魔法使いと勇者と竜の国   作:enz

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都市の襲撃

 私は、宿の部屋に付いているお風呂で湯船に使っています。昨日は、水浴びだけでしたが、今日には出て行くので、少し贅沢をしています。

 魔法設備があるので、もしやと思って聞いてみると、ここのオーナーは、魔法技師でした。お金が貯まれば、2階の部屋にも、お湯が届くようにしたいと言っていました。

 私個人としては、出来るだけ利用したいです。

 そういえば、水の色は、よく青で塗られますが、私の青い髪と比べると、全く違います。水は、無色透明なので、髪を水に浮かべると、しっかりと青い色を見ることが出来ます。

 私が、お風呂から出ると、そこには、信じられない光景が広がっていました。

 昨日に続き、師匠が起きているのです。

 大きな胸を強調しながら、体を伸ばし、目を覚ましているのです。その眠そうなタレ目も、心なしかキリッとしているようです。

「師匠、どうしたんですか?」

「んー、眠いけど、この都市は、胸騒ぎがするんだよね」

「わかりました。師匠が起きるくらい大変なことが起きるのですね。では、すぐに出ましょう。とりあえず、ノースゲート方面で、適当な街に行けばいいですね」

 サウスゲート方面から来たので、このまま王都の周りを回るように提案しました。

 特に異論もないらしく、師匠にあるまじき速度で、準備をしています。

 

 

 

 

 すぐにこの都市を出たいのですが、依頼の報酬を受け取らなければいけません。そのため、魔法協会の近くで朝食を取りながら、受付が開く時間まで待つことになりました。

 地図を広げながら、向かう先の詳細を決めていると、受付のおばさんが、出勤するところを見ました。これから準備をするとしても、すぐに開くでしょう。

「このホットケーキも、食べ納めだね」

「そうですね。行く先の名物を調べられませんが、着いてからの楽しみでも、いいと思いますよ」

 他愛のない会話を続けていると、魔法協会の受付が開く時間になりました。とりあえずは、報酬を受け取ってしまいましょう。

 私達は、魔法協会の扉を開くと、中にいる人の視線が、一斉に突き刺さりました。恐らく、こんな時間に来る人がいないのでしょう。

「あれ、あんた達、もうきたのかい?」

「ええ、大きな街は、苦手なものですから」

 本当の理由を隠します。イタズラに、不安を煽っても仕方ありません。

「そうなのかい。まぁいいさね。一応、額が額だから、支部長からの受け渡しになるさね。ちょっと待ってておくれ」

 そういうと、受付のおばさんが、シルヴィアさんを呼びに行きました。それと同時に、別の職員が金庫を開けています。こんなに不用心でいいのでしょうか?

「二人共、早いのね。師匠の方は、てっきり朝は弱いのだとおもっていたけれど」

 声のする方をみると、シルヴィアさんがいました。その予想は、少し外れです。朝だけではありません。一日中睡魔に弱いです。

「とりあえず、登録魔法使い、カノン=フェアリと」

「ふあぁ、登録、魔法使い、フィーネ=A=グリードですよ」

 登録証を見せ、確認を取ります。この登録証も、魔法技師が作るのですが、偽造防止のため、詳細は秘密らしく、持っている私達ですら、知りません。

「はい、確認しました。では、これが、依頼の報酬、全額です。かなりの金額なので、気をつけてくださいね」

「はい、ありがとうございます」

 これで、用事は終了です。後は、この都市を離れるだけです。

 そう思った矢先に、大きな音が聞こえました。何かが爆発するような音です。

 私は、報酬を受け取った姿勢のままだったので、バランスを崩してしまいました。後ろに大きくよろけてしまったのですが、師匠が受け止めくれました。

 主に、その大きな胸で。

「カノン、報酬無視して出るべきだったかな」

「師匠の胸騒ぎが、現実になりましたね」

 何が起こったかはわかりません。ですが、非常事態なのは、確かです。

「それで、魔法協会はどう見る?」

「そうですね。どう見ると言われましても、この爆発音が何なのかわかりませんから、まずは、他の支部にも報告を入れておいて。それから、状況の把握ですね。何者かによる襲撃だとしても、私も、魔法使いの端くれ。もし、ここが襲われるようなら、抵抗をします」

「ここが襲われる可能性は低いね。職員は、基本的に魔法使いだし、いろいろと秘蔵の武器があるって噂だもんね」

「その噂については、立場上否定しか出来ません。ですが、私達はここを離れられないので、私達からの依頼を受けてください。内容は、状況の把握と、対処です。詳細は問いません、貴女達の判断にお任せします」

