「あら、ラースお帰り。遅かったわね。」
「お帰りなさいっす!お邪魔してますっす!バラストさん。」
「あ、ああ。ただいま。それとアンタは確か…ゴブニュ・ファミリアの…ゲン・ストラージュ…だったか?今日はどうしたんだ?」
俺の今までで1番の稼ぎを報告するウキウキさは、ゲンの大声で吹き飛び不覚ながら気圧されてしまった。
「おっす!この前のお礼をしに伺ったっす!」
「おお〜。分かったから、もう少しな?声の音量を下げような?」
「すいませんっす!これで良いっすか?」
ようやくゲンは声の音量を下げた。郊外に近いとはいえ夕方の住宅街であんな大声で話されたら近所迷惑も良いとこだ。折角ホームを手に入れたのでご近所さんと仲良くなれるなら仲良くなった方が良い事もあるだろう。
「それでお礼という事だが……。」
「おす。ゴブニュ・ファミリアとして何がお礼になるか聞いてきてほしいと団長に言われたっす。また、オイラも個人的に何かお礼したいと思っているっす。何か無いっすか?」
正直、こういう風に聞いてくれるのはとてもありがたいと思う。例えばお礼に武器を贈られても短剣とかだったら俺は使わないので売るか死蔵するかのどっちかで有る。どっちも職人には失礼なので聞いてくれてそれをお礼にしてくれるのはとても有り難いと思った。
「そうだなぁ。ゴブニュ・ファミリアには鉱石類を安定して採掘しているポイントを教えて頂きたい事だなあ。それとアンタには片手槍2本を打ってほしい。」
「ぶ、武器っすか?」
ゲンは何故か凄く動揺した。
「ん?アンタはゴブニュ・ファミリアの者だろ?鍛治職人なら武器を要求するのは当然だろ。」
「そ、その〜、え〜っと………。」
「え?鍛治職人じゃ無いのか?それとも俺と同じ鍛治職人見習いみたいな者?」
「そういう訳じゃ無いっすよ…」
ゲンは焦り、落ち込みながらハッキリしないと態度を取った。
「なら余計に分からんな。良いのか?悪いのか?ハッキリと答えてくれよ。」
「…………。バラストさんはオイラがなんて呼ばれているか知らないんすか?」
「生憎と俺はこっちに来てから日が浅くてな正直知らない奴の方が多いくらいだ。」
「そう…なんすか…。オイラは"呪われた鍛治師"…って呼ばれているっす…別にレベル2じゃ無いのに、不本意ながらそんな2つ名があるっす。」
ゲンは泣きそうな顔で言葉を発するたびに痛そうな表情で話す。
「呪われた鍛治師?どういう事?」
「そのままの意味っすよ。オイラが作る武具は全て何の例外もなく呪われた武具に変質してしまうんすよ。」
「!?マジか!?」
俺はあまりの驚きに声を荒げてしまった。
「!失礼だけど、ゲン君は何でそうなったか聞いても良いかしら?」
「ティアマト様もっすか………。まぁオラリオでは有名な話なので良いっすよ。」
ティアマト様も不思議に思ってしまった為に口を出したみたいだった。それにしてもゲンの呪いはオラリオでもかなり有名な話だったようだ。
「オイラがこうなってしまったのは、二年前の事っす。故郷のドワーフの里を友人であるガルド・ポターラと出てゴブニュ・ファミリアに入団した後のことだったっす。」
ゲンは思い出しながら懐かしむような、忌々しいと思うような表情で語り出した。俺たちは口を挟まず最後まで聞いた。
「当時オイラはガルドの父に弟子入りをしてようやく一人前になったくらいの腕前だったっす。また、ガルドは里で店を継げるくらいの腕前でオイラよりも鍛治職人としての腕が良かったっす。しかし、入団後オイラに直ぐにスキルが発現し立場が逆になったあたりから、友人はオイラを妬むようになったっす。最終的にはどこで手に入れたか分からない呪いの道具でオイラに呪いをかけて、オイラに武器を呪うスキルが発現したっす。その後ガルドはファミリアとオラリオを追放されたっす。しかし、オイラはディアンケヒト・ファミリアの聖女に解呪を頼んだっすけどスキルとして形になったら解呪は出来ないと言われて今に至るっす。」
