どこかの世界、どこかの国
そこでは異様な光景が広がっていた。武器を持って戦う人間だけでなく空を飛ぶ人間や巨人、異形の船や恐ろしい姿をした怪物たちが争っていた。
「前線が突破されたぞ!」
「本部との通信が途絶えました!」
「相手が多すぎる!」
「怯むな、ぐああっ!」
「やれ!殺せ!殺せ!!」
龍に似た姿の怪物が叫んだ。
「慎二は何処にいった?」
そこに颯爽と右手についた銃を乱射している青年が飛び込んでくる。巨大な腕を振り回して人間の兵士を倒そうとしている怪物を撃ち殺した。
「ごめん、待たせたな。敵の数が多くてな」
次の瞬間彼らの目の前で大規模な爆発が起きた。回りにいる人や物が吹き飛んでゆく。
「おいおい!!まずいぞ冬也!」
そしてまた別の人間ではない怪物たちが彼らのまえに姿をあらわした。
彼らは冬也と慎二と言われた男たちの目の前で自身の武器を使い
「全軍攻撃、集中砲火」
回りに見境なく破壊行為を行った。
「みんな退却だ!島に向かえ!島に向かうんだ!」
「ジェットとクルーザー、乗り物全てを破壊しろ!1人たりとも逃がすな!」
そして周辺にある機械類や乗り物が破壊される。
逃げようとしていた人間たちは乗り物を失い立ち止まった。
「この周辺はやつらの手にに堕ちた。俺が殿をつとめるからお前たちは逃げてくれ。世界にはまだ同じ志、考えを持った仲間がいるはずだ。今はなんとしてでも生き延びるんだ!」
「おい!トーヤお前死ぬ気かよ!これだけの数相手じゃいくらなんでも無理だ!」
「その通りですトーヤさん!我々全員が生き延びなければ!」
「ダメだ!それにどのみち誰かが足止めをしなかったら俺たちは全員やられる!安心しろよ、必ず戻ってくるから!」
そして冬也は自身の身を異形の姿へ変貌させ逃げ惑う人々を襲う人間達の方へ跳んでいった。
「待てトーヤ!!待てーーー!」
______________________
落ち着いた茶色の木目の内装が施された部屋の中で、白い軍服を身にまとった男が書斎机に向かい、書類を作成していた。
その部屋のドアがノックされ、
「うん、入っていいよ」
黒を基調とした赤いパーツが施された半袖のセーラー服を着た女の子たちが入ってきた。
見た目は中学生ほどだ。
「艦隊が無事帰投したよ」
「提督さん。夕立、結構頑張ったっぽい?MVPだよ!誉めて誉めてー♪」
「んも~、私もがんばったのにぃ」
「夕立は今回もMVPを取ったのか、いつもさすがだな!他の皆もよく頑張った!」
「提督さん、ありがとう!」
夕立と呼ばれた少女は頭を撫でてもらい飛び跳ねて喜んでいた。
その姿を姉妹達は笑顔で見つめている。
「よし、体を癒しににドッグに入ってきてくれ。ついでに鳳翔さんのところに行って何かもらってくるといいよ」
と言い提督は彼女に入渠施設の利用券を渡した。
「ありがとう。じゃあ早速ドッグにいってくるね」
そう言い白露、時雨、村雨、夕立の4人は執務室から出ていき保管庫に艤装を預けた。
鳳翔にお菓子を貰い入渠施設へ向かっている。
4人は雑談をしつつ本館と離れた入渠施設に向かっていたが夕立が歩みを止めた。
彼女は入渠施設とは真逆の方向を見つめる。
「...」
「どうしたんだい夕立?」
「入渠施設はあっちよ」
「...海岸で誰かの声が聞こえるっぽい」
「「「え?」」」
と、言い夕立は鎮守府の外に走り出してしまった。
「ちょっと夕立!どこにいくのよ!」
「私たちも追いかけましょう」
そして3人は夕立を追いかけ始めた。
4人はどんどん鎮守府から離れてゆき、気づくと1キロほど離れてしまっていた。
「夕立、こんな砂浜まで来てどうしたんだい」
「夕立ちゃん。今はもう夜なのよ。外に行かないでもどりましょう?」
「待って村雨ちゃん。あっちに誰かがいる」
そう言い夕立は砂浜の向け指を指した。眼前には穏やかに揺れる大海原が広がっている。一見何も異常は無いように思えたのだが……
海岸の砂浜に人の姿が見えた。
「「「「!!」」」」
夕立が先行し砂浜に倒れている人間の元へ4人は向かった。
「きっと民間人っぽい!」
村雨がその人間の上体を起こした。
辛うじて息はしているがいくら体を揺さぶっても目を覚まさず顔色も悪く苦しそうに唸っている。
