オーバーロード 賑やかし要員共【完結】   作:Ugly

7 / 13
やべえ気がついたら1年経ってた!
書いてる人のパソコン上で完結してるので完結します!


7

王国、城内の騎士訓練場にて。

 

王国戦士長ガゼフ・ストロノーフは部下達と共に鍛練に励んでいた。己の高みを目指し、部下達を育て、王の懐刀としていつか真価を発揮することを待つ。それが、彼にとっての日常だった。

 

が、そんな「いつも通り」は唐突に終わりを告げる。

 

ガゼフが部下と模擬戦を終えた瞬間、空間に闇が広がった。

 

人ひとりが通れそうな闇から、三人の人間が歩み出てくる。

 

「あ、ガゼフさん。久しぶりですね。覚えてますか?モモです。」

 

「よぉガゼフさん。ベルだ。また会ったな。」

 

ガゼフは彼らを見た瞬間に思い出した。

付き添いの女性は初対面だが、話しかけてきた人物はカルネ村の英雄四人のうち二人だ。

「ベル」に至っては偶然再会したかのような言い方をしているがどう考えても彼らから会いに来ている。

 

「モモ殿、ベル殿!もちろん覚えているぞ、その節は世話になったからな!して、今日はどのような用件で___いや、すまない今私は職務中で___待ってくれ、城には許可を持って入ったか?そもそもどうやって入って来たんだ?」

 

突っ込みどころの多すぎるご登場にガゼフは何から言えば良いのかわからなかった。

 

とりあえず不審者に警戒して抜剣しそうな部下達を宥め、休憩室に三人を移動させてから城内入場許可証を慌てて発行するのだった。

 

 

 

 

ガゼフが許可証を「モモ」もといモモンガに手渡す。

 

「__とりあえず城にいる時はこの許可証を持っていてくれ。それからそこの方は自己紹介をお願いしたい。」

 

ユリは一礼して言う。

 

「リリーと申します。モモさ_んとベルさんの仲間です。」

 

一瞬モモ様と言いかけたがどうにか耐えた。「モモ」であるモモンガと「ベル」であるウルベルトもホッと息をつく。

 

「私はガゼフ・ストロノーフ。王国戦士長だ。よろしくお願いする、リリー殿。」

 

「はい、よろしくお願いします。」

 

「それで、貴殿らはどのような用で?」

 

モモンガが代表して言う。

 

「実は私達、冒険者になるんです。けれどこの辺りには疎いものですから、ガゼフさんの力を借りようと思いまして。」

 

「なるほど。国の人間は、冒険者ギルドに大きな介入はできないのだが…まぁ推薦と口添えくらいなら協力できるだろう。……ううむ。貴殿ら、もし良ければこの国の王女様に会ってみないか?」

 

「お、王女様ですか?」

 

「あ?なんで_」

 

「王女様に面会となるとかなりの時間を待たされるのでは?申し訳ありませんが私達はあまり待てませんよ。」

 

富裕層の存在にウルベルトが不機嫌になるがモモンガが割り込む。ユリが心配そうに見ているのに気がつき、ウルベルトもひとまず取り繕った。

 

「実はカルネ村の一件で王女様、ラナー様が是非会いたいと仰っているんだ。ラナー様にはベテランの冒険者チーム『蒼の薔薇』の友人がいる。私からラナー様に申し上げておけば、『蒼の薔薇』とも面識が持てるだろう。特例として彼女らの昇格試験を受ければ、貴殿らの実力に見合ったランクから冒険者を始められるようにできるのではないか?」

 

「……良いのか?こちらにとってえらい好条件じゃないか。」

 

ウルベルトの目を見てガゼフは頷く。

 

「私には恩がある上、王国に貴殿らのような優秀な人材はできるだけ留めておきたいという気持ちもある。ラナー様の件に関しては運が良いとしか言えないが。」

 

「悪ぃがもう一つ良いか?」

 

「内容によるな!」

 

「俺は唖者、もしくは極度の人見知りってことにしてくれねぇか。上流階級と話す口は持ってないんでね。おしゃべりはモモさんとリリーさんに投げるわ。な?」

 

モモンガは苦笑する。

 

「私とリリーさんは構いませんよ。昔からそうでしたし。ガゼフさん、お願いできますか?」

 

「う…む。だが、カルネ村では普通に話していたのだから、口が完全にきけないというのはいずれ嘘だとバレてしまうかもしれない。喋りに難のある人だと伝えておこう。」

 

「よろしく。で、面会はいつ?」

 

