縫合少女の物語   作:興梠 すずむし

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7針目
だいたいソードオラトリア沿いにストーリーが進む予定。

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7針目

縫合少女は駆ける。

仲間には不自由なく行動でき、かつモンスターには動きを阻害する働きを持たせる位置取りで、生成した漆黒の糸を敷いていく。

少女の敷いた糸、それはある一定の重量がかかると対象に纒わり付く罠となっている。

今も膨れ上がった馬面にヤギのようなねじれた2本の大角を持ち、赤い目で団員を睨みながら突進を敢行した『フォモール』の踏み抜いた足をその場で絡めとり、転倒を成功させた。

 

「魔法隊、撃てぇッーーーー!!」

 

号令に応えて様々な魔法がモンスターの目を焼き、肉を裂いた。

そして息絶え、魔石とドロップアイテムを遺し、灰となって消えてゆく。

 

「いやぁ、カイネがいると戦闘の楽さが段違いだ、ねっ、とぉ!!」

 

「ちょっと物足りない気もするけれどね」

 

「確かにぃ〜ッ」

 

アマゾネスの姉妹が動きの止まったモンスターを(ことごと)く塵へと変えていく。

しかし、戦闘には余力があるものの、相手も大のヒューマンを優に超す体格を持ち、それに伴った圧倒的スタミナを有する強大なモンスターである。

やはりそれは戦闘において大きなアドバンテージとなるのだ。

徐々に、しかし、確実に冒険者達の体力を奪っていく。

 

「リヴェリア〜ッ、そろそろいけそうー!?」

 

アマゾネスの催促が飛ぶ中、翡翠色の長髪に細くとがった耳、白を基調とした魔法装束を身につけ、浅く水平に白銀の杖を構えた美麗なエルフが詠唱を紡ぐ。

呪文詠唱の補助に縫合少女が傍につき、モンスターを寄せ付けない。

 

「【間もなく、()は放たれる 忍び寄る戦火、免れえぬ破滅。開戦の角笛は高らかに鳴り響き、暴虐なる争乱が全てを包み込む】」

 

足元に展開された魔法円(マジックサークル)は翡翠色の輝きを放ち、無数の光粒が立ち昇る。

モンスターの群れのうち、最も大きな個体は高まる魔力の波動に反応して、同じモンスターでさえも吹き飛ばしながら駆けてくる。

しかし、美しいエルフの顔に焦りはない。

 

「……【纏雷】」

 

縫合少女の糸でさえも動きを止めるに至らなかったが、それはそれ。糸で止められないのならばと糸に雷を纏わせて麻痺状態へ陥らせる。

詠唱は続く。

 

「【至れ、紅蓮の炎、無慈悲の猛火】」

 

しかし、フォモールは持っていた巨大な鈍器を上段から振り下ろし切ってみせた。

その圧倒的膂力もって盾持ちの冒険者たちの一部を吹き飛ばし、全線が揺らいだ。

 

「────ベート、穴を埋めろ!」

 

「……ベートさん、どうぞ」

 

糸から狼人(ウェアウルフ)の青年のブーツに、雷の力が付与される。

 

「ちッ、魔法寄越すのがおせぇぞチビぃ!?」

 

「……チビじゃない」

 

全線を押し広げていた青年が付与された魔法の力でもって速度を上げて急行する。

鈍器を蹴りとばし、軌道を逸らして被害を最小限に抑える。

しかし、完全には防ぎきれずに衝撃で1人の魔法使いが隊列からはじき出された。

 

「レフィーヤ!?」

 

他の大型個体の近くまで放り出されてしまった細身の魔法使いは、血走った赤い目に見据えられて萎縮してしまう。

青くなって震える彼女はそのまま鈍器に叩き潰されるかに思えた。

が、斬撃。

金と銀の光が走り抜けるのが彼女の目に映った。

間髪入れず、フォモールは断末魔をながら首を落とした。

金の少女が無言で剣を振り鳴らし、構えなおす。

 

「アイズ!」

 

アマゾネスの歓呼の声が響く。

未だ硬直から抜け出せていない少女の無事を確認した直後、また走り出した。

後方を攻めていたモンスターへ一気に肉薄し、瞬く間に切り伏せる。

そこからなお、前進する。

他の冒険者と打ち合っていたモンスターの群れへと突っ込んで振るわれるのは近づくモンスターを全て切り刻む剣撃の嵐。

なすすべなく崩れ落ちていく様を見て、どこからともなく小さく賞賛の声があがる。

 

