ブタイウラ   作:ちぇるの

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大和田くんが面白く無いと誰が決めた!


オオワダモンド

 

第二回学級裁判の様子を残念会部屋のモニターで眺める面々。

現在、大和田の告白中。

 

「いや、お前の兄貴死んでないだろう」

「ボクとしては、その事実を知っているはずなのに本気泣きできる

石丸くんの意外な演技の才能に驚いているんだけど……」

 

石丸の慟哭が裁判場に響き渡るのが感動的だが、ネタバレしている以上なんとも言い難い。

桑田に至っては大和田大亜本人と面識があるレベルなので苦笑しか浮かばないのだ。

 

「うーん、映像としては非常にいいものになってますよね」

「死体のシーンは後で取り直しだぬー。超高校級のメイクアーティストに知り合いいるし」

 

 舞園のなんとなくつぶやいた言葉に江ノ島が答えた。

 江ノ島の人脈は無駄に広いのである。

 

「というよりも映画として公開とかされるんですか? これ」

「超高校級のコロシアイという煽り文句で。タイトルは未定」

「マジで放送する気だったのかよ……。おいおい、誰だよそんなアホな企画通した奴」

「超高校級の推理を必要とされるような話で活躍できる人の親族、と江ノ島はヒントを出します」

「「学園長……」」

 

 桑田と舞園ががっくりと落ち込む。

 江ノ島だって頼まれたときはがっくりと絶望に浸りたい気分だった。

 

「それでは超高校級の暴走族の大和田くんにスペシャルなおしおきを用意しました」

「盾子ちゃん、本当にお仕置きスイッチ押す時生き生きしてるよね……」

 

 ぴこん、とスイッチが押された。

 その様子を見て桑田が不二咲に話しかける。

 

「つーかモノクマでスイッチ押してるが、あれって難しいんじゃないか?」

「うーん……実際にプログラム組んでテストしたボクの経験では……

 いままでの技術に比べれば反応は段違いだけど、やっぱりリモート操作特有の難しさはあるよね。

 あのマニュピレーターでわざわざハンマー持ってスイッチを叩くというのは大変な作業だと思うよ?」

「だよなぁ……?」

「江ノ島さんの底知れ無さが分かる事例だね」

「つーか絶対にギャルとか適当につけただけっぽい。ギャルでは絶対にない」

 

 散々な言われ様だが、江ノ島は特に気にせず鼻歌を歌っている。

 ギャルなのも嘘ではない。この格好は自分の好みでやっているのだ。

 

 そんなことを控室側のメンバーが言っているうちに画面の中で大和田がバイクに乗せられた。

 運転手はモノクマ。

 

「あぶねえええええ! モノクマでバイク運転あぶねええええええええええええ!!」

「江ノ島さんすごい!」

「もっと褒めていいよーん」

 

 しかもそのままモノクマが球体のケージの中を曲芸運転する。

 

「なに。どうしたの?」

「あ、戦刃さん。大和田君のおしおきが凄いと」

「バイクの奴? 盾子ちゃん結構練習してたから」

「お姉ちゃん。私が珍しく努力した話とかいらないから」

 

 みんなの江ノ島を見る目が若干生暖かいものになった。

 

 大和田を載せたバイクは十回転した辺りで反対側の口が開いてそこから二人は外に出て、そのままゆっくりと地下へと降りていく。

 ケージの中には無人のバイクが一台大和田たちが出て行った扉から飛び込んでくる。

 球状のケージはピカピカと電飾で眩しく光っており、今のシーンはカメラには映っていない。

 一見するとまるでバイクに乗った大和田が消失したように見えた。見事な手品の手法である。

 

 そして、檻に接続された機械が音を立ててごとり、と何かが落ちてきた。

 

 

【大和田バター】

 

 

「ぶふっ!」

「ば、バター! バターになった! あは、あははははは!」

「ぷっ。あはは。大和田くんが……! 回転し過ぎてバターに!」

「死ぬ、笑い死ぬ……!」

 

 江ノ島はこっそりとガッツポーズを取った。

 戦刃はその姿を見てほろりときた。

 

(頑張ったよね、盾子ちゃん!)

