魔法使いと勇者と竜の国   作:enz

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第3章 竜王
竜王の間


 私達が王都に帰って来てから一日経ちました。

 昨日のこともあり、モヤモヤしたものが頭の中を駆け巡っています。

 フォルテとは、魔王を倒したということで、式典の準備に駆り出され続けているので会う時間がありません。

 私も、何があるかわからないということで、グレイス邸から出るなと言われてしまいました。

 暇を持て余しているので、何かをしようにも、私には壊れかけている杖の修理は出来ないので、出来ることがありません。

 そんなことを考えていると、使用人の方が、私にお客が来ていると言われたので、玄関まで行くと、メゾが待っていました。

「それにしても凄いことになってますわね」

「そんなに凄いんですか?」

「警備と見物客でごった返していますわ。中からでも見えるはずですわ」

「中からだと、よくわからないので」

 メゾは、そんな中をどうやって入ってきたのでしょうか。

「立ち話もなんですし、私の家ではありませんが、お茶でも頼みましょうか」

「そうですわね」

 私達は、ゆっくり出来る部屋を教えてもらい、お茶の準備も頼みました。

 勝手知ったる人の家となっているので、使用人の方も私の頼みを聞いてくれます。

 そして、メゾと二人で話す時間が出来ました。

 けれど、私達はどちらも口を開こうとしません。

 こうして、時間だけが過ぎていきます。

 そんな重苦しい空気が支配する中、メゾが口を開きました。

「わたくし、フォルテ様から聞きましたわ」

 昨日、最後にメゾが口にした言葉です。そこから続けるというのは、メゾの気遣いでしょうか。

「……何を聞いたんですか?」

 けれど、その言葉に対する返事を口にするだけなのに、私はかなりの時間をつかってしまいました。

「旅のこと、全てですわ。ですから、カノンに謝っておいて欲しいといわれましたわ」

「そうですか。なら、私のことも聞いたんですね。それで、どう思いました?」

「そうですわね、まさか抜け駆けされるとは思いませんでしたわ。それと、余計なことを言ったようですわね」

「そっちもですけど、私が魔族との混血だって聞いて、どう思ったんですか?」

「別にどうも思いませんわ。カノン、貴女は貴女ですわ。そんなことより、二人で旅をして、本当に有利に立ち回るとは思いませんでしたわ」

 私は、メゾの言葉を聞き、カップを落としそうになってしまいました。

 それを紛らわせるためにメゾの方を向くと、胸の下で腕を組むようにして、私よりも多きい胸を強調してきました。

 対向すると、虚しいことになるので、私は真似しません。

 それにしても、そんなことですか。

「メゾならそう言ってくれると思ってましたけど、願望だけでなくてよかったです」

 そして、私は覚悟を決めて聞くことにしました。

「メゾは、フォルテの話で納得したんですか?」

「納得しろというのが無理な話ですわ。ですが、フォルテ様がわたくしの気持ちに気付かない振りをしているのは、薄々気付いていましたわ」

 やはりメゾは気付いていたんですね。でも、何故メゾは知っていながら、何もしなかったのでしょうか。

「それで、メゾはどうするんですか?」

「どうするも何も、今までどおりですわ。わたくしの方から婚約の話を断ったのは、もう周知の事実ですから、言い寄る人は多いはずですわ。ですが、フォルテ様が、カノン、貴女を選んでも、わたくしは諦めませんわ。むしろ、燃えてくるというものですわ」

 何というか、メゾはたくましいです。私では、未練を残しつつ、逃げるように旅に出るという選択を取る気がします。

「そもそも、何でフォルテは、メゾの気持ちに気付かない振りをしていたんですか?」

「あくまでも予想の範囲ですけど、婚約をした理由が理由ですから、後ろめたかったんだと思いますわ。わたくしが、恩と愛情を勘違いしていると思っている可能性もありますわ。何にしろ、本心を理解してもらえなかったわたくしのせいですわ」