「【汝は業火の化身なり ことごとくを一掃し、多大なる戦乱に幕引きを】」

 

「……姉さん、下がって」

 

自身の妹分の声に反応して身を翻し、跳躍した。

怒りの咆哮を上げるモンスターの頭上を飛び越え、声の主の元へ着地、帰還した。

 

「【焼き尽くせ、スルトの剣────我が名はアールヴ】!」

 

弾ける音。魔法円(マジックサークル)が拡大し、残存する全てのフォモールの足元まで広がった。

戦場全域が魔法効果の範囲内である。

白銀の杖を振りかざし、人類最高火力である魔法が、発現する。

 

「【レア・ラーヴァテイン】!!」

 

立ち昇る無数のの極太の炎柱。

魔物を刺し貫くだけでは生温いとその巨体の全てを飲み込んで焼き尽くしていく。

炎の緋に照らされた冒険者達は各々武器を静かに下ろしていく。

 

「お姉ちゃんって、呼んでいいんだよ?カイネ」

 

「……お構いなく。……アイズ姉さん」

 

「……お姉ちゃん」

 

「……お構いなく」

 

「お姉」

 

「……お構いなく」

 

「───」

 

いや、若干静かじゃない者もいたがこれは放置で良いだろう。

ともかく戦闘は幕を閉じたのだ。

 

………………。

 

レフィーヤがアイズに慰められて、その様子を見てティオナがからかいアイズに抱きつきいた。

それを見てアイズは僅かに口の端を緩めたが、先程の無理な特攻を責められていた。

 

「私も大概だけど、アイズはもっと危なっかしいよ」

 

声を湿らせて話す彼女に申し訳なさを感じて、アイズは

されるがままになっていた。

まだブーブー言っていたティオナだったが、横槍が入って中断することとなる。

 

「気持ち悪いから離れろ」

 

「痛ぁ!?」

 

鋭い雰囲気が特徴的な狼人(ウェアウルフ)の青年、ベートに横合いから蹴り飛ばされて、ティオナが離れた。

 

「いきなり何すんの、ベート!?めちゃくちゃ痛かったんだけど!!」

 

「気色悪いって言ってんだろ。寒気がすんだよ、変なもん見せんじゃねー」

 

ベートを睨んでいたティオナだったが、不意にニヤリと口を歪めた。

それにピクリと反応するベート。

 

「ねぇーカイネー?ベートがいじめるー!」

 

「な、ちょ……待て、てめぇ!?」

 

「……ベートさん?」

 

ベートがカイネに声をかけられてビクッと動きを止めた。

何かと良くしてくれている姉貴分のティオナに、カイネはとても懐いているのだ。

いつもの調子で喧嘩をしていた際、少々事故が起きてティオナに怪我をさせてしまったことがあったのだ。

普段ならばそのようなことは決してないが、その日は偶然が重なって事故が起きてしまった。

その時、ベートは屈辱的な折檻を受けて以来、カイネに頭が上がらないのだ。

屈辱的な折檻については彼の尊厳保護のために黙秘しておこう。

 

「……やりすぎは、だめ」

 

「………………おう」

 

「ぷぷーっ、くっくっくっ……!ベート弱っちいんだ〜!」

 

ベートの額に青筋が浮かぶが、カイネの手前であるために手出しが出来ない。

ここ最近のベートのフラストレーションは溜まりがちである。

 

その後もテントを張る際にもベートとティオナは衝突し、彼女の双子の姉であるティオネは呆れた。

その際にもティオナはカイネを頼ったが、その時ばかりはティオネに非があると一蹴され、ここが好機とばかりにベートがこき下ろし、結果として作業の邪魔になっていたため、付近の天井に2人して吊るされることとなった。

 

「カイネ、おいで」

 

「……ん」

 

この頃は戦闘の後、やることがないとアイズは剣を振るかカイネを抱きしめるかに落ち着いていた。

現在、ダンジョン50階層。

未だ目にした冒険者の少ないその景色を、アイズとカイネは静かに眺めていた。




文章力よ……。

-追記- ティオネ、ティオナの表記が入れ替わって姉と妹が逆になってたので修正しました。

みんなはどっちが好き?

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