オーバーロード 賑やかし要員共【完結】   作:Ugly

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※注意!

この話から最終話まで、オリジナル要素・捏造設定が多分に含まれております。また、オーバーロード第6巻までの記憶をもとに作られているので、大丈夫な方のみお願いします。


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ウルベルトが思わず尋ね返す。

 

「神を召還だぁ?たっちさん1人の意見だったらとうとう気狂いになったかと訊くところだが…」

 

「流石に失礼だと思う分別はあるんですね。頭まで山羊になってたらどうしようかと思いました。」

 

「あ゛?」

 

喧嘩を始める2人を余所にモモンガとペロロンチーノが話を進める。

 

「ペロさん、何故そんな結論に?」

 

「あー、その前に。モモンガさん、黒い仔山羊の魔法覚えてます?」

 

「?はい、〈黒き豊穣への贄〉…イア・シュブニグラスですよね。それがどうかしました?」

 

「流石!で、そのシュブ・ニグラスの元ネタは知ってます?」

 

「えー何でしたっけ…聞いたことはあるんですけど。タブラさん辺りが好きな奴、あのぉ…ド忘れした…」

 

「正解はクトゥルフ神話です!H.P.ラヴクラフトの!」

 

「あー、ありましたねそんなの。それがどうかしたんです?」

 

「法国で、そのクトゥルフ神話の神々に関連する儀式の跡を見つけたんです。文献もあったんで読んでみたんですけど…それによると、リアルに帰れる儀式があるっぽいんです!」

 

「っえ!?そうなんですか!?」

 

モモンガの背筋が伸びる。

 

「でもペロさん、最近まで大した成果は無いって言ってませんでした?」

 

「法国の調査結果だけだったら情報が足りなかったんですよ。ナザリックの図書室で調べたから補完できたって感じ。」

 

「あぁ、そういう…具体的にはどんな儀式するんです?」

 

「あ、『クトゥルフ神話における神々がこの世界に存在する』ことを前提としてるのを念頭に置いてくださいよ。簡単に言うと、この世界に居る神々を1ヶ所に集めて喧嘩させ、時空が歪むんでそこを抉じ開けてリアルに帰るって感じです。」

 

「……………それ、成功します?」

 

あまりにも簡潔に述べられてモモンガは不安しか感じなかったが、ペロロンチーノはあっけらかんと答える。

 

「たっちさんは大丈夫って言ってたよー。」

 

「うーーーーん………うん。いつやるんです?その儀式。」

 

「なるはやで!」

 

なるべく早く。そう言うペロロンチーノは至極楽しそうだった。

 

「というか、全員リアルに帰るんですか?」

 

「え、そこは任意じゃないの?たっちさんと俺は帰る予定だよ。ウルベルトさんは知らない。モモンガさんは?」

 

「…私は……」

 

「…まぁ、戻らないなら戻らないでアリだと思うよ。俺もリアルに帰れたら今度はこの世界に来れるか試す予定だし。」

 

「…あ、この世界に戻るんですね。」

 

ホッと息をつくモモンガ。

 

「こことリアルを行き来できたら最高だけどね。ここの調査もあんまりできてないし。」

 

「思ったより早くリアルへの道筋が見えましたからね。」

 

「うんうん。んじゃ、暇なら明日にでも儀式やろうよ!」

 

「私は良いですけど………ウルベルトさんにも訊きましょうか。_ほら、たっちさん!ウルベルトさん!武器しまって!!話聞いてください!!!」

 

闘技場に向かいそうだった2人の襟首を掴み、モモンガとペロロンチーノはウルベルトに説明を始めることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

明日、リアルへ帰るための儀式をする。

 

夜になって1人、自室へ戻ったウルベルトは考えていた。

ソファに座って部屋を見回す。

豪奢な部屋の内装、ふかふかのベッドやソファ。部屋の外にはメイドが控え、何か望みを言えば大概は叶えてくれる。自身の外見も理想の悪魔然としているし、人型にもなれる。今は悪魔の姿をしていた。

 

リアルはこの世界に比べ遥かにクソだ。少なくともウルベルトにとっては。劣悪な環境に過剰な仕事量、安月給。長生きは出来ないだろうと思っていた。

 

他方、此処に残れば安寧が待っている。

 

