魔族の国にある少し大きな街でボイスの弟であるヘルツさんに会いました。
第一印象は、ひ弱そうでしたが、自分の進む道を決めた後は、頼もしく見えました。
その街で一晩過ごした後、私達は、次の目的地へ向かっています。
勿論、ブラッキーに乗ってます。
「フォルテ、本当に手は大丈夫何ですか?」
傷はあったのに血が出ていなかったので、ずっと気になっています。
「大丈夫だよ。もうふさがってるから」
何度も同じ答えを言われていますが、心配が拭えません。
「何かあったら、すぐに言って下さいね」
結局、こう言うしかありませんでした。
そして、次の目的地へ着きました。ただ、そこは何もない場所です。
地図によれば、ボイスが寄って欲しいといった場所の残りは、ここと、魔王ノイズのいる場所だけです。
「何もありませんね」
「ああ、何もないな」
「仕方ありませんし、もう行きましょうか」
私が、ブラッキーに近付こうとすると、強烈な気配を感じ取りました。
ほとんど反射的にその方向を見ましたが、すぐには何も見つけられません。
そんな私の行動を見ていたのか、フォルテが、急に私を抱きかかえ、そのまま大きく飛び退きました。
その瞬間、何かが降ってきました。
土埃が舞っていますが、それが晴れると、そこには一人の魔族がいました。
聞いていた通り、左手をアダマンタイトの義手にしています。
ただ、前とは違い、手にしている剣が、大柄な魔族の身の丈と同じくらいになっています。
「お前達、ここまで入り込み、
「アイン……」
そういえば、ボイスに戦えるよう頼んでいました。
上手くいくとは思っていませんでしたが、ここは、そのための場所のようです。
「カノン、『
そう言うと、フォルテはボイスへ向かって行きました。
しかも、竜痕の力を全開にしています。
詠唱を待つというよりも、全力で持ちこたえるという感じです。
なら、私も早く詠唱を終わらせなければいけません。
ただ、短縮詠唱ですぐに終わりますが、フォルテに触れる必要があるので、その機会を待たなければいけません。
「フォルテ、いつでも大丈夫です」
命素を多く使ってしまいますが、遅延発動の要領で、フォルテがこちらに来るまで待ちます。
ただ、このまま待っていても時間を無駄にするだけなので、他の魔法を詠唱します。
その分消費が激しいですが、しかたありません。
フォルテとアインが打ち合っているので、私が、隙を作るしかありません。
「『
遅延発動で、『戦いの調』を維持しているので、命素の消耗が一段と激しくなりましたが、普通の人よりも命素の量が多いので、ある程度の消耗は無視出来ます。
支配した風が、詠唱を始め、さらに、アインを風で握りつぶすように操作します。
これで倒せるとは思いませんが、動きを鈍らせることは出来るはずです。
そんな中、フォルテが一際大きな掛け声と共にアインを斬りつけました。
そして、その反動を利用し、私の方へ飛んできます。
私は、飛んできたフォルテの胸に手を当てました。
「『戦いの調』」
私の魔法が発動した瞬間、フォルテが、白い縁を持った黒い鱗の鎧を身に纏いました。
けれど、その鎧は、いつもより、多くの面積を覆っている気がします。
とても力強い姿ですが、とても不安に感じてしまいます。
「何をしようと無駄だ。この腕の礼に、きざんだお前をデュオ=グレイスに送ってやるよ」
「お前は、フィーネさんの仇だ、だから、俺がお前を斬る」
そうです。アインが、師匠の仇です。
他の九近衛は、ついでに過ぎません。
アインは、私の手で殺します。
まずは、周囲から波状攻撃をするために、詠唱の数を増やします。
それも、時間差を作り、攻撃が途絶えないようにします。
冷静に、冷酷に、ただ目的のために思考します。
命素は人より多いですし、魔法陣を使った魔法では、命素の消費は僅かです。
「フォルテ、自力で避けて下さい。『フレアランス』」
フォルテとは、何度も一緒に戦ったので、お互いの動きを予測できます。
当たらないように援護出来ますし、フォルテも、どこにいると当たるかわかっているはずです。
なので、私が作った炎の矢を、様々な軌道でアインへと向かわせました。
そして、フォルテはその全てを無駄のない動きで避けきりました。
それどころか、私の攻撃の隙間を縫って、アインにいくつもの細かい傷を付けています。
「カノン、無理するなよ」
「わかってます。『エアスライサー』」
今度は風の刃で攻撃します。
いくつかは迂回させ、ありとあらゆる方向から攻撃します。その上、使っているのが風なので、その姿は見えないはずです。
アインは、ある程度の確証を持って大剣を振るっているようで、大半の風の刃が斬り裂かれました。けれど、数発はアインへと到達し、斬りつけることが出来ました。
「さっきからうるさい」
