縫合少女の物語   作:興梠 すずむし

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私がここまで続くとは珍しい
そんなわけでまだまだ縫ってく10針目

※9針目のあとがきにカイネさんを自分なりに描いてみたのでイメージが掴みにくかった人は見てみてね

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10針目

「あぁいや、ほんとすまんかったって!わざとじゃなかったんだ!」

 

『……失せろ』

 

「フフフ、嫌わレちゃいまシたねぇ、リド?」

 

ドームからこもった声を発するのはこの迷宮都市オラリオでも屈指の勢力を誇る【ロキ・ファミリア】に所属する縫合少女、カイネであった。

自然に接され過ぎて忘れていたが、彼らはモンスターなのだ。

油断してはいけなかったと考え直して、構造も定かではないこの場所からどのように脱出するかを考えていた。

幸いにして長時間暗闇にいたからか部屋の形はおおよそ把握できている。

しかし、肝心の出口が部屋の形的にどこにも思い当たらないのだ。

多種多様なモンスター。それも武器を使い、高度な連携をとるイレギュラー中のイレギュラーだ。

コストパフォーマンスの若干悪いこの体は、今現在、野営時に意地を張ってそれほど食べなかったことで空腹の予兆を知らせてくる。

そのような状態では存分に本来の力を発揮できないため、あのイレギュラーたちに攻撃を仕掛けるには通常以上の危険が伴うのだ。

そうとなれば友好的な彼らのことだ。すぐさま攻撃はしてこないであろう。

こちらからも友好的な態度で接し、隙をついて逃げ出すのがいいだろうと判断する。

意を決してドームを解くと、眼前に広がるモンスター達を見据えた。

そのどれもが歓迎している様子であった。

一通り目を向けたあと、リドへと視線を戻す。

じとっとした目を向けてしまうのはご愛嬌であろう。

焦り顔のリザードマンは大量の汗を流して生唾を飲み込んだ。

 

「……カイネ。……よろしくしてやる、クソトカゲ」

 

「お、おう……」

 

「……は?」

 

「あ、いや、よ……よろしくお願いします……」

 

全然友好的にできていなかった。

計画を立てたところで全く意味がなかった。

やはりお子ちゃま。ご機嫌はそんなに早く直らないのである。

 

「ハッハッハ!こんなリドなど見たことないぞ?カイネといったか、面白いやつだな!私はラーニェ。お前と同じ人蜘蛛(アラクネ)だ」

 

「……よろしく。……でも私は人蜘蛛じゃない」

 

そこでモンスター達は揃って首を傾げる。

どう考えても人蜘蛛だろうといった顔をしているのだ。

そんなはずはない、とカイネは考える。

足を見てもしっかりと2足で立っているし、複眼でもない。

かつてのファミリアでは遊び半分で魔石しか食わせて貰えない期間もあったが、【ステイタス】に変動はないと恐怖の塊である元主神に言われたのだ。

爪も骨も金属的性質は持ち合わせていない。皮膚は言わずもがなである。

モンスターのような性質は自分にはない。

人蜘蛛と一致するような点など、どこにもないのだ。

 

「……なぜ、私を人蜘蛛だと言うの?」

 

「ふむ、なぜ……か。それはお前から私たちと同じ気配がするからだ。異形に生まれし者、『異端児(ゼノス)』には特有の気配がある」

 

「……私は、人間。……あなたのように節足は持ってないし足も2本だけ……!壁から生み落とされた記憶も、ないっ!!」

 

「……ふむ」

 

納得のいっていない様子のラーニェであったが、そんなことを気にしている余裕はカイネにはなかった。

魔物本人から一切の躊躇いもなく、化け物だと言いきられてしまい、認めたくない現実を拒絶するように発声に使っている糸が擦り切れんばかりに叫ぶ。

 

「……もう一度、言う。……私には節足がないし、蜘蛛の体も、3つ以上の目も、ない。……あなたと一致しているのは上半身だけ。……私は、人間」

 

それに対して目の前の怪物(ラーニェ)は言う。

 

「何を言う。白銀の頭髪に紫紺の瞳。人間と遜色ない見た目。それこそがかつて人間に恐れられた史上最強の人蜘蛛、『夜編(よあ)みの紫白姫(しはくき)』の特徴だろう」

 

アドバイザーに教えてもらった。

曰く、それは人のようであった。

曰く、それは好んで人を(しょく)した。

曰く、それは中層3層を支配下に置いた。

曰く、それはLv5の冒険者を含むパーティを幾度となく全滅せしめた。

曰く、それの腹に納まったものの数は百を優に超した。

曰く、曰く、曰く……。

 

凄惨な事件であったためにギルド内で詳細に語り継がれている忌まわしい異常事態(イレギュラー)だったという。

 

「……でも、でも……。……私、には……主神(ロキ)に刻まれた【ステイタス】が……」

 

「あ〜、それなんだけどよぅ、セトっち。おめぇ、何か混ぜこまれてんじゃねえか?」

 

─────────。

 

「なんか邪悪な神とかと関わったりしてねぇか?」

 

まだ。まだ。まだ否定材料はある。落ち着け。落ち着け。落ち着いてよ。

心臓がうるさい。上手く息が吸えない。頭が痛い。

 

「以前、ゾンビと混ぜらレて自らの生き血をすすり、肉を貪り食らウようになっタ冒険者の方がいたノです……。でスが、その方から同胞の気配はしませんでしタ」

 

口の中が干上がっていく。肺が痛む。目が回る。立っていられない。平衡感覚が失われていく。

自分が今立っているのか、座り込んでいるのか、寝ているのか。全く分からない。

意識が薄れていく。

心配そうな声色で、怪物(モンスター)たちがこちらへ声をかける。

内容が理解できない。

 

「……ぅ、あ」

 

意識が消えゆく直前、背中が焼け付くように熱かったことだけが感じられた。

 

『余計なことをされるとサぁ、困るんだよネェ?』

 

 




詰め込みすぎた気がする

みんなはどっちが好き?

  • ハッピーエンド
  • バッドエンド
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