そんなわけで良ければお気に入り登録、評価感想の方よろしくね
慎重に慎重を重ね、その進行速度は遅々としたものではあったが、【ロキ・ファミリア】の1団はついに21階層にまで到達した。
精神的な負荷の大きい状況を鑑みて、フィンは1度小休止をとることにした。
「……もう少しで
団員たちは交代で周囲の警戒にあたり、休めるうちに最大限の回復を心がけた。
アイズは許可をもらい、リヴェリアをともなって少しだけ周囲の探索を始めることにした。
残りの帰還に使う体力を残しつつ、範囲を広げていく。
しかし。
「いない……」
「……そう、だな」
場所は20階層入口。
くまなく探したがカイネの痕跡は全くと言っていいほど見つからなかった。
ただでさえ階層全体が糸で覆われているため、痕跡が見つけにくくなっているのだ。そのうえ広大なダンジョンで1人の人間を探すのは困難を極めるだろう。
外敵溢れる大海で特定の稚魚を1匹見つけるようなものだ。
「……戻るぞ、アイズ」
「……」
理性ではわかっているが、感情が追いつかない。
思考が行動に伴わない。
その時、
20階層から微かに響く、
1歩ごとに崩れていくかのような音の変調が耳に入る。
しかし、これはまずい。
このような環境で生き残れるのはただ1つの存在のみだ。
────糸の主。
その登場を想定しなければならない。
そこからの2人の行動は速かった。
なんの合図もなしにほぼ同時に踵を返してファミリアの元へ駆けていく。
伝えなければ今日この日をもって【ロキ・ファミリア】は終わりを告げることとなるからだ。
今は走ること以外に頭を使っている暇はない。
足を動かすことだけを考えて合流を目指した。
………………。
リドたちに簡単な治療を施したあと、隠れ里へ送り届けたカイネは、目の前に残る人蜘蛛の処理について考えていた。
魔物は魔石を砕くと灰になって消えてしまう。
喉を食いちぎった結果、出血多量によって死を迎えた怪物は、強靭なその身を保ったまま沈黙を貫いている。
【狩った獲物は、糧にすべき】
「……」
不意に頭の中から響くのは、強かった、強くあることを願った少女、『カイネ』の声だった。
彼女は、カイネが強くなるための方法を伝えてくれる。
【食べて、強くならなきゃ】
強くなる。そのために必要なことを、伝えてくれる。
【そう、それで私は強くなれる。何も考える必要はない。私に従えば、強くなれる】
「……強く、なれる。……考えなくて、いい」
柔らかで、女性的な上半身に再度、おのが牙をつきたてる。
ブチブチと。肉がちぎれ、噛み潰される音が迷宮に静かに響く。
「……筋張ってて不味い。……生臭い」
黙々と食べ進めているカイネだが、背中に違和感を感じ始めていた。
背中が熱をもっている。
肉を食いちぎり、喉の奥へと送り込む度にその熱量はだんだんと強くなっていくように感じる。
上半身を食べ終えた頃には、カイネを焼き殺さんかというばかりに熱を訴えている。
【まだ、まだ。足りない。食べないと】
「……ぁぐっ!……ぐぅぅ!はぐっ、はぐっ!ふ、ふ、ふぅ、ふぅ……!んぐぅ……!」
身を焼く熱さに耐え、なおも
食べて、食べて、食べて、食べる。
硬い外骨格に隠れた内臓を貪り、肉を
ついには歯が砕けるのも厭わず外骨格までも食らいつき、歯が無くなったら今度は手で折り砕き、細かくしてから飲み込む。
最後に残ったのは、妖しい輝きを放つ拳3つ分程の魔石。
それも砕いて飲む。
もはや体の感覚がなくなるほどに熱は大きくなり、立っているのか伏せているのかも分からない。
カイネの体は何もかもを知覚していない状態で、ゆっくりと糸を吊り下げ、ぶら下がった形になると、自然と
自身の周りに薄らと膜をはり、ゆっくりと回転を始め、人蜘蛛の張った糸を巻き込んで繭を厚く、固くしていく。
回転の方向を変えたり、速さを変えたりしてついには20階層の天井を
糸の上を進んでいた【ロキ・ファミリア】は、糸が巻かれていくことに気がついてからは糸のない範囲まで撤退しているため、20階層にはいない。
誰も見ていない暗闇の中、少女は混沌の想う姿へ1歩ずつ近づいていく。
暗く、狭く、混沌とした繭の中で、独り、強くなることのみを願いながら少女は熱に溶かされながら
彼女が目覚めるのはいつ頃か、彼女が成るのはナニモノなのか、それは固く閉ざされた繭の中、神でさえ知らない。
少し短くなってしまった。
許してクレメンス。
みんなはどっちが好き?
-
ハッピーエンド
-
バッドエンド