「…では、またどこかで会いましょう。」
〈ヘロヘロさんがログアウトしました〉
「…えぇ、また……どこかで……」
誰もいない円卓の間。
ユグドラシルの最終日。
アインズ・ウール・ゴウンのギルド長、モモンガは1人取り残されたように佇んでいた。
サービス終了時間までもう数十分もない。
きっともう、誰も来ない。
「…どこか、って……一体どこで、会えるんでしょうねぇ………」
ぶるぶると右手が怒りに震える。それを振り上げ、怒鳴り散らして振り下ろそうとしたとき、
「ふざけ___」
〈たっち・みーさんがログインしました〉
〈ウルベルト・アレイン・オードルさんがログインしました〉
〈ペロロンチーノさんがログインしました〉
「お久しぶりですー。」
白銀の騎士。
「ども」
山羊頭の悪魔。
「ばんわー!誰かいますかー!!」
ばさばさと羽ばたく鳥人。
「……へ?」
「あ、モモンガさん。今日って最終日ですよね?間に合って良かったです。」
「お、ペロロンチーノさんとログイン被った?悪ぃな、もっと早く来る予定だったんだが…久々にログインしたらアップデートがエグくて。」
「俺も俺も!間に合ったのが奇跡だわむしろ褒めて!」
「ところでウルベルトさん、私ともログイン同時でしたよ?私をあからさまに無視するのやめてもらえます?」
「は?後から来たプレイヤーには一秒でも先に来たプレイヤーのログなんざ表示されねぇんだわ。ユグドラシルやらなさすぎてそんなことも忘れたわけ?自意識過剰。」
「いや時間的差があれだけ短かったら表示されているでしょうが。そちらこそ一秒の意味も忘れたんですか?」
「待って俺達皆ログイン久々なんですよね?アンタらなんで目が合った瞬間喧嘩できるんです?やべぇよwwww」
「_皆さん、来てくれたんですね!」
感動を抑えきれないモモンガの声に、睨み合っていたたっちとウルベルト、遠巻きに笑っていたペロロンチーノがモモンガに向き直る。
「後れ馳せながら。モモンガさん、ペロロンチーノさん、…ウルベルトさん。今日は最後まで居ても良いですか?」
「ッチ。まぁ俺も、最終日は悪魔ロールしたくてな。一緒に日付越えて良いか?」
「ただいま!って言って良いですか?」
「えぇ、えぇ、もちろん!!あの、最期は玉座の間に行こうと思ってたんです。皆さんも一緒にどうですか?」
「良いですね。向こうでスクショ撮りましょう。…あ、折角なのでセバスも入れて良いですか?」
「それなら俺のデミウルゴスも。」
「シャルティアもー!モモンガさん、良い?」
「構いませんよー。そっか、自作NPCか……」
たっちが首を傾げる。
「モモンガさん、貴方が作ったNPCっていましたっけ?」
「はい、宝物殿の領域守護者で…俺の黒歴史になりつつありますけど。」
今度はウルベルトが首を傾げる。
「黒歴史、上等じゃないか。まぁ嫌なら設定を組み直してみてはどうだ?まだ時間はあるし…ほら、アレを持って行けばよりスムーズに設定変えられるだろ。」
顎でしゃくったのはギルド武器。スタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウン。
…ギルド皆の武器を自分が持って良いものか。しかも自作NPCの設定を変えるのがより楽だからという理由で。
モモンガは戸惑って三人を見たが、彼等は口々に賛成し、ついにはペロロンチーノが取り出してモモンガに投げ渡した(ゲームシステム上手渡すことができない)。エフェクトの黒い霧がペロロンチーノからモモンガに流れる。
「…ありがとうございます。ちゃちゃっと直して、玉座の間に連れてきますね。皆さんもNPC掴まえたらすぐ玉座の間に来るようにしてください。」
それぞれの返事を聞き足早に宝物殿に向かったモモンガは、久方ぶりに自作NPCの姿を見た。
「………パンドラ。」
近づけば敬礼を返してくる軍服の卵頭は、しかし一言も発することなく、また敬礼以外に行動することもない。
モモンガはパンドラズ・アクターを〈大袈裟な身振りをして気障な言い回しを好む、根っからの役者〉として設定した。ドイツ語を話すだとかそういった小さな設定も混ぜて。
設定通りならきっと、すぐにでも敬礼を解除してマシンガントークと劇のような挙動をとるべきである。
しかし目の前の
モモンガが彼を黒歴史と言う由縁は、元を辿ればその深刻な設定矛盾にあった。
NPCが派手に動き回るはずがないのに、それを設定して、それを期待して、それが満たされなかったことに失望する。
叶わない夢を見る子供心を、モモンガは自分の人形に見てしまったのだ。
「…はぁ。せめて、この状態に違和感が無いように…あと皆から揶揄われないように変えとこう。」
コンソールを開き、文章を転がす。現状との矛盾に当たるところを消し、矛盾しない程度の理想を新たに付け加える。
〈時折気障な言動をするが基本的には落ち着いた態度を取る。演劇の才能がある。〉
「このくらい。このくらいなら…今パンドラが黙ってても、動かなくても、おかしくないよな?」