 本当にメゾは強いです。

 そんなことを考えながらカップに手をのばしましたが、目測をあやあまり、取手ではなく、カップ本体に手をぶつけてしまいました。

「体調でも悪いんですの?」

「いえ、ちょっと疲れが残っているだけです」

 私の答えで一応の納得をしてくれたようです。実際、こちらに戻ってからもすぐに寝てしまったので、疲れているのは事実です。

「ところでカノン、一つ名案がありますの、興味ありません?」

「そう言われると気になります」

 私がそうこたえると、メゾは内緒話をするように顔を近付けてきて、私にも耳を貸すよう手招きをしています。

 好奇心が抑えられず、私はメゾに顔を近付けました。

「どんな昔話でも、英雄色を好むと言われていますわ。わたくしは次期ワイズマンですし、カノンは、フィーネですわ。そして、フォルテ様は、昔話に例えるなら、勇者と呼ばれても可笑しくないですわ。なら、この国の法律を変えて、一夫多妻を認めさせることくらい、簡単ですわ」

 これだけ言うと、メゾは自信ありげに、ふんぞり返っています。

 名案と言うより、迷案です。

 何とも言いがたい提案に、私は半目でメゾを見てしまいました。

 ですが、どことなく否定しづらい提案です。

「それ、本気で言ってますか?」

「冗談ですわ。そもそも、フォルテ様がそんな方法を選ぶとも思えませんわ」

「そうですよね。フォルテを二人で共有なんて……、しませんよね」

 少し動揺してしまいました。そのため、私は、動揺を悟られないように、すぐに話題を変えます。

「ところで、メゾはこれからどうするんですか?」

「わたくしは、どうするも何も、ワイズマンを目指すだけですわ。それから、この技術を王国で広める手伝いもしますわ」

 そう言いながら、メゾは徐ろに右手の手袋を外しました。

 その結果、ひと目で義手とわかる魔法機が姿を表しました。

「それが帝国製の義手ですか」

「そうですわ。これの整備を学ぶのには、苦労しましたわ。ただ、怖いほどに帝国側が協力的だったので、予備を作る設備を含めて、わたくしの家に建設中ですわ」

 メゾの方は順調のようです。

 それにしても、何故帝国はこんなにも簡単に技術を教えたのか、疑問が残ります。

「その技術で、私の杖は直せますか?」

「技術的には出来ますわ。けれど、帝国との契約で、わたくしの設備は、義肢のみに使うと取り決めましたの。ですから、直しませんわ」

 なるほど、だから簡単に提供したわけですか。

 けれど、そういう契約ならしかたありません。

「では、ここから出られるようになったら、杖を探しにいくとします」

「杖なら、学園の周囲で探した方が、いいのがありますわ。もっとも、普通の杖ですけど。それで、カノンはその後どうしますの?」

「せっかくですから、魔法学園は卒業したいですね」

「その後はどうしますの?」

 メゾは私の今後を聞きたいようです。

 しっかりと答えたいですが、今まで旅をしていた私には、口に出来るような内容がありません。

 けれど、しなければいけないことはあります。

「私が、この刻印に認められてからになると思いますが、次のフィーネを探さないといけませんね」

 この刻印は、ある種の呪いのような物です。

 宿主がある程度成長すると、次の宿主を選び、妖精隠しにあわせます。その選ばれた子が、私と会えなければ、会えるまでそれを続けます。

 しかも、限度はわかりませんが、それが何度も続くと、私を殺し、魔族の側に転移するそうです。

 それは、私が刻印に認められなくても同じことなので、避けては通れない道です。

「妖精隠しのことは聞いていますわ。ただ、それだけでは無いようですわね。しかも、口にする気もないと」

 メゾは、私の表情からそこだけは読み取ったようです。

「フォルテには言っていないので、黙っていてください」

「わたくしからは言いませんわ。けれど、ずっと黙っているのは、許しませんわ」

「当たり前です。ただ、心の準備が出来ていないだけです。だから、もう少し待っていてください」

 私は最低です。メゾの気持ちに気付かない振りをしていたフォルテを責めながら、こんな大事なことを隠しているのですから。

「なら、しっかりと準備をすることですわ」

 この後は、静かに過ごしました。

 杖を直せなかったのは痛いですが、それはしかたありません。

 早く杖を何とかしたいので、出かけられるようになって欲しいです。

 

 

 

 