「大雑把な依頼だね。報酬は、終わってからの相談でいいんなら、いいよ」

「それでは、貴女達が納得する額を用意して待っています」

「ふふ、楽しみだね。それじゃ、引き受けた以上は、必ず達成してあげる」

 師匠は、この魔法協会という組織についても詳しいようです。そして、オペラさんは、私達を利用することにしたようです。とはいえ、ただで利用される師匠ではありませんでした。とりあえず、私も乗ることにしましょう。

「師匠、とりあえず、状況を把握しましょう。野盗の残党が襲撃してきた可能性もあります」

 そう、昨日頭は倒しました。けれども、都市に来ていた野盗を捕まえきったわけではありません。その辺りは、駐屯兵団の手腕に期待です。

 そうこうしている間にも、周囲で爆発が続きます。ですが、妙です。野盗であれば、手当たり次第に攻撃をするはずです。ですが、ここから見える範囲では、何かしらの施設にのみ、攻撃が加えられています。

 それは、国の出先機関や、駐屯兵団の詰め所などです。それらは、建物自体が大きく、よく目立ちます。

 民衆には被害を与えず、その体制に関わるもののみに、攻撃を加える。まるで、市民によるクーデターです。

 

 

 

 

 私達は、自体が飲み込めず、都市の中を走り回りました。逃げ惑う人が多く、国に関わる人達が攻撃されているため、兵士たちが、避難誘導をすることが出来ません。

 師匠も、巻き込まれた以上、諦めざるを得ないのか、流れ弾が一般人へと向かうのを迎撃しています。

「師匠、どうしますか?」

「うーん、一見するとクーデターなんだけど、攻撃している側の動きが、素人じゃないんだよね。流れ弾も、基本的に外すように狙って撃ってるから、不用意に動かなければ、当たらないんだよ。もっとも、相手は素人だから、避けようとして、当たりに行ってるんだけどね」

 師匠は、そういいながら、簡単な魔法を使い、人的被害を出さないように動いています。

「どうしましょうか?」

「軍が、攻撃対象だから、他の組織だって動ける人達に避難誘導をさせたほうがいいけど……」

「とにかく、動きましょう」

 私達は、何をするべきか考えながら、情報を集めるために、動き回っていました。

 そして、一つの考えが、頭に浮かびました。

「師匠、サウスゲート商会の護衛団は、どうでしょうか? あの人達なら、攻撃対象にはならないはずです」

「確かにね。民衆を守ったってことになれば、商会の利益にもなるから、行ってみよっか」

 私達は、サウスゲート商会の支部へ向かいました。護衛依頼を受けて、この都市へ来たため、商会の位置は、覚えていました。

 やはり、サウスゲート商会は、攻撃対象になっておらず、流れ弾による損傷は受けていますが、基本的には、無事でした。

「フィーネ=グリード……何しに来た」

「団長さん、ちょっと相談があってね。護衛団を使って、民間人の避難誘導できないかな?」

 師匠は、単刀直入に要件を伝えました。この状況では、悠長に話している時間はありません。

「それをしたいのではあるが、他の4大商会も襲われていてな。救援を求められているんだ」

「それは、ウェストゲート商会の本部と、ノースゲート商会支部、イーストゲート商会支部が襲われているということですか?」

 4大都市のそれぞれを拠点とする4大商会、そのうち3つが襲撃を受けているというのは、どういうことでしょうか?

 私は、何か作為的なものを感じています。

「そうなんだが、後、うちの副団長を見なかったか?」

「いえ、見てませんが?」

「そうか……」

 どうやら、副団長もいないようです。商会のお偉いさんは、奥で何かしているので、護衛として出ているわけではないようです。

 私達が、どうしようか考えていると、入り口の方に、人影が見えました。周囲からは、副団長という声が聞こえました。

「副団長、どうした」

 副団長は、私達を一瞥すると、声高らかに宣言しました。

「サウスゲート商会が、今回の暴動の首謀者だということは、わかっている。大人しく投降しろ」

 その言葉の意味がわかりませんでした。

 そもそも、この言葉が真実だったとしても、それを何故副団長が知ることが出来るのでしょうか?

 情況証拠としては、十分ですが、ただそれだけです。何かの絶対的な証拠があるわけではありません。

「何を言っているんだ。私達がそんなことをして、何の意味がある」

「証拠は持っている。それに、災厄の魔女とのつながりも見逃すわけがない。彼女を戦力として利用する為に、連れてきたのだろう。私は、今からこれを王都シンフォニアへ持っていく。だが、その前に自ら罪を認め、投降するよう言いに来た。頼む、大人しく投降してくれ」

