意外と時間あったわ
というわけで謎が深まる13針目
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「そん、な……」
「すまない……」
「カイネが、魔物の群れに……ねぇ」
フィンは直感が鋭い。その鋭さは彼の親指の疼きとなって反応を示すのだ。
しかし、今回のモンスターのカイネ誘拐事件は例の混沌が関わっているという線で考えていても一向にピンと来ないのだ。
今カイネに接触することに何の利益も見いだせないのだ。
そもそも、理から外れた神だからといってモンスターを好きなように操れるものなのだろうか。
「おい、待ちやがれっ!?」
走り出したアイズがファミリア最速を誇る
「離、して……!!カイネを助けに行く……離して!!」
「テメェが1人で行って何になるってんだ!!一旦落ち着けって言ってんだよッ!!」
「でも……っ」
「アイズ」
フィンから落ち着いた声がかけられ、アイズの動きが止まる。
「カイネならきっとまだ生きている。あの子の強さは君も知っているはずだ。その場で殺されなかったのならそれなりの知能があるはずだ。まだ生きている可能性は高いんだ。落ち着け、アイズ」
理知的な目をした
しかし、このままでは刻一刻と時間が過ぎてしまう。
そうなればカイネの生存率は当然下がっていく。
いつも死と隣合わせの迷宮では、時間が経てば経つほど死亡の可能性が上がっていくのだ。
それはどうしても受け入れられない。
「今回の遠征目標、59階層の攻略は諦める。予想外の連続であまりにも消耗し過ぎたし、大切な団員をむざむざと死なせるつもりはない。帰還しながら、誘拐されたカイネを捜索する。絶対に見つけるぞ」
フィンの瞳が決意の色を帯び、声には覇気が宿る。
「あぁ、それで異論はない」
「……私も、ないよ」
「いよーし、見つけるぞーっ!!」
それぞれが少女への思いを胸に、アマゾネスの掛け声に応えて声を張り上げる。
ファミリアが一丸となって、大切な仲間の捜索へと当たることとなった。
「あのレベルのモンスター達だ。活動拠点は恐らく20から30階層辺りだろう。そこを中心に捜索。まずは迅速に30階層付近まであがる。行くぞ!」
そんな彼らの捜索範囲ダンジョン30階層のその5階層階層上、25階層。さらにそこから現在カイネのいる20階層での計6階層。
そこは今何かに黒く染められていることを【ロキ・ファミリア】の誰も知らなかった。
………………。
ここはどこだっただろうか。
俺たちは団長や他の仲間と、20階層に来ていたはずなんだが……。
1人の男は暗闇の中、身動きが出来ないまま床に転がってこれまでのことを思い出していた。
どこからともなくスルスルと、何か
しかし、布同士が擦れる音と判断するには違和感のある音なのだ。
「んむ……?」
言葉を発しようと口を開こうとするも、いつの間にか口は閉じられている。
肌に吸い付くような感触から、何やら粘着質なものが口元を覆っているようだというのが分かる。
よくよく目を向けてみれば身体中を黒く細いもので締め付けられているのが見える。
おかしい、と男は思う。
体の感覚が全くないのだ。
頭部は口を覆われているのがわかった通り感覚がある。
肌から血が滲むほどに締め付けられているにもかかわらず、全く痛みを感じないのだ。
不意に、トス、トス、と土を踏むような音が聞こえる。
そして男は、あらん限りの呻き声をあげて気づいてもらおうとした。
通路から見えたのは人影だったのだ。
そして声をあげたことを後悔した。
人影に見えたのはそうだろう。何せ人型なのだから。
暗闇の中でも輝く白銀。そしてアメジストのごとき双眸。
地上にであれば声をかけること間違いなしの容姿であった。
しかし、致命的に人とは異質なのがその下半身。
黒い体色に、紫色に鈍く光る金属質な体、それについた大きな腹部。
しかしながらその先端には本来あるはずの突起物は無い。
そんな腹部を支えるのは4対の鋭利な脚。
返しがついており、刺されば抜け出すことは困難だろう。
────
それも突然変異個体であるのは一目瞭然だった。
ここで、この人蜘蛛を『彼女』と呼ぶことにしよう。
『彼女』は酷く機嫌が良さそうだった。
男の体を見つめて喜色満面の笑みを浮かべているのだ。
チラリと男へ目をやると、おもむろに体を抱き上げた。
男の、『体』を。
にもかかわらず男の視界に変化はない。
男は理解が出来なかった。
自分は床に寝ているはずなのに、何故自分の体は『彼女』の腕の中にあるのか。
『彼女』は男の目の前に腰を下ろすと、上半身についた口で肉を見せつけるように食いちぎって、
やめろ。食うな。俺はまだ生きている。やめろ。俺の体────
男は、『彼女』が自らの体を貪るのをただただ見ているしかなかった。
男は息絶えた。
いや、正確には既に息絶えていたのだが、『彼女』に無理やり生かされていたのだ。
「くふふっ……ふふふふっあは♪」
恐怖に歪んだ頭部を愛おしげに、楽しげに持ち上げて、『彼女』は下層へと下っていく。
黒糸で編まれた
その黒いヴェールの内側は、地獄のような光景が広がっていた。
そこはまさに『死顔博物館』とでも称しようか。
老若男女、種族問わず、様々な頭が置かれていた。
恐怖に歪んだ顔、怒りに目が吊り上がった顔、悲運を憂いた顔、精神がやられて全てを諦めた顔、自らの無力を嘆いた顔、顔、顔、顔。
そのどれもが表情別に整理されて置かれている。
恐怖に歪んだ顔の鑑賞棚に、今、男の頭が置かれた。
「────あぁ、可愛い」
『彼女』は、今しがた全滅させた男のパーティーから奪った魔石を噛み砕きながら、頭のコレクションを眺めていた。
さてさて、『彼女』とは一体……
みんなはどっちが好き?
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ハッピーエンド
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バッドエンド