 数日後、フォルテにはほとんど会えませんでしたが、騒ぎがある程度に収まったので、やっと出かけられるようになりました。

 ただ、書き置きが残されており、杖の新調は、フォルテの時間があくまでお預けです。

 杖を出来る限り補修し、私は、メゾと共に魔法学園に向かいました。

 そこでは、魔王が倒されたことと、私がしばらくいなかったことを関連付けて考えている人が多いようで、遠巻きに噂話をされています。ただ、的外れではなく、ほぼ真実なので、如何ともし難いです。

 けれど、幸か不幸か、余計なことをしてくる人がいないので、平和に過ごせそうです。

 そして、今、私はメゾに意見を求めています。

「壁を作る魔法はあるんですが、すぐに障壁を出せる魔法を作りたいんです」

 完全に私が悪といはいえ、ノイズの攻撃をまともに受けてしまいました。あの状態であれば、どんな物があっても防げる気はしませんし、魔法陣の魔法でも、間に合うかわかりません。そこで、間に合うものを作ろうと思いつきました。

「つまり、剣士の攻撃を防げる即応性のある防御魔法ということですわね」

「そんなところです。詠唱していては間に合いませんし、魔法陣でもギリギリです。こういっては何ですが、メゾの魔法書のように、練り上げた魔力を流し込んで発動するものを仕込んでおけばいいと思うんです」

「それでわたくしに意見を聞きたいわけですわね」

 私は、大きく首を縦にふりました。

 けれど、メゾは呆れたように続けました。

「まず、魔法書に関しては、そうそう口外する気はありませんわ。次に、その元になる魔法がありませんわ」

 魔法書に関しては、予想していました。ただ、魔法が存在しないことに関しては、完全に失念していました。

 もう、笑うしかありません。

「ふっふっふ、そうですよね。私も忘れてましたよ。なら、まずはその魔法を作りましょう」

「嫌ですわ」

「何でですか」

「そのやけになってる様子から、嫌な予感しかしませんわ」

 断られてしまいました。それなら仕方ありません。一つ、手札を切りましょう。

「メゾ、魔法陣は核石を通して練り上げた魔力を元に描いています。それは、魔法によって使用する魔法陣が違うからです。ですが、理論上は、紙に書いた魔法陣に、魔力を流すことで、同じことができます。つまり、防御魔法の魔法陣を描いた専用の装備を持っていれば、それだけで防御魔法を使えるんです」

 メゾが、私の勢いに押されています。

 この様子なら、後ひと押し、勢いだけで何とか首を縦に振らせることが出来るはずです。

「魔法陣の魔法を発動出来るという条件は付きますが、毎度毎度魔法陣を描く必要がないので、失敗することはありません。だから、魔法の構築を手伝ってください」

「しかたありませんわ。但し、条件がありますわ」

「私に出来ることなら、何でも言って下さい」

「それでは、フォルテ様を諦……、冗談ですわ」

 どうやら凄い顔をしていたようです。メゾの顔に恐怖の表情が浮かんでいました。

「それでは、貸一つにしておきますわ。必ず取り立てるので、覚悟しておくことですわ」

「怖い人に借りを作った気がします。ただ、借りを作る以上は、しっかり手伝ってもらいますからね」

 こうして、私達は新しい魔法の構築を始めました。

 ただ、かなりの時間がかかりそうです。

 

 

 

 

 順調とは言えませんが、新しい魔法の構築をしていたある日、突然ワイズマンに呼び出されました。

「最近、何やら面白そうなことをしておるのう」

「まぁ、新しい物を作るのは楽しいです」

 呼び出されはしましたが、詳しいことは何も聞いていません。

「最近、王都の話は聞いておるか?」

「いえ、何も聞いていません」

「実はのう、竜骸の炎が消えたんじゃ」

「は?」

 意味がわかりません。

 竜骸の炎といえば、天竜王アマツから与えられた物で、竜痕の力を授ける力を持っています。その炎が消えたというのは、大問題なはずです。それなのに、魔法学園では、そんな噂すら聞いていません。