「何を言っている」

 そういいながら、護衛団長は副団長に近づきました。ですが、副団長は、証拠と思わしきものを、2つ取り出すと、脇から、別の手が出てきて、そのうちの1つを掴みました。

 それは、私達と同時期に雇われた護衛の一人です。

 サウスゲートの近くの街で見かけた時と同様に、だらしなく胸元を広げていました。

「俺達は、二手に分かれてこれを持っていく。中身は同じだ、罪を裁かれるがいい」

 そういうと、2人は、走りだしました。私は、状況が理解できず、ただ呆然とするだけでした。

 そんな中、師匠が、私に話しかけます。

「カノン、サウスゲート商会は、利用されたんだよ。団長、私達が、あの2人を捕まえるから、そっちは、街を何とかして」

「わ、わかった」

 師匠の提案に、護衛団長は、戸惑いながらも賛成しました。師匠の実力は知っていますから、大丈夫だと考えたのでしょう。

 私達は、急いで商団支部を後にしました。そして、先に行った2人の後を追いかけます。

「カノン、どこかで、二手にわかれるはずだから、私は、剣士を追う。カノンは、副団長を追って」

「わかりました」

 副団長は、実力ではなく、政治力でのし上がったと聞いています。実力としては、私でもどうにかなる。そう考えたのでしょう。

 しばらく追いかけていると、二人がわかれました。私達は、決めたとおりに、追いかけます。

 私は、それなりに鍛えているため、置いて行かれることはありません。ですが、捕まえるために魔法を使おうとすれば、今の速度を維持することは出来ません。そうなれば、副団長を逃がすことになるでしょう。それは、避けなければいけません。

 方法としては、2つ。1つは、相手が諦めるまで追いかけること。もう1つは、この仕込み杖の刃が届く距離まで近づき、斬ることです。ですが、どちらも難しいでしょう。一つ目は、いつになるかわからず、2つ目は、相手の反撃が予想されます。今、こうして追いかけていられるのは、私が、彼等の攻撃対象になっていないからです。ときたま、攻撃を仕掛けてくる輩はいますが、それは、あくまでの副団長が、すれ違いざまに、簡単な指示をだしているだけです。前もってわかっていれば、かわすことは簡単です。

 騒ぎを起こしている人では、私を抑えられないと判断したのか、細い道へ入って行きました。そのまま追いかけようとして、曲がれば、私が見えた瞬間に、剣で攻撃してくる可能性があります。そこで、私は、角に差し掛かると同時に、後ろに下がりました。これは、賭けです。もし攻撃してくれば良し。けれど、攻撃してこなければ、きっと逃してしまうことになるでしょう。

 そして、後ろに下がる私の視界に、剣の切っ先が突き立てられました。私は、賭けに勝ったのです。私は、後ろに下がったので、副団長による攻撃を回避しました。ですが、これは、勝負をするための賭けです。

「そこ!」

 私は、仕込み杖から、剣を抜き、一振りしました。

 その切っ先が、辛うじて副団長の手をかすめました。リーチの差は、私では覆せません。そして、そのまま詠唱を行います。詠唱が短く、発動も早い魔法です。

「『風刃(ふうじん)』」

 風の刃が、副団長に襲いかかりました。刃そのものが見えず、速度も早いため、威力は低いですが、回避は容易ではありません。

 それでも、副団長は、戦闘経験で大まかな軌道を感じ取り、後ろに飛び、身を捩りながら刃の大部分を回避しました。

 副団長はバランスを崩していますが、後ろに飛んだ勢いに、私の攻撃の勢いを加算し、転がりながらも、距離を取りました。

 私は、距離を詰めるために走り出します。剣と魔法で付けた傷口から、少し血が垂れています。一つ一つの距離は、かなり開きますが、相手を追うには十分です。それに、最初よりも、距離が短いので、多少であれば、魔法を使っても話されないはずです。

 私は、最下級魔法と呼ばれる、もっとも短い詠唱を唱えます。

「風よ、集え。『風弾(カゼタマ)』」

 使われることすら珍しい最下級魔法です。ただの風の塊をぶつけるだけという単純な魔法です。ですが、狙いを絞れば、相手を転ばせることも可能です。そのため、私は、走るために伸びきっている足を狙いました。

 私の狙いは成功し、副団長は前に転びました。私が、魔法を使うために減速したとはいえ、それ以上に近づくことが出来ました。

 ですが、同じ手は二度も通用しないでしょう。今度は、別の手を考える必要があります。それは、相手も同じ考えのようで、狭い路地に飛び込み、攻撃を加えてくることもなくなりました。

 お互いに次の一手を考えながら走っていると、ウェストゲートの東門が見えてきました。後は、曲がる必要もなく、ただ真っ直ぐ走るだけです。そして、私は腹をくくりました。どちらかが疲れ果てるまで、走り続けるだけです。

 東門は開いていました。恐らく、外から増援を呼ぶ予定だったのでしょう。

 門の外へ出ると、馬がつないでありました。本来は、ここで馬に乗る予定だったのだと思います。けれど、私が追いかけているせいで、馬に乗る時間がないため、副団長は、馬を未練がましく見ながら、走って行きました。2頭の馬がつないであるので、師匠はまだ都市内にいるのでしょう。