「私の予想では、明日の午後にでも会えるだろう。ラナー様はあまり政務に関われず、いつも退屈を嘆いておられるからな。蒼の薔薇もカルネ村の件は知っているから会えるだろう。それまでに冒険者登録だけでも済ませておこう。ついて来てくれ。」

 

ガゼフの後を三人の人間、に見える異形達がついていく。

 

「ガゼフさんお仕事は大丈夫なんですか?」

 

「入場許可証と共に休みを貰ってきたので問題は無いさ。それより御三方、宿の手配などは_ん?そもそも宿を取るつもりはない、のか?」

 

「あ、はい。夜には帰りますから宿は取りませんよ。」

 

「まぁ、『突然どこからともなくやってくる魔法』があるのだから宿も必要無いか。_と、冒険者ギルドはこの門から大通りを真っ直ぐ行って右だ。今回は私が案内するが、貴殿らのみで行くこともあるだろうから覚えておいて損はない。あぁほら看板が見えてきた。」

 

案内人のガゼフがまずギルドの扉を開けて中に入り、内開きの扉をガゼフに続いて入ったユリが開いたままに保つ。モモンガとウルベルトのために扉を維持するユリを見てガゼフは違和感を抱いた。

ユリのその態度は、冒険者仲間というよりも王城で見かける使用人のものに見えたからだ。しかし冒険者には様々な過去を持つ者が多い。後ろ暗い経歴も当然ある。深くは突っ込むまいと、王国戦士長は受付に案内を進めた。

 

「すまないが冒険者登録を三人分頼めるだろうか!」

 

「はいかしこまりまし、お、王国戦士長様!?」

 

ざわりと周囲が揺れるのをモモンガとウルベルトは興味深く眺めていた。しかし彼らのそんな余裕も、「字が読めない」という事実に打ちのめされ脆くも崩れさってしまうのだった。

 

 

 

 

 

一方その頃法国では〈完全不可知化〉をかけたたっちとペロロンチーノが、シャルティアとシズを連れて忍び込んでいた。

 

裏通りを歩きながらたっちはペロロンチーノに話しかける。

 

「拍子抜けするくらいあっさり侵入できましたね。」

 

「ね。探知系魔法は張ってないっぽいですねー。でも陽光聖典に監視魔法仕掛けてた国なのに…」

 

「そういえば、陽光聖典ってガゼフさん殺しに来た部隊でしたっけ?今どうなってるんです?」

 

「なんか改宗したらしいですよ。」

 

「え?」

 

「拷問してる途中で、陽光聖典の奴らが信仰してる神ってのが死の支配者(オーバーロード)のスルシャーナってプレイヤーだって分かったんです。で、拷問官達が色々やって、信仰対象をスルシャーナからモモンガさんに変えさせたって…だから陽光聖典の面子はモモンガさん信者ですよ。」

 

「へー…まぁ結果的にあんまり殺さずに済んで良かったと言うべきでしょうか…?」

 

「良かったんじゃないです?今は慈善事業の旅に出してるみたいですよ。」

 

「え?なんでです?」

 

「だってナザリックに置いてもやらせること無いし…持て余してるんですよね正直。情報も絞ったし、また必要になったら使えるようにとりあえず生きながらえさせておく方針だってモモンガさんとウルベルトさんが言ってました。」

 

「なるほど。しかしモモンガさんが信仰対象の神ですか…似合うような似合わないような…」

 

「どっちかってーと魔王って感じですよねー!」

 

「ですね。まぁそれを言うなら私達皆ですけど。」

 

「あれ、正義の味方が何か言ってら。」

 

「現在不法入国中の身ですのでー。…お、あれは議事堂的な建物じゃないですか?ちょうど国の中心付近にありますし。」

 

「入ってみますか。シャルティアとシズは大丈夫?疲れてない?」

 

四人は一度立ち止まり、たっちとペロロンチーノはNPC二人の顔色を確かめた。

 

「大丈夫でありんす!」

 

「…支障ありません。」

 

そこに偽りも疲労の色も無いことを確認し、たっちは再び歩を進める。

 

「では行きましょうか。議事堂とか図書館とかだと当たりですかね。」

 

「最悪なのはただの神殿とか観光地ってパターンですかね。そういえば、最近この国の神殿の一つで、爆発事故が起きたところがあるそうですよ。怖いですね~。」

 

「ペロさん、あんま怖がってないように見えるんですが…しかし信仰の象徴が爆破ですか。何やら物騒なことが起きているんですかね。巻き込まれないように注意しないと。」

 