ゲンは最後のあたりから言葉に力を感じられなかった。そりゃそうだ最後の頼みの綱が無くなったのだ。しかも冒険者には自分の作った作品が求められず鍛治師としては終わったのも同然な扱いを受けたのだから。
「そういう訳なのでバラストさん、武器以外に何かお礼は無いっすか?」
ゲンは悲しそうな、泣きそうな表情で代替案を提示していた。
「なぁ、ゲン。アンタはまだ鍛治を継続しているのか?」
「おす。オイラには鍛治が全てっすから。例え誰にも求められなくても…オイラ…には…これしか…無い…っすから。」
ゲンは泣くのを我慢できなかったようで、涙を流し言葉を詰まらせた。そんな姿を見て俺はこいつなら武器を作ってほしいと思った。
「なぁ、ゲン。もし、呪いの武器を使う戦闘術を身につけている奴が、呪いの武器を作ってほしいって言ったら、アンタは作ってくれるのか?」
俺がゲンに尋ねるとゲンは泣き顔から一転して困惑した。
「えっ?は?え?そんな人が居たら是非作りたいっすよ。」
「じゃあ、俺がその呪いの武器を使う戦闘術を身につけているから、俺と専属契約を結んで欲しい。んで、俺に武器を作ってくれ。」
俺はこの機会を逃さない為に専属契約を提案した。俺は魔王討滅戦時に幻魔槍を使わなかったのは剣よりも熟練度が低かったからである。では幻魔剣で戦えば良かったのでは?となるがここでも致命的な問題があった。そもそもの話武器に呪いを付与ってどうすればできるか分からない事だ。
普通呪いの武器は時間が経つか特別な条件で呪われる。親友の最高装備も呪われているが、それは死にかけた時にサーバインに会い武器に呪いを掛ける術を伝授させてもらったからだ。俺は親友が死ぬまでそれを習得出来なかったから恐らく剣王の血筋のみに出来るものだと考えた。なので、武器に呪いを付与させる能力は俺が一番欲している人材だったのだ。
ゲンは最初何言っているか分からない表情だったが、徐々に飲み込めたようで今度は混乱していた。
「………。え?ええ?のろいのぶきをつかうせんとうじゅつ?呪いの武器を使う戦闘術!?じょ、冗談じゃないっすよね!?本当っすよね!?本当にオイラの武器が必要なんっすよね。ッハハハハ。えっ?何でティアマト様が驚いているんっすか?やっぱりオイラをからかったんすか?」
ゲンはコロコロと表情を変えた。ティアマト様も俺が剣以外に槍が使える事に驚いている感じがした。
「ゲン君、ラースの言葉に嘘はないわ。私が驚いたのはラースって呪いの武器を使っても平気なの?寿命とか縮まないわよね?」
全く見当外れではあったがティアマト様は俺を心配して驚いていた。
「縮みませんよ。言ってなかったっけ?親友がそれ専用の戦闘術を作って俺に継承したって事。」
ティアマト様は安心したご様子だった。
「ラースが言うなら良いわ。ゲン君、是非ラースと専属契約を結んで頂戴。」
「おっす!喜んで承りますっす!これからもよろしくお願いしますっす!ティアマト様、バラストさん。」
「これからは、専属なんだろ?それなら俺の名前もラースって呼んでくれ。俺もアンタをゲンって呼ぶからな。此方こそよろしくお願いな。」
「おっす!」
俺たちはこれでお開きにしゲンはホームに帰った。俺たちも夕飯を食べて明日に備えて早めに眠った。
ドラクエの呪いの武器って大抵モンスターからドロップ品か売ると安く2度と手に入らない代物くらいしか記憶にない。
果たしてどう言う流れで呪いの武器って作られるのだろうか?
今後是非ともゲン君には呪いの武器を量産してほしい。
正直、ダンまちの投稿小説で魔剣ばっか主人公側で活躍して狡い。何故に呪いの武器は敵側に活躍の場が多いのだろうか?呪いの武器だって偶には光を浴びても良いと思う。