 副団長が顔を上げると、途端に勢いが落ちました。私も、遠くを眺めると、驚きました。

 竜の力を与えられていると言われている、このドラグニア王国、その竜の頭をモチーフにした国旗を掲げている一団が近づいてきています。そして、副団長は、その隣にある、部隊の所属を示す旗を見たようで、足を止め、私の方に向き直り、言い放ちました。

「お前の負けだ」

 私には、その理由がわかりました。国旗の横には、竜の爪がモチーフの旗が掲げられているからです。それは、国王直属の最精鋭部隊、今代の英雄と呼ばれている、デュオ=グレイスという騎士が率いている部隊です。何故、そんな部隊が、ここにいるのか、それが理解出来ません。

 2つの旗を掲げた一団が、副団長の近くで止まりまり、デュオ=グレイスと思わしき、金髪の細身の騎士が問いかけました。

「我々は、密命を受け、ここまで来た。君達にこの都市で何が起きているか聞きたい」

 私は、すぐに口を開こうとしました。

 人は、先に聞いた方を真実だと思い込みやすいからです。ただでさえ、根無し草の私と、4大商団が持つ護衛団の副団長という差があるのですから、少しでも有利に動くべきです。

「私は――」

「私は、サウスゲート商団の専属護衛団の副団長をしているものです。サウスゲート商会によるクーデターを知り、それを阻止することを決意しました。これが、その証拠です。さらに、あの魔法使いは、あの災厄の魔女である、フィーネ=グリードの弟子です。恐らく、戦力として用意したのでしょう」

 副団長の方が近くにいたため、私の声がかき消されてしまいました。さらには、証拠を見せつける。それは、ダメ押しの行為です。

「そうか、クーデターか。それでは、君の話も聞こうか」

 このデュオ=グレイスは、私の話にも、耳を傾けるつもりです。

「何故? 普通、この話を聞けば、一方的に判断しませんか?」

「私は、片方の話を鵜呑みにする気はない。全ての情報を集め、私の眼と耳で判断する。だからこそ、国王より、独自に動く権利を与えられている」

 疑問に思いましたが、私の話も聞いてくれるのであれば、全て話しましょう。デュオ=グレイスがどう判断するかは、私の言葉次第です。

 「私は、師匠と二人で旅をしている魔法使いです。この都市には、サウスゲート付近の街でサウスゲート商会に、臨時の護衛として雇われ、来ました。この街の魔法協会に、事態の把握と、対処を依頼され動いています。この街の駐屯兵団が、襲撃を受けているため、民間人の批難を、サウスゲート商団の護衛団に依頼するために動いていたところ、そこの副団長と、妙な剣士が、私達に濡れ衣を着せるために動いているところに、鉢合わせしました。証拠は……、ありません」

 証拠がない。それは、致命的なことです。相手は、今回のために前から準備をしているはずですから、証拠の偽装も、簡単には見破れないはずです。

 私が、どう動くべきが考えていると、背後から、何か大きな音が聞こえました。

「何だ、あれは!」

 騎士団の方から、声が聞こえました。それと同時に、私の横を、何かがとてつもない勢いで、通り過ぎました。

「ぐ……げふぉ」

 例の胸元をだらしなく開けた剣士です。ですが、だらしなく開けていたシャツが、黒焦げになり、ところどころなくなっていました。そして、そこから白い竜痕が覗いています。恐らく、師匠によって吹き飛ばされたのでしょう。私の予想を裏付けるように、後ろから声が聞こえました。

「カノン、何か妙なことになってるけど、どういう状況?」

 師匠です。ですが、タイミングとしては、最悪です。

 騎士団から、ざわざわと声が聞こえます。恐らく、副団長の言葉を思い出しているのでしょう。

「騎士様、あの魔法使いが、災厄の魔女です。そして、こちらにいる剣士が、私と共に、商団を告発するために動いていた協力者です。竜痕を持っているのですから、身元ははっきりしているはずです」