アインが、私へと向かってきました。
それも、かなりの速度です。
こうして、それを認識している間に、私へと大剣を振り下ろそうとしています。
「『
アインの大剣が、黒い光を纏っています。
私には、ただそれを眺めるしか出来ませんでした。
どんなに気を強く持っても、アインの気迫が、私の体を縛り付けているようです。
「カノン」
フォルテの声が聞こえると同時に、衝撃が走り、視界が横へと吹き飛びました。
このままでは地面に激突してしまうので、衝撃に備え身構えていますが、思いの外、軽い衝撃でした。しかも、微かに暖かいです。
「フォルテ、ありがとうございます」
「気にするな、それよりも、すぐ起きるぞ」
そうでした。私達の前には、アインがいるのですから、グズグズしている場合ではありません。
『風の調』は維持していましたが、どうやら牽制にもなっていないようなので、風の支配を維持だけにします。
これで、思考に余裕が生まれます。
フォルテは、すぐに立て直し、アインとの攻防を繰り広げています。
今の私には、悔しいですが、手が出せません。
通用するかもしれない魔法はありますが、範囲が広いのでフォルテを巻き込んでしまう可能性があります。アインでなければ、離れる余裕はあるはずですが、見ている限り、今の攻防が精一杯のようです。
今は、二人の動きを観察し、対処するきっかけを掴むしかありません。
フォルテに危険が迫った時のみ、魔法を使い、状況を変えようとしますが、好転させることが出来ません。
アダマンタイトの左腕の動きも、見ている限り滑らかです。
こんなことなら、対個人用の魔法を作っておくべきでした。
『
「カノン、こいつを絶対に倒すぞ」
フォルテの声が聞こえました。
同感です。そもそも、アインを殺すためにここまで来たのですから。
そして、そのためには手段を選びません。
駄目でも、別の方法を探せばいいのですから。
私は、先程までと同じような攻防を続け、一瞬の隙を待ちます。
けれど、隙が生まれたのは、フォルテの方でした。
純粋な剣技では、アインが上回っているせいか、フォルテの長剣が弾かれてしまいました。
「『フレアランス』」
まずは、フォルテを助けるために魔法を使います。フォルテは、私の行動を見ていたようで、すぐに離脱しようとしています。そして、その結果を確認せずに、もう一つの魔法を唱えます。
「『アブソリュートブレイド』」
炎の槍は、アインに命中し、フォルテの離脱を援護しました。
これでいいんです。
炎の槍は、囮ですから。本命は、私の足元に展開した魔法陣です。
いつくもの黒い影のような刃が生み出されていきます。
それは、自由に動きながら、アインへと殺到します。
私の攻撃に対し、アインは、魔素を大剣へと集めています。
そして、近付いていく刃に対し、大剣を振るい、斬り裂こうとしました。
普通であれば、この瞬間に魔法は打ち消されるでしょう。
ですが、『アブソリュートブレイド』は、物体としての実体を保たない魔法です。
魔素を帯びた剣にぶつかることはあっても、斬り裂かれることはありません。
「絡みつくだと」
私は、影のような刃で、アインの大剣の動きを封じました。
けれど、それだけでは終わらず、他の刃が、アインへと向かいます。
「終わりです」
私の魔法が、左の義手には弾かれてしまいましたけれど、他の刃がアインの体を貫きました。
そして、影のような刃を振るい、断ち切りました。
アインが倒れました、ただ――。
「やったのか?」
フォルテも、半信半疑のようです。
事実、私も信じ切れずにいます。
「やったんですよ。私が、師匠の仇をうったんですよ」
無理にでも口にしないと、どうしても信じられません。私の勘違いならいいのですが、今まで以上に大きな力を感じます。
私は、動かないアインへと近付き、その原因を確認します。
そういえば、前にも不用意に近付いたことで、大変な目にあった記憶があります。
帝国の遺跡でのことを思い出し、自然と後退りしていました。
「カノン、どうした?」
「いえ、ちょっとした既視感がありまして」
ただ、今はその感覚に従って正解でした。
死んだはずのアインの左腕が大きな力を纏い、突如動き始めました。
そして、その左腕に引きづられるようにアインの体全体が動き始めています。
その手に、いつの間にか大剣が握られており、私へと振り下ろそうとしました。
私には、ただその動きを見つめることしか出来ません。
ただ動けずに見つめていると、フォルテが私の前に入り込み、アインから私を庇うように立っています。
その結果、フォルテの体を、アインの大剣が斬り裂く――はずでした。
何かに弾かれるような音が聞こえ、大剣がフォルテの肩付近で止まっています。
アインは、そのまま力尽きたように崩れ落ちました。
