ブタイウラ   作:ちぇるの

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あぽの人はなんだかんだで書きやすい俗さが売りだと思うの。


クワタレオン

 

 

『……あぽ?』

 

 桑田が裁判で負けるのを見ていた控え部屋の女子三人は大爆笑していた。

 もちろんマイクはオフである。

 

「あっはっはっはっは。あは、あはははは! 死ぬ。笑い死ぬ。監督役してて笑い死にとか絶望的っ!」

「ふ、ふふふふっ。あはは! だめ、『アポ』はだめ!」

「あはは。い、言い訳が『あほあほ』だけって、あはははは!」

 

 笑い死にそうになりながらも必死で声色を整えて江ノ島はモノクマの音声に変換するためのマイクに向かう。

 

「では、議論も済んだようですので、ボタンを押してください」

 

 当然、桑田がクロに決定。

 モニター上ではみんなが真面目な雰囲気で演技しているが逆に滑稽である。

 

「はい、正解です。舞園さやかさんを殺したクロは桑田くんでしたー!」

 

 そしてモノクマがハンマーを取り出す。

 

「お仕置きタイム!」

 

 がしゃこん、とどこからともなく飛んできた首輪が桑田の首に巻きつき、凄い勢いで引っ張られて柱に固定される。

 そして用意されるのはビニールボールを射出する機械。

 見た目は硬球に見えるが、当然そんな危険なものは使わない。

 

 それを見て舞園が江ノ島に質問をする。

 

「これなにごと?」

「千本ノックと言うお仕置きです」

「どういうお仕置き?」

「1000発の弾をモノクマが適当に桑田君に打っていきます」

「あ、割とえぐい」

「まあ、とはいえ桑田は回転させるから痛みが一極集中することはないかな。つーか回転のがきついと思うよ」

「なるほど……確かに回転系の拷問はキツイ」

 

 舞園はバラエティ番組で経験済みである。

 うんうん、と頷いて画面に意識を戻す。

 

 そこでは回転に必死で耐える桑田に向けてぽこぽことビニールボールが飛ぶ割とシュールな絵面が

広がっていた。

 回転が止まると真っ青な顔の桑田を見て(あ、割とお仕置きだけはガチだ)と全員顔が蒼かった。

 

 

//

 

 桑田が控室にフラフラになりながら戻ると、控室に待機している3人が同時に桑田を指さした。

 

「「ででーん! あうとー!」」

「ぬがー! 無理だって! 突発的な殺人とか準備できてないっつの!」

「それでも『あほあほ』はないと思う」

「うっせ! 戦刃とかそもそも言い訳とかできねーだろ。ああいう場所で」

「う……!」

 

 桑田の言葉を否定できない戦刃。

 舞園はころころと、その掛け合いを笑っていた。

 

「いやまあよ……実際無理だよ。証拠隠滅とか30分でどうにかするのあれしかなかったし」

「うぷぷ、絶望的シチュエーションだね」

 

 床から突然生えてきたモノクマに江ノ島を除く全員がぎょっとした。

 

「ここにもモノクマ出せるの? 盾子ちゃん」

「やだなー。僕はモノクマ。江ノ島盾子様とは何も関係ないプリチーな哺乳類だよ」

「いやあ、コロシアイ学園生活側でも思ってたがよ……こいつの設定って何なの?

 その場のノリなの?」

「失敬だな! 桑田くんは! 僕の何が設定なのさ! 野生の獣を舐めてると痛い目みるよ!」

「野生だったのかよ」

 

 ちなみに舞園はこの操作と会話をつづけながらモニタで苗木を常に監視しつつ、二階への扉のオープンの指示を送ってる江ノ島を見ていた。

 

「器用だね、江ノ島さん」

「まあこんぐらいはね。超高校級の絶望だし」

「時々思うけど、それと江ノ島さんが超人なことに関係性はないと思うんだ」

 

 江ノ島自身もそりゃそうだろうともよ、と思ったが口には出さない。

 正直、『超高校級の絶望』というのは言葉にしても伝えられないというか。

 そもそも苗木が全力で一週間近く論破してくれたから諸々諦めてこーして絶望的な余生を過ごしているだけであって、自分自身は自然災害とかその類だと確信をしている。

 まあ、その、受動的破滅願望持ちの姉を巻き込まなかったのは素直に喜んでいいかもしれない。

 と、江ノ島は横目で戦刃を見ながら思った。

 