答えは無い。
「…時間も無いし、行こうか。『付き従え』。」
コマンドを唱えると無言でついてくる。設定を変えたからか、モモンガはこの沈黙も今までよりは自然に感じた。
玉座の間には既に三人と、彼等のNPCが揃っていた。
スクショを撮る際の位置取りを調整しているのか、玉座の回りに立ちながらああでもないこうでもないと言い合っている。半ば喧嘩になっていたのでモモンガは慌てて声をかけた。
「戻りました。」
たっちが振り返る。
「モモンガさんおかえりなさい。あ、私貴方のNPC初めて見ましたよ。格好良いですね。」
ウルベルトとペロロンチーノもモモンガに注目する。彼等もパンドラズ・アクターを知らなかった。
「はぁ、そいつが噂の黒歴史か。ま、軍服はロマンだから置いておいて。文章設定が厨二病だったとか?…いやそうでもねぇな。」
「分かった、もう設定変えた後なんでしょモモンガさん!」
「そうですけど?」
「えー変える前も見たかった!ネタにできたのに!」
「ネタにされそうだと思ったから宝物殿で変えてきたんですよ…」
たっちが手を叩く。
「はいはい時間も押してるんでもうスクショ撮りましょう!」
「なんでたっちさんが指揮取るんです?」
「あ?」
「ちょ、モモンガさん主導権握って早く!このままじゃユグドラシル最後の場が第六階層の闘技場になっちゃうよwww」
「す、スクショ撮りましょー。まずはプレイヤーだけ、その次にNPC入れて撮りましょうね。」
わたわたと場を収めて玉座に寄る。ギルド長のモモンガが玉座に座り、その右をたっち、左をウルベルト。玉座の上にペロロンチーノが陣取った。
スクショを何枚か保存すると、NPCを呼び寄せ配置する。ペロロンチーノはシャルティアと並ぶため玉座の右側に移動した。
玉座にモモンガ、右にたっちとセバス、ペロロンチーノ、シャルティア。左にパンドラズ・アクター、ウルベルト、デミウルゴス、バランスが悪かったので急遽追加されたアルベド。
しばらくポーズをとってスクショを保存した。
そうしてやりたいこと、やるべきことは終えた。あとは終わりを待つだけだ。
ふ、と空気が緩む。
「あー…楽しかったなぁ…最後らへんは独りで、なんでプレイしてるのか自分でもわからなかったんですけど…うん、今日、この瞬間のためって思えば、続けて良かった。」
モモンガの口からついこぼれ出した言葉に三人は気まずげに身じろいだ。彼等がゲームを辞めても、モモンガだけでこのナザリックを維持し続けたと知っているから。
はっとモモンガが手で口を押さえる。失言だった。
「すみません、どうでも良いことを_」
たっちは首を横に振った。
「どうでも良くないです。」
そしてウルベルト、ペロロンチーノと目を合わせて頷き合った。まだ少し時間はある。悔恨を晴らすには、充分過ぎるほどの時間が。
「モモンガさん。ごめんなさい、置いていってしまって。それと、ありがとうございます。続けてくれて。居場所を保ってくれて。」
「モモンガさん。すまなかった、来ようと思えばいつでも来れたのに…でも、ありがとう。ナザリックが残ってて、俺、すごく嬉しい。」
「モモンガさん、ごめん、ごめんよぉ。俺も楽しかった。俺も姉ちゃんも、皆みんな、楽しかったよ。ありがとう。最後に会えて、良かった。」
「っちょっと、泣かせないで、くださいよっ…リアルで機械が、濡れるでしょ…」
懐かしい友からの謝罪と感謝。温かさをこれでもかと詰め込んだ言葉にモモンガは歓喜をあふれさせた。自分の種族がオーバーロードではなく慈愛の天使だったのではないかと思ったほどに。
この温もりを抱いて終えられて、本当に良かった。
どこか浮き足だった気持ちでまた会話を交わして。
気がつけば、もう本当に終わりが迫っている。
「最後は_やっぱりアインズ・ウール・ゴウンに栄光あれで締めますか。」
「ですね。」
「賛成。」
「おけおけ!んじゃNPCを段の下にさげてーアルベドも元の位置に戻してー…よし!」
モモンガが立ち上がる。横に並び立つ三人と笑い合う。
「それじゃ、せーのっ」
「「「アインズ・ウール・ゴウンに栄光あれ!!!」」」
その瞬間、ユグドラシルの世界は終わり、
新たな時が動き出した。
「「「……………え?」」」
いつまで経っても終わらない世界に、分かりにくい間抜け面を晒す異形が四体いたとか、いなかったとか。
私事ですが、この二次創作を始めたきっかけをば。
某笑顔になる動画に投稿されている、鉄の華の団とオーバーロードのクロスオーバー(???)動画に遭遇してしまい、ドはまりしました。その動画シリーズにはまってる内は頑張って書きます。エタったら誰か書いて(他力本願)。
んで、そのシリーズは書籍版の3巻あたりで完結してるんですね。だからこの二次創作もその辺がフィニッシュになるかなぁと。オチ考えてないんで何とも言えませんが。動画も打ちきりみたいな終わり方でしたし。
では、よろしくお願いします。