 

 控室は大和田バターで盛り上がったのであった。

 

 

//

 

 

「おい江ノ島ァ! 回転普通にキツいじゃねえか!」

 

 大和田がぶちぎれながら控室に戻ってきた。

 それを見た瞬間、部屋の中にいた桑田と不二咲が何故か吹き出しそうになっていた。

 

「あン? なんだよお前ら……ちょっと待て。その机の上のものは何だ」

 

 そこには大和田バターが置いてあった。

 ついでにパンとコーヒーもある。

 遅めの夕食である。

 

「お前も食うか?」

「……なるほどな。江ノ島ぁ……てめえ」

 

 江ノ島はのほほん、と椅子を回転させた。

 

「私様の笑いのセンスは有効であると実践された!」

「てめえ、このバター……」

 

 がし。と大和田はそれを掴んだ。

 桑田は話に関わらないようにコーヒーを飲んでお茶を濁すことにした。不二咲と舞園もそれにならう。

 

 大和田はそのバターを顔の横にもって行き、きりっとした表情を作った。

 

「原材料、100%俺。大和田バターです」

「ぶふぉっ!」

「ぷふー!!」

「……っ!」

 

 不意打ちに負けた不二咲と桑田が吹いた。

 舞園はアイドルの矜持でギリギリ堪えたが、かなりピンチだ。

 

「げほ、げほっ……!」

「えっほ、えほ……!」

「汚ぇなあ、お前ら……」

 

 主犯に突っ込まれて納得いかない二人が恨めしそうに大和田をねめあげた。

 明らかにタイミングがずるすぎる。あんなものは耐えられないだろう。

 

「舞園は吹かなかったな」

「ええ。飲み物を飲んでいるときは噴出さないようにするのもアイドルの務めですから」

「定価390円。好評発売中」

「ぷすー!」

 

 堪えたのか、なんか変な感じの笑い方になった舞園。

 もはや桑田と不二咲は死にそうなぐらい笑ってる。

 

「ずる……あははは、ずるいだろ……!」

「大和田くん……ちくしょー。ちくしょー! あはははははは」

「ひ、ひひ、ひっひっ」

 

 舞園は変な感じに入ったのか引き攣るような笑いになっている。

 3人が痙攣するように笑う中に軽くトレーニングを終えた戦刃がやってきた。

 

「……あれ、これどういう状況?」

「おう、戦刃。なんか知らないがこいつら、いきなり笑い出してよ」

「ああなるほど。大体分かった」

 

 す、と大和田はさりげなく自分の横に大和田バターを添える。

 

「最高の朝に、ふわっふわのパンと大和田バター」

「ぶふっ!」

 

 乙女にあるまじき吹き出し方をした残念なお姉ちゃんを江ノ島は大声で笑った。

 

 

//

 

 

 とりあえず笑いも一通り終わったところでソファーにどっかりと大和田が座った。

 

「や、思わずネタが転がってたから笑いとりにいっちまったがよ。

 実際きつかったぜ、あの曲芸運転」

「大和田くんでもきついんだ? 想像できないなあ」

「多少無茶はやっても暴走族なんてなあ平地のイキモンだからよ。

 上下逆さになるのは初めてだったぜ」

 

 それはそうだろうなあ、と不二咲は頷いた。

 

「大和田くん、実際の所クロになった理由ってなに?」

 

 戦刃の問いに大和田は恥ずかしそうに頭をかいた。

 

「……や、俺はいいがよ。事実だから。でもやっぱ秘密ばらされたら嫌な奴もいるだろ。

 まあタイミングが良かったから不二咲をコロシちまった」

 

 戦刃は納得したように頷いた。

 

「だから動機がアレだったんだ……」

「おい。絶対に俺より上手く言い訳出来ないお前に言われるのだけは納得ならねえんだがよォ?」

 

 大和田のこめかみに青筋が浮かんで威圧的な言葉が出るが戦刃はとくに気にしなかった。

 その通りだと思ったというのもあるが、そもそも大和田のこれはもはや癖のようなものでクラスメイトに本気で怒るような人間ではないことを皆知っているからだ。

 

「戦刃ならあの時なんて言ってたよ?」

「……『殺したいから殺しただけだ』」

「快楽殺人者になってどーすんだよ!」

 

 もっともな突っ込みに江ノ島はお通夜みたいな雰囲気の裁判場をみながら頷いていた。

 

「違うだろーが。もっと、こう……殺人を犯すだけの悲哀とかあるだろ?