「そうか、では、君の話も聞こう。話してくれるね。フィーネ=A=グリード」

「今代の英雄様が、私の話を聞くのかな?」

 私は、何か違和感を覚えました。ですが、何かわからず、言葉にすることが出来ませんでした。

「私は、自分の眼と耳で判断するからね」

「あっそ、でも、私の弟子がもう話してるはずだから、あえて言うことはないと思うよ」

 確かに、私は大体のことは言いました。けれど、証拠がない以上、説得力に欠ける話です。

「そうか、なら、話は早い。コロナ」

「はい、デュオ様、わかっております」

 やはり、デュオ=グレイスだったようです。デュオ=グレイスが、副官と思わしき、短めの黒髪の女性を呼びました。顔立ちとしては、キツそうな性格をしていそうです。

 コロナと呼ばれた女性が、後ろに控えている騎士団に、指示を与えようとしています。

「フィーネ=グリードと、その弟子を捉えなさい」

 やはり、そうなりましたか。この状況、奥の手でどうにか出来るといいのですが。

 私は、精一杯の抵抗をするために、杖を握る手に、力を込めました。けれど、師匠が、動こうとする私を制止しました。

 師匠を見上げても、何も言いません。

 騎士団が動き始めると、別の声が響き渡ります。

「コロナ、違うよ。こちらの剣士二名を捉えろ」

 騎士団がざわめきました。それもそのはずです。条件が同じ場合、私ですら、コロナと呼ばれた女性と同じ判断をするでしょう。

 デュオ=グレイスの声に一番早く反応したのは、副団長でした。

「何故です。我々が正しいのは、明白です」

「確かに、普通であれば、そちらを信じるだろう。だが、私が、フィーネ=アリア=グリードの身元を保証しよう。そして、彼女は、この国に害をなす存在ではない」

 私には意味がわかりません。ですが、師匠が不機嫌になっていることだけは、理解出来ました。

 騎士団にとって、その言葉がどれだけ重いのかはわかりません。ですが、騎士団は、デュオ=グレイスの指示に従い、二人を拘束し始めました。多少の抵抗を受けてはいますが、流石は、最精鋭部隊です。いとも簡単に、押さえ込んでいます。

 ですが、騎士団の中に、一人、納得の言っていない人がいました。

「デュオ様、フィーネ=グリードの身元を保証するとは、どういうことですか」

 この言葉を聞き、私は先程の違和感の正体を悟りました。この場では、副団長は、フィーネ=グリードとしか呼んでいません。ですが、デュオ=グレイスは、フィーネ=A=グリードと呼びました。確かに、師匠は、そう名乗りますから、知っていてもおかしくはありません。ですが、コロナと呼ばれた女性は、フィーネ=グリードと呼びました。何故、デュオ=グレイスが師匠のAというミドルネームの頭文字を知っていたのか、そこに違和感を覚えたのでしょう。

「コロナ、言葉通りの意味だよ。それと、アリア、そう不機嫌にならないでくれ。君が連絡をくれたのだから、私が来るのは、当たり前だろう」

「今の私は、フィーネだよ」

「君が何と言おうと、私にとって、君はアリアだよ。だが、君が口を聞いてくれなくなると困るから、今はフィーネと呼ぼうか」

 会話の内容から、アリアというのが、師匠のことだということはわかります。ですが、意味がわかりません。

「まったく、あんたは相変わらずだね。とりあえず、今起きていることの詳細を教えるから、部隊を動かしてね」

「ああ、コロナ、その二人を拘束したら、最低限の人数を残し、都市に入ってくれ」

「わかりました」

 そして、師匠が今起きていることを、かいつまんで説明しました。所属不明の集団による、クーデターに見せかけた襲撃、私が知っていることは、それだけですが、師匠は、その所属不明の集団が、長年戦争状態のドラムス帝国の仕業だと言っています。恐らく、剣士の方から聞き出したのでしょう。しかし、方法については、聞きたくありません。

 その後、騎士団が都市へ突入し、あっという間に制圧しました。流石は、最精鋭部隊です。しかし、デュオ=グレイスは、師匠とどういった関係なのでしょうか。それが、謎です。

 

 

 

 

 私達は、魔法協会からの依頼について、報告するために、魔法協会支部を訪れました。もちろん、証明のために、デュオ=グレイスに同行を依頼しました。その際、二つ返事で了承され、疑問に思いましたが、深くは考えないほうがいいでしょう。

「オペラさん、この方が、依頼について証明してくれます」

 デュオ=グレイスを連れて行くと、支部の人達は、固まりました。当然です。今代の英雄と言われる人ですから。

「はじめまして、支部長をしている、シルヴィア=オペラといいます。では、詳細についてお教え願えますか?」

「まず、ここに来た理由だが、アリ……、フィーネが、前に滞在していた街で、柄の悪い、中途半端に弱い白い竜痕を持った剣士が、ウェストゲートに行くから、注意して欲しいという連絡を貰ってね、実際に来てみたら、帝国による襲撃が行われたわけだ」

 デュオ=グレイスは、アリアと呼ぼうとしましたが、師匠に睨まれ、すぐに言い直しました。師匠の胸に劣情を抱いているのでしょうか?