「ちょっとあなた大丈夫!?ねぇ!」
「このお兄さん血だらけだよ、洋服にも血がべったりついてる!止血しないと大変だ!」
そう言い時雨は自分のスカートを破き男の腹部へと巻き止血をおこなった。
布からは男の血がどっぷりと付着し即座に真っ赤に染まった。そこからさらに血がにじみなかなか出血は止まらなかった。
「どうしたのかな、海で釣りをしていたっぽい?」
「深海凄艦が海の大半を支配してる今は護衛艦娘も無しに釣りに出るなんて人はいないとおもうけど...」
すると白露が男の口元に耳を近づけ
「三人とも大変だよ!この人息をしていないよ!どうするの!」
なんと男は既に息を行っておらず気づいたときには唸り声すらあげていなかった。
このまま時間が経つと体に血が回らず男は死んでしまうだろう。そう考えた時雨は
「よしっ、こうなったら僕が「人工呼吸でもするっぽい?」違うよ!!」
時雨は男の体を横にして胸骨圧迫を行った。
何度か腕を上下させ男の胸に力をいれ押し込みを繰り返す。
すると男の体が痙攣し激しい咳をしながら目を覚ました。
「ゲホッ!ゲホッ!」
「目が覚めた!」
「良かった...あなた大丈夫!?」
男は自身の頭をおさえながら上体を起こした。
「ここは...どこだ...君たちは、一体何を...」
「ここは横須賀よ。あなたが海岸で倒れていて、時雨が心臓マッサージをして助けてくれたのよ。あなた、名前はなんていうの?」
男は時雨を見つめて安堵した顔を見せ、彼女に頭を下げた。
「そうか...君たちが俺を助けてくれたのか。ありがとう。俺は冬也、清瀬冬也だ」
「どういたしまして。早速だけどトーヤ、見ての通り君の体はボロボロだ。だから僕たちが病院に連れていくよ」
「でも時雨ちゃん、ここから病院まではかなり距離があるわ。それに血もまだ出てる。だから明石さんのところへ行きましょう。明石さんなら身体を治せるわ」
「そうだね。よし、トーヤ。お腹の傷をもう一度身してくれる?」
時雨と白露、夕立が彼が体を起こすのをサポートし、横腹を見ると
「えっ?」
先程まで血が溢れていた腹からはもう血が止まっていた。
傷ももう塞がりかけている。
「うそ...さっきまで血があふれでてたのにもう止まってる...」
冬也は自力で立ち上がる。
「ほんとうに何から何までありがとう...自分で立てるから大丈夫だ」
「本当に?無理してないよね?無理したらもっと酷くなっちゃうかもよ?」
「いや、本当に大丈夫だから...」
「そう?じゃあ鎮守府までしゅっぱーつ!」
冬也と4人が鎮守府に向かい歩き始めたその瞬間、背後でで巨大な爆発が起きた。
「きゃあ!!」
「何!?」
「海を見て!深海凄艦よ!」
村雨が指差した方向の海岸からは禍々しい異形の生物、深海凄艦が迫っていた。
「おいおい...なんだよあいつらは...」
「あれはリ級にホ級...どうしてここに...?」
「近海には敵艦が入ってきた報告は無かったよね!」
「うん。この周辺の制海権は完全に私たちが守っていたはずなんだよ。だからここに来るなんてあり得ないのに...」
そしてリ級、ホ級とよばれた怪物は彼らに向けてその身に纏った砲を向け一斉に発射を行い、白露とトーヤは砂浜に吹き飛ばされた。
「ぐぅっ!」
「白露!トーヤ!大丈夫!?」
トーヤは腹部を押さえて踞り、白露は敵の砲の直撃を受けて気絶してしまっていた。
二人の姿を見た時雨は
「村雨!やつらは僕と夕立が押さえる!だから二人を連れて鎮守府へ逃げるんだ!」
「!?、でも」
「いいから早くして!今私たちは艤装を持っていないっぽい、だから村雨は早く鎮守府に向かって皆を呼んできて!」
「...分かったわ、すぐ皆を連れてくる!だからそれまで持ちこたえて!」
村雨はそう言い白露とトーヤの肩にてをかけ持ち上げ海岸から鎮守府へ急いだ。
一方時雨と夕立は攻撃を止めさせるため敵凄艦に向かい格闘を行おうとした。
だが、
「うぁっ!」
「きゃあっ!」
艤装を装備していない身体では深海凄艦には手も足もでず、ホ級の触手に捕まり取り押さえられてしまった。
「くっ...放せ!この!」
砂浜から白露を背負い冬也と逃げようとしていた村雨は拘束された2人を目に止めた。
(二人を助けなきゃ!)