この世界に来るまでは、リアルで生きるしかなかった。しかし、もしどちらかの世界を選んで良いと言われれば、答えはもう決まっているようなものだ。だが、リアルに残してきたものがその判断に待ったをかける。

 

 

軽快なノック音が響く。

 

「デミウルゴスか?」

 

予め呼んでいたNPCの名を出すと、肯定が返ってきた。

 

「はい。」

 

「入ってくれ。」

 

静かに入室するデミウルゴスにウルベルトは己の対面のソファを示す。慇懃に礼を尽くしてやっと座るデミウルゴスを眺めた。

どこまでも己の理想を体現したような男だなと思う。そういう風に彼を作ったからだ。

 

メイドが紅茶を給仕して部屋を去った。こちらも前もってウルベルトが頼んでいたので、デミウルゴスにも紅茶が出されて2人分の紅茶が湯気を立てていた。

 

前触れを置かず、ウルベルトは本題を切り出す。

 

「明日、リアルに帰るための儀式をする。」

 

そのたった一言で、薄い笑みを浮かべていたデミウルゴスが息を詰めた。人外の聴覚でそれを感じ取り、少し申し訳なくなる。

 

「リアルへ、でございますか…」

 

「あぁ。つっても、リアルにずっと留まる予定はねぇがな。永住するならこっちだ。ただリアルにやり残してきたことがあるから、片付けてきたいだけで。」

 

「っ左様ですか!?こちらに戻られると!」

 

ウルベルトの言葉に一喜一憂するデミウルゴスに苦笑してしまう。ここまで可愛げのある性格にした覚えはない。

 

「だがまぁ、多分大丈夫だとは思うが…儀式が成功するか確実にはわかんねぇし、リアルからまた此処に戻れるかもわかんねぇ。下手を打てば2度と戻ってこない。だから、もし俺が死んだらモモンガさんをよろしくな。」

 

そう言うとデミウルゴスは一転して絶望したような顔になる。

 

「……そ、こまで危険であるのなら、先にシモベに儀式をさせては…いえ、そもそもそこまでして戻る価値がリアルにはあるのでしょうか?」

 

「シモベにはさせられない。リアルに肉体がないから俺達以上の危険に晒すし、その点で俺達と条件が違うから安全確認にさえならない。戻る価値があるかどうかは…どうだろうな。だが、こんな俺にも親しい奴はいたし、やるべきことだってあった。何より、生まれた場所を離れるんならケジメくらいはつけたい。…悪いな、デミウルゴス。もしかしたらこれが今生の別れだ。」

 

「…至高の御方がなさることに、我々が異を唱えることがありましょうか。」

 

「もしかしたら、帰ってきた俺は至高の御方ですらねぇかもな。リアルでは人間だって話は前したよな?リアルの種族_人間のまま戻ってきたら、俺はもうお前と話す資格もないほど矮小な存在なのかもな。」

 

「っそのようなことはあり得ません!例えどのようなお姿になられても、私の創造主たるウルベルト様であらせられることにお変わりはありません!」

 

ウルベルトはデミウルゴスに、リアルの事情をある程度話していた。リアルには人間しかいないことも、自身が人間であることも話した。

 

だが、それだけでシモベの忠誠は変わらなかった。人間であろうがそうでなかろうが、御方は御方、その他はその他なのだ。デミウルゴスにとって、種族に関する感情はあくまでも御方以外の存在に該当するものだ。

 

「そう、か?それなら安心だな!」

 

けらけらと軽やかに笑うウルベルトの心情を推し量ることは、深読みの悪魔ことデミウルゴスにはできなかった。

 

それからは互いのの趣味の話や仕事の話をした。何気ない会話だったが、これが最後かもしれないと思うだけでデミウルゴスは胸が引き裂かれるような思いだった。

 

それじゃあまた明日。紅茶が飲み干される頃にデミウルゴスはウルベルトの部屋を出た。

 

ドアが閉まって、ほろり、とどうにか耐えていた涙が溢れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

明日、リアルへ帰れるかどうか決まる。

 

ペロロンチーノは1度リアルに帰り、またここに戻ると決めていた。もちろん、その不確実性やリスクは承知の上で、だ。

 