「そして、ちょうど到着したところ、今回の襲撃の中心人物と思われる人物と、彼女達にあったわけだ」

「一つ、お聞きしますが、何故そのような警告だけで、デュオ=グレイス様が、来られたのですか?」

 それは、私も気になります。師匠も、気になったから伝えたという内容にしか過ぎません。それで、英雄と呼ばれる人が来るはずがありません。

「それは、私とフィーネの関係を説明する必要が出てくるが、それを話すことを、彼女が望まないから、黙秘させてもらおう」

「漆黒の竜痕所持者とフィーネ=グリードが、個人的な知り合いとは、外に漏れると、大変な事になりそうですね。支部の人間には、きつく口止めしておきます」

「私としては構わないが、国としては、まずいことになるね。頼むよ」

 竜痕は、純白から漆黒までの色があり、漆黒の竜痕は、現在確認されている中で、最高の竜痕です。噂によると、この家系からしか、排出されていないらしいです。

 私は、細かい手続きを二人に任せ、師匠と休むことにしました。

 

 

 

 

 受付から少し離れ、支部内の師匠が気に入ってる場所へときました。

「師匠、デュオ=グレイスとは、どういった関係なのですか?」

 私は、師匠に聞くことにしました。ですが、師匠は気怠そうにしています。

「昔ね、私が、フィーネになる前の知り合いなんだよね」

「フィーネに、なる前ですか?」

「詳しいことは、時が来たら話すよ」

 それっきり、何を聞いても答えてくれません。そうしていると、デュオ=グレイスが近づいてきました。横には、コロナと呼ばれた女性と、オペラさんがいます。

「それでは、お二人に、魔法協会からの報酬をお渡しします」

 その言葉に、師匠が反応しました。怪訝な目を、オペラさんに向けています。

「報酬は、相談するはずだよね」

「ええ、ですから、これで納得できなければ、交渉してください」

 師匠は、提示された額を確認しています。すると、師匠の機嫌がよくなりました。恐らく、満足するだけの額だったのでしょう。

「カノン、受け取っておいて」

「わかりました。オペラさん、その額で、了承します」

 私達は、報酬を受け取りました。重さがずっしりと手に響きます。これとさっきの報酬を持ち歩くのは、大変です。

「師匠、今朝決めた通り、ノースゲートへ行きますか?」

「んー、そうだね。美味しいもの食べようか」

 私達は、旅の続きをするために、立ち上がろうとしました。けれど、別の声が、それを遮ります。

「まぁ、待ってくれないか? 私から、フィーネ、君に頼みがある」

「やだ」

 師匠は即答しました。それはもう、考える気が一切無いようでした。

 デュオ=グレイスは。その即答に苦笑いしながらも、懐かしそうな笑顔を浮かべていました。

「君は相変わらずだね。私の頼みは、一切聞いてくれない。けど、いつも協力してくれた。まぁ、その後に何かを奢らされたけどね」

 師匠は、断ったにも関わらず、椅子に座りなおしました。話だけは聞くようです。

 それにしても、デュオ=グレイスは、師匠とどういった関係なのでしょうか。

「確か、君はカノンだったよね。私達の関係は、じきにわかるさ。それよりも、頼み事だ。今回の襲撃、やはり帝国の仕業だった。最近、帝国が2つに割れているようでね。その内の急進派が、活発に行動し始めているんだ。私は、この国では切り札として扱われているせいで、迂闊に動けない。だから、協力して欲しいんだ」

 要するに、王国の軍人として戦えということでしょうか。ですが、どこかの部隊に組み込んだとしても、根無し草である以上、常に疑いの目を向けられるでしょう。そもそも、私には、国のためという考えが合いません。

「やだよ。今までのことで、十分に恩は返したはずだから、帝国との戦争に利用される気はないよ」

「フィーネ=グリード、貴女は、登録魔法使いとして、王国の制度を利用している。なら、多少は王国のために働くべきです」

「コロナだっけ? いい? 貴女達の手が回らない地域の依頼を受けてるの。あくまでも、持ちつ持たれつの関係であって、一方的な関係じゃないの。だから、そんな義務はないよ」

 私達は、帝国内も旅をしたことがあります。そこで、いろいろな人に会いました。ですから、そんな人達を敵にする気はありません。そもそも、このコロナという女性は、私達を捉えようとしました。そんな人には、意地でも協力したくはありません。

「別に、君達に軍人として戦えというつもりはないよ。言ったろ、帝国は割れていると。急進派と女帝派の2つにだ。そして、急進派は、王国を支配するつもりでいる。だが、女帝派の目標は、あくまでも平和だ。王国は、周辺国と同盟を結ぶことで平和を維持している。それに対し、帝国は、周辺国を属国とすることで、平和を維持している。そこで、王国から使者を送り、同盟を結びたいんだ。そこで、君に、使者の護衛を頼みたい。王国と帝国の戦争を終わらせるのに、協力してくれ」

 長年、王国と帝国は、大きな戦闘も無く、冷戦といってもいいほどです。そんな中、今回の襲撃が発生した。それは、戦争が再開される可能性を孕んでいました。そうなった場合、私達は、気軽に国境を超えることが出来なくなるでしょう。