「今は緘口令がしかれておるからの。だが、知られるのも時間の問題じゃ」

「ちなみに、それが私に何の関係があるのですか?」

「それなんじゃが、最近、高位の竜痕所持者が、共通の夢を見るそうじゃ。何でも、竜王の力を持つ者を呼んでいるそうでのう。お主は、そんな夢を見ておらんか?」

 夢ですか。最近は、新しい魔法を作るのに忙しくて、疲れ果てて寝ているので、全く記憶にありません。

「見ていません。そもそも、私は竜痕を持っていませんよ」

「確かに、竜痕は無い、じゃが、その刻印は、アマツとマガツヒ、その二つの力で作られた物じゃ、条件としては問題あるまい」

 だから私が呼ばれたのですか。

「それで、私にどうしろと?」

「一度王都へ向かってもらいたいのじゃ。手配はこちらでしてある」

 してある。つまり、準備は出来ているから、今すぐ行けということですね。

 まぁ、しかたありません。

「わかりました」

「ワシも向かうから、準備が出来たら声をかけてくれ」

 こうして、私は王都へ向かうことになりました。

 私に何が出来るかわかりませんが、妙な胸騒ぎがするのは確かです。

 

 

 

 

 そして、気付けば王都に着いていました。私は、そのまま、竜骸の炎がある聖堂へ案内されています。

 聖堂に近付くに連れ、人が減っていき、聖堂の敷地には、数人の騎士が、入口を塞いでいます。

 私は、ワイズマンに連れられて厳重な警備を抜け、聖堂へ入りました。

 中には、多くの騎士がいました。

 恐らくは、今ここにいる騎士の全員が、上位の竜痕を持っているはずです。

 けれど、私は無意識に辺りを見回し、ある人を探しています。

「フォルテを探すのも良いが、まずはあれを見ておくれ」

 ワイズマンに言われ、顔を赤くしながらも、示された方にある物を見ました。

 そこには、竜の形をした石像があります。ただ、私の記憶が正しければ、あんなものはなかったきがします。

「竜骸の炎が消えておるから、炎を宿しておった石像が、見えておるのじゃ」

 私の表情から考えを読み取ったようです。確かに、前に見た時は、燃えていたので、炎の中は見えませんでした。

「それで、何をすればいいんですか?」

「まぁ、少し待ってておくれ」

 そう言われ、ワイズマンと共に隅へ移動しました。

 辺りを眺めていると、騎士達が、順番に石像の元へ行き、何かをしています。ただ、何の変化もなく、そのまま聖堂の外へ出て行っています。

 その結果、聖堂の中にいた騎士が、いなくなりました。

 残っているのは、王国の偉い人達でしょうか。

「さて、確認は終わったようじゃな。カノン、お主も、頼めるか?」

「石像の前に行けばいいんですか?」

「そうじゃ」

 私は、一人で石像の前に立ちました。ただ、周囲の視線が気になります。

 そんなことを考えていると、左腕の刻印に異変を感じ取りました。

 私は、反射的に左腕を抑え、うずくまってしまいました。

 周囲からざわつきが聞こえますが、段々とその声が遠くなり、私は、意識を手放しました。

 

 

 

 

 気が付くと、ベッドの上にいました。

 辺りを見回そうと思い、少し視線をずらすと、見覚えのある人影が目に入りました。

「フォルテ?」

「ああ、起きたのか、大丈夫か?」

「大丈夫ですけど、ここは?」

「聖堂にある職員用の宿直室だよ」

 辺りを見回してみると、質素な部屋ですが、ベッドが沢山あります。

 聖堂で働く誰かがベッドを貸してくれたのでしょう。

「それで、動けるか?」

「それは、大丈夫です」

「なら、来てくれ」

 そう言われて、ベッドから出てフォルテに着いて行きました。

 扉から出ると、目の前には、横を向いた竜骸の炎の石像がありました。

 そして、石像の正面で、見覚えのある人達が何かを話し合っています。

「カノンが起きました」

 フォルテが、報告すると、その人達の目が私に向きました。

 一斉に視線を向けられると、何だか緊張します。

 その中には、デュオさんとワイズマンがいますが、後の二人には見覚えがありません。

 格好を見る限り、一人は聖堂の神父さんのようです。だとすると、後の一人は、王国の偉人でしょうか。

 私達が四人の元へ行くと、デュオさんが口を開きました。

「カノンには、ワイズマンが説明したと思うが、竜骸の炎が消え、竜痕所持者に神託のようなものがあった。さらに、公にはしていないが、数日前、ヒュンフ訪ねてきた。ボイスの作戦が失敗し、数名の魔族しか、戻ってこれなかったようだ」

