、私達からも何か出します」

「いいんだ。大変だろうから、避けられる消費は避けるべきだ」

 少し、心が痛みました。今朝の魔族とは違い、まったく裏の感じられない魔族です。

 そんなモデラートさんを私達は、ただの旅人だと騙しているんですから。

 そして、お互いに詮索をしない時間が過ぎ、私達は、使うように言われた部屋で一つの問題に、頭を抱えています。

「ベットが一つだな」

「ええ、一つですね」

 そもそも広い部屋ではないので、片方が床で寝るにしても、荷物などが邪魔になってしまいます。

 けれど、流石に、フォルテと同じベットで寝るには、まだ抵抗があります。

「まぁ、俺が床で寝ればいいし、場所も工夫すれば確保出来るよ」

「でも、フォルテは前衛をするんですから、この先何があるかわからない以上、疲れを残すのはよくないです」

「いや、でも、このベット狭いし……」

「そ、それ、は……。あ、私が床で寝ればいいんですよ。私のほうが小さいですから、ゆったりできます」

 名案です。何故これを今まで思いつかなかったのでしょうか。

「それは駄目だ。カノンにそんな真似させられない」

 すぐに否定されてしまいました。ですが、他の方法がありません。

「それじゃあ、どうするっていうんですか」

「もう、お互いに床で寝れないなら、一つしかないよな」

 フォルテが何かを言おうとしていますが、口をわずかに動かすだけで、声が出てきていません。

「フォルテ、何を考えているんですか? いい案があるのなら、言って下さい」

「その、あのな、しっかり寝れる場所は、ベット一つだろ。なら、えっと、その……」

 じれったくなってきました。

 寝ることが出来る場所がベット一つだけなのですから……、あ……。

「あの、その……」

 私は今、顔を真赤にしているはずです。フォルテが言おうとしていることに気付いてしまったのですから。

「やっぱ、同じベットで寝るなんて駄目だよな。うん、駄目だ」

 そうですね。駄目ですよね。

「あの、ですね。それしか、方法が無いのでしたら」

 私は、今何を言ったのでしょうか。

 確か、他の方法にしようと言おうとしたはずですが……。

 ただ、この後のことは、秘密にします。




こんばんは

昔、とあるアニメで緑に宿に泊まるというのは~~という回をふと思い出し、そんな感じのことをやってみたくなりました。
とりあえず一言、歳がバレる

それと、今週末は時間が取れないので、次の投稿は、ちょっと日が空くと思います。

それでは、今回もお付き合いいただき、ありがとうございます。
これからもお付き合いいただけると、幸いです。
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