「そもそも、同盟を結べる確証はあるの?」

「帝国の4将の一人、技術長官のオメガ=ウーファーと何とか連絡を取れてね、彼が協力してくるらしい。それに、4将の一人である頭領という人物は、王国にスパイを放っているから、私達の動きも知っているはずだ」

 帝国の4将、確か、戦闘を主とする二人にちなんで、キリングカルテットと呼ぶ人もいるらしいです。

 それはさておき、女帝に近い人物と連絡が取れているのであれば、使者を送ることで、同盟を結べる可能性はあります。ですが、急進派の妨害の可能性があるということでしょう。

「いざというときは、私達だけで逃げていいなら、受けるよ」

 師匠は、私達と言いました。つまり、私が同行することを前提に考えています。

「失礼だが、君の弟子は、護衛として働けるだけの実力があるのかい?」

 本当に失礼ですね。今代の英雄と比べれば、弱いと思いますが、並の魔法使いと比べれば、遥かに強いと自負しています。ですから、私のツリ目で、思いっきり睨みつけてやりました。

「カノンは私の弟子なの。デュオは、その意味がわかるでしょ。それに、実力が疑問なら、試せばいいじゃない」

「それもそうだね。カノン、どうだろう、私の部下と模擬戦をしてみないか?」

 本来であれば、部下ではなく、貴方と、と言いたいですが、流石に、身の程知らずではありません。ですから。

「わかりました。受けて立ちましょう」

 

 

 

 

 そんなわけで、私は、デュオ=グレイス率いる騎士団の一人と戦うことになりました。相手は、私を見て、鼻で笑っています。こうなったら、奥の手を魅せつけてやりましょう。ただし、問題は多々あります。

 私は、気合を入れるために、杖を回し、先端を地面に叩きつけました。極めつけに、思いっきり睨みつけました。ですが、やはり鼻で笑っています。私が闘士を燃やしている中、師匠が声をかけてきました。

「カノン、あれはダメだよ」

 私が何をしようとしているのか見透かしているようです。ですが、ここまで来て引き下がれません。

「師匠、無理はしませんので、見逃してください」

「だーめ」

 ダメでした。では、他の手を考えましょう。

「ありもしないものを禁止するとは、師匠はちゃんと負けた時の言い訳を容易してくれるんだな」

「カノン、やっちゃえ」

 師匠、笑顔が怖いです。ですが、思いがけず、師匠の許可が出ました。ならば、思いっきりやるとしましょう。

「なら、最初の魔法を使うまでは、何もしないでやる。お前の最初の魔法が、開始の合図だ」

「わかりました。では、後悔しないでくださいね」

 私は、詠唱を開始しました。一句一句慎重に唱えます。命素と魔素を練り上げ、言霊に載せます。その詠唱は、私が考えたものです。私が、理論を構築し、言葉を組み合わせ、完成させた、私だけの魔法。直接的な攻撃力はありませんが、その効果は、絶大です。

 私の長い詠唱に気付き、騎士団の人達が、悩んでいます。恐らく、知らない魔法の詠唱を行っているため、その詠唱から、どんな魔法か考えているのでしょう。優秀な騎士の一部は、魔法の詠唱を覚え、相手が何をしようとしているのかを理解すると聞きます。ですが、この魔法は複雑ですから、一度聞いただけでは、理解できないでしょう。

 魔法の詠唱が終わりました。そして、その名前を唱えます。

「『風の調(かぜのしらべ)』」

 魔法が発動し、周囲の風を掌握します。私が魔法を使ったので、試合開始となりますが、目に見える効果がないため、相手の騎士は、動けずにいます。ですが、騎士が咄嗟に後ろを見ました。流石の反応です。恐らく、後ろから詠唱が聞こえたのでしょう。

 『風斬(かざきり)』という言葉が響き渡りました。それと同時に、騎士の後ろから、魔法が発動しました。ですが、それで終わりません。

 騎士が、魔法を斬り払うと、周囲から、いくえにも魔法の名前が唱えられました。そして、数多くの魔法が発動します。

「貴様、何をした」

 残念ですが、答える余裕はありません。

 騎士は、その剣を振るい、降り注ぐ魔法に対応しています。このまま続けていても、騎士を倒すことは出来ないでしょう。

 私は、気合を入れ直し、『風の調』を維持したまま、詠唱を開始します。

 騎士は、周囲から聞こえる詠唱にまぎれて、私の詠唱が聞こえたらしく、行動を変化させました。黒に近い灰色の竜痕を使い、その力を身に纏うことで、周囲から降り注ぐ魔法を、その体で受け止めます。

 そもそも、足止め優先で、発動の早い魔法を使っていたため、竜痕の力を使われては、かすり傷すら与えられません。そこで、周囲で唱えている魔法の一部を、一段階強力なものへと変更します。