「でも爆発事故って逃げられなくないです?」

 

「確かに。そのときはもう潔く死を受け入れっというか私達すごい危ない国に来ましたね?」

 

「んー………………。まぁどうにかなるでしょ!」

 

「間が怖いんですが。」

 

「ぶっちゃけ俺らが地雷原でタップダンスしてる現状は変えられないので~。だってあれでしょ?ここギルド跡地みたいなもんなんですよね?」

 

「昔プレイヤーが居たという事実から考えるとそうなりますね。下手したらNPCが残ってるかもしれませんし。」

 

「なら、攻ギルド戦として心構えしとかなきゃですよ。この国のどこにトラップがあってもおかしくありません。それこそ爆破トラップとかね。」

 

「あー、そうですね。こちらとしては争う気は無いのですが…いえ、情報ぶっこ抜こうとしてる時点で充分攻撃の意思アリとして認識されますか。ままなりませんね。いっそプレイヤーが生きていたなら、話し合いができたのでしょうが。」

 

「えー、ウチのギルドの悪名聞いて話し合いができますかね。」

 

「でもここのプレイヤーにはスルシャーナみたいな異形種もいたんでしょう?…いや、そういえば法国は人間至上主義でしたね。なんでしょうすごく矛盾している気がします。これどこかで歴史歪んでません?」

 

「んん…歴史的事実が隠蔽、改竄された。もしくはどこかで教義が捻じ曲がった、ということですか?やだぁ、ここまで来てゲットした書物が改竄されてたら俺立ち直れないんですけどー。」

 

さめざめと泣くペロロンチーノ。やる気が明らかに下がっている。そしてそんなペロロンチーノを前にシャルティアとシズは慌てふためいている。

たっちはため息をつき、事態を収めるためにとりあえず「ご褒美」を提示することにした。

 

「………ま、何にせよ手がかりはここにしかありませんし。収穫無かったら観光して引き上げましょう、ね?」

 

「観光」の言葉にペロロンチーノは顔を上げた。その目は期待に輝いている。

 

「…収穫有っても観光しますよー!」

 

「はいはい。どのみちモモンガさんとウルベルトさんにはお土産買って帰らないといけませんからね。」

 

「モモンガさんとウルベルトさんどうしてるかなー。そもそもどうやってガゼフさんに会うつもりなんだろ。」

 

「あぁ、ウルベルトさんがガゼフさんに〈影の悪魔〉仕込んでマーキングさせてたそうですよ。そのマークされた位置に〈転移門〉発動して行くとかなんとか。」

 

「〈影の悪魔〉なんてどこで…あ、カルネ村ですか。流石ウルベルトさん、賢いですね。」

 

「小賢しいというんですよああいうのは。」

 

「たっちさん、本人がいないとこで悪口言うのは禁止ー。NPCの教育に悪いでしょ。話題に出した俺も悪いんですけどね。」

 

「む。すみません、気をつけます。…妻にもそんな風に叱られたことあったなぁ、子どもの教育に悪いって…」

 

「俺も親戚の子と一緒にエロゲしてたら姉ちゃんに怒られて_」

 

「いやそれは怒られて然るべきですよ。」

 

二人が呑気に会話している間も、シャルティアとシズは二人の会話にしっかりと耳を傾けていた。そして、目の前の主君が危機的状況に身を投じていることも理解した。

 

シャルティアは心中で、創造主達が何故そんな危険地帯へ出向かなければならないのかと嘆いた。

プレイヤーはNPCと違い、ナザリックの外へ幾度も出た経験がある。故にプレイヤー自身が外の調査へ赴くというのは理にかなった話ではあるのだが、だからと言って危険に晒して良いわけではないのだと心の底から叫びたい衝動が吸血姫を駆け巡る。

 

 

シズの心境も概ね同じだった。

だが、シズは供を命じられた際に「ギミックを把握しているシズを易々と表舞台に出せない」「ガンナーとしての能力を外に知られたくない」というプレイヤー達の憂慮を聞かされている。それでもシズが供として選ばれたのは、彼女なら瞬間的な記録が可能だからだった。

 

シズ1人を例に取ってもこれだけの懸念が付き纏うのだ。NPCを外に出すというのはプレイヤー達にとって不安要素そのものであり、未踏の地であろうがプレイヤー自身が前線に立った方が安心と思われていることをシズは理解していた。

 

ならば、せめて最大限記録係としての役目を果たし、一刻も早く帰還すること。シズは己の目標をそう定めた。

 

四人は騒ぎながらも人知れず、建物の中へ消えていった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。