ただ、そんなことはどうでもいいです。
「フォルテ、すぐに手当を」
「大丈夫だ」
私が傷口を見ようとすると、フォルテが服の破れた箇所を手で覆ってしまいました。
「大丈夫なわけありません。とにかく見せてください」
フォルテの膝の裏に蹴りを加え、とりあえず仰向けに倒し、フォルテの上に座ると、服の傷を広げ、傷口を見ました。
そこには、剣を押し付けたような後と、黒い縁を持った鱗のような模様が見えました。
私は、驚きのあまり、何も出来なくなってしまいました。
「言ったろ、大丈夫だって。皮膚が硬くなっただけだ。だから、技術のない剣じゃ、斬れないよ」
「だって、これ……、これは」
まるで、『戦いの調』と竜痕の力を併用した時の現れる鱗のようです。
「これ、いつからですか……」
フォルテは答えてくれません。
私の知る限り、竜痕の力にこんな副作用はありません。
もちろん、竜痕の全てを知っているわけではありませんが、こんな物が出来るのであれば、そう簡単につけさせるわけがありません。
「えっとな、帝国の古代遺跡に行った後に気がついたんだ」
そういえば、帝国から帰るときに、フォルテの瞳が変化しているように見えました。
「何で、黙ってたんですか」
「別に言うほどのことじゃないし、命素を操れれば、ある程度の出し入れは出来るから」
フォルテがそう言うと、すぐに肌が元通りになりました。
そこは傷跡すらありません。
「ある程度の出し入れって、前例でもあるんですか?」
私は、一縷の望みをかけて聞きました。
もし、フォルテだけに現れている症状で、帝国にいた頃に現れ始めたのであれば、原因に一つ心当たりがあるからです。
けれど、フォルテは答えてくれません。
私がいくら待っても、一向に口を開こうとしないのです。
「答えて下さい!」
きつい言い方をしてしまいました。
「とりあえず、どいてくれないか?重いとはいわないけど、この格好は不味いだろ」
「話を逸らさないで下さい」
「流石に、背中が痛いんだ」
フォルテが優しく笑いかけてきました。
ですが、その優しさのせいで、もしもの可能性が、頭の中を埋め尽くします。
「どきますから、正直に答えて下さい」
私がフォルテの横に座ると、フォルテも起き上がり、気まずそうにしています。
けれど、意を決したのか、重い口を開きました。
「騎士学校の資料をあさったんだけど、前例は見つからなかったよ。でも、何かあるわけじゃないし」
「前例がないってことは、何もわからないってことじゃないですか」
「家の家系でも、鱗が出来て死んだ人はいないから、大丈夫だよ」
それは、つまり――。
「私のせいですか? 私が、フォルテに魔法を使ってるから……」
「それは違う。それが原因なら、ヴォクスにも同じ症状が出てるはずだ」
「でも、ヴォクスさんに使ったのは、たった一度です。もし、何度も使ったせいで、こうなったのだとしたら、私のせいじゃないですか」
私のせいで、フォルテに悪影響が出ている。それを思うと、涙が出てきました。
「私、の……、私の、せいで……」
視界が涙で歪むと、何か暖かい物が頭を撫でています。
「泣かなくていいよ。さっきは、鱗みたいなのが出来てたから、カノンを守れたんだから。そういえば、アインは何で動き出したんだ?」
フォルテが、無理に話題を変えようとしているのがわかりました。
わざとらしい気遣いですが、気付いてしまた以上、大人しく受け取ることにします。
「恐らくですが、あの義手に魔法が仕込んであったんだと思います。アインの死が引き金となって、発動したんでしょう」
アダマンタイトの義手だからこそ出来る芸当です。
始めは義手だけでしたが、次第に体全体が操られていました。それは、そういうことです。
「ちなみに、また動き出す気配はあるか? 命素は消えてるから、俺じゃわからなくて」
「いいえ、今は何も感じません」
先ほどの大きな力の正体は、アインの体を操るための魔法だったのでしょう。とりあえずは、一安心です。
「なら、次は魔王だな。魔王がどれだけ強いかわからないけど、必ず倒すぞ」
フォルテの心遣いが、痛いほど感じられます。
私は、フォルテから目を逸らすようにアインへと視線を向けました。
師匠は、仇討ちとかは望んでいないと思います。でも、私は、師匠の仇をとりました。これから、本当の意味で先へ進めるはずです。ですから、見守っていて下さい。
私は、無意味だと思いながらも、心の中で師匠に語りかけました。
フォルテへの責任を感じながらも、自身を守るためにこんなことをしていると思うと、とたんに虚しくなりました。
「カノン、次は、魔王の住む城のある街だ。油断するなよ」
「……ええ、わかってます」
「まったく、気にするなって言っても、気にするんだな。だったら、カノンが一生をかけて、償ってくれよ」
え?
