「そうか…それであんな言い方だったのか……。手前はてっきり」
どうやら俺は椿さんに最初の態度の八つ当たりをしていると勘違いさせてしまった様だった。
「ええ、もうティアマト様が許したので、俺に貴方を責める理由はありませんよ。」
「そうか、そうか。」
笑顔で頷く椿さんに俺はお互い勘違いが解けたと思い、そこでようやく張り詰めた空気が和らいだ気がした。
「それで、ラース殿は鍛治はどの程度の腕前だろうか?」
「貴方方に見せるのも恥ずかしい程度の腕前です。俺の師匠である親方からは結局、及第点までしか評価されませんでしたしね。これが俺の作品です。」
そう言って、俺は今のダンジョンで使っている"鋼の劔"を椿さんとヘファイストス様に渡した。
「確かに。これでは売り物にはならんな。剣のバランスは悪いし、仕上げの詰めは甘い。鋼の劔の相場は5万ヴァリスだが、これでは良いところ1〜2万ヴァリスが限度だ。だが本職ではなく趣味でここまで行けたら筋が良いと思うのだが主神様はどう思うか?」
「確かに、椿と同じ意見よ。ラース君はいつから鍛治を行なっているの?」
「鍛治は2年前に学びました。しかし、付きっ切りで学んだ訳ではなく親方に鍛治の基本を学んだ後は、親方の鍛治姿を見て学び、作品を作って評価してもらうを繰り返していました。ここ半年以上前からは俺も忙しかったので鍛治は一時辞めてました。」
「つまり、実質1年程度でここまでの物を仕上げたのね。中々やるじゃない。ラース君は此れからは鍛治は再開するのかしら?」
「そう考えています。その為にお金を貯めてホームと鍛冶場を借りて今度は、鍛治を極めていこうと思っています。」
「そうなのね。今日はありがとうね、ティアマト、ラース君。今日はとても良いものが観れたわ。それで、お礼なんだけどホームになる建物と鍛冶場を与えたいのだけど、椿はどう思うかしら?」
「主神様、良いと思うぞ。それと手前からは個別にラース殿の鍛治を見ても良いのだが、ラース殿は良いだろうか?」
「え?あ、はい。いや俺たちにとても良い条件何ですが、流石に貰い過ぎて無いでしょうか?」
「そうよ。流石に貰いすぎだわ。」
俺達は突然の申し出に戸惑い、貰い過ぎだと言うことを伝えた。
「そうでも無いわ。下界で観れるか分からない数々の武具を見せてくれた事や椿の成長を助けてくれた事。」
「それに手前が貴方方に与えた迷惑料。」
「それらを含めても貴方達は私達に良いものを与えたわ。それの対価としてこれくらいは当然だわ。」
「そう…なのかしら?それなら、有り難く受け取りましょうね、ラース。」
「そうですね、ティアマト様。」
俺は自分のお金でホームを買おうと思っていたが、ティアマト様に俺たちだけのホームを与えてやりたいのが本質なので、別の手段があるのなら俺達はこの申し出を受けお礼を申し上げた。
「ヘファイストス、椿さん、本当にありがとうね。」
「ありがとうございます。ヘファイストス様、椿さん。」
こうして俺たちは自分達のホームを手に入れた。今まで貯めたお金は何かあった時にでも使うようにお互い貯金しようと言う事で落ち着いた。
「でも、ティアマト様、今日くらいはホームを手に入れたから、贅沢に外で食べても良いと思うんだ。」
「そうね。今日くらいは、神(私)が許します。デートしましょ?」
「デートかぁ。子供の頃以来だ。それではお姫様、私めにエスコートを任せては貰えないでしょうか?(笑)」
「それでは、お願いしますね、私の王子様(笑)」
お互い笑いながら、外に出かけた。ぶっちゃけエスコートを出来るほどオラリオを知らないので、エスコートを受けたのは俺だった。俺達はゆっくりオラリオを散策しながら、食べ歩きやお買い物をした。
俺はティアマト様に普段着を選んで貰った。今までは旅人の服や布の服などシンプルなものを着回ししていたが、ティアマト様に折角だから今度は自分が選ぶと言う事で選んでもらえた。
その日の最後にヘファイストス・ファミリアに向かいホームと鍛冶場の場所を聞いて引っ越しをした。ホームは郊外に近い為、鍛冶場はすぐ近くにあり便利だった。ホームは割と大きく、雑魚寝すれば10〜15人位は行けそうな大きさだった。
ティアマト様はホームを手に入れてもアルバイトは継続するそうだ。但しアルバイトを週に5日から3日に減らして俺以外の眷属を集めるそうだ。
俺も毎日潜っていたダンジョンも週に5日に減らし残り2日を鍛治に集中することにした。