彼はリアルもこの世界も、一方を選びがたい程度には好きだ。リアルには家族やゲームが存在するし、この世界には彼を慕ってくれるものが沢山居る。どちらも選びたい。どちらも切り捨てたくない。

故に、彼は儀式で1度往復して安全性を確かめ、以降も可能な限りリアルとこの世界を往復して生きていこうと決めた。

 

彼の嫁、つまり妻と公言しているシャルティアはそんなペロロンチーノを止めることはなかった。止めたところで止まってはくれないと、創造物としての勘で理解していた。

 

最後の夜。

ペロロンチーノは自室で明日の呪文や儀式の手順を見直し、シャルティアはその側に侍る。書類を扱うペロロンチーノは人の形をとっていた。

いつも騒がしい2人にしては珍しく、静かな時間が流れていく。

 

だがその沈黙も不意に破れた。

 

「ねぇシャルティア。」

 

「何でござんしょう?」

 

「もし俺が戻ってこなかったら、シャルティアは好きに生きて良いからね。」

 

ペロロンチーノはそう言いながら、シャルティアの頭を優しく撫でる。一瞬それに心地よさそうな顔をしたが、すぐにハッと我に帰ったシャルティアは真剣な顔をした。

 

「なぜ、そのようなことを仰るのでありんすえ?このシャルティア、ペロロンチーノ様に操を立てた以上、他の殿方に靡くことはありんせん。」

 

「そっかぁ。それは、俺としては嬉しいけど…いや、兎に角、俺がシャルティアに自由に生きて良いって言ったことは覚えといてね。シャルティアの幸せが一番だから。」

 

シャルティアにはネクロフィリアを始めとした性癖絡みの設定が多い。それらの設定に沿えば、モモンガもウルベルトもたっちも恋愛対象に入る。

もしかしたらペロロンチーノは2度と帰ってこないかもしれない。かといって儀式をしないわけにもいかない。彼の望みは2つの世界で成り立つからだ。

 

そして儀式を行う以上、シャルティアは未亡人になってしまう可能性が僅かでも残っている。ゆえに、第2の夫を迎えるという選択肢を示しておきたかったのだ。それをシャルティアが選ぶかどうかは本人の自由だが。

 

幸せになってほしい。

 

恐るべき戦乙女、第1~3階層守護者たるシャルティア・ブラッドフォールン。そんな彼女に創造主が願ったのは、幸福という酷く凡庸なものだった。

 

しかしシャルティアの心は、ペロロンチーノが言葉を重ねる度に翳っていく。

 

本当に幸せを願うのなら、どうして己のもとを去るのか。

 

ずっとここにいてほしいと、そう言いたかった。だが、シャルティアの幸せの象徴たる彼は、それだけは叶えてくれないのだ。

 

だから、彼女は設定された最上級の笑顔でただ頷いた。

 

「御身のお望みのままに。シャルティアは普段通り、幸せに生き抜くとお約束いたしんす。」

 

 

 

 

 

 

 

 

明日、きっとリアルへ帰れる。

 

たっちは期待に胸を踊らせていた。

 

自室へ戻ってからは、散らかしていた部屋を来た時の状態へ戻すついでにアイテム整理をしていた。側にはセバスが控え、たっちの手伝いをする。

アイテムを傷つけないためどちらも人の姿をしていた。

 

「♪~♪♪~♪~。あ、こんなのもあったのか…これはモモンガさんに渡して、これは明日使って…」

 

鼻唄を歌って上機嫌なたっちと対照的に、セバスの表情は強張っていた。元々鉄皮面だったため違いがないのが幸いというべきか。

 

がちゃがちゃと音を立てながらアイテムを漁り、要るものと要らないものとにわけていく。

 

しかしただ仕分けるだけというのは退屈だ。

だが作業BGMなどあるはずもなく、退屈しのぎのためにはたっち自身が話す他なかった。

 

 

ぽつりぽつりと、セバスを相手に語る。たっちにとっては別に大した話ではなかった。

 

ただセバスを見ていてふと思い出した、彼を作ろうと思ったきっかけの話だ。つまりセバス誕生に関わることだった。

 

 