「それって――」
「さ、行くぞ」
結局、その言葉の意味を教えてくれませんでした。
ただ、さっきの言葉一つで元気が出てくるとは、随分と簡単な性格だと、思い知らされました。
私達は、ブラッキーに乗って魔王の城を目指しています。
こうして飛んでいるのも慣れたものです。
「城らしきものが見えてきたぞ」
確かに、城と言えば言えなくもない物が見えてきました。
「王国や帝国の城とは、趣が違いますね」
「ああ、何て言うか、王城って言うより、大きな屋敷だな」
無駄な飾りが無く、城の後ろには山がくっついています。そして、その山から、強大な力を感じます。
「あそこに、魔王がいるんですね」
「そのはずだ。とりあえず、近くに降りるぞ」
城の周囲には人工物がなく、直接城に乗り込むしかないようです。
出来れば、少し休む場所が欲しかったのですが、しかたないようです。
ブラッキーが城から少し離れた位置に着陸したので、ここからは歩きです。
「どこかで野営しますか?」
「流石にここで野営するのは、厳しいな」
「だったら、あの城で休んでくか?」
私達は、突然の声に驚き、振り向きました。
異常なまでに低く、ドスの利いた声の主に対し、ブラッキーが怯えています。
私達も、振り向いたまま動くことが出来ませんでした。
「あんた、何者だ」
褐色の肌に、傷だらけの筋肉の鎧と、濃密な力の気配を纏った魔族は、おもむろに口を開きました。
「ノイズだ。魔王と呼ばれている」
その返答に対し、驚愕と納得が入り混じった感情が生まれました。
私達が臨戦態勢を取ろうとすると、それを制するようにノイズが続けました。
「どうせやるなら、万全の状態でやりたいな。その方が、楽しいってもんだ。アインとやりあった後なんだ、お前達も休みたいだろ」
「お前が魔王ノイズだとして、俺達を休ませて何の得がある」
「言ったろ。万全の状態のお前達と戦いたいんだ。弱ってる人間に興味はない」
こういう相手に心当たりがあります。戦うことを趣味とする、戦闘狂と呼ばれる人達です。
まさか、魔王がこの類の魔族だっとは……。
「魔王を信用しろと言うのですか?」
「信じられないなら、疲労した状態で、俺の餌食になるだけだ。ただ、弱ってる人間の相手をさせられたら、憂さ晴らしに人間の国を蹂躙するかもな」
そもそも私達に選択肢はないようです。
対峙してわかりましたが、圧倒的な力の差を感じます。
万全の状態でも勝てそうに無いのに、今のように疲れていて勝てるはずがありませんし、王国や帝国を守るには、指示に従うしかありません。
私がフォルテの方を見ると、ちょうど目が会いました。そのまま頷くと、意図を察してくれたようです。
「大人しく従うが、休む場所も提供してくれるのか?」
「ああ、俺の城でもてなしてやるよ」
ボイスは、そういうと城へ向かって歩き始めました。
私達は、警戒しながらも着いて行きます。少し後ろには、怯えているブラッキーもいます。
そして、城についたところで、思い出したように口を開きました。
「お前達には一つの部屋を貸してやる。後で誰か人をやるから、詳しいことはそいつに聞け」
私達が案内された部屋は、二人で使うには広い部屋です。ただ、問題が一つあります。
「何で、魔族の国には、一つの部屋にベットが一つなんでしょうか」
「でも、この内装から察するに、一人で使うことを前提とした部屋だぞ」
どうやら、一人部屋を二人で使わなければいけないようです。
「魔族は私達より体格が大きいので、広い部屋を使うんでしょうね」
「そういうことにしとくか」
今まで見たものに目をつむり、無理やり納得することにしました。ここで何かを言っても、この状況が変わるわけではありませんから。
私達が諦めていると、扉がノックされました。
「はい」
「ノインです。魔王ノイズ様の命で来ました」