 ミステリー小説とかでもよ」

「ミステリー小説とか読むんだ?」

「普段は読まねぇがよ。別に読んだことがないわけじゃないんだぜ?」

 

 不二咲の素朴な疑問に大和田は答えた。

 

「悲哀とか言われても……不二咲くんを殺す理由はないわけだし」

「俺だってねぇよ。でも動機がないと不自然だろ。お前の秘密何だったんだよ」

「え」

 

 戦刃が珍しく戸惑ったのを見て大和田は容赦なく追求することに決めた。

 

「……桑田。カモン」

「何故に俺がパシられるし」

 

 文句を言いながらも桑田が大和田の傍に来た。

 

「どうせ全員分の秘密見たんだろ? 戦刃の秘密は何だ」

「『最初に買ってもらった絵本が銃器の図鑑』」

「……」

 

 大和田が残念なものを見る目で戦刃を見た。

 戦刃は顔を真っ赤にして反論する。

 

「別にいいじゃん!」

「いや、悪いとは言ってねえだろ……。じゃあ秘密が理由にはならないな」

「じゃあ盾子ちゃんの恥ずかしい過去が赤面ものだからそれを守るために殺した。はい論破」

「おい、そこの残姉。私に被害を飛ばすの止めろ」

 

 何故か江ノ島も巻き込まれた。

 

「桑田」

「は」

 

 既に息があっている。

 

「『一週間にわたる説教を受けた結果、自分の事を真剣に考えてくれてる人に惚れた』です」

「苗木か」

「え、そうなの?」

 

 桑田は知らなかったようだ。

 

「松田とかいうのと付き合ってなかったっけ」

「付き合う……盾子ちゃんと松田くんのあれは付き合うとはいわないような……。

 お互いに大切な存在だけど色恋とは別の様な……」

 

 珍しく戦刃が本気で悩むように唸る。

 

「うわ、知りたくないな……知人のそういう人間関係」

「お姉ちゃんは本当に余計な事しか言わねえなぁ!!」

 

 江ノ島が席から立ち上がって割と高度な技術で戦刃を押さえつける。

 

「いた、痛いよ盾子ちゃん」

「痛くしてんのよ」

 

 戦刃が江ノ島を抑えているというならば、それでよい。桑田は会話を続ける。

 

「え。ていうか苗木がなんで江ノ島に説教するというシチュエーションが生まれんのよ?」

「あん? 軽く聞いた話だけどな。

 霧切が追ってた事件の裏の糸を追っていったら江ノ島がいたとかが分かったらしくてよ。

 話し合いがしたいから場所を用意してくれないかって」

「なんでそれが大和田の所に話行くんだ?」

「あー……まあ、ケジメつける場所とかだーな。外界と完全に切り離されたつーのか?」

「おお、アングラぁ」

 

 桑田と大和田によって恥ずかしい過去がちゃくちゃくと晒されていく状況に江ノ島は姉の関節を極める力を強めた。

 

「いたっ!? 割と靭帯にダメージ与えるレベルの攻撃になってきた!?」

 

 戦刃の悲鳴を江ノ島は無視する。

 

「内容は知らねえが、がっつり一週間は二人で籠りっきりだったな。

 で、でてきたら江ノ島のキャラが安定してた」

「……おお、一瞬下世話なこと考えかけたけど苗木だもんな。すげえ真面目な話してたんだろうな」

 

 桑田の発言に対して、江ノ島が中指を立てながら反応する。

 

「よし、桑田。妄想を抑えたから腕一本で許してやる」

「止めろよ。お前……。俺、最近真面目に野球やってんだからよ……」

 

 基礎練習などはしていないが練習試合、公式試合には真剣に参加している桑田である。

 江ノ島は舌打ちをしながら戦刃を解放した。

 

「あーあーあー。なんで公式で告白したことになってんだろ」

「絶望するために馬鹿正直な秘密書いたからじゃ、いたいいたい!

 盾子ちゃん。そこはウィッグじゃないから!」

「つーか我が姉はなんで未だに私のコスプレしてるんですかねっ!」

「え、えへへ。盾子ちゃんと同じ格好するの楽しい」

 

 戦刃可愛いなあ。

 全員が思ったが口には出さなかったがどことなく生暖かい視線が浮つく。

 

「もう! もうもう! 解散だよ、解散! ほら、各自自分の部屋に戻れー!」

「あン? 部屋ってどこだよ」

「こっちに控え部屋用の部屋があるの。三人ずつぐらい入る部屋だけど、合宿みたいで楽しいよ。

 ボクが案内してあげる」

「おう。悪ィな、不二咲」

 

 第二の学級裁判の夜は終わるのであった。

 

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