「舞園は多少勘違いしてるから言うけどさー。私の今のキャラも苗木がギャルでもいい、っつったからギャルっぽくしてるだけでさ。本当は色々と飽きっぽいんだよね」

「そうなんですか?」

「絶望的にね。五秒に一回は自分のキャラに飽きるぐらい」

「……会話が成り立たないんじゃ?」

 

 そこまでは酷くないけどねー、と江ノ島は言った。

 一応内面にブレはないはずだ。

 

「というか、私が本気で絶望の才能を発揮したらひどいからね。

 その辺見極めて説得し続けた苗木は超絶偉いよ。世界を破滅から救ったね」

「またまた言い過ぎですよ」

 

 舞園が困ったように笑うのを江ノ島は真顔で言葉を返した。

 

「……舞園さやかを絶望させる方法は私は現時点で37通り持っている」

「は?」

 

 今まで見たこともないような目で江ノ島は舞園に振り返った。

 濁ったヘドロを固めたようなグロテスクで陰惨な瞳だ。

 

「私様がお前たちのような一般人を冒涜するように絶望の淵と言わず、絶望の渦のど真ん中に叩き落すのなんて簡単すぎて飽きるぐらい。

 具体的には私が今、この携帯電話をコールするだけで坂東芸能事務所の桑原所長を叩き起こせる」

「……あの、江ノ島さん?」

「桑原の手下の少しばかり色遊びの激しい俳優を3人ばかり見繕って事務所権限で君を飲み会に誘えばお手軽に麻薬とセックスを君は味わえる。トップのアイドルのままで。

 いえ、むしろトップのアイドルであるために君は麻薬とセックス、暴力と快楽の虜に自分から入るだろう」

「あの、え、あの……?」

「やらないけどね」

 

 脅したかったわけではないのに同級生を涙目にさせたことに絶望的な気分になる。明日からどうやって、このクラスメイトと顔を合わせればよいのか。

 

(というか、こういうことやるの苗木から叱られる気がするわー。やべー超絶望的ー。くくく)

 

 全然懲りてない江ノ島である。

 

「そういうところを苗木君にたたいてもらったんですか?」

「そいうこと」

 

 江ノ島の目は再び無気力なそれに戻る。

 

「私の定義が絶望だからって絶望に進む必要なんかないんだと。

 吐き気がするぐらいの正論で、希望を私に見せつけるんだよね。

 あーあー世界はこんなに眩しいですよーって。その壊し方ぐらい知ってるって言ってもずっと私に聞かせようとするんだよねー。

 あーウザくて大嫌い」

「……江ノ島さん、思い切りニヤついてるんですけど」

「まさか。絶望的に嫌いな奴を語る時に笑うわけないじゃん。くひひ」

 

 全く隠すつもりもなくニヤつく江ノ島に舞園はため息を吐いた。

 

「ライバルが着々と増えて行く……」

「キリギリスとセレスティアなんたーらのこと?」

「戦刃さんも」

「あの残念なのは勘定にいれなくていいと思うよー。

 はい、夜10時になりましたよー、お前ら寝なさい」

 

 モノクマのアナウンスが流れ始める。

 

「か、可愛いじゃないですか。戦刃さん。なんか小動物みたいで」

「あの残念なお姉ちゃんは法律上は問題ないけど普通に人殺しの才能持ってる人なんですけど」

「軍人さんだから仕方ないのでは?」

 

 当然でしょ? というように首をかしげる舞園に江ノ島は色々と考えてから苦笑した。

 

「どうしました?」

「アンタ。いいクラスメイトだわ」

「友人と言っていいと思うんですけどね、今の場面では」

「じゃあ友人」

「……絶望的に適当ですね。江ノ島さんって」

「いい褒め言葉。

 ほれ、そっちの控室のお前らもねなさーい! 先生はぷんぷんですよ!

 そんなんじゃ大自然の新巻鮭を捕まえることはできんぞー!」

 

 モノクマを操ってぐだぐだしている二人を追い返す江ノ島。

 舞園はその様子を笑った。

 

「江ノ島さんも。そろそろ寝ないと駄目ですよ」

「あいあーい」

 

 江ノ島は適当に手に平をひらひらと振ることで答えた。

 本日もコロシアイ学園生活は順風満帆に適当である。

 

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