思いがけない相手です。ここの使用人が来ると思っていたのですが、
「どうしてノインさんがここにいるんですか?」
「私は、ボイス様の側近ですが、九近衛である以上、ノイズ様には逆らえません。それに、今ボイス様なノイズ様の手の中です」
「それってどういうことですか?」
「私達はノイズ様に対して反逆を企てていますから、見せしめという意味があるようです。しかも、私達は、泳がされていたようで、全ての準備が終わった後に、ノイズ様が捕まってしまいました」
私達が九近衛の一人ずつと戦うことが出来たのは、ノイズが邪魔をしなかったからというわけですか。
九近衛という障害を順当に通り抜けた相手と戦いたかったとも取れます。
「ボイスは無事なのか?」
「ええ、監禁されているだけで、無事です。ただ、特殊な魔法で力を封じられているので、出ることも叶いません」
特殊な魔法ですか。そういえば、魔王の力には、魔族の反逆を抑えるものも含まれていると聞いています。なら、聞かなければいけないことがあります。
「ノインさん、魔族の反逆を抑える力って、どんな力なんですか?」
「何故そんなことを聞くの?」
そう返されると、私のことを話さなければいけません。まだ、少し抵抗がありますが、目的の為ですから、しかたありません。
「フィーアと戦った時、私のことを混血って呼んだんです。それで、いろいろと考えてみたら、思い当たる節が多くて……」
「なるほど、そういうこと。私は、混血とあったことは無いけど、それが本当だとすれば、その不思議な気配にも説明がつきます。けれど、それはまずいですね。反逆を抑える力、それは、魔族の力が魔王へと向けられた時、その力を打ち消す。魔法や物理を問わず、それが魔族によって魔王を害する意図で放たれたものであれば、一切の例外なく無効化されます」
私は愕然としました。
つまり、私では、ノイズに手が出せないということです。私は、ただ、フォルテの足を引っ張ってしまうだけです。
「……それに、例外はないんですか?」
僅かな希望を得るために、どんなことでもいいので、手がかりが欲しいです。
「一人の魔族が、魔王に傷を付けたという記録は、残っていません。過去には、数人の魔族が、一つの魔法を発動させた時、魔王に傷を負わせたことがあると、聞いているので、複数人の力が必要だと言われています」
複数人の魔族ですか。私は一人なので、その例外を使うことが出来ません。
そう考えていると、肩に手が置かれました。
「カノンが後ろにいてくれれば、俺はどんな相手にも勝てる。だから、気にするな」
どうやら慰めようとしてくれたようです。ただ、不器用です。
「今、混血の話をしましたが、ノイズはまだ知らないはずです。なら、始めのうちは無視できないはずですから、隙を作ることくらいは出来ます。だから、一緒に戦えるんです」
「なら、頼むよ」
今日は、ノイズに対する作戦を考える必要がありそうです。
何としてもノイズを倒してみせます。
「それと、貴方達の待遇ですが、この部屋からは出ないようにしてください。必要な物は運びますし、他の扉の先に、必要な物は揃っているので、確認しておいてください」
当初の目的を済ませると、ノインさんは部屋を出ていこうとします。
ただ、最後に不敵な笑みを浮かべ、意味深なことをつぶやいていきました。
「明日に支障をきたさないでね」
まったく、一体何を言いたんでしょうか。私には意味がわかりません。
ええ、全くわかりません。
こんにちは
やはり過剰な強化には、デメリットがつきものです。
そして、書いてから気付きましたが、ドライ戦とアイン戦で、同じような場面が……
違いとしては、意図的か相手のせいかの違いですね。
それでは、今回もお付き合いいただき、ありがとうございます。
これからもお付き合いいただけると、幸いです。