 騎士は、周囲から聞こえる詠唱の変化に気付き、一瞬気を取られていました。一瞬で済んだのは、流石です。ですが、その一瞬が命取りです。

「『轟炎(ごうえん)』」

 巨大な炎の塊を、騎士へと放ちました。普通の相手であれば、これで終わります。ですが、相手は竜痕所持者です。これで終わるはずがありません。ですから、さらに、別の魔法の詠唱を開始します。

 騎士は、迫り来る炎を、竜痕の光を纏う剣で切り裂きました。そして、私へと近づこうとします。けれど、十分な時間があったため、周囲の詠唱が終わり、剣で斬り払う必要のある魔法が、騎士へと殺到します。

 その結果、騎士はその場に足止めされました。

 絶えず魔法を発動し続けるせいで、次第に杖を握る指の感覚がなくなってきました。ですが、ここでやめる気はありません。それに、今唱えている魔法が、最後になるはずです。

 騎士には、私の詠唱が聞こえているため、焦りが見えています。魔法を斬り払いながらも、少しずつ私に近づいてきています。

 私の詠唱が、終わりに差し掛かっています。

 私は、杖を横にし、もう一つの持ち手に、右手を添えます。そして、一気に剣を抜きました。そして――

「『獄炎(ごくえん)』」

 本来であれば、火球として出現させます。ですが、その漆黒の炎を圧縮し、剣に纏わせました。そして、魔法使いにとって最大のアドバンテージである距離を自ら詰めます。

「ハアーー!」

 私は、力が入らなくなっている手に、無理やり力を込め、漆黒の炎を纏った剣を上段に振りかぶり、正面から斬りかかります。この動作に入ったと同時に、『風の調』を解除したため、魔法の弾幕は消えています。それは、騎士が自由に動けることを意味しますが、騎士は、正面からの斬り合いから逃げることは出来ませんでした。騎士の性分というやつでしょうか、不便なものですね。

 竜痕の光を纏った剣が、私の剣とぶつかり、漆黒の炎が爆発し、周囲へ飛び散りました。

 私は、その衝撃に吹き飛ばされています。炎と煙で騎士の姿は見えませんが、無事では無いはずです。

 私の体が落下を始めました。ですが、すぐに何かに受け止められました。おかしいです。地面につくには早すぎますし、誰かが受け止めるにしても、早いです。

 私を受け止めたものの正体は、すぐにわかりました。風の魔法です。恐らく、師匠が使ったのでしょう。風の魔法が、私を包み、師匠の元へと運びます。

 私は、師匠の大きな胸を頭の裏に感じながら、受け止められました。

「使っていいとはいったけど、無茶をしていいとは、言ってないよ」

「すみません」

 そのまま、師匠に抱きとめられました。なんだか羨ましそうな視線を感じます。きっと気のせいでしょう。

 私は、体内にある命素の大半を使ってしまいました。そのせいで、体が言うことを聞きません。そのため、動くことが出来ずにいると、師匠の手が、頭の上に乗せられました。けれども、撫でるようではなく、硬いものがあたっています。恐らく、手を握った状態で、指の関節を当てているのでしょう。それを理解した瞬間、一気に擦られました。

 とても痛いです。ですが、体を動かしづらいせいで、抵抗出来ません。目で訴えかけようとしても、師匠は後ろにいるので、気付いてくれません。

 しかたなく、私は、騎士の方へ視線を向けると、ところどころ黒くこげてはいますが、基本的には軽傷でした。

 竜痕を持つ騎士は頑丈ですね。

 騎士は、剣を左右に振り、鞘へ入れようとしています。けれど、手が震えていて、中々入れることが出来ていません。恐らく、見た目以上のダメージがあるのでしょう。

「カノン=フェアリ、私の部下にあれだけのダメージを与えるとはな。護衛をするだけの実力は、十分あるということか」

「別に、護衛がしたくて、力を見せたわけじゃありません」

「そうだね。すまなかった。君は本当に、次代のフィーネなんだね」

 次代のフィーネ、私には、その言葉の意味がわかりません。師匠の弟子だからといって、同じ名前を名乗るわけではありませんから。

 デュオ=グレイスは、咳払いをして、仕切りなおすと、師匠へと顔を向けました。

「それで、私の頼みを聞いてもらえるかい?」

「詳細は、聞いてあげる。戦争が終わったほうが、旅はしやすいからね」

 何だかんだ言いつつ、師匠はこの頼みを引き受けるのでしょう。願わくば、今まで通りののんびりとした旅が送れますように。




こんばんは

思いがけず早く出来上がりました。
やっぱり、主人公は、何かしらのとっておきを持っているものです。

それでは、今回もお付き合いいただき、ありがとうございます。
これからも、お付き合いいただけると、幸いです。
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