 デュオさんの発言を聞き、フォルテも驚いています。どうやら、私同様、聞かされていなかったようです。

「マガツヒを倒せなかったのじゃ、恐らく、炎が消えた件も、何か関係があるはずじゃ」

 マガツヒを倒すための準備をして望んだと聞いています。けれど、それでも失敗した。つまり、マガツヒが力を蓄え、新たな魔族と共に、人間に攻め込むのでしょうか。

「そして、この炎を一瞬とはいえ、再び灯すことが出来たのは、フォルテとカノンだけだ。恐らく、アマツが呼んだのは二人のことだろう」

 私は、刻印に痛みを感じたことしか覚えていなかったので、目の前の変化に気が付きませんでしたが、そんな変化があったのですか。

「今度は、二人で石像の前に立って欲しい。そうすれば、アマツが呼んだ理由がわかるはずだ」

 私は、いつの間にかフォルテの手を掴んでいました。

 それに気付いたのは、掴んでいる手に、力を込めた時です。

「カノン、大丈夫か?」

「だい、じょうぶです」

「兄貴、今すぐなのか?」

 どうやら、フォルテは私のことを心配してくれているようです。

 嬉しですが、少し恥ずかしいです。

「カノンは起きたばかりだから、体調がすぐれないというのであれば、後日でもいいが、なるべく早くして欲しい」

 デュオさんの発言の後、私に視線が集中しています。

 後にすると、余計に緊張しそうです。

「今からで構いません。何が起きるかわかりませんが、そんなに時間的余裕があるとは思えませんし」

 私は、フォルテに対して笑いかけました。

 心配してくれるのは嬉しいですが、優先すべきことがあります。

「では、二人で石像の前に移動してくれ」

 デュオさんの指示通り、私達は石像の前へ移動します。ただ、その途中、小声でフォルテに話しかけました。

「手は、握ってて下さい」

 フォルテは、返事の代わりに、手を握る力を強くしました。

 その手の暖かさが、私を安心させてくれます。

 そして、石像の前に立つと、先程同様に、刻印に痛みを感じましたが、先程と比べると、我慢できる痛みです。

 そのまま石像に目を向けると、炎の様な物が、段々と燃え広がっていきます。

 竜骸の炎が元通りに燃え盛ると、今度は、光りを纏うようになり、それが一気に広がることで、私達を覆いました。

 

 

 

 

 

 眩しくて瞑っていた目を開くと、謎の白い空間にいました。

 隣にフォルテがいます。けれど、目の前にあった竜骸の炎はなくなっています。それどころか、白い空間ではありますが、何もありません。

 それが、見渡す限り続いています。

 白い空間を眺めていると、少し気持ち悪くなってきました。

 横目でフォルテを見ましたが、辺りの様子に驚いているだけで、何ともないようです。

「よく来たな、竜王の力を持つ者達よ」

 頭の中に声が響きました。

 それは、フォルテも同じようです。

「天竜王アマツ……」

 フォルテも同じ結論に達したようで、声の主と思われる存在の名を口にしました。

「如何にも、我が、アマツだ。仮初ではあるが、姿を見せよう」

 目の前に、竜骸の炎の石像が現れました。

 恐らく、アマツに関係のあるもので、見覚えのある姿を選んだのでしょう。

「それで、俺達に何のようだ」

「魔族が、マガツヒに挑み、負けた。それは、知っているな。その結果、一つの問題が起きた。魔族の力を凝縮した存在である魔王が死に、マガツヒも力を失うはずであった。だが、マガツヒに挑んだ魔族の力を奪い、完全ではないにしろ、力を取り戻してしまった。これは、我らの取り決めから逸脱する行為だ。故に、我も人間に力を貸すことを決めた」

 どうやら、アマツとマガツヒには、いくつかの取り決めがあるようです。そもそも、人間と魔族の戦いは、アマツとマガツヒの代理戦争ということなので、竜王達は、手を出してはいけないのでしょう。

