ブタイウラ   作:ちぇるの

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みんな大好き、残姉ちゃんだよ!


イクサバムクロ

 四方八方から繰り出されたピンク色の絵の具を飛び散らせる棒……

 グングニルの槍にみごとにピンク色に染められた戦刃むくろは、

 呆然としたまま舞園と江ノ島が待ち受ける控室に戻ってきた。

 

「い、今のは納得がいかないんだけど! だけどっ!」

 

 あ、ちょっとだけ可愛いな、と舞園は紅茶を飲みながら思った。

 

「『ルール確認のためにモノクマを踏む』って書いてある台本通りにやったのに、

 どういうことなの盾子ちゃん!」

「えー……だってお姉ちゃん、苗木と二人で校庭の隅の木の下で昼寝するという

 暴挙をやらかしたからなぁ……」

「いいじゃん! 私、悪いことしてないよ!?」

 

 江ノ島がちらりと舞園を見ると舞園がこくりと頷く。

 

「「ぎるてぃ」」

「えー!?」

 

 双子の入れ替えとか超高校級の軍人とか色々とコロシアイ学園生活で

 やるべきものが在るはずなのに、さっくりと退場させられた戦刃はうぬぬ、と若干涙目である。

 

「せめて最初の学級裁判までは生きたかったのに……。

 苗木君と探偵できるかと思ってたのに……」

「この姉、開幕初日にして購買部で苗木にレーションねだった残念ぶりの上で

 入れ替えトリックが出来るとか本気で思ってるから残念すぎてならない」

「え、え、何かまずかったの?」

 

 おろおろする戦刃に江ノ島が解答を突きつける。

 

「超高校級のギャルが当然のように軍用レーションをねだるわけがない」

「いてもいいじゃん! いるよ、絶対! 私、現役高校生でレーション好きだもん。

 レーション好きなギャルだっているよ、絶対!」

「私の代わりやるなら多少気を遣えってんだよ!」

 

 舞園がうむうむ、と無言でうなずく。

 戦刃のことは可愛い子であるとは思うが、江ノ島のいう所の残念ぶりも理解できる。

 いや、レーションはない。

 

「つーかその後の苗木の『え、バッグとかアクセサリじゃなくていいの?』

 って質問になんて答えましたかー? はい、残念なお姉ちゃんどうぞ」

「残念じゃないよ。私、残念じゃない!」

「いいから、はよ」

 

 戦刃は顎に手を当てて少し考える。

 

「……えっと、バッグとかアクセサリのことはよく分からないから断った……かな?」

「何のために三日間かけてギャル教え込んだと思ってんだ、ああん!?」

「ご、ごめんなさい盾子ちゃん」

 

 あまりの残念ぶりに舞園が驚愕した顔をしていた。

 

「え、戦刃さん。今の実際にやったんですか? ネタではなく?」

「ええ。この残念なお姉ちゃん。通称、残姉は本気でやりました。

 レーションねだった後、ギャルとしてカリスマ的な私の変装をしながらオシャレに

 興味はないと言い放ったわけです。

 ファッションリーダーと言う事になってるはずの私の物まねをしながら」

「うわぁ……」

「あの、舞園さんに本気で呆れられると久しぶりに傷つくんだけど……」

 

 軍人としてここまで生きてきたのだから世情に疎いのは仕方ないと思う、と戦刃むくろが胸中で思っているが、それはそれとしてやっぱり残念で可愛いなあ、と舞園は思った。

 江ノ島としては可愛いとかじゃなくて身内であるから色々と思う所がある。

 

「さすがは戦刃むくろ。

 公式には私と同じ胸囲を持ちながらどう見ても谷間がない

 胸筋で構成された胸を持つ御姉ちゃん」

「きょ、胸筋だけじゃないもん! おっぱいあるよ、ほら! ほら!」

「あーうざいー。ちょーうざいー。近づかないでよ胸筋が暑いっつの。私、今仕事中だからさ」

「ウザいって言った……! 盾子ちゃん……ウザいって……!」

 

 戦刃むくろ。本気で涙目である。

 

「てーかね。私もノリで双子ならミステリィと思ったけど、プロフィール的に

 無理があるよね。胸とか。あと、どう考えても私をはるかに超越する体重とか」

「ま、舞園さん……盾子ちゃんが虐める……」

 

 双子の妹との喧嘩に負けてよろよろとやってくる戦刃に苦笑しながら、舞園は隣の席を空けた。

 

「だって、軍人してれば筋肉つくし……筋肉は脂肪より重いから仕方ないんだよ……。

 普通は筋肉ないと体型が維持できないのに意味不明なぐらい綺麗でスタイルいい

 盾子ちゃんがおかしいんだよ?」

「江ノ島さんが意味不明なぐらいに超人なのは同意してあげるかなぁ」

「失敬である。私様とて努力しているのである」

「嘘。盾子ちゃんが食べ物とか我慢してるの見たことない」

 

 実の姉の告白に舞園は思わず江ノ島を見る。

 

「なんぞ?」

「江ノ島さん、貴方は全ての女性の敵だわ……」

「体質に文句言われてもなぁ……」

 

 女子三人の会話はほのぼのと続いていくのであった。

 

 

//

 

 

 江ノ島のゆったりとした作業用ソファーの後ろから舞園と戦刃は監視モニターを眺めていた。

 

「え、なんで霧切さん当然のように苗木君とペアで捜査してるんですか?」

「解せない」

「……出来る限りシロでいて苗木君を攻略するという作戦かしら」

「なるほど」

 

 舞園と戦刃が何やら相談しているのを江ノ島がやれやれ、と否定する。

 

「いや、コミュ障だから苗木以外と一緒にいられないだけでしょ」

「それを口実に結構苗木くんと二人きりになることが多いのが納得いかない」

「戦刃さんと同じく」

 

 とりあえず妨害するような行為はなさそうなので気を抜いて回転椅子に乗ったまま半回転させて江ノ島盾子は二人を指さした。

 

「苗木は普通に女の子好きなわけだし。別に拒否とかしてないんだから、

 積極的に行けばいいのよ」

「行ってはいますが……私はキャラ的にあまりスキンシップとかしないから」

「苗木君に声をかけられるだけで嬉しいから」

「そこの残念な姉は反省会しないと駄目だからな」

「えー!?」

 

 そう言えば自分の姉が物凄いどうでもいいことで今日は苗木君が、今日は苗木君が、と話していたことを江ノ島は思い出した。

 それなりの付き合いの長さから姉が苗木誠を本気で好きなことが分かるだけに、そのアプローチの残念ぶりは半端なものではないことが分かる。せめて自分から話しかけるべきだろう。

 

「どうしよう江ノ島さん。私、戦刃さんのことが可愛いの……」

「まあ庇護しないと死にそうだよね。平和な場所では」

「そ、そこまでひどくない!」

 

 いやぁ、割とひどいと思う。

 それが彼らの共通認識であった。

 

 

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