たっち・みーというプレイヤーはアーコロジー内で育った所謂「勝ち組」と喚ばれる類いの人間であり、他のギルドメンバーと比べても裕福で忙しい生活を送っていた。

だがそれは別に特権階級レベルの金持ちであったわけではない。彼には家族を養う義務と、正義を守る社会的役割がある。

 

そんな彼が「居たらいいな」と望んだのが、自身を助け、家を守る執事であったのだ。ユグドラシルで作ったNPC「セバス・チャン」は、彼がリアルで求めていた人物であった。

 

そんなことをつらつらと語り、最後にたっちは深く考えずに言った。

 

「お前がリアルに居てくれたらなぁ。」

 

「では連れて行ってはくださいませんか。」

 

即答。

思わず手元のアイテムから顔を上げて隣のセバスを見る。鋼鉄の執事は変わらぬ表情のまま続けた。

 

「私の存在理由、その根幹がたっち・みー様のリアルにあるのでしたら、私もそこへ連れて行ってはくださいませんか。ご迷惑はお掛けしません。」

 

「いや、…駄目だろう。お前はナザリックの執事だし、リアルに連れて行ったらどうなるかわかったもんじゃないんだ。」

 

ほぼ同時刻にウルベルトがデミウルゴスの提案を却下していたが、その理由もこれだ。ナザリックの面々はリアルに元々存在しない。そんな者を連れて行っては最悪死ぬどころの話では済まない。

 

「ですが先程、たっち・みー様は私をリアルで必要として創造されたと。ならば例え消滅の危険があろうとも、私がリアルへ移ることこそ私の本来取るべき行動であると愚考いたします。」

 

たっちは顔をひきつらせる。確かにそう言った。

重ねて言うがこの話に大した意図はなかった。ただ、明日でセバスを見納めかと思って話しただけだ。

 

だがことここに至っては真剣に考えざるを得ない。目の前の執事は本気で、どうなるかわからない危険地帯に足を踏み入れようとしている。

 

「………………少し、考えさせてくれ。」

 

まさかこの男にここまで困らされるとは思っていなかったたっちは、長考の末に返答を先延ばしにした。

 

 

 

 

 

 

 

明日、皆がリアルへ帰ってしまう。

 

モモンガは骸骨の姿で自室のソファにもたれ掛かり、だらりと脱力していた。

 

ウルベルトとペロロンチーノはまたこの世界に戻ってくると言っていた。だがたっち・みーは恐らくもう来ないだろう。転移してきた当時の彼を思い出しながらモモンガは息を吐いた。

 

明日から少しの間は確実にプレイヤー1人の状態になる。下手を打てばこれからずっと。そして上手く行っても同類の仲間は2人。

 

かつて41人もいたギルドの末路…いや再出発としてはどうにも寂しいものだった。

 

「あ~ぁ…」

 

ふかふかの布地に埋もれる。その向かいには複数人用のソファがあり、パンドラズ・アクターとアルベドが座っていた。

2体のシモベは着々と儀式の準備を整えていたが、ふとモモンガに問いかける。

 

「モモンガ様。そこまでお嫌でしたら、儀式など中止してしまえばよろしいのでは?」

 

支配者の演技をする気力もなく、ソファから顔すら上げずに否定する。

 

「はぁ?何を言っているんだパンドラ。皆がやりたいって言ってるんだからやるしかないだろ。たっちさんなんか家族が待ってるんだし。」

 

「ですが、モモンガ様は此処ナザリックの長であらせられます。そのモモンガ様のお声が通らぬはずありません!今までもそうでしたでしょう?」

 

「アルベド、お前もか。いや、ゲームでは確かに、多数決でも決まらなかったら俺の判断が最終決定になってたけど。リアルでは違うんだよ。俺とあの人達は完全に対等だ。」

 

ふと今の会話に認識の齟齬を感じて身体を起こす。

 

「ちょっと待て、リアルでも俺が41人のリーダーだと思ってたの?だとしたら俺達とお前達の間に相当な認識の差があるんだけど。」

 

頷くシモベ達。

モモンガは此処にきて己が素の口調になってしまっていることが気にかかった。が、ロールプレイをする公の場でもないからと繕うのを諦める。

ロールプレイより説明に頭の容量を割かなければならないからだ。

 

「…まず、リアルとユグドラシルの違いから確認しようか。」

 

それぞれの夜が過ぎていく。

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