「つまり、俺達にマガツヒを倒せってことか?」

「元々、それぞれの種族の、力の象徴を倒した後は、その者達が竜王を倒すという取り決めである。ならば、魔王を倒した汝らがマガツヒを倒すのは、当然のこと」

 何故か決めつけられています。

 確かに、私達は魔王を倒しました。けれど、その結果、マガツヒを倒せと言われる必要はないはずです。

「そもそも、代理戦争なら、マガツヒの力が弱った段階で、自分で倒せばいいじゃないですか」

「それが出来れば苦労せぬ。我の力もまた、人間へと与えられてるため、マガツヒを倒しきるほどの力を持っておらぬ。これは、決まったことだ。だから、マガツヒを倒せ。ただし、協力は惜しまぬ」

「協力って、一緒に戦ってくれるのか?」

 フォルテは、私達が戦うしか無いと判断したようです。

 確かに、倒しきれないと言っている相手に対して文句を言ってもしかたありません。

「言ったはずだ。今の我はそこまでの力を持たぬと。故に、汝らに与えられる力は、既に用意してある」

 用意してある。魔王を倒してから用意出来るほどの時間は経っていないと思います。つまり、事前に準備しておいたということだと思います。

 ただ、アマツによって道を決められていたというのは、少し癪に障りますが、しかたありません。

「ここには何もありませんが、どこにあるんですか?」

「ようやく従う気になったか。力の一つ、竜滅剣はここにある。だが、それを使うためには、命素の杖が必要だ。我が叡智にかけた鍵を解こう。それを元に作るがよい」

 やはり癪に障ります。本当に、しかたありません。

 叡智ということは、帝国にある竜の叡智のことでしょうか。

 私は、直接見たことがないので、帝国に頼むしかありません。

 そして、杖を作るということは、ここにある竜滅剣を手に入れるのに、何かの魔法が必要だということでしょうか。

「その杖を作ってここにくればいいんですね」

「そうだ。そして、もう一つ、マガツヒの住まう場所は、命素に占められたここと違い、魔素に占められておる。故に、普通の人間では、数刻と持たないであろう。そのための鎧が、魔族によって作られた祭殿の核となっている。それを、身に付けるがよい」

 魔族によって作られた祭殿、恐らく、継承の間のことでしょう。そこの核とここにある剣と帝国で作る杖を持って、マガツヒを倒せということですね。

 どうせなら全てここに集めておいて欲しいです。

「一つ聞きたい。祭殿ってのが、継承の間のことだと思うんだが、その核を取った後で、マガツヒの元へいけるのか?」

 確かにそうです。

 継承の間を起動しないと、マガツヒの元へ行けないと聞いています。鍵となっている物を取ってしまっては、起動も何もないはずです。

「心配は要らぬ。祭殿が作られてから、長い年月が経っている故、数回の起動が出来るほどに、力が溜まっておる。但し、悠長にしている時間はないと、肝に免じておけ」

「わかった。準備が出来たら、また来る。それで、どうやったら、戻れるんだ?」

「気の早い勇者だ。最後の一つがある。これから、汝らの力を引き上げる。ただし、これは汝らにとって諸刃の剣だ。覚悟しろ」

 アマツがそう言うと、急に光りだし、私達を包み込みました。その光が力となって流れ込んでくるのがわかります。そのせいで、妙な圧力を感じています。

 気付けば、元の聖堂に戻っていました。

 けれど、感じていた圧力が、激痛へと変化し、私の体を蝕んでいます。

 フォルテが手を握っていてくれたお陰で、フォルテの顔を見ることが出来ました。

 とても心配そうな顔をしているので、小さく笑いかけ、私は、この短時間で二度目ですが、意識を手放しました。




こんばんは

今回から第3章に入るわけですが、章のタイトルをどうしよう。
それはさておき、今回の章は、今までと違い、章の目的が、最初から明確になっています。
こんなことを言いつつ、全く違う結果になったら、もうどうしましょうか。
勇者の装備とまでは言いませんが、三種の神器的な物は、やはり必要です。

それでは、今回もお付き合いいただき、ありがとうございます。
これからもお付き合いいただけると、幸いです。
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