ごめんね
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「……ここはどこですか」
「……すまん、オレっちも不安になってきた。どこだここ」
「これハ……蜘蛛糸、デしょうか?」
リドの説明では、先程までいた隠れ里はダンジョン20階層らしいのだが……。
そこは地面や壁、天井に至るまでほぼ隙間なく黒蜘蛛糸が張り巡らされていた。
質感としてはカイネの出す糸に近しいだろうか。
隠れ里の入口を隠していた水晶を砕き、『
しばし呆然と眺めていたが、次第にそこら中の糸が振動を始めたことで我に返る。
どうやら、糸の主がこちらに気づいて近づいてきているようだ。
気配の動き方からして、レベル3の冒険者の全力疾走と同等の速度だろうか。
あらかじめ、勢いのままの突撃に備えてカイネは触れた瞬間に絡めとるように糸を仕掛けておいた。
通路から黒い塊が飛び出してくる。
その黒い下半身から生えたほっそりとした人影は、大きく両手を広げると、一気に引いた。
「なっ!?」
そして、数
「……ぅあ……ゲホッ!」
「あれれ?死なないの?」
「!……あなたも、『
「なぁにそれ?どうでもいいわ。よくわかんないけど、あなたからすっごくいい匂いがするの」
流暢に言葉を話す目の前の一風変わった人蜘蛛は、言葉はかわせど話が通じない。
人蜘蛛は両腕でカイネの肩を掴むと、首元に顔を近づけた。
「カイネ……っ!」
レイが羽を打ち出して攻撃をくわえるが、人蜘蛛はカイネを捕縛したまま、羽の射程距離外まで下がった。
その顔は、欲しかったものを目の前にしてお預けを食らった子どものようであった。
ようするに、酷く不満げな表情をしていた。
その感情のままに、今にも彼らを殺戮しようとする勢いで。
腹部を貫かれたカイネだったが、そこは高レベル冒険者。
痛みに思考を濁さず脱出のための策略を練る。
そうできるほどに痛みに強くなったのは前ファミリアの憎き先輩方であったが、ここで初めて感謝することになるとは考えていなかった。
この状況からの脱出方法。腕は強力な膂力を有した上半身によって押さえつけられているため、動かすことは出来ない。
それに伴ってこちらの上半身も固定されているうえに、下半身は宙吊りだ。
今は糸による圧迫で止血しているとはいえ、腹部に重症を負っているために痛みが若干の阻害を招くことが予想され、蹴りを入れても威力が足りないかもしれない。
身体能力として軍杯が上がるのは人蜘蛛だ。
そのため、せめて自分と同じ状態にもっていかなければ勝算はない。
そしてそれができるのは油断しており、最も距離の近い今しか出来ないだろう。
カイネが喉の奥から血の塊を吐き出した。
その様子を見てカイネの状態の深刻さを見てとったリドが助けに動こうとする。
「!? くそっ!おい、カイネ!今助けに行くっ!」
「……ぅ、ゲホッ……!……い、らないっ!!」
「なっ……!?今意地張ってる場合かよ!きついなら頼れよ!」
「ソうです、カイネ!お願いですカら助けさせてクださい!」
カイネは彼らを見ない。
黙ったまま人蜘蛛を見ているのみだ。
リドが舌打ちを1つして、駆け出そうと1歩を踏み出した瞬間、そこら中を覆っていた糸の一部が跳ね上がった。
それは他の糸も連鎖的に巻き付けてリドを捉えていく。
「……だから、言ったのに……!」
目を離さず、砕けそうな程に歯を噛み締める。
あれはカイネも用いたことがある連鎖型捕縛トラップだ。
ただし、捕縛とは名ばかりであり、実際は捕縛対象を時間をかけて絞め殺すための致死性のトラップだ。
連鎖型であるが故に、落ち着いて絡みつこうと迫ってくる糸玉を1つずつ切り払っていけば捕まることはない。
しかしここのようにそこかしこに糸がある場所では見分けがつきにくいため、完全に不意打ちとなる場合が多い。
ここでカイネがマズいと感じた。
野生にしても、ラーニェのような
にもかかわらず、カイネと同様の罠を張る目の前の人蜘蛛は、恐らくノーヒントで張った。張ってあった。
下手をすればカイネと同等の操糸能力をもち、頭が回る可能性がでてきた。
つまり、糸を使った戦い方は危険過ぎる。
相手に糸の組み方を見られればそこで次の手がバレるのだから。
まずい。
この人蜘蛛とカイネの差異は、魔法と魔黑針、それに魂喰。しかしこれは相手にそれなりの手傷を負わせなければ効果がないので手段としての優先度は低い。
打つ手が思い浮かばない。
──────時間が、ない。
人蜘蛛にリドの命が握られている以上、手段をちまちまと考えていると手遅れになる。
ここに、心を無くした縫合少女が再臨する。
みんなはどっちが好き?
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ハッピーエンド
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バッドエンド