ブタイウラ   作:ちぇるの

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麻雀してます。
数牌を真面目に三種類書くと見た目わからないのでその辺は気にせず。


フジサキチヒロ

 第二のコロシアイの為の動機が発表された。

 

「恥ずかしい過去かっこわらい」

「桑田くん。失礼だよ……」

「いや、つーかよ。ここに置いてある全員に配られた秘密の内容が面白いんだが」

「どんなのがあるのかな?」

 

 江ノ島による情け容赦ない公開処刑である。

 戦刃はぴらりとそのうちの一枚を開く。

 

「『小学五年生までおねしょをしていたこと』誰だろう?」

「深く突っ込んでやるなよ。

 こっちは『日本国憲法前文を三日間かけて暗唱したのをドヤ顔で披露したこと』」

「それは腐川か十神だろ」

「『最初に買ってもらった絵本が銃器の図鑑』」

 

 ちらり、と舞園と桑田が戦刃を見て視線を手元の紙に戻した。

 特にコメントはない様子である。

 

「ど、どうせ私です!」

「あえて触れなかった二人の優しさに感じ入るべきだと思うよお姉ちゃん。

 つか苗木ノリノリだなー」

 

 モニターの向こう側で『そんなものでコロシアイなんかしないよ!』とかいう苗木に突っ込みを入れる江ノ島。楽しそうである。

 

「うぷぷぷぷ。では24時間後までに秘密をばらまかれたくなかったらコロシアイしてね。じゃあねー」

 

 モノクマをしまってからニヤニヤとモニターで体育館の様子を見る妹の姿に戦刃が戦慄を覚えた。

 以心伝心だが、こういう時は知りたくない。

 

「ま、まさか盾子ちゃん」

「はい。本気でばらまきます。ここにいる人の分も」

「「まてええええええええええいっ!」」

 

 桑田と舞園が盛大に突っ込みを入れた。

 2人は慌てて公開される可能性のある秘密を自分で探しだした。

 

「え、え、ってあった。『大リーグボールの練習とか言ってエキスパンダーを背中側で使ったら背中の肉を挟んで病院に連れて行かれたこと』」

「『放課後にアイドルごっこと称して机をつなげて机の上で黒板消しに向かって魔法少女のアニソンを歌っていたこと』」

 

 一瞬で顔面蒼白になる2人。

 

「うわああああああ、止めろよおおおお! 中学で五連続で女に振られたことならいくらでも話して

いいからよおおおおお!!」

「私も、その……ダンスが覚えられなくて本番前に急遽手だけのダンスにしてもらったこととか、

ばらしてもいいですからっ……!

 英語の発音が悪すぎて歌詞差し替えてもらった話もばらしていいですからっ……!」

「うぷぷぷぷぷ」

 

 江ノ島が凄い愉悦に満ちた笑みを浮かべている。

 

「まじかるみらくるぱすかびるー!」

「やめてっ!」

 

 妹とじゃれあう前園を見て羨ましく思う戦刃。

 彼女的にはその二つは面白いエピソードだと思うし、言うほどマイナスイメージではないのだが。

 

「……あれ、この『兄とバイク勝負した結果、兄が事故った』って割とシャレにならない気がするんだけど」

「ん? 大和田のことか? ああ、これな……兄貴のバイクが全壊したって奴だろ?

 本人がガチで気にしてる奴だわなぁ……」

「そうだったんだ」

「本人以外は族のメンバーも全員納得して問題視なんてしてねえって聞いたけどな」

「え。事故だよ? 大変なことだよね……?

 あれ? 私、久しぶりに間違ってないと思うんだけど……」

 

 戦刃がおろおろしだした。

 話の流れが読めておらず、相変わらず残念である。

 

「いや、大和田の兄貴さんはぴんぴんしてるよ。その時もかすり傷だったって聞いたけど」

「そうらしいですね。ただ結構なバイト代をつぎ込んだ改造バイクが廃車になったとか」

「あ……それは、心苦しいね」

 

 ちなみに下手に突っ込むと顔を真っ赤にしてブチ切れた後に、いや、悪いのは俺だろ……と凹むという面倒くさい二段コンボをかますぐらいいまだに気にしている。

 超高校級の暴走族ならではの悩み事だ。

 

「盾子ちゃんの恥ずかしい過去も混ざってるのかな?」

「どれだ……? 『クマと戦った時に傷をつけられたこと』……ああ、オーガか」

「僕かも知れないじゃないか!」

 

 モノクマを出して場をかき回す江ノ島に戦刃は首をかしげた。

 あれ、誤魔化しにかかってるような?