と思い白露とトーヤを降ろし二人のもとへ向かおうとしたがトーヤが彼女の肩に手を掛け呟いた。
「やめろ...二人のところへ行ったらお前も倒されちまうぞ...」
「でも!早く助けなきゃ二人が殺されちゃう!!それにみんなを呼んでくる内に2人とも殺されるわ!」
「君はここで待っていろ。俺がどうにかする」
「どうにかするってあなたっ!そんなボロボロの身体でどうやって...それに奴らはただの海の生物じゃないのよ!人間のあなたにどうにかできる相手じゃないわ!」
「...大丈夫だ、君はここで白露を守っていろ。それに、バケモンの相手は馴れてる」
そう呟いたトーヤは時雨たちの元へと駆け出した。
時雨と夕立の眼前にはリ級の主砲があり、それが彼女たちを葬らんとしていた。
「くっ...」
「クタバレ...カンムスドモメ...」
その時、後方から何者かの咆哮が海岸に響いた。
「らぁ!!」
「グゥッ!」
全速力で走ってきた冬也がリ級に弾丸のような勢いでタックルをかまし
駆ける勢いを殺さず跳ぶとホ級を渾身の力を込めた両足で蹴り飛ばした。
リ級とホ級は数メートルほど突き飛ばされ時雨と夕立を逃してしまった。
それでもリ級とホ級にダメージが入ってはおらず起き上がった。
「あ、ありがとう。でもなんで戻って来たんだ!このままじゃ君もやられてしまうよ!」
そこへ主砲と機銃を構えたリ級とホ級がゆっくりと歩いてきた。
「アンシンシロ、ムコウニイルヤツラモ、キサマモゼンインシズメテヤル」
だが時雨と夕立の前に冬也が立ちはだかり
「いいや、彼女たちには手を出させない」
「タダノ人間ノオマエニナニガデキル?」
「お前たちがただの化け物じゃないように俺もただの人間じゃないんだよ!」
トーヤが叫んだその瞬間彼の体から熱波と衝撃波が放出された。
その熱と衝撃でリ級とホ級、時雨と夕立は吹き飛ばされた。
「トーヤ!!」
しかし、その火柱の中に立っていたのは冬也ではなく、
灰色のボディと巨大で禍々しい体を持つ怪物だった。
「ナンダ、ソノ姿ハ...」
「さぁな、でもお前と同じ化け物だ。化け物には化け物ってこった」
怪物は思い切り跳躍を行いホ級の頭部を自身の装甲がついた腕で貫いた。
唐突に行われた攻撃によりホ級はジタバタと暴れたが怪物がホ級を捕らえていた爪ごと砂浜に叩きつけホ級の体を真っ二つに切断した。
だがそこにリ級の主砲を腹部に浴びせられ怯み、それを好機とみたリ級が怪物へ飛びかかった。
重巡クラスの砲撃を直に浴びフラフラになっている怪物を捕まえるのは容易くリ級は砲身を叩きつけ怪物を横転させる。
「トッタゾ、シネッ!」
リ級は怪物の頭部へ至近距離で砲撃を浴びせ、怪物はボロボロになってしまった。
しかし冬也は退かず、更に一歩踏み込んだ。
怪物は自身の眼前にあったリ級の腕をつかみ
「くたばれっ!」
リ級の首に自身の腕を変化させた鋭い爪を突き刺し首をねじきった。
怪物は再びその姿を変化させ冬也の体へと戻った。だが冬也の体は最初に出会った時よりもより一層腹部と脚部の怪我が悪化してしまっていた。
冬也は時雨と夕立の元へ歩み寄る。
「おい、大丈夫か?怪我は?」
「私たちは大丈夫っぽい!でもトーヤ!あなたのほうこそボロボロじゃない!今すぐ治療しないと!」
「あぁ、そうだな。良ければ病院につれていってくれば、ハァ...ありがたいんだけど...」
そこで冬也は倒れてしまった。
あんま変わってねーわコレ