 珍しく弱点をさらけ出している雰囲気に気づいた戦刃は妹の絶望に答えるべく、嬉々として秘密を漁る桑田と舞園を止めなかった。ドMシスターズ。

 

「『現在1400万円の借金がある』」

「葉隠か」

「葉隠くんね」

「大正解です」

 

 まあ、そんぐらいはしてるだろうなあ、とみんなが思っているので別に恥ずかしい過去も何もあったもんじゃないが。

 もはや葉隠という存在自体が恥である。

 普段の行いが悪すぎるというのが全員の共通見解であった。

 

「『一週間にわたる説教を受けた結果、自分の事を真剣に考えてくれてる人に惚れた』か。いや、まあ、なんか甘酸っぱい感じで恥ずかしいけどよ。誰だこれ。」

「……誰でしょうね」

「……誰だろうねぇ」

 

 よく分からない顔の桑田だったが、舞園と戦刃は江ノ島の方に視線をちらりと投げた。

 

「朝比奈さんあたりじゃないかなぁ。クマだからよく分からないけど」

 

 モノクマが妄言を言うが二人は視線を外さない。

 こっちを向いていないので断言できないが耳まで赤い。

 

「江ノ島さんって、時々盛り上げるためなら捨て身になるよね」

「盾子ちゃんは絶望好きなのと同じぐらいイベント好きだから。飽きっぽいけど」

 

 二人が生暖かい目で見るのを見てモノクマが怒り出した。

 

「なんだいなんだい! 僕を無視してさ!

 そこの胸囲80cmが脅威、筋肉で80cmのお姉ちゃんキャラのくせに」

「双子だから体型一緒だもん!」

 

 桑田はなんとなく深く突っ込むと負けな気がしたから口には出さなかったが、明らかに谷間が見える江ノ島と、かなり無理しないと谷間にはならなそうな戦刃を比較してうむ、と頷いた。

 

(喋ったら俺の立場が色々とまずくなる!)

 

 ちなみに頷いたことに気づいていた三人の中で、桑田の評価は一段階下がり済みである。

 

「苗木君はスポーティな子も好きって言ってた。問題ないよ」

「これを正面から苗木に直接聞いているという残念な行動を取る私のお姉ちゃんですが、苗木君から事務的な会話以外を振られると単語でしか返せないぐらい緊張する人です」

「そ、そうだけど! そうだけども!」

 

(戦刃さん可愛いなあ……)

 

 自分自身はこの方向性にはならなかったが、後輩でこの方向性の可愛さを見せる子がいた気がする。

 同じテレビ番組で被ったら精一杯いじり倒してあげよう、と舞園は考えた。

 

「『実は男である』……知ってるよ! 四月に告白した時に聞いたよ! くそったれ!」

「うわぁ」

「うわぁ」

「ごめんなさいでしたー!」

 

 桑田が色々と心に傷を負っていたことが分かった一幕である。

 

 

//

 

 

 不二咲がクロにコロサレて部屋に入ってきた時、江ノ島を含めた4人で麻雀を打っていた。

 

「あ、おつかれさまー」

「うん。おつかれさま」

 

 舞園の言葉に不二咲は笑顔で答える。

 ほんわかした空気が流れた。

 

「みんなで麻雀やってるの?」

「いや、これは麻雀ではない何かだ」

「……うん、これは麻雀じゃない」

 

 桑田と戦刃が蒼い顔で頷く。

 

「どういうこと? 別のルールなの?」

「普通のルールだよ。お金も一回百円。健全な学生ありありの学生麻雀。

 30符4翻もマンガンにするぐらいかな」

「そりゃあフリー雀荘なら普通だろうがよっ……と」

 

 いいながら桑田は5を捨てた。

 

「え」

「なんだよ不二咲」

「いや、その……なんで?」

 

後ろから見る限り45と並んでいたのだから5を切る必要はないように見えた。

 

「いいから見てろって」

「ええ……?」

 

 超高校級の桑田である。野球以外にもやっぱり才能があるのかもしれない。確率で考えてしまう自分よりもっと高次元なものが見えていてもおかしくない。不二咲はそう考えた。

 

 一周回り、桑田はつぎは4を捨てた。

 見た感じではばらばらになっているように見えるのだが……。

 何故か緊張感が高まる三巡目に舞園が「あ」と言った。桑田と戦刃がびくりと震える。

 

「リーチ」

「はやっ!」

 

(え、三巡目ってなに!?)

 

「やっぱりそう来たか……!」

「死なないために、気配を読む……!」

 

(この状況が多いの!?)

 

 舞園の次は桑田のツモである。

 桑田はツモったのは6。

 だが、当然これは切れない。

 

 先ほどから意味不明な豪運で押し切る舞園に桑田は安全な牌をとって置いたのだ。

 既に舞園が切っている字牌の【東】を桑田は捨てた。

 

「ロン。脇が甘いよ桑田ぁ」

 

 江ノ島が上がりを宣言する。

 

「役牌三暗刻チャンタ。マンニセンよろしくー!」

 

 桑田が真っ白になりながら点棒を差し出した。

 江ノ島は上機嫌である。

 

「んー誰かの安全牌を狙い撃って絶望に落とすのって楽しいー!」

 

 不二咲は何か不思議なものを見た感覚になった。

 狙い撃つとかじゃなくて三巡目にして二人が聴牌とか意味が分からなかった。

 

「え、さっきからこんなのなの?」

「すまん……舞園さんの配牌を見てみれば分かると思う」

 

 不二咲はとことこと舞園の後ろに回った。

 今度は舞園の親番らしく、舞園がサイコロを振った。

 最初の四枚を舞園が開く。

 

2137

 

 次の四枚。

 

45北6

 

(ふぁ……!?)

 

 その次の四枚

 

2272

 

 舞園は特に表情も変えずに最後の二枚を山から引いてくる。

 

7、8。

 

 手元に揃った14枚を舞園は丁寧に理牌する。

 その間に江ノ島は自分の前にあるドラ山をめくり【北】を表示した。

 

1222234567778北

 

 舞園は鼻歌交じりにパシンと軽やかな音を立てて当然の【北】を切り捨てた。

 もちろん牌は横向きである。

 

「ごめんね。ダブりーです」

 

(ええええええっ!?)

 

 桑田と戦刃は冷や汗を流しながらがたがた震えている。

 

「な? 不二咲。俺達さっきからこの麻雀やらされてるんだぜ……?」

「久しぶりに地獄を見ている気分……」

 

 二人の負け犬は脂汗を流している。なんだこの地獄絵図、と不二咲は思った。

 桑田は【北】の牌を捨てた。ちらりと江ノ島を見るが江ノ島は笑顔で特に無反応である。

 

「あはは、桑田ぁ。そんなに警戒しないでも大丈夫だっつの。

 さすがに同順の字牌では当たれないから。ルール的に」

「へ、へへ。だよな。なんかあまりに怖くて初心にかえっちまったぜ……」

 

 江ノ島はのんびりと自分のツモを行う。そして手元から牌をぽいと切り捨てた。

 

”5”

 

 戦刃と桑田が硬直するが、舞園からロンの声は出なかった。

 

「おいおいおい……江ノ島さん強すぎじゃない……?」

「当たらない牌を怖がるぐらいなら私は攻めたい」

「盾子ちゃん。それは何か違う……」

 

 戦刃は呆れたようなため息を吐きながら、次のツモをする。

 

「あ、やった!」

 

 舞園の安全牌である【北】を引いた戦刃はその牌をそのまま切った。

 

「はぁ……本当にうちの姉は残念だなぁ……」

「え……」

「ロン」

「え、え? だってこれ四枚目だよね?」

「四枚目でロン出来る役は一つだけでしょーよ」

 

 パタパタと江ノ島の手牌が晒されていく。

 

「ロン。国士無双。牌入れ替えて危険牌まで放ったんだから当然の聴牌ぐらい疑おーよ」

「ええええええええっ!?」

 

(違う。これは僕の知っている麻雀というゲームじゃない……!)

 

 配牌で染まってるのもおかしいし、一巡目で役満張るのも大概頭がおかしい。

 

「ねえ、不二咲くん。私達がおかしいのかな……?」

「うーん、僕としては頑張ってとしか言えないかなぁ……?」

「おかしい……戦場なら私はとっくに死んでいるのに生きてる……おかしい……」

 

 いろいろと酷い状態だった。

 

 

//

 

 

 モノクマを抱きながら江ノ島はモニターに向かっている。

 その後ろから桑田、舞園、不二咲もモニターを見ていた。女子更衣室で死体に工作している十神の様子である。

 

「すげえ。事件を混乱させるためだけに現場荒らすとかすげえ」

「これって何の意味あるんですか?」

「ゲームだからって、みんなを楽しませようとしてるんじゃね?」

「「あー」」

 

 江ノ島の発言に全員で納得した。 

 なんだかんだと面倒見のいい超高校級の御曹司様なのだ。

 

「というか玄関の電子手帳に気づいて使うとか大和田かっこいいな」

「まあ備品の電子手帳壊したのマイナスだけどね。モノクマ的には凄いマイナスだけどね!」

「江ノ島さんは割とアレの制作にかかわってたからねえ」

 

 不二咲の発言に桑田と舞園はそうだったんだ、と思った。

 

「……そう言えば今さらだけどなんで関わってたの?

 ボクと違って江ノ島さんは電子系の技能じゃないよね?」

「自分が絡んでればマスターキー作れるじゃん。って言うのが当時の思考だった。

 今は使う気ないけど」

 

 舞園が何故か戦慄の表情で江ノ島を見ていた。

 

「どうしたの? 舞園さん……?」

「え、なんでもないよ不二咲くん。江ノ島さん割と本気で怖い人だったんだと驚愕してただけ」

「今は危険人物ではなく余生を暇に過ごす恋するギャルです。怖くないよー」

「つーか戦刃はなんで懸垂してるんだ?」

「残念なお姉ちゃんだからです」

「……最近、本格的に戦刃さんが可愛く見えてきてるんだけど。どう思うかな不二咲くん」

「ボクとしては安易に女の子に可愛いとか言うと硬派に見えないからノーコメントで」

 

 この五人。徹底的に遊んでいる。

 

「……十神くん、容赦ないよね。人形のボクの扱いが割とひどいよ」

 

 電気コードではりつけにされている不二咲の人形が物悲しげにぷらんとしている。

 チミドロフィーバーの書き方がめちゃくちゃ上手い。

 

「コロシアイでこれやるとか十神のセンスを褒めてあげよう。絶望的なアートです」

「ピンク色の液体がなければ割と可愛い顔してるよね」

「なんか、こう。目が……くりっとしてて」

 

 不二咲の人形はデフォルメされているので見た目が可愛い。

 

「売れるかもな。等身大不二咲人形」

「自分で言うのもなんだけど……特殊な人が群がりそうだから止めてほしいなぁ」

 

 桑田は特に意味もなく頷くが、同時に女子達からの好感度が下がった。

 今回に関しては完全に濡れ衣である。

 

「ぴんぽんぱんぽーん。死体が発見されました。一定の時間の後に学級裁判を開始します」

 

 江ノ島のアナウンスに不二咲が顎に指をあてて質問をする。

 

「一定の時間ってどうやって決めてるのかな?」

「ん? 適当というか?

 学級裁判でクロを指摘できるギリギリの証拠が集まった時。あるいは1日経過しちゃったら」

「あ、そんなもんなんだね」

「んー」

 

 その辺の見極めが出来るのは江ノ島の分析力があってこそだ。

 並の人間ではこの役は出来ないだろう。

 

 監督役が出来るのは実質霧切と江ノ島だけなのである。

 

控室兼モニタールームでの全員の基本的な行動

 

 




江ノ島:監視。主に苗木。
前園:アイドル業は休んでいるが、自主トレのために音楽室に行ったり。
戦刃:本気で訓練メニューを始める。
桑田:(本人曰く訓練ではないが)適当に球を投げつつバットを振りつつ歌を歌いつつギター触りつつ。一番暇な時間を楽しんでいる。
不二咲:ノートPCを叩いて遊んでいるがゲームしてたりソース